18歳未満に発症した高次脳機能障害患者の相談ケースでの現況 富山県高次脳機能障害支援センター 石川県高次脳機能障害相談・支援センター 福井県高次脳機能障害支援センター 【研究目的】 小児期に発症・受傷した患者では、成人での発症した患者と比べると、相談に訪れる時期やき っかけ、目的(主訴)が様々であり、その対応は必ずしも容易ではない。小児期に発症した高次 脳機能障害者の実態についても明らかでなかったので、北陸での実体を調査することにした。 【研究対象】 富山県高次脳機能障害支援センター、石川県高次脳機能障害相談・支援センター、福井県高次 脳機能障害支援センターに開所後に相談に訪れた高次脳機能障害患者のうち、発症・受傷時年齢 が 18 歳未満例の概要を集計した。 【結果】 18歳以上・未満 1. 18歳未満の発症・受傷相談数 18歳未 満, (51人), 18% 18歳未満の発症例の相談は 51 名で 全体の20%程度であった。 18歳以 上, (238 人), 82% 2. 18歳未満発症例の現状 (1)性別 男性が70%を占めていた。 不明, (2人), 女, 4% (13人), 25% 性別 男, (36人), 71% (2)発症・受傷年齢 発症時期は、小学生、中学生、高校 生、就学前の順で多かったが、全体的 にはほぼ均等に分布していた。 不明, (4人), 8% 成人例では脳血管性障害の率が高いと 思われるが、5 名(10%)のみであっ た。その他には脳炎、髄膜炎、低酸素 脳症、脳腫瘍などによるものであった。 (4)経過年数 発症・受傷からセンターへの受診 まで 1 年以内がわずか 6 人で、11 年 以上が 18 名(36%)を占めていた。 原因疾患 脳血管性 障害, (5 人) 10% 不明, (4人), 8% 21年以 上~, (6人), 12% 11~2 0年, (12人), 24% 脳外傷, (33 人), 64% 経過年数 0~1年, (6人), 12% 2~5年, (10人), 20% 6~10 年, (13 人), 24% 主訴 センターへの主訴(受診の目的)と も多かった。 7~12, (15人), 29% その他, 不明, (11 (2人), 4% 人), 22% (5)主訴 しては就労、就学が 26 名(44%)最 0~6, (9人) 18% 16~1 7, (10人), 20% 13~1 5, (13人), 25% (3)原因疾患 原因疾患は脳外傷が最も多かった。 発症年齢 その他, (16人), 28% 就学, (10人), 17% 診断・手 帳, (11 人), 19% リハビリ, (5人), 9% 就労, (16人), 27% (6)センターでの対応 対応 センターが実際に支援できたことは 「相談」のみで終わったのが 21 名(36 %)で、就労・就学支援は 17 名(30%) であった。就労の相談の中には家族のみ の相談事例があり、支援にまでには至ら ないことがあった。 診断書, (7人), 生活支援, 12% (2人), 4% 相談のみ, (21人), 36% 就学支援, (8人), 14% 就労支援, (9人), 16% 診断のみ, (4人), 7% リハビリ, (6人), 11% (7)障害内容(重複あり) 障害内容が明記されていた 高次脳機能障害 事例 25 名の高次脳機能障害の内容 その他, (6人), 12% を見ると記憶障害、注意障害、遂行 機能障害の順であり、社会的行動障 知的障害, (3人), 6% 記憶障害, (16人), 32% 害は比較的少なかった。 社会的行動 障害, (5人), 10% 遂行機能障 害, (8人) 16% 注意障害, (12人), 24% 【まとめ】 1.相談受付のうち、小児期発症は20%であった。 2.原因疾患では脳外傷が最も多かった。発症時期は、小学生>中学生>高校生>就学前の順 で多く発生していた。 3.センターに相談に来るまでの経過年数が長かった。 4.リハビリテーション希望や就学、就労などに関する多様なニーズがあった。 5.発症から相談までに長期間経過しており、この間に様々な問題を抱えているため、支援が より困難と思われた。 【結論】 1.小児期発症の高次脳機能障害者の実態解明がまだまだ不十分である。 2.特に、発症時期による問題(ニーズ)把握が今後必要である。 3.発症後、早期に高次脳機能障害の有無のチェック、そして早期の対応が必要である。 4.そのためには、急性期病院や学校現場での高次脳機能障害に対する理解が深まることが重 要である。
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