選挙について、考えよう 選挙について、考えよう

選挙について、考えよう
公 職 選 挙 法 などの 改 正・施 行により、選 挙 権 年 齢 が 1 8 歳に引 き 下 げ
られます 。今 年 の 夏 に 行 わ れる 参 議 院 議 員 選 挙 から 、獨 大 生 の ほ ぼ
全 員 が有 権 者になります。
「 選 挙 に 参 加 する権 利 を 持 つ 」ことは 、私 た ちにとってど ん な 意 味 を
持っているのでしょうか。
国 会 議 員 を 選 ぶ 国 政 選 挙 に ま でつ な
がって い る と い う わ け で す 。今 年 の 夏 に
しょう 。実 社 会 の 選 挙( 投 票 )は 、そ れ が
歳以上
行 われ る 参 議 院 議 員 選 挙 も 、国 政 選 挙 の
今 年 6月 、選 挙 権 年 齢 が
すべての大 学 生 に 与 え られるこ と に
ひ とつで す 。
と な り 、国 政 に 関 わ る 機 会 が ほ ぼ
どのようなことな ので しょう か ?
現 在 の 私 た ちに とっては 当 然 のよ う に
なります。では
「選挙に参加する」
とは
国際政治を専門とする外国語
も 思 え る 選 挙 制 度で す が 、現 在 のよ う な
特集
選 挙 に つ い て 、考 え よ う
金子 芳樹
外国語学部
英語学科教授
倍 。そ し て 過 去 の 衆 議 院 議 員 選 挙 の
年齢別に比較すると、 歳 代 は 、 歳 代 の
20
”
代の投 票 率の約2倍 となっています 。ちな
投 票 率 を 見 ると
“
あ る し く み だ と 思 いま す 。
も 、日 本 の 選 挙 制 度 は 高 い 価 値 と 意 義 の
歳代が最も高く、 歳
日 本 をはじめ民 主 主 義 的な法 治 国 家に
残 さ れていま す 。そ う し た 点 か ら 考 えて
国 や 地 域 が 、いま な お 世 界 には た く さん
選 挙 制 度 や 投 票 権 が 認 め ら れてい な い
ありました 。さらに言 えば、日 本のよ うな
か た ちにな る までには 苦 難 の 道 のり が
学 部の金 子 芳 樹 先 生にお話 を 伺い
ました。
あたりまえ の価 値
60
おいて 、「 選 挙 」は 社 会 全 体 で ご く 自 然 に
1.5
18
307万人
5.5%
1925年
1241万人
20.0%
1945年
男女
20歳以上
3688万人
48.7%
2015年
18歳以上
約240万人
約2%
60
歳以上」
へと
20
そもそも人口比率に差があり、
それ以 上
の よ う に 、世 代 間 の 利 害( メ リット・デ メ
こ う し た 状 況 は 、ど ん な 問 題 を は ら ん
そ し て 、若 者 の 意 見 を さ ら に 政 治 に
を高めてもらうことが目的のひとつです。
考 えて み ま しょう 。多 数 決( 投 票 の 結 果 )
リッ ト )が 対 立 し や す い 政 策 に 関 し て
に従えば、多 数 を 占める 、高い年 齢 層の人
たちにとってメリットが大きい政策が選択
されるでしょう 。それは 、こ れか らの時 代
を 担 う 若 者― つま り 、み な さ ん 自 身への
政 治 に 対 す る 影 響 力 について 、世 代 間
層 の 意 見 は 政 策 に 反 映 されに くいま ま
しかし、現 在の状 況 が続 くかぎり、若 者
負 担 が 増 え るこ と にもつな が りま す 。
の ギ ャッ プ は 明 ら か で す 。有 権 者 数 を
自分たちの声を届ける
てい ま す 。
ギャップ 〞を 小 さ く す る こ と が 期 待 さ れ
反 映 さ せ〝 世 代 間 の 政 治 的 影 響 力 の
引 き 下 げ られま し た 。よ り 多 くの 若 者 が
力 を 持って い る と 考 え ら れ ま す 。
60
選 挙 に 参 加 す るこ とで 、未 来 の 当 事 者 と
歳 以 上 」か ら「
20
年 金 問 題 や 福 祉 政 策 、国 債の発 行 な ど
ま で の「
20
でいるのでしょう か 。
18
な る 若 者の政 治への関 心 と 参 画の度 合い
20
み に 、 歳 代 の 投 票 率 は 全 年 齢 層 のな か
1919年
国 民 が生 活する国 家と社 会のあり方を
2.2%
受 け 入 れ ら れ 、かつ最 も 正 当 性 が 高 い と
98万人
で 最 下 位です 。
決め未来に導くことを
「政治」
と呼ぶなら、
1900年
「 選 挙 」と は そ れに 携 わ る 代 表 者 を 、国 民
1.1%
考えられている
「 決め方 」
となっています 。
45万人
み な さ ん に とって も 、投 票・多 数 決 で
25歳以上
に 投 票 率 の 差 が 大 き く なって い る の で
男
自 ら が 決 め る 手 段 と も 言 え るで しょう 。
1889年
代 表 者 やル ー ルを 決 め る という 方 法 は 、
割 合
パワ ー は 、 歳 代 の 国 民 の 約 3 倍 の 影 響
有権者数
す 。こ の 2 点 か ら 、 歳 代 の 国 民 の 投 票
年 齢
今 回 の 法 改 正 に よって 、選 挙 権 年 齢
性 別
( 選 挙 権 を 持つこ と ができ る 年 齢 )がこれ
成 立
小 学 生 のこ ろ か ら な じ み の あ る も ので
有権者の資格と全人口に占める有権者の割合
2
選 挙 権 と は 、自 分 た ち の 未 来 を 決 め る
投 票 率 の 向 上 が 不 可 欠 だ と 思 いま す 。
です 。これを 変 える た めには 、みなさんの
と な る か も しれま せ んね 。
も で き る の で す 。キャン パ ス が 、そ れ ら
Y o u T u b eなどを 通して広めること
を ネッ ト の 掲 示 板 や ブ ロ グ 、S N S や
変 え ら れ な い と 最 初 か ら 決 めつ け な い
大 事 なこ と は 私 の一票 だ けでは 政 治 を
一歩 、二 歩 近 づいていま す 。
し た 感 覚 を 持つだ けで も 、すでに 政 治 に
した ら 強 い 憤 り を 覚 え るで しょう 。そ う
て も 早 いほ う で す 。
こ の 点 に お いて 、日 本 は 他 の 国 々 に 比べ
で は 1 9 4 4 年 、ス イ スは 1 9 7 4 年 。
が 投 票できるようになったのは、
フランス
を拡大していった歴史でもあります。女性
日 本 の 経 済 成 長 に 伴って 、政 府 は そ の
さま ざまな 選 挙 運 動の舞 台 やその拠 点
時 々の 問 題 解 決 に 注 力 してき ま し た 。
権 利であり 、若 け れ ば 若 い ほ ど そ の 意 味
持 ち 、若 者 の一人 ひ と り が 選 挙 に 参 加
現 在 は 少 子 化 が 社 会 問 題 化 してお り 、
こ と 。社 会 の一端 を 担 う と い う 責 任 感 を
し 、将 来 の 自 分 た ち の 生 活 を 守 る た め
歳・ 歳 の
「新人有権者」
みなさん が 今までとは違 う 政 治 的 な
の 発 言や行 動への関 心 が高まるでしょう 。
若 い 世 代へ向 け た 政 策 が 求 め ら れ て い
また 今 後は
は 大 き くなりま す 。
国 際 的 に み る と 、選 挙 権 年 齢 の 世 界
%
歳で、統計のある約190ヶ国の
ます。選挙権が拡大すれば、若者に投票の
歳 以 上 に 設 定 してい る 国 は
流 れは 変 わり 始 め るでしょう 。
に 投 票 所 に 向 か え ば 、そ れ だ けで 政 治 の
うち
ビジョンやアイ デア、現 状の改 革に関 する
標準は
に も 至 り ま せ ん 。ま た 、先 進 国 が 集 う
機 会 ができ 、彼 らの 声 が 政 治 に 反 映 され
持つ以 外 に 、決 め られ た 期 間( 選 挙 期 間 )
有 権 者 にな る とい うこ と は 、投 票 権 を
示 さ れ た 未 来 志 向 の 政 治 的 ア イ デア が 、
表 明 す る だ け で な く 、若 者 自 身 に よって
候 補 者 や 、そ の 政 策 に 対 す る 立 場 を
くなりま す 。
お 話 を 伺 いま し た 。
しょう か 。法 学 部 の 福 永 文 夫 先 生 に
ど の よ う な 意 味 を もって い る の で
選 挙 権 の 拡 大 は 、選 挙 の 歴 史 上
ら れ ま す 。2 0 0 9 年 、 年 の 総 選 挙 で
に おいては 、こ れ まで と 異 な る 動 き が 見
か し 、無 党 派 層 が 主 流 と なってい る 現 在
変 わ ら な い 」と い う 声 も 聞 か れ ま す 。し
かつて日 本では、直接国税を納めている
こ り ま し た 。若 者 の 投 票 は 、日 本 の 政 治
政 権 が 交 代 す る という 大 きな 変 革 が 起
は 、多 く の 浮 動 票 が 動 い た こ と に よ り 、
歳 以 上 の 男 性 だ け が 投 票 す るこ と が
の 未 来 について 考 えてみま せ ん か 。
を 変 え る 力 に な り ま す 。皆 さ ん も 、政 治
月の
)
年、男子に
法 改 正で 、 歳 以 上 の 男 女 に 選 挙 権 が 拡
財 産 制 限 がな くなり 、1 9 4 5 年
できました。1925
(大正
実 際 の 選 挙で 投 票 所 を 訪 れ る と 、独 特
12
の政 党 や 政 治 家 も 耳 を 傾 け ざ る を 得 な
に おいて 自 ら 選 挙 運 動 を 行 う 権 利 を
成 年 年 齢を1 9 7 4 年に1 8 歳に引き
下げ、選挙権年齢は2011年の法改
正により、23歳から18歳に引き下げ
られた。
14
大されました。近 代の歴 史は、投 票の機 会
20
支 持 す る 候 補 者 や 政 党への支 持 を 友 人に
フランスでは
25
の 緊 張 感 が あ り 、しっか り と 管 理 さ れ た
施 行
夏の参院選に適用
依頼したり、選挙運動に関するメッセージ
選 挙 権 年 齢は1 8 歳だが 、一 部 の 州
が 地 方 選 挙 の 選 挙 権 年 齢を先 行 的
に16歳としている例もあり、16歳へ
の引き下げが議論されている。
12
2016年6月19日
選 挙 に つ い て 、考 え よ う
2015年6月17日
場 所 で あ るこ と が 分 か るで しょう 。厳 粛
さ が あ り 、投 票 を 通 じ て 政 治 家 を 選 ぶ
こ と が 、国 のル ー ル と し て 為 さ れてい る
自 分 が一票 を 投 じ た 候 補 者 の 当 落 結
福永 文夫
法学部
総合政策学科教授
こ と が 感 じ られま す 。
果には、誰しも関 心 がわくはずです 。自 分
が 支 持 す る 政 治 家 が 当 選 し 、後 に 政 治
的 功 績 を あ げ た ら 、ちょっぴ り 誇 ら し く
改正公職選挙法が成立
未来を決める権利
政 治 を 変 え る きっか けにな るので す 。
「 投 票 しても 、自 分 の一票 だ けでは 何 も
た流れに沿ったものと言えるでしょう。
私 た ちの一票 が 政 治 を 変 え るので す 。
を 考 慮 し た 面 も あ るのでしょう 。
やすくなります。選 挙 権の拡 大は、
こ うし
提 案などを示すことができれば、メディア
10
得 る こ と で も あ り ま す 。つま り 、自 分 の
ま り と なって
「 社 会の声 」
になるなら、既 存
す 。さ ら に そ れ ら が ネッ ト な ど で の コ
や 社 会の注 目 を 集 める 可 能 性 が ありま
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の年齢引き下げは、
このような世界の趨勢
日本 と韓国を除いてすべて
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選挙運動への参加も
ミュニケ ー ション を 介 し て 広 が り 、か た
歳です。今回
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OECDの加盟国 ヶ国の選挙権年齢は、
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思えるかも知れません。逆に、不 正 を 起こ
「18歳選挙権」適用
までのスケジュール
特集
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20
ドイツでは