特定元方事業者の安全衛生管理体制 作業所の統括安全衛生管理体制 5

Ⅰ - 安全衛生管理の基礎知識
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特定元方事業者の安全衛生管理体制
作業所の統括安全衛生管理体制
労働安全衛生法(安衛法)に基づく安全衛生管理体制は、事業者と労働者という使用従属関係面か
らとらえ、事業者主体のもの「元方事業者の安全衛生管理体制」と、混在作業を対象にした現場のも
の「統括安全衛生管理体制」の 2 つがある。
(1) 特定元方事業者の安全衛生管理体制 (事業者主体の安全管理体制)
(特定元方事業者等の講ずべき措置 安衛法第三十条)
事業者(丹青社及び協力会社)は、政令で定める規模(従業員数)の事業所毎に、下記の各
管理者を選任し業務の安全衛生管理をしなければならない。
当社(丹青社)は、建設業で従業員が 100 人以上になるので総括安全衛生管理者、安全管理
者、衛生管理者、産業医を選任しなければならない。
① 総括安全衛生管理者 (従業員 100 人以上)
(総括安全衛生管理者 安衛法第十条、施行令第二条~第三条の二)
総括安全衛生管理者を事業主が選任し、労働基準監督署長に提出する。
職務は、安全管理者、衛生管理者を指揮し、業務を総括管理する。
② 安全管理者(従業員 50 人以上)
(安全管理者 安衛法第十一条、安衛則第三条~第五条)
安全管理者を事業主が選任し、労働基準監督署長に提出する。
安全管理者は、事業所の専属の者とする。
職務は、安全に関する技術的事項を管理する。
③ 衛生管理者(従業員 50 人以上)
(衛生管理者 安衛法第十二条)
衛生管理者を事業主が選任し、労働基準監督署長に提出する。
職務は、衛生に関する技術的事項を管理する。
④ 産業医(従業員 50 人以上)
(産業医等 安衛法第十三条)
産業医を事業主が選任し、労働基準監督署長に提出する。
職務は、労働者の健康管理等を行う。
⑤ 安全衛生推進者(従業員 10~50 人未満)(安全衛生推進者等 安衛法第一二条の二)
都道府県労働局長の登録講習の修了者を選任し、掲示し関係労働者に周知させる。
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Ⅰ - 安全衛生管理の基礎知識
(2) 作業所の統括安全衛生管理体制 (現場の混在作業対象の安全体制)
① 混在作業における、安全衛生管理体制について(統括安全衛生責任者の選任)
1-統括安全衛生管理は、一つの元請事業者と関係請負人の作業者の混在する形態(混在作業所)
において、統括安全衛生管理を実施しなければならない。
2-二つ以上の元請事業者(別途会社等)とこれらの関係請負人の作業員が混在する形態の場合
は、統括安全衛生管理を行うべき1社が指名されて、他の元請け事業者はその管理体制に
組込まれ、統括安全衛生管理を実施することになる。
3-混在作業所とは、元請け、下請、再下請等の事業者(労働者)が、同一の場所において作業
を行う作業所である。
② 統括安全衛生責任者
(統括安全衛生責任者 安衛法第十五条、安衛令第七条、安衛則第十八条の二、第二十条)
(統括安全衛生責任者の職務 安衛法第三十条第一項)
1-統括安全衛生責任者を選任すべき事業所は、元方事業者の
労働者と各関係請負人の労働者数の合計が、別途会社等の作業
員も含めて、常時一日 50 人以上となる作業所(現場)である。
2-統括安全衛生責任者は、統括管理教育の修了者とする。
3-統括安全衛生責任者は、作業所全体の統括安全衛生管理を実施しな
ければならない。
4-統括安全衛生責任者を選任したときは、元方安全衛生管理者
と共に、労働基準監督署に届出をする。
5-統括安全衛生責任者の職務
(イ)元方安全衛生管理者を指揮すること。
(ロ)救護技術者を指揮すること。
(ハ)災防協等の協議組織を設置及び運営を行うこと。
(月1回開催し記録する)
(ニ)作業間の連絡及び調整を行うこと。(職長を集め1日1回開催し記録する)
(ホ)作業場所を巡回すること。
(1日1回以上巡回し是正を確認し記録する)
(ヘ)関係請負人(協力会社と別途会社)へ教育に対する指導と、新規入場者教育、送り出
し教育の資料提供を行う。
(新規入場者教育は当社が行うことが多い)
(ト)工程計画、仮設配置計画等を作成する。関係請負人が作成する作業計画、作業手順
書の指導をする。
(チ)移動式クレーン等の運転作業について合図の統一をすること。
(クレーン運転者と玉
掛け作業員との連絡で合図の統一を行う)
(リ) 非常時の際の警報を統一すること。
(商業施設内の警報の統一を周知させる)
(ヌ) その他安全衛生に関する必要な事項を行うこと。
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Ⅰ - 安全衛生管理の基礎知識
③ 統括管理者(混在作業所での統括管理者である)
(安衛法第三十条第一項)
1-労働者数の合計が、常時一日 50 人未満の中規模建設工事現場においては、統括安全衛生責
任者に準ずる者(作業所長・現場責任者)を選任し、統括管理者として実施する。
2-混在作業の作業所では、金額、作業員の人数に関係なく統括管理業務を行わなければなら
ない。
(全ての建築及び内装等の現場が該当する)
3-統括管理者は、統括管理教育の修了者とする。
4-統括管理者の職務
統括管理者の職務は、統括安全衛生責任者の職務と同等である。
④ 元方安全衛生管理者
(元方安全衛生管理者 安衛法第十五条の二、安衛則第十八条の三~五)
1-元方事業者の統括安全衛生責任者を選任した事業者は、一定
の資格を有する者で、元方安全衛生管理者を選任する。
2-元方安全衛生管理者は、その作業所の専属の者であること。
3-元方安全衛生管理者の職務
・統括安全衛生管理責任者の職務のうち技術的事項を管理する。
・技術的事項とは、安全衛生の災害事故防止を具体的に行うこと。
⑤ 安全衛生責任者
(安全衛生責任者 安衛法第十六条、安衛則第十九条)
(安全衛生教育 安衛法第六十条、第六十条の二)
1-安全衛生責任者は、下請け作業所ごとに、協力会社の請負人
から、安全衛生責任者を選任し、統括安全衛生責任者の事業所
(元請け)に通知する。
2-安全衛生責任者は、職長・安全衛生責任者教育の修了者である。
3-安全衛生責任者の職務は、安衛法第 16 条、安衛則第 19 条を
参照(当社規則 作業所安全衛生管理規則第 7 条を参照)
4-安全衛生責任者の職務
(イ) 統括安全衛生責任者(統責者)との連絡をとること。
(ロ) 統責者からの連絡事項を関係者に連絡し周知させること。
(ハ) 統責者からの連絡事項の実施を管理すること。
(ニ) 作業計画書、作業手順書を作成し、統責者と調整をすること。
(ホ) 混在作業による危険の有無を確認し危険防止に努める。
(ヘ) 請負人(協力会社等)が作業を引き継ぐ場合は、安全衛生責
任者は、作業間の連絡及び調整を行うこと。
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