巻頭言 新潟の魅力を発信しよう 鈴木榮一

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新潟の魅力を発信しよう
鈴
よく言われることだが、新潟は、あるいは新潟
県民は、アピールが下手または苦手なようである。
北陸新幹線が開通したこともあり、活発な近隣県
に比べて、確かに新潟県はあらゆる点で積極的な
アピールが少ないように思われる。私自身も、新
潟で生まれ、新潟で育ち、
かなり以前に2年ちょっ
と東京に単身赴任したことはあるものの、生まれ
てからそのほとんどを新潟で過ごしているが、な
かなかうまく新潟の魅力をアピールすることはで
きていないように思う。では、新潟にはアピール
すべき点はないのか。
「新潟の魅力は何か」と、医学生や臨床研修医
に質問すると、米・酒・魚といった食文化はすぐ
に出てくるが、その後はなかなか出てこないのが
一般的である。本当に、新潟県には誇れるものは
ないのか。新潟には、海があり、山があり、島が
あり、広大な平野がある。県外から来られた先生
は、飛行機や上越新幹線から眺める新潟平野の広
さにびっくりされるという。また、春、夏、秋、
冬の四季がはっきりしており(し過ぎているかも
しれないが)
、私は、子供の感性を育てるにはい
いところではないかと、都会に対して見栄を張っ
たりすることもある。
(私自身は東京で年末年始
を過ごしたときに、雲ひとつない青空に違和感を
感じたが、関東育ちの人には、冬場の太陽の光が
射さないどんよりとした空は、耐えられないよう
である。)
私は新潟が好きであり、車で県内のいろんなと
ころへ行ってみることが好きである。特に、県外
に抜けるすべての県境を制覇したいと思ってい
る。近年は、県境のほとんどは高速道路のトンネ
ルとなっているが、
かつての道路を走ってみると、
そのほとんどは急な S 字カーブの連続である。
そうはいっても自動車道であり、昔はより険しい
山越えをしないと県外に出られなかったと思う
と、感動を覚えることすらある。また、県境に向
かうと、未だに知らなかった新潟の魅力を見つけ
ることができるような思いにさせられる。
木
榮
一
かつて、明治時代の一時期には、新潟県の人口
は東京都よりも多く、全国一だった期間があった
という。日本海に開けた多くの港があり、米をは
じめとした食が充足していて、県外へ出るのが大
変であったことを思うと、なんとなくわかるよう
な気もする。私が大好きな新潟県民の優しさや、
一方で自らを主張することが下手くそな新潟県民
気質が、そのような中で培われてきたのかもしれ
ない。
また、
私が関連する学会の支部の区分をみても、
新潟県は関東支部であったり、
(甲)信越支部、
北陸支部、東北支部、ときには中部支部に含まれ
たりする。一方、天気予報では、関東地方、甲信
地方、北陸地方、東北地方の、いずれにも入って
いないこともある。冗談で、新潟は独立国になれ
るのではないか、
などと言ったりすることもある。
話がかなり脱線してしまったが、新潟県は医療
に関しては、県と医師会と病院と、そして大学の
意思疎通が図れている県だと思っている。若い医
療関係者に対して、新潟の魅力を発見しアピール
していくとともに、新潟を医療・介護・福祉の先
進県としてアピールできないものであろうか。地
域医療構想の策定が徐々に進んでいるが、新潟県
は医療需給の流出入がきわめて少ない県であり、
ほぼ全ての医療が県内で完結している。県内の医
師が、それぞれの地域・立場で、かなり無理をし
ながらがんばっている成果だと思われる。今後、
各地域での地域包括ケアシステムの推進により、
医療と介護のシームレスな連携体制が構築される
ことを期待する。深刻な医師不足の現状では夢の
ような話だが、新潟の医療・介護・福祉が全国に
誇れるようになり、超高齢社会に向けて高齢者が
安心して暮らしていける県として、さらに、子育
て環境を充実させることで、少子高齢化、人口減
少に歯止めがかかれば、
・・・などと、なんとなく
「夢」をみている。
(県医理事)
新潟県医師会報 H28.5 № 794