IASB において担当した 年金会計基準関連 プロジェクト

2016年6月
公益社団法人日本年金数理人会第67回研修会
平成28年6月6日(月)15:00~17:00
第2部
IASB において担当した
年金会計基準関連
プロジェクト
PwCあらた監査法人
三浦朱美
ご注意
本プレゼンテーションで表明される意見はプレゼンテーターの個人的見
解です。
会計に関する事項にかかるIASBの公式な立場は、基準と解釈指針に記
載されており、これらはデュー・プロセスや審議を経て決定されます。
プレゼンテーター及びその所属団体・関連団体は、本マテリアルやプレゼ
ンテーションを信頼して行為を行うか又は行為を控えることにより生じる損失
について、当該損失が過失により生じたものであれ他の原因によるものであ
れ、責任を負いません。
2
本日の内容
•
背景(派遣の概要、IASBにおける基準開発プロセスとスタッフの
役割等)
•
退職後給付に関するリサーチプロジェクト
•
IFRS解釈指針委員会(解釈指針委員会/IFRS IC)
※テクニカルな議論詳細は、www. ifrs.orgの各関連ページに掲載していますの
で、そちらをご覧ください。また、季刊「会計基準」Vol.45/2014年6月号か
らVol.52 まで、毎号、IASBでの業務報告をしていましたので、日本語での
概要等はそちらもご参照ください。
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背景 ~ 派遣の概要 、IASBにおける基
準開発プロセスとスタッフの役割等
派遣の概要
•
PwCあらた監査法人所属
•
FASF/ASBJからのIASB派遣公募選考に応募
•
2013年夏から年末まで半年間のASBJ出向
 派遣準備
 IASB理事及びIFRS IC委員サポート、アウトリーチ対応等
•
2014年1月から2015年12月まで2年間のIASB出向
 Visiting Fellow
 IAS第19号及びIFRS IC担当
5
組織構造 (IFRS財団ウェブサイトより)
6
一般的な基準開発プロセス
(IFRS財団ウェブサイトより)
7
役割・業務 –ペーパー準備、会議ディスカッション等
•
日常的には、基準や過去の議論をはじめとした文献調査・分析、
関係者からの情報収集、コメント分析、IASB内部にてスタッフや理
事等への相談・議論等を実施。
 公開ではなく非公開の会議・相談を行う場合もあるが、意思決定は公開
のIASBやIFS ICで行う。
 適宜、IFRS財団会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)、世界作成
者フォーラム(GPF)、資本市場諮問委員会(CMAC)等に諮問。
•
上記をもとに、理事や委員が検討・意思決定するためのスタッフ
分析・提案をペーパーにまとめる。
 ペーパーには調査結果のすべては書かない。ボードの意思決定に資する
ような、論点・分析・提案に関連ある情報を簡潔にわかりやすく記載。
 ペーパー提出後、会議前に追加議論・分析することもある。
•
•
会議当日、理事・委員等の出席者に対して、ペーパーに基づき、
簡潔にスタッフ分析及び提案を説明。
プロジェクトページ作成・更新。
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IASB Update/IFRIC Update
• 会議が終わるとIASBや解釈指針委員会において決定した事項をドラ
フトし、公表。(会議自体もすべてウェブで公開され傍聴可能。)
• IFRIC Updateにはアジェンダリジェクション(仮決定/最終決定)
も含まれる。IFRIC Updateで最終決定したアジェンダリジェクショ
ンの内容は基準ではないが、解釈指針委員会の考えを示すものとし
て、Green Bookにレファレンスとして付されることになる。
(解釈委員会対応業務の詳細については後述。)
10
役割・業務―バロットプロセス等
•
基準の作成・修正等を行うことについて、公開会議でデュープロ
セスの確認が終わると、公開草案公表に向けて作業開始。
 「バロット」に向けて各段階の文案を起草
 理事・委員、レビュワー等からのコメント対応・調整
 出版やプレスリリースに向けた各担当チームとの協働
 Call over(読み合わせ)
•
公開草案公表後、コメント期間を経て、コメント分析を実施。
•
公開議論を経て最終基準化することが決まると、上記に類似のプ
ロセスを実施し、最終基準を公表。
その他プレスリリース対応、ポッドキャスト録音、非公式質問・訪問
者対応、Green Bookレビュー等
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12
退職後給付に関するリサーチプロジェクト
リサーチの背景①
•
確定拠出制度と確定給付制度の中間的特性を持つ制度では、投資
リスク等の年金リスクの一部が従業員側に帰属しうるが拠出に対す
る最低リターン保証等によって企業にもリスクが残っていることが
ある。
•
企業にリスクが残っていることからIAS第19号上は確定給付制度
となる。(IAS第19号では確定拠出制度の定義を定めており、この
定義に該当しない退職後給付制度はすべて確定給付制度として取り
扱うことから、通常、確定給付制度となる。)
•
IAS第19号における確定給付制度の割引率は、リスクが企業に帰
属する伝統的な確定給付制度を前提としていることもあり、ハイブ
リッド型の制度にIAS第19号における測定原則をあてはめていくと
直感に反する結果になってしまうことがドイツ等で知られていた。
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リサーチの背景②
•
企業が数理計算上のリスクや投資リスクを負う伝統的な確定給付
制度の維持は企業にとって負担であることから、確定拠出制度等へ
の移行が、日本や英国など多くの国で増加している。
•
一方、年金に関する規制や従業員との関係で、純粋な確定拠出型
制度には移行できない企業も多い。このため、混合型の制度(リス
クを様々なかたちで労使分担する制度)も世界的に増加している。
― 日本や米国でも一般的なキャッシュバランス制度も測定の問題
があるが国債等を指標に使用していると、ドイツ等ほど「結果
への違和感」が出にくい。
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2014年12月ASAF資料抜粋①
16
2014年12月ASAF資料抜粋②
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検討の歴史
•
本論点に対応するため、解釈指針案D9「拠出または名目拠出に対
する約定収益のある従業員給付(2004年公表)」が開発されたが、
IASBにおけるIAS第19号の見直しの一部として議論されるべきと、
2006年に決定。(後述する解釈指針案D9は最終化されず。)
•
2008年公表のディスカッションペーパー「IAS第19号の修正に係
る予備的見解」では、混合型の制度も含む「拠出ベース約定」につ
いて公正価値を基礎とした測定等を提案されたが、2011年のIAS第
19号改訂にも反映されなかった。
•
その後のアジェンダコンサルテーションでは、重要だが解決困難
な問題のため、「中長期課題」のプロジェクトとして分類。
•
2012年に解釈指針委員会に対して当該問題に関連した要望が新た
に寄せられ議論が開始された。
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着任後の経緯
• 2014年1月当方着任後、IAS第19号関連のプロジェクト(解釈とリサ
ーチ)を引継ぎ。
• 当時、解釈指針委員会で「拠出又は名目拠出に対するリターンが約
定された従業員給付制度」への対応を継続議論していた。
• 2014年5月、解釈指針委員会においても、当該論点について合意形成
が困難となり、委員会での検討停止を最終決定。
• 当該最終決定において、解釈指針委員会は「IASBにおける新しいタ
イプの年金に関するリサーチプロジェクトを歓迎」する旨を記載。
(内部的にも、リサーチ作業を開始。)
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2014年5月
IFRIC Updateから引用
……The Interpretations Committee attempted to develop a solution to
improve the financial reporting for such plans. However, it was
unable to reach a consensus in identifying a suitable scope for an
amendment that would both:improve the accounting for a
sufficient population of plans such that the benefits would exceed
the costs; and limit any unintended consequences that would arise
from making an arbitrary distinction between otherwise similar
plans.(中略)the Interpretations Committee decided to remove the
project from its agenda. The Interpretations Committee notes the
importance of this issue because of the increasing use of these
plans. Consequently, the Interpretations Committee would welcome
progress on the IASB’s research project on post-employment
benefits.
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リサーチ業務概要
• リサーチ計画や論点背景等に関するペーパーを作成し、2014年9月
IASBや2014年12月ASAFにて説明・議論。
• 計画に沿って、年金数理人や会計事務所の専門家からの情報収集、
IASB内部での議論等を継続。
- 公開会議での議論時間は限られることから非公開議論を活用。
- 2015年5月、チューリッヒでの国際アクチュアリー会(IAA)総会で
プレゼンテーション。
• 2015年11月IASB公開会議、12月ASAF会議でプレゼンテーション。
- 今までの調査分析や非公式な議論等を踏まえて、中間とりまとめ
的な報告・議論。
- 今後の方向性の決定についてはアジェンダコンサルテーションを
待つ必要があるため、IASBとしての意思決定は提案せず。
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2015年11月IASB、12月ASAFでの報告内容
①グローバルな年金制度のトレンド
・各国における年金制度の状況・トレンドを、OECD・政府系機関等
の各種統計等の定量情報や、専門家(IAA関係者や各監査法人にお
ける専門家、年金数理人等)から提供された定性情報等をもとに分
析。
・典型的にはドイツなどで問題がよく知られていたが、欧州では、中
間的特徴を持つ年金制度は、伝統的な確定給付型や純粋な確定拠出
型と同様にかなり一般的に存在することがデータ上も判明。
・英国や米国、日本といった法域では、伝統的な確定給付制度(IAS
第19号が本来想定していたような、運用を含めた年金リスクのほと
んどが企業に属する制度)の閉鎖等の傾向が強く見られた。
・米国と日本では伝統的な確定給付制度からキャッシュバランスプラ
ン等に移行する企業も多い。
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2015年11月IASB、12月ASAFでの報告内容
①グローバルな年金制度のトレンド
・純粋な確定拠出制度に移行したいと考える企業は多いこともデータ
から見てとれるとともに、実際に確定拠出制度への移行も急速に進
んでいるが、やはり規制や従業員との関係等もあり、中間的制度へ
の移行を行う企業も多いという実態。
 FASBもキャッシュバランスプランの測定の問題(期間帰属の論点
を含む)を一時検討していたが、解釈指針委員会での2014年の検
討結果と同様、「解決困難」として2014年にアジェンダから除外
している。
 ただし、年金のトレンドについて、2015年に米国財務会計基準諮
問委員会(FASAC)で少し議論となったこともあり、IASBペーパ
ー15Aではこのあたりの事情も記載している。
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2015年11月IASB、12月ASAFでの報告内容
②問題に対応しうるモデルとその初期的分析
• ハイブリッド型制度の測定について識別された問題に対応しうる各
モデルをペーパーで説明・紹介。
• 概念的に望ましいであろうモデル(公正価値や、保険プロジェクト
を参考にした履行価値をベースにするモデル等)については長期解
として支持が多く、特に資産・負債間に相関のある場合は、債務計
算にリスクの影響を織り込むことでミスマッチを避けるために公正
価値(または類似のもの)を使うべきといった意見も見られた。
• 一方、モデルの複雑性やコストへの懸念は当然あり、より実務的な
解(概念的には望ましいとはいいにくいが一定の問題が解決できる
案)と等にも関心が寄せられた。
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問題に対応しうるモデル案
(2015年11月 IASB paper記載)
① 公正価値モデル(2008年DP提案に類似のモデル。制度のリスク
等を反映した公正価値で評価。)
② Customised fulfilment value(履行価値)モデル(リスクをより適
切に反映するため、割引率等に関して保険契約での提案を参考
にするモデル。)
③ D9モデル(最終化されなかった解釈指針案のモデル。)
④ Bifurcationモデル(制度を確定拠出制度的な部分とそれ以外に
分離。それ以外のオプション的な部分をブラックショールズモ
デル等で公正価値評価するモデル。)
⑤ Mirroringモデル(債務と資産が紐づいている部分は同額で測定
するモデル。)
⑥ Capped Ultimate Cost モデル(将来給付の予測に関して、割引
率でキャップをかけるモデル)
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Customised Fulfilment Valueモデル
•
保険契約にて提案された履行価値測定のモデルを活用。
 保険と年金の相違点と類似点についてはペーパーでも分析して
おり、保険での提案をそのまま導入することが想定されている
わけではない。
•
割引率にキャッシュフローの特性を反映する(資産収益に依拠す
る場合はその依拠を反映する)こと、リスクをより適切に債務金額
に反映することを通じて、より適切な債務金額が計上されると考え
られる。
•
概念フレームワークプロジェクトの議論の方向性にも整合してお
り、概念的に望ましいモデルであり、保険と年金のいくつかの類似
点を考慮すると長所も多いが、複雑性への懸念等は当然あり。
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解釈指針案D9「拠出または名目拠出に対する約定された
収益がある従業員給付」
•
最終化されなかった解釈指針案D9では、もともと以下のような会
計処理が提案されていた。
 拠出(またはキャッシュバランスプランの仮想個人勘定残高のよ
うな名目拠出)の収益に連動して給付が決定するような変動給付
は給付が依拠する資産の公正価値を参照して債務を測定する。
 固定した収益に依拠して決定するような給付は予測単位積増法を
使用して測定する。
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Capped Ultimate Cost モデル
• 資産に依拠する給付については、将来給付(キャッシュフロー)の
見積りが確定給付債務の計算に使用される割引率を超えないように
する。
 たとえば4%で資産の収益が予想されており、給付が資産に連動す
る制度の場合、割引率が2%であれば、2%で給付を予想する。
•
人工的であり、すべての問題を解決はしないとは思われるが、以
下のような長所あり。
 実務的に容易。(公正価値、履行価値といった概念的に望ましい
モデルは、より複雑かつ大規模な測定変更となる。)
 現行のIAS19上のルールを活用し、新しい人工的なルールは不要。
(D9モデルのような他の実務的なモデルは、新しいルールやスコ
ープ設定が必要。過去に、解釈指針委員会はD9モデルのスコープ
合意ができなかったため、検討停止している。)
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2015年11月IASB、12月ASAFでの報告内容
③他のIASBプロジェクト等の影響、相互関係
• 概念フレームワークプロジェクト
 概念フレームワークは各論点に直接の答えまでは出せないが、測
定基礎や負債の定義、その他包括利益の使用やリサイクリングと
いったIAS第19号に潜在的に存在する問題についての議論の基礎を
提供しうる。
• 保険プロジェクト
 保険と年金の類似点と相違点についても触れた上で、保険プロジ
ェクトにおけるモデルの議論や適用経験が、本リサーチプロジェ
クトにも貢献する可能性を示唆。
• その他、IAS第37号や割引率に係るリサーチ等との相互関係にも留意
する必要あり。
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(参考)リサーチ関連ウェブサイト
2014年9月、2015年11月IASBペーパー、議論:
http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASB-Projects/Research-postemployment-benefits-including-pensions/Pages/Discussion-andpapers-stage-1.aspx
ASAF資料、議論(2015年12月):
http://www.ifrs.org/Meetings/Pages/ASAF-meeting-December2015.aspx
ASAF資料、議論(2014年12月):
http://www.ifrs.org/Meetings/Pages/ASAF-Dec-14.aspx
プロジェクトページ:http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASBProjects/Research-post-employment-benefits-includingpensions/Pages/Home.aspx
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IFRS解釈指針委員会関連業務
解釈指針委員会対応業務
•
検討要望(サブミッション)が寄せられた場合、スタッフがまず
は提出者にコンタクトを行った上、背景把握・初期的分析を実施
•
スタッフから各国基準設定団体・規制当局、会計事務所等にアウ
トリーチ・実態調査等を行い、論点が一般的かどうかや、実務の多
様性等を把握。
•
基準等に沿ったテクニカルな分析を実施、デュープロセスハンド
ブックに沿って、分析し、対応を提案。
- 基準・解釈指針が十分なガイダンスを提供している場合や論点の影響が
広範でない、または重要でない場合等は、理由を説明した上でアジェン
ダリジェクション提案。(仮決定されるとIFRIC Update等で公開。コメ
ント期間を経て、分析後、最終化する。)
- 分析の結果、アジェンダクライテリアを満たす場合は、基準改訂(年次
改定や狭い範囲の改訂)や解釈指針の開発を提案。委員会やIASBでの公
開議論等を経て、デュープロセスが確認されると、起草開始。
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解釈指針委員会関連の担当業務―基準開発(公開草案)
•
着任当初依頼、サブミッション対応から担当した年金関連の2プ
ロジェクトに関連して、狭い範囲の年金基準(IAS 第19号、IFRIC第
14号)改訂公開草案公表(2015年6月)
•
2014年11月以降の分析から引き継いだ、税務上の不確実性に関す
るプロジェクトについて、解釈指針案を開発・公表。Uncertainty
over Income Tax Treatments (2015年10月)
⇒いずれもコメント期間は終了。
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(参考)IFRICドラフト公表
Uncertainty over Income Tax Treatments
• 別途、別の担当者による開発が進んでいた外貨換算に関する解釈指
針案と同タイミングで、2015年10月19日に公開(コメント期限2016
年1月19日)。
◦ 過去のペーパーやIC、IASBでの公開議論等の詳細:
http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASB-Projects/IAS-12Measurement-income-tax-uncertain-taxposition/Pages/Home.aspx
◦ IAS12解釈指針案リンク:http://www.ifrs.org/CurrentProjects/IASB-Projects/IAS-12-Measurement-income-taxuncertain-tax-position/Draft-Interpretation-October2015/Documents/ED_IFRIC_UncertaintyOverIncomeTaxTreat
ments.pdf
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IAS第19号/IFRIC第14号改訂公開草案(2015年6月公表)
•
2つのプロジェクトを統合:
◦ 制度改訂・縮小・清算における再測定
◦ 返還の権利の利用可能性(IFRIC第14号適用関連)
•
2015年10月19日コメント期限
プロジェクトページ:http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASBProjects/IFRIC-14-IAS-19/Pages/Home.aspx
http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASB-Projects/IAS-19Remeasurement-amendment-curtailment/Pages/Home.aspx
公開草案:http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASB-Projects/IAS19-Remeasurement-amendment-curtailment/Pages/IAS-19-IFRIC14-Exposure-Draft-and-Comment-Letters.aspx
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制度改訂・縮小・清算における再測定
• 縮小や制度改定(以下、縮小等と記載)が期中に発生した場合、過
去勤務費用等の測定のために制度改訂前後の確定給付負債(資産)
の純額の再測定を実施するようIAS第19号第99項が示唆。この際、
再測定項目と過去勤務費用を峻別する観点から基礎率(仮定)等を
更新することも第99項が説明している。
• 第99項に基づいて制度改訂、縮小又は清算時に再測定を行った場合
、それ以降の勤務費用と純利息費用について制度改訂、縮小又は清
算後の制度に使用した数値(割引率を含む基礎率や制度資産の公正
価値等)をもとに計算することを提案。
• これにより、IAS第19号第123項やBC64項等の文言どおりの会計を適
用すると、期中に清算等を行い、債務等が激減した状況でも期末ま
で勤務費用や純利息が認識されてしまうといった問題を解決。
36
制度改訂・縮小・清算における再測定
• 本改訂提案は新たな基礎率や公正価値等の情報取得を要求したり再
測定の頻度を追加したりする趣旨ではない。IAS第19号第99項の適
用を前提として、既に取得されている情報を基礎に、より有用な情
報を計算・提供してもらうための提案である。
• 制度改訂、縮小または清算時より前の勤務費用や純利息費用は、本
改訂に影響を受けない。過去勤務費用や清算損益の計算等も影響を
受けない。
• IAS第19号第57項の最後の一文や第99項をもとに、再測定は「制度
単位」で行う原則であることや、「重要性の原則」は当然に適用さ
れること等もBCに記載。
37
検討経緯
•
•
年度の途中に発生した縮小等につき、発生から年度末までの期間
の純利息・勤務費用の計算に関して、以下の質問(明確化要望)を
受領。
①
再測定による確定給付負債(資産)の純額の期中変動を純利息
の計算において反映すべきか。
②
勤務費用・純利息の計算にも基礎率を更新すべきか。
要望に対する文言通りの基準の解釈という意味ではIAS第19号第
123項やBC64項を見れば明確であり、「年度中に更新した仮定等は
年度中は勤務費用・純利息に反映せず、期首の仮定等をそのまま使
う。」ということであった。(BC64項にて、2011年改訂当時の議論
が書かれている。)
38
検討経緯
•
アウトリーチ結果によれば2011年改訂前の会計処理の多様性は大
きい一方、改訂後の多様性については解釈というよりも結論に対す
る違和感から来るものと思われた。
•
大規模な縮小等が期中に起きた場合の違和感は理解できるため、
改訂を検討すべきではと思ったものの、2011年改訂からまもないこ
とや影響は当該事象発生年度のみであること等から、「基準は十分
なガイダンスを提供している」として、5月スタッフペーパーでは
いったんアジェンダリジェクション提案としていた。
39
検討経緯
•
2015年5月委員会では委員の多くがBC64項への違和感に同意し
解釈指針委員会における改訂検討が支持された。
•
当時のIASB議論とは異なる改訂提案となりうるが、ボードメンバ
ーに個別に説明したところ、多くのボードメンバーから委員会議論
への理解が示された。(ボードメンバーのからのコメントとして解
釈指針委員会向けのスタッフペーパーで説明。)
•
2015年7月委員会で、5月委員会意見を踏まえながら、コスト・ベ
ネフィットやIAS第34号との整合性も含めて分析の上、改訂を提案
し、解釈指針委員会で決定。
•
縮小等の重要な事象が発生した場合のみならず重要な市場変動に
よる再測定をする場合も対象にする案が支持されていたが、その後
の議論で、「重要な市場変動」の論点について改訂を行うと影響が
大きくなる懸念から、改訂提案の対象外とすることを解釈指針委員
会で決定。
40
検討経緯
•
IASBでのデュープロセスの確認時、同時期に並行して検討がはじ
まったIFRIC第14号関連(下記)のプロジェクトとまとめて、ひと
つの公開草案とすることを提案。IASBで合意。
•
2プロジェクトをまとめるかたちで、「バロット」実施。
•
2015年6月に公開草案公表。
(参考)返還の権利の利用可能性
• 英国の一部の年金制度では、信託契約上の受託者が、(企業の同意
なしに一方的権限で)制度を閉鎖・清算したり加入者への給付を増
額したりできる場合がある。この場合、IFRIC第14号における「返
還の権利」(無条件の権利)が企業にあるかという論点を議論。
• 上記論点に関連して制度改訂や清算が起こったときの過去勤務費用
や清算損益、アセットシーリングの取り扱い等との関係も含めて改
訂提案。
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アジェンダリジェクションを決定した論点
•
リジェクション決定済(いずれもコメント分析後、最終化済)
 長寿スワップ(実務の多様性に乏しいこと等を理由に却下):
 http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASB-Projects/EmployeeBenefits-Longevity-swaps/Pages/Papers-and-discussion-stage1.aspx
 将来勤務に係る最低積立要件に関してのIFRIC第14号適用(基
準が十分にガイダンスを提供していることを理由に却下):
http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASB-Projects/IFRIC-4IAS-19-continuation-minimum-fundingrequirement/Pages/Discussion-and-papers-stage-1.aspx
 拠出又は名目拠出に対するリターンが約定された従業員給付制
度(解決困難なため却下。論点自体はリサーチプロジェクトで
カバー。):http://www.ifrs.org/Current-Projects/IASBProjects/Amendments-IAS-19/Pages/Amendments-IAS-19.aspx
42
ご清聴ありがとうございました
質問・コメント等あれば、お願いいたします。
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