第142号 - 日本健康太極拳協会 東京都支部

2016年6月
トピックス
第142号
発行人
茶木
登茂一
北地域野外太極拳へ参加
|1
第 18 回となる、東京都支部北地域の「野外太
極拳」は、5 月 3 日(祝)、台東リバーサイド体育
館陸上競技場で、午後 1 時 30 分から 4 時まで、
約 270 名の参加を得て盛大に開催されました。小
生の担当教室からは、瑞江鶴の会と東大島鶴の会から有志約 20 名が参加して皆さんと楽しく交流
しました。また、終
了後は有志 12 名が
浅草で打ち上げ会を
開催して歓談しまし
た。会の様子を蕗澤
徹師範ご提供の写真
でご紹介します。
28 年度支部会員登録完了のご報告
平成 28 年度の東京都支部会員登録につきましては以下のとおり登録を完了し、お預かりした会
費は 5 月 6 日に東京都支部事務局へ払い込みましたので、ご報告いたします。
瑞江鶴の会 38 名、東大島鶴の会 42 名、亀戸SC教室 12 名、合計 92 名、会費合計 92000 円
清新鶴の会が「ふれあいまつり」に出演
清新鶴の会(蕗澤徹師範指導)は恒
例の「清新町・臨海町ふれあいまつり」
に今年も参加しました。好天に恵まれ
た 5 月 8 日(日)
、清新町の緑道の舞
台で、会の有志 12 名が大勢の観客を
前に八段錦と楊名時 24 式太極拳を披
露しました。その様子を田巻誠さんご
提供の写真でご紹介します。
「對聯」を読み解く
先日、東大島鶴の会の会員のTさんから、ご覧の様な一枚の写真【次頁】を渡されて “先生は
中國に詳しいからこれを読んで意味を教えてください”ということで解読を頼まれました。
なんでも昔お父様がどこかで手に入れたものだそうですが、意味がさっぱり解らず、おまけに「枕
経」という文字も入っているので、飾っておいていいものかどうか悩んでいるということでした。
見たことも無い漢字もあってすこぶる難解でしたが、10日ほどあれやこれや調べて、何とか以
下のように読み解いてお返ししました。一種の知的パズルとしてお読みいただいて、お楽しみくだ
さい。
これは「對聯(タイレン・ツイレン)」といって、家の門や居室の入り
口の左右に掲げる対句の飾り物です。このように刻字した立派なも
のばかりではなく、赤い紙に墨で書いたものを貼ることもあります。
おめでたい内容を二連の対句にしているのが特徴です。春節の時節
に掛け替えたり貼り替えたりするので、
「春聯」とも呼ばれているも
のです。
さて、この「對聯」ですが、写真の右側が実際にも右側に掲げる
いわば「起句」で、左側が、左側に掲げる「承句」です。本文の文
字は「篆書体」に次いで古い「隷書体」です。
右側は、まず肩に「御製句」とあるので、この対句が皇帝の作で
あることが分かります。実際にどの時代のどの皇帝の作なのかは、
今回は調べきれませんでしたが、内容を解読する上での参考にはな
ります。
さい
かん
本文は「霽月光風涵性海」ですが、「霽月光風」は見覚えのある
成句でしたので、手持ちの「商卜(しょうぼく)文集聯」〈丁輔之著)というこの手の対句がたくさん
載っている稀覯本で調べましたら、類似の「光風霽月」という四文字熟語がありました。霽月は雨
上がりの月、光風は光る風という意味です。また、涵は潤うという意味です。
左側は「枕経○史養天和」ですが、三番目の文字は読めませんし、意味も解りません。字画の一
部が省略されているものと推理しました。
次の難題は「枕経」です。現在の日本での「枕経」の意味は、ご臨終の後にあげるお経のことで
すし、歴史的には、そもそもはご臨終を迎えようとする人の枕元で、阿弥陀如来来迎図などを飾っ
て、お坊さんが、当人とともに唱えるお経のことでしたが、いずれにしても、これらの解釈はとて
もこの成句には当てはめられません。
解決の鍵は、
「起句」は四文字熟語で始まっていますので、
「承句」も上の四文字は同様四文字熟
語になっているはずと見当を付けたことです。そこで、「枕」から始まる四文字熟語を探してみま
ちんせきそうりゅう
すす
すと、
『枕 石 漱 流 』(石を枕にし、川の流れで口を漱ぐ…つまり大自然の中で暮らすの意味)、ある
ちんかしんこう
いは『枕戈寝甲』(戈を枕に甲を着て寝る…つまりつねに戦場に身を置く、そのつもりで暮らす、
の意味)などという用例が見つかりましたので、このような用い方なのだと推理しました。
「経」は、日本ではすぐ「お経」と理解してしまいますが、本来は本、書籍のことですから、
「枕
経」は“本を枕に”という意味だということに理解できました。
さて次の「○史」が難解ですが、上の枕経とつながる意味の言葉であることは間違いありません。
まず「史」ですが、これは普通“歴史”の意味ですが、転じて“本、書籍”を意味する言葉でもあ
ることが漢和辞典を引いて解りました。つまりこの二文字は“本を○にして”という意味になるは
ずと目途がつきましたので、○の字、つまり草冠の字を探してみたら、ようやく、草冠の下に龍を
置く「蘢(ル・ロウ)」という字を見つけました。この隷書体では、その龍の一部を省略している
ものと推察しました。「蘢」の意味は「イヌタデ」という雑草の名前ですが、転じて“草木が深く
茂るさま”という意味もあるのだそうです。
したがってこの四文字熟語は『本を枕に、本を褥に』と読み解くことが出来ました。ということ
で、全文をようやく以下のとおり解読することが出来ました。
|2
本文
さい
意訳文
かん
霽月光風涵性海
ちんけいろうし
枕経蘢史養天和
解説
雨が上がり月は輝き風光り海は潤う
天下がよく収まっているさま
読書(勉強)に没頭して天の和を育てよう
天子としての決意をいう
|3
余談ですが、中国では今でも「對聯」を掲げること
は習慣として残っているので、どこへ行っても、寺院、
住宅、事務所を問わず見ることが出来ます。
また、中国共産党のスローガンもみなこの対句様式
になっていてリズムもよく、覚えやすくなっていると
ころはさすがと思います。
右の写真は、2000年11月、江蘇省の水郷古鎮
「周荘(しゅうしょう)」の街角でのスナップですが、客
待ちをする“對聯書き”の書家のおじいさんです。注文すればすぐに書いてもくれるし、後ろに掛
かっている出来合いのものから選んで買うことも出来る仕組みです。
健康妄語録
「水平足踏み法」の効用
(2007 年 10 月第 39 号)
「水平足踏み法」は、もう6年ほど前から中野完二先生がご自分の教室で取り入れられているものです
が、先生によると、これは大阪市の加藤内科医院院長である加藤治秀医学博士が提唱されたもので、「万
病に効く水平足踏み」という著書も発行されているそうです。関西ではかなり前から広く行われていた
そうで、特に瀬戸内寂聴さんが毎日朝夕150回ずつ、一日300回なされていることでも有名な、超
簡単健康法です。ポイントは腿を水平まで引き上げることにあります。腿を水平に引き上げることで腸
腰筋が最大に働き血行がよくなるとされています。
腸腰筋は腸骨と大腿骨を結ぶ腸骨筋と、腰椎と大腿骨を結ぶ大腰筋の総称です。もちろん足をあげる
動作はこれ以外の筋肉、たとえば、大腿四頭筋、大腿二頭筋、大殿筋などとの拮抗と協調によって行わ
れるものですが、特に体の深奥部にあって上半身と下半身を繋いでいる腸腰筋の働きが重要とされてい
ます。ですから、こうした筋肉が衰えてくると、水平足踏みそのものがうまく出来ないようにもなって
しまいます。
私の担当する各教室では準備運動の一部として毎回50回の水平足踏み法を実行していますが、その
なかのある教室に昨年はじめに入会されたAさんもその一人でした。体がうまく動かせないようなので、
そわいしょう
水平足踏みもほとんど足が上げられない、 甩 手 もおぼつかないという状態でした。
「出来ることからまず続けていてください。だんだん動くようになりますよ。あきらめないでくださ
いね」と助言していましたが、さいわい何よりもご当人が熱心で、ほとんどお休みすることなく出席さ
れ続けてきました。そうしているうちに体もだんだんに動くようになりまして、なんと水平足踏みも最
近はしっかりと力強く出来るようになったのです。先日、教室で「Aさん、水平足踏みが立派に出来る
ようになりましたね」と言うと、周りから期せずして拍手が起こりました。皆さんもちゃんと温かく見
守っておられたのです。
ご当人はたいへん照れておられましたが、出来るようになったのは水平足踏みだけではありません。
太極拳を続けてきてよかった、元気になってきてよかったという嬉しさを、その輝く笑顔が物語ってい
るように私には思えました。
この時からすでに 10 年近い月日が流れましたが、その後のAさんは、毎年のように皆勤賞を取
ったり、精勤賞を取ったりと、たいへん熱心に生き生きと教室に通われています。太極拳がすっか
り彼女の生活の一部になっているのですね。まさに、
“継続は力なり”のお手本のようなものです。
あらためてエールを送ります!
わが街のナンジャモンジャ
緑道にナンジャモンジャの木々長けてまばゆく白く咲き競うなり
チオナンサス
学名は“雪の花”とはむべなるか雪積むごとく一つ葉タゴ咲く
名木を巡りて今朝の散策はナンジャモンジャからユリノキを見に
富山を旅して
5 月 14 日から 16 日まで、富山、越中八尾、高岡、氷見などを旅した時の印象です。写真とともに
お届けします。
(富山・八尾)
反魂丹万金丹の名薬も銘菓に替わる富山の商魂
唄むせび踊り切なく胡弓哭く越中八尾は街も淋しい
辻々に石のお厨子に守られて香華の絶えぬ八尾の野仏
行き交うは観光客とガイドだけ風の盆唄空耳に聞く
(氷見・高岡)
いたわしや高岡大仏露座にして初夏の陽を浴び凝然と座す
静もりて夜明けを迎える富山湾 隔てて広がる立山連峰
この絶景千金の価値に勝るとて湯舟に望む剣・立山
夕さればいよよ鮮けし剣岳鋭き岩峰谷の残雪
【↓剣岳遠望】
【↑高岡大仏】
【↑おわら風の盆ステージ】
さこうべん
左顧右眄の『第 17 話 漢詩に学ぶ・漢詩を楽しむ』は前号で終りました。次号より新テ
ーマでお届けする予定です。
|4