低迷する世界経済における高成長株(PDF/394KB)

低迷する世界経済における高成長株
2016年 5月30日
ゼーン・ E ・ブラウン
パートナー、債券ストラテジスト
一般的な市場見通しが停滞するなか、長期を見据えた強力な投資機会のテーマであり続け
るのは永続的成長です。
米国の高成長株が昨夏以降大きく値を下げていることに疑いの余地はありません。実際のところ、
株式市場全体と比べても下げ幅ははるかに大きくなっています。投資家たちは新たな世界経済
成長への懸念に対して、いつもの対応-まずは売れ、考えるのはその後だ-を取っています。
興味深いことに、高成長企業株から「安全」で成熟度の高い大型株と見なされる企業へ乗り換え
る動きは、売上高や利益の伸び率と反比例する形となっています。
図 1 は、大型株企業と小型成長株企業との株価収益率(P/E)の格差を示す形で、こうした投資
家心理における副次的影響を示したものです。量的緩和措置の終了以降、大型株が上昇したの
に対して、小型成長株は 17%急落しました。
この格差は、米経済の高成長セグメントがつまずきを見せる一方で、成熟した低成長セグメント
が活力を取り戻していることを意味しているのでしょうか?いやそうではありません。表 1 が示す
通り、高成長企業の売上高上位 10%の株価収益率は高く推移してきましたが、利益成長率はさら
に高く、これが 2015 年 12 月 31 日までの 10 年間における高い平均リターンにつながっています。
好例を上げれば、バイオテクノロジーセクターは、薬価規制が 2015 年 9 月に政治的懸念材料と
なって以降、広く不人気でしたが、目覚ましい結果を残しています(図 2 参照)。
図 1. 成長*が見られるセクターに対して投資家は報いていない
1 株当たり売上高と株価収益率の比較、2014 年 6 月 30 日から 2016 年 3 月 31 日までの移動 12 ヵ
月統計
出典:ファクトセット.
1
RTop200 = ラッセルトップ 200 インデックス。R2000G =ラッセル 2000 グロース株インデックス。R1000G
=ラッセル 1000 グロース株インデックス。
* 全ての期間のスタート時点において時価総額 100 億ドル以上のラッセル 3000 株全銘柄を参照
表 1. 高成長企業はプレミアムに値する動き
期間 3 年のローリング平均(2005 年 12 月 31 日 ― 2015 年 12 月 31 日)
売上成長の高い 企業の 株価収益率は高い ものの 高利益成長
と
高リターン
を達成
出典:ブルームバーグ及びファクトセット
図 2. 2011 年以降、バイオテクノロジー企業は莫大な利益を計上
バイオテクノロジー企業の 1 株当たり利益、2011 年 3 月―2016 年 3 月
出典:ブルームバーグ及びファクトセット
長期投資を考える投資家にとって、投資の成功に向けて、高成長銘柄への投資がさらに必要不
可欠になってきたと我々は見ています。昨夏の記事で論じた通り、量的緩和後の世界市場にお
いて米国の投資家は、上昇株と下落株を区別しない S&P500 種株価指数や他の広範な市場指
数のパフォーマンスには恐らく失望させられることになるはずです。しかし一方で、広範な市場に
は「創造的破壊」が進む分野があります。ここでは力強い有機的成長が存在する一方で、イノベ
ーションによって業界が一変し、勝ち組と負け組という過酷な二分化が起きています。この点に関
しては、衣料小売業界ほど、上昇と下落とを積極的に識別する重要性を示している業界は恐らく
他にないと見られます。この業界では、実際に店舗を持つ企業が、資産をあまり持たないパワフ
ルなインターネット小売業者によって打撃を受けています。ここ数週間における一連の収益報告
書によって、こうした格差が進んでいることが明らかとなっており、この分野で重要なトレンドが依
然として続いていることが示されています(図 3 参照)。
2
図 3. インターネット小売業者は低成長トレンドに逆行
インターネット小売業者と複合小売業者との 1 株当たり利益の比較、2011 年 3 月―2016 年 3 月
出典:ブルームバーグ及びファクトセット
長期的には大型成長株
こうした主要銘柄や新興主要銘柄を見出す重要な分野は大型成長株であると我々は考えていま
す。しかし一方で、我々はこの分野を見ている投資家たちにはアクティブ運用マネージャーの助
言を求めるよう忠告しています。なぜなら最も広く利用されている大型成長株のベンチマーク指
標であるラッセル 1000 グロースインデックスには大きな弱点(例えば正確な分類などの面で)が
あるからです。
第 1 四半期末時点における同インデックスの上位 20 銘柄を考えてみましょう。これらの銘柄の
配当利回りと売上高伸び率を見ると、明らかなことがあります。これらの多くが「成長」銘柄とは言
えない-少なくとも皆さんが期待するような-ということです。その中にはタバコ会社があり、ファ
ストフードチェーンがあり、いくつかの飲料メーカーがあるでしょう。そして、配当利回りは高いもの
の売上高成長率は一桁あるいはマイナスという銘柄が多いことは言うまでもありません。これら
が成長銘柄とは思えないという意見は、あなた一人のものではありません。そして、投資家にとっ
てはこれが実際の投資成果となるのです。なぜなら広範な米国株式ポートフォリオにおいて、意
図しない銘柄の重複保有につながり得るからです。
確かに、高成長企業は期待値が高いことから市場のバリュエーションは高くなります。つまり、た
とえ低経済成長環境下においても、イノベーションへの投資はバリュエーションリスクを取るに十
分値すると言えるのです。「勝ち組がほとんどを得る」経済の下で、真の新興主要銘柄が莫大な
利益を手に入れ得る一方で、市場の大半が置き去りにされるのと、まさに同じように。
考察すべきリスク:株式投資の価値は全般的な経済情勢や特定の企業・セクター見通しの変化に応じ
て変動します。成長株は株式市場において日々上下する一方で、長期的な潜在力やボラティリティが
高くなる可能性があります。バリュー投資には、証券が過少評価されていることを市場が認識しないリ
スクや予想通りに上昇しないといったリスクが伴います。いかなる投資戦略も市場変動を克服すること
はできずまた将来の成果を保証することはできません。
金融市場のトレンドに関する記述は現在の市場情勢を基にしたものであり、この先変動する可能性が
あります。全ての投資には投資元金の損失を含むリスクを伴います。
株価収益率(P/E)は、投資尺度(マルチプル)の代表としても知られ、企業利益に対する株価コストを
示すものです。株価収益率は現在の株価(P)を現在の利益(E)で割ることによって算出されます。
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ラッセルトップ 200 インデックスは上位 200 社(ラッセル 1000 インデックスの時価総額の 63%を占める)
のパフォーマンスを計測しており、時価総額 1,105 億ドルの加重平均インデックスです。時価総額の
中央値は 240 億ドルであり、同インデックスで最も小さい企業の時価総額は約 140 億ドルです。
S&P 500 種株価指数は米国株式市場の大型株のパフォーマンスを示す基準として広く認識されてお
り、主要業界における主要企業の代表的株価を示しています。
ラッセル 1000 グロースインデックスは高い株価純資産倍率と高い予想成長価値を有するラッセル
1000 インデックス企業のパフォーマンスを計測しています。
ラッセル 2000 グロースインデックスは高い株価純資産倍率と高い予想成長価値を有するラッセル
2000 インデックス企業のパフォーマンスを計測しています。
掲載されている見解は出版日時点のものであり、その後の情勢の進展によって変化する可能性があ
り、同社の全般的な見方を反映していない可能性があります。見解の内容は予想やリサーチ、投資へ
の助言として信頼されることを意図したものではありません。また、いかなる証券の購入・売却あるい
は投資戦略を推奨または提供するものではなく、いかなる投資パフォーマンスを予想、提示することを
意図したものでもありません。読者はそこに掲載された企業、証券、セクター、市場への投資が利益を
過去に生んだ、あるいはこの先利益を生むだろうと見なすべきではありません。投資には元本の損失
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