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京都大学美術部
2012年度入学部員
卒業展覧会
「あとのまつり」
目録
「京大美術部卒展
あとのまつり」は2012年度入学の部員による卒展です。
私たちは一見温厚そうで、それでいてなかなかに癖の強い人間が多く集まった代でしたが、
皆様のおかげでなんとか4年目を迎えることができました。
今回の卒展にはそんな当代部員のこれまでの活動の総括として、
初々しかった入部当初から技術の熟達を感じる最近の作品まで、数多くの作品が揃いました。
4年もいると互いの人間性も知れたものですが、
今更ながら意外な一面に気づいて驚かされたりすることもしばしば。
タイトルを交換し合って作品内容はお任せ、という実験的な合作もお楽しみに。
私たちの4年間の軌跡をご覧ください。
掲載順・展示順
井上篤生 上田樹美 越智朋子 木田智子
北林綾子 倉田康平 古石直輝 下原直緒
冨永雄介 西田朋子 福岡和也
(アイウエオ順)
井上篤生
1「Trillion」2012年秋
上田樹美
新人展
6「インコ」2013年
通年
ミリペン、水彩色鉛筆、画用紙
ミクストメディア
おそるべきトリリオン社製の戦車・戦艦の行進。
小型より中~大型インコが好き。
生産効率追求のため主要部以外はスカスカです。
一年間同じタイトルで連作、楽しく制作できました。
並べて飾る機会があって嬉しいです。
2「アトラヘンディ上下空」
2013年秋
京都市立芸術大学・京都大学合同展
7「タイムマシン」2014年春
春展
ミリペン、水彩色鉛筆、イラストレーションボード
(合作:テーマ交換)
重力遮蔽機構搭載の船が重力乱流の空をなめらかに飛行
ミクストメディア
します。
もっと上手に、あの頃に戻れたら。
3「川端の道」2014年秋 秋展
8「ふつう」2014年夏
クレパス、キャンバスボード
ミクストメディア
京都鴨川の納涼床のある風景
多くの人に安心感を与えるそれは、私から安心感を奪っ
京都八大学合同展覧会~響彩~
た。
4「Citrus Girl」2015年秋
秋展
ミリペン、水彩色鉛筆、イラストレーションボード
9「いま」2016年春
柑橘市の朝。新作みかんの試食、晩白柚コンテストなど
イベントカラー
イベントもたくさんあります。
良し悪しなんて知ったものか
5「創作おりがみの作品群」2012~2014年
紙、和紙
すべて一枚の紙から切らずに折っています。
また設計からオリジナルです。
新作
越智朋子
10「踊り子」2012年秋
木田智子
新人展
19「ゆめのみち」
アクリル
2013年秋 京都市立芸術大学・京都大学合同展
絵本の1ページのような絵にしたくて描きました。アクリ
キャンバス、油彩
ル初挑戦でした。
草陰に青春があります。
11「小屋」2013年秋
20「色縛」2014年秋 NF展
NF展
アクリル
キャンバス、アクリル
写真を元に、風景の練習として細部まで似せることにこ
家具を引き払ったマンションの一室で、寝袋と画材だけ
だわりました。色選びや空気感の理解が深まった一枚で
を残し3日間引きこもって描いた、執念と青臭さの1枚。
す。
21「夜想」2014年冬 冬展
12「卒業」2014年春
春展
キャンバス、アクリル
アクリル
夜はこわいものじゃない
テーマが「卒業」の合作でした。
(出展予定だったが搬入前夜に胃腸炎にかかり断念。)
13「上高地」2016年春
22「Space Barbie」2016年春
新作
アクリル
アクリル・段ボール
旅行で行った上高地の景色がとても美しかったです。大
But if a beautiful,
きいサイズに苦戦しました。
北林綾子
14「とりで」2012年秋 新人展
透明水彩
15「透明な夢に眠る」2014年夏 夏展
透明水彩
16「flowers in full gloom」
2014年夏 京都八大学合同展覧会~響彩~
透明水彩
17「Kafka on the Shelf」2015年春 ルネ展
透明水彩
18「朝が来ない窓辺」
2015年夏 京都八大学合同展~煌彩~
透明水彩
新作
倉田康平
23「夏の夜」2012年夏
26「バタフライエフェクト」2014年秋
NF展
キャンバス、アクリル、油彩、クラックルペースト
夏展
画用紙、不透明水彩
現役回生の最後にもう二度と描けないような作品を記念
夏展に出展した絵。大学に入って初めての展覧会だった
に作りたいとの思いから2014年の学祭に出展した。
ので、かなり気合を入れて描いていたと思う。
キャンバス上のひび割れはクラックルペーストを用いた
同時に出展した<meme>がイメージ優先なのに対して
24「自由の刑に処されて」2013年秋
NF展
こちらはマチエールにこだわった。前述したクラックメ
壁紙、アクリル
ディウムや水溶性の油絵を用いたドリッピングにより、
これまでで最大のサイズの作品であり、4年間で最も制作
作品中に制御不能な要素を取り込むことで、再現不可能
に苦労した作品。「自由」そのものをテーマに、大枠を
で予測もつかない(ある程度は意図的だが)効果を生もう
決めたうえで下描きなしで描いたため作業中に大幅な変
とした。
更を加えることも多く、衝動的な落書きから作品として
提示できるレベルにまとめるのに大変苦心した。制作を
27「DAWN」2015年秋
通じて、身をもって実存的恐怖を体験したと言える。
キャンバス、アクリル
京都日本画フェスタ2015
部外の展覧会に出展した作品。「日本画」と名を関した
25「meme 」2014年秋
NF展
展覧会ではあったものの出展条件が「油彩以外」だった
キャンバス、アクリル
のでアクリル絵の具を用いた。画材の特性を意識し、ア
ミーム(meme)とは「文化的な遺伝の単位(Dawkins, 1982)」
クリルの強みを探りながら描いた。薄塗も厚塗りもドリ
「記憶のアイテムで、生物個体の神経系に保存されてい
ッピングもできる自由自在な画材、その潜在能力をとこ
る情報の一部(Lynch, 1998)」。現代日本のサブカルチャ
とんアピールした(つもり)。奇しくも琳派で盛り上がっ
ー、アートの世界をも席巻する制服姿の女子高生(JK)の
た年だったので、金箔の障壁画へのオマージュとして多
遺伝子を力強い龍のイメージと共に描いた。便利なアイ
量の金色のアクリル塗料をふんだんに用いた。カラーバ
コンとして他の作品にも制服の少女を頻繁に登場させて
リエーションの豊富さや、コストパフォーマンスがアク
きたが、結局ゼロ年代におけるアートの問題をおこがま
リル絵の具の強みであろう。
しくも個人の問題として焼き直し、借り物の解答を提示
しただけの空虚な試みでもあり、安直すぎたとは思う。
若者が(時には大人が)そういう系統の絵を描くようにな
ったことはインターネットの出現、それに伴う人々の意
識の変化、日本の経済状況の変化等々と切り離して考え
ることはできないであろうが、人間には本来少女的なも
のに魅かれる素質が備わっており、少女のミームは変化
しながら様々な時代で発現するのではなかろうかという
ことを考えていた。万人が認める価値の最大公約数とな
った非実在のセーラー服の少女は現代日本の偶像であ
る。
古石直輝
28「異国情緒」2012年秋
31「art of anatomy」2014年秋 NF展
新人展
透明水彩
貼り絵
「骨は自然による彫刻である」
「タージ・マハルはムガル帝国5代皇帝シャー・ジャハー
振り返り…この頃デッサンを習っていたので、デッサン
ンが王妃ムムターズ・マハルのために建設した墓です。
の技術を水彩に応用することを意識して制作しました。
建設期間22年といわれ、その壮大な歴史に思いを馳せな
がら制作しました。制作期間約1ヶ月。1回生の長い長い
32「オルキヌス・オルカ」2014年夏 夏展
夏休みを利用しました。」
アクリル
振り返り…大学に入るまで美術経験がほとんど無かった
「Orcinus orca=冥界の魔物(シャチの学名)
ので、何作ればええんやろ…と考えた結果、中学校で習
海の何処かにあの世の入り口があるのかもしれません。」
った貼り絵にしようと思い立ち作りました。大学1年の長
振り返り…これは「絵空事」というか、自分の好きなモ
い長い夏休みを利用しました。
チーフである海と骨を組み合わせて、自分の中のイメー
ジを表現するということをやってみた作品です。基本的
29「Never think of a polar bear」2013年春 ルネ展
に現実に存在するものを描いてきたので、こういう絵ら
アクリル
しい表現が逆に新鮮でした。
「あなたは頭の中からシロクマを追い出すことができま
すか?」
33「face 2016」2016年春 新作
振り返り…1回生の頃絵といえばやっぱり油絵!と油絵
木炭
を始めてみたのですが、うまく扱えず苦労していたとこ
4年の最後に相応しいモチーフは何だ?悩みに悩んだ結
ろ先輩たちの作品を見てアクリル絵の具と出会いまし
果、自画像を描くことにしました。絵という表現は自己
た。存在すら知らなかったアクリル絵の具でしたが、非
を見つめる一つのアプローチであると私は考えます。4
常に自由度が高くて感動したのを覚えています。作品は
年間自分を映した姿見の前で。
心理学用語から着想を得ました。
30「おふらんす」2013年夏 夏展
透明水彩
「憧れの場所」
振り返り…透明水彩の表現に憧れ、モン・サン・ミシェ
ルを描いてみました。隣のシロクマの絵もそうなのです
が初めて使う画材をぶっつけで作品に使ってしまってい
るので、理想ばかりが大きくなった結果、表現の稚拙さ
が見られます。でもその勢いも大事だと今は思います。
フランスはいつか行ってみたいと機会をうかがっている
のですが、まだ当分先になりそうです。
下原奈緒
34「誘い」2013年春
冨永雄介
春展
38「夕暮れの輝き
鴨川にて」2012年秋
NF展
水彩
キャンバス、油彩
美術部に入って初めて真剣に仕上げた作品です。とにか
夕暮れ時の鴨川がとてもきれいだったので描きました。
く描きたいものを描きました。
自分は美しいと思ったものに向き合いたくて絵を描いて
きた気がします。
35「未踏」2014年秋
NF展
水彩
39「Undine」2013年夏
水平線の向こう側について考えながら描きました。
キャンバス、油彩
夏展
動きのある人物を描いてみようとチャレンジした作品で
36「紫煙」2016年春
新作
す。
アクリルガッシュ
Undineは水の精霊ということで、湿っぽい空気感を感じ
シンプルな構図が好きです。
てほしいです。
37「紅楼」2016年春
40「月を見る」2014年夏
新作
夏展
アクリルガッシュ
キャンバス、油彩
これまでは輪郭線をはっきり描くのが好きだったのです
同じ物を見て、同じことを感じられたらいいなあ。
が、今回は違う描き方に挑戦してみました。
今までは描きながら自分の絵の意味を考えることが多か
ったのですが、この作品ではこんなテーマが先に心の中
にあり、それを絵にしました。
41「蓮」2014年秋
秋展
キャンバス、油彩
勢いのままに短時間で一気に描いてしまいました。あえ
て粗めに塗るということを試してみた作品です。
まだまだ試してみたい塗り方や表現もあります。なので、
これからも絵を描き続けたいです。
42「切り絵集―They were born―」
左上
2013年
春展
右上
左下
2016年
卒展新作
2013年
右下
夏展
2016年
卒展新作
黒い紙、和紙
切り絵らしい力強くて鋭い線によって生物を描こうとし
ました。繰り返し続いていく命、というのがテーマです。
西田朋子
福岡和也
43「宗谷」2012年秋
新人展
48「おもかげ」2013年
春展
画用紙、パステル
ペン
日本最北の夏の海です。夏だけど暑くなく、最北端だけ
白黒でパッキリと描きすすめるのが気持ち良い。引いた
ど寒くなく、ただ海が目の前に広がっている、さっぱり
瞬間、とたんにその線が、激しく自分を主張し始めます。
と感傷に浸れるいい場所でした。
水性ペンの楽しさを覚えました。
44「習作」2014年春
49「わが寮
春展
another」2013年
NF展
イラストレーションボード、ペン
ペン
合作のシャッフルテーマが「虫」でした。標本っぽいの
入寮当初は喘息が治らず「俺は不治の病になったんじゃ
を一回描いてみたかったので絵図鑑を模写しました。芋
ないか」と思いましたが、案外慣れるものです。でも毎
虫の足の数とか毛の生え方とか描き馴れました。ひたす
日寝泊まりするには、いろいろと濃厚すぎる空間かもし
ら模写し続けるのが楽しかったです。
れません。そんな、楽園。
45「指輪島」2014年秋
50「春は好きですか」2014年
NF展
春展
キャンバス、油絵
ペン
パウルクレーの「島」という抽象画を見てワクワクする
春は否応なく突然やってきて、慌ただしくなるものです。
ような、安堵するような不思議な感動を覚えました。ま
あーあ、今年もまたこの時期が来たか、さて…という所
た、同じ頃「THE RINGS—橋本コレクション 指輪—」と
です。
いう指輪の展覧会で指輪の綺麗さ、細かさ、独創性に魅
了されました。そこで、「島」のようにきらめく指輪た
51「わが寮 3rd」2016年春
新作
ちを配置すればワクワクするんじゃないかなんて安易に
ペン
考えて描きました。
早いもので「ひっそりと」この寮に4年暮らしています。
快適に毎日をすごせる立ち回り方というのが、少しわか
46「海」2015年秋
秋展
ってきたつもりです。
キャンバス、アクリル
卒展に出展していないものを含め4年間で3作品海を描い
52「Recollection」2012年~2015年
ていました。海を見る機会があるたびに描きたくなりま
コピー
す。内陸民のあこがれなのかもしれません。今後海をも
部屋を漁ると色々出てきましたが、こう振り返ると、僕
っとじっくり見て描く機会があればなぁと思います。
ってあまり一貫性がありませんね。でも、その場その場
に応じて自分の色を出していければと、いつも思ってま
47「おきにいりの風景」2016年春
新作
イラストレーションボード、アクリル
住宅街って、日中は人住んでいるんだろうかってほど閑
散としてますが、夕暮どきに遠くから眺めると不思議と
暖かで息づいてるような感じがするような気がします。
す。
卒展合作
58越智朋子
53井上篤生
「表と裏」
「床下の正午」
(タイトル
(タイトル
版木、アクリル絵具、でんぷんのり
有村奈津子)
画用紙、ミリペン、水彩色鉛筆
倉田康平)
表と裏、どちらの寝相がお好きですか?
お昼頃は重力が弱まるため水面が空より高く、比較的穏
やかでしょう。(宇宙天気予報)
59下原奈緒
「ぜんまい仕掛け」
54北林綾子
(タイトル
「星界の報告」
アクリルガッシュ
(タイトル
合作のお題は「ぜんまい仕掛け」でした。
井上篤生)
越智朋子)
水彩
60福岡和也
55上田樹美
「ほくろ」
「桃源郷」
(タイトル
(タイトル
北林綾子)
顔彩、プラ板
56西田朋子
「飛沫」
上田樹美)
イラストレーションボード、アクリル
不可避。楽しむべし。
気をつけたって多少は汚れるので少し楽しんでいます。
57倉田康平
「海風」
(タイトル
アクリル
ひとまずお題に答えました
ああどうして、どうして見つからないんだ!
(タイトル
下原直緒)
西田朋子)
キャンバスペーパー、アクリル
サークルの人々で海に行った。これまでの超現実的な絵
と打って変わって、引退後は日常の風景を描くことが多
かったように思う。あと2年大学に残ることにはなった
が、今後どんな絵を描くのか、そもそも絵を描き続ける
のか、答えは風の中である。