OKIデータの商品と市場展開

OKI データの商品と市場展開
山本 勉
OKIデータ(以下、当社)は、プリンターおよびMFP
「オフィスプリント市場」は、ビジネス用途の印刷出力
(Multifunction Printer)、そしてこれら商品と関連した
端末として装置を利用する市場。
ソリューションとサービスを提供する事業を展開している。
「オフィスソリューション市場」は、各種ソリューション
本稿では、これらの商品・ソリューションの現在か
と連携しオフィスのワークフローの中で装置が利用される
ら今後に至る当社の商品戦略と、注目する市場・業種
市場。
について概説する。
「プロフェッショナル市場」は、小ロットの印刷物を自
前で作成する市場である。
当社が注力する市場は、オフィスプリント市場とオ
プリンターおよびMFPの市場環境
フィスソリューション市場が跨る領域①と、プロフェッ
世界全体のプリンター・MFPの出荷台数は、2009年
ショナル市場②である。
のリーマンショック後徐々に回復したが、2015年は対
え込みによる周辺機器の買い控え、モビリティー端末
の 浸 透 に よ る 印 刷 需 要 の 減 少 、 そ して 中 国 経 済 の 減
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速・原油価格の下落に端を発した世界経済の減速が追
い打ちをかけた。
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17
17
2.9
16
4.3
36
37
37
38
39
䝦䝒SFP
図2 当社の成長戦略
14
14
14
13
13
13
3.0
2.6
2.5
2.5
2.5
2.5
䜯䝭䞀SFP
2.7
16
15
15
15
15
15
䝦䝒MFP
15
4.9
5.5
5.1
5.9
6.4
①は、プリントボリュームも多いが、装置に求められて
いるものは、従来のプリンターやMFPとは一線を画す
市場である。
6.9
7.4
䜯䝭䞀MFP
クラウドやモバイル機器の普及により、オフィス環境
の変化、ワークスタイルの変化が起こり、プリンターや
2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
MFPに求められるものも変化してきている(図3)。
図1 全世界のプリンター・MFP の出荷台数予測
1)
印刷後に製本仕上げ機能まで備える装置や各種アプリ
ケーションを豊富に備えた重厚長大なものは敬遠され、必
要なものだけを備えたシンプル、低コスト、コンパクトで
商品戦略
簡単に操作できるものが求められている。また、クラウド
このようにプリンター・MFP販売の急な回復は期待でき
やモバイル端末と容易に接続できることが重要になってい
ないなか、当社としては以下の市場を当社の攻めるべき
る。当社の商品は、LEDヘッドの採用によりコンパクト性
市場と捉えている。プリンター・MFPの市場は、パーソナ
を特徴としているが、加えてワイヤレス対応、大型のタッ
ルな市場から産業用途の市場まで広がりを見せるが、両
チパネルをMFPやプリンターへも装備することにより、モ
者の間には「オフィスプリント市場」
「オフィスソリュー
バイル/クラウド対応を必要とするユーザーのニーズに応
ション市場」
「プロフェッショナル市場」がある(図 2)。
えられるものとなっている。また、ISV(Independent
*1)DICOM は National Electrical Manufacturers Association の商標または登録商標です。
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Software Vendor)との連携により、オフィスでのワークフ
ローを改善するソリューションも提供している。
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図3 オフィスの環境変化とプリンターに求められるもの
図5 ラベルプリンター市場規模推移
オ フィ ス に お け る プ リ ンタ ー の 配 置 も 、 複 写 機 や
M F P を セ ンタ ーマ シ ンと して 設 置 し 、 印 刷 物 を セ ン
業種向け商品とソリューション展開
ターマシンに取りに行くスタイルから、小型・低コスト
の装置を分散させ全体のコスト低減を図ると同時に使
当 社 で は 、 前 述 の オ フィ ス 市 場 に 加 え 、 デ ザイ ン、
い勝手を良くした環境が求められている。オフィス外
医療、流通業界に注力をしている。当社の調査におい
に お いて も 、 モ バ イル 端 末 か ら 簡 単 に アク セスで き、
て、これらの業界は多数の印刷用途を持ち、印刷量も
必要な書類のみをクラウド上から取り出し印刷できる
多い業種であることがわかっている(図6)。
ような環境が求められる。
当社はこのような要望に対し、モバイル/クラウド対
応したA3サイズMFPやA4サイズプリンター/MFPを組
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み合わせて配置することを提案し、お客様のトータル
⣑8,000
コスト低減に寄与している(図4)。
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図6 業種別月間印刷枚数
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これらの業種に、当社の商品力を活かした特徴ある
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ソリューションを展開している(図 7)。
デザイン市場では、色再現性・媒体対応力の高さ・
特色対応性を活かし、DTP(Desk Top Publishing)/
図4 モバイル / クラウド環境下でのプリンター配置
G A( G r a p h i c A r t )業 界 、 P O P( P o i n t o f P u r c h a s e
Advertising)業界、オンデマンドラベル業界の自前印
②プロフェッショナル市場向けには、デザイン用に利
刷を行うユーザーに販売展開している。医療業界向け
用される5色対応機や、屋外掲示用の大判プリンターを
には、薬袋などにも印刷できる媒体対応力、LEDヘッ
開発・販売している。オフィス向け市場が伸び悩むなか、
ドによる高精細印刷力を活かし、医療事務や医療ラベ
このプロフェッショナル市場は今後も伸びていくと見ら
ルの出力端末、医療用画像の印刷装置として利用され
れている。その一例であるラベルプリンター市場規模の
ている。流通業界向けとしては、当社の高濃度で光沢
推移を示したグラフを 図5に示す。
度の高い印刷の特徴を活かし、POPやバナー印刷など
当社はこの市場に対し、LEDのスケーラビリティーを
に利用されている。
活かした幅狭カラーラベルプリンターを開発し、汎用機
で培った技術を産業用途向けに展開していく計画である。
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図7 業種向け装置とソリューション
当社商品を支えるテクノロジー
特徴ある当社の商品を支えるテクノロジーを紹介する。
(1)LED ヘッド
切な方式である。一方、速度対応、
動部発熱、駆動
トルクなど、接触現像方式ゆえの課題もあり、更なる
改良の必要がある。そこで接触現像方式の摩擦低減に
当社のLEDヘッドはLEDとLEDを制御するICをエピフィ
よる低負荷化、および二成分磁気ブラシ現像方式など
ルムボンディング技術で一体化したLEDアレイを開発し
による従来と異なる現像方式も検討している。これら
採用している(図 8)。機構駆動部が無く、簡単な構造
の現像方式の開発により、現像ユニットの長寿命化と
であるため、信頼性が高く壊れにくい。レーザー方式の
省電力化が実現でき、お客様のコスト負担を低減でき
ヘッドに比べ、作像するドットは鮮明であり、基板を伸
る。また、高印字品質を長期間に亘り安定化でき、か
ばせばその幅はA4サイズからA0サイズまで印刷可能と
つ信頼性の高い製品を提供できる。
なる。解決するべき課題は、コストである。当社では、
低コストレンズや新しいボンディング方式により低コスト
トナー
現像ローラー
化を可能にしたLEDチップの開発を進めている。
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図 8 LED ヘッドの構成
(2)現像プロセス
12
感光ドラム
図9 一成分接触現像方式の概要
(3)大判プリンター用インクとヘッド
当社のLEDプリンターの現像ユニットは、一成分接
当社の大判インクジェットプリンターは、インク自
触現像方式を採用してきた(図 9)。ドラムと現像ロー
体がメディアの表面に浸透して色材を定着させる溶剤
ラーが接触することにより、解像度の高い作像を可能
系インクを採用している。低臭気で高速乾燥が可能で
とし、高精細潜像を作るLEDプリンター・MFPには適
耐候性に優れ、主に屋外掲示印刷用として利用されて
OKI テクニカルレビュー
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きた。今後は、より媒体対応力や省エネに対応したイ
ンク、小液滴化可能でより高画質印刷ができる多ノズ
ルインクヘッドの採用を検討していく。これらにより、
媒体対応力・コストパフォーマンス・環境対応といっ
た多様なサイン・グラフィックス業界のニーズに対応
することができる。
(4)生産における仮想インライン化システム
当社の生産は、部材生産から装置組み立てまで、国
を跨いだ生産活動を行っている。必然的に生産拠点間
を繋ぐ情報の共有化が求められる。生産部門ではこれ
らの各拠点の生産プロセスを、一つの工場として見な
して 仮想インライン化 することにより、生産の仕掛
り状況の把握や製品のトレーサビリティーを行っている。
このシステムにより、生産リードタイムの短縮、棚卸
の 削 減 を 図 って い る 。 こ の システム を 部 材 サ プ ラ イ
ヤーのデータから、出荷後のフィールド情報を繋ぐこ
とにより、製品の品質向上を図る計画である。
あとがき
これまで示したように、当社ではLEDの持つ特徴を
活かして、信頼性が高く、高印字品質の製品を、お客
様のニーズに沿ったアプリケーション、ソリューショ
ンとともに提供し続けていく。
本号では各業種向けの具体的なソリューションを中心
に紹介している。当社のプリンティングソリューション
について御理解・御興味をいただければ幸いである。
1)IDC WW HCP Tracker_ForecastPivot_2015Q4_OKI
(2012年−2015年:実績/2016年−2020年:予測)
山本勉 : Tsutomu Yamamoto. 株式会社沖データ 商品
事業本部 事業本部長
エピフィルムボンディング
薄膜化した半導体材料を、薄膜化した材料とは異なる
材料の上に、常温で、接着剤を使わずに独自のナノ製造
技術を用いて材料間の分子間力により異なる材料を接合
する技術
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