「DMメディア実態調査2015」報告 椎名 昌彦

DM
REPORT
2016-No.2
「DMメディア実態調査2015」報告
椎名
昌彦
2012 年からの定点調査として 4 年目の今回は、消費者の DM メディアに対する意識、DM
の受取と行動の実態を把握することを目的に、受取 DM 全件を記録する手法で 2015 年 12 月
に実施された。調査結果からは、実際の DM の内容や、開封・閲読状況、行動喚起の実態な
どの他、
2014 年の個人情報流出事件後の DM の受取や受容性の変化を把握することができた。
■調査概要
1. 調査目的
DM メディアについての接触状況や意識・評価、ならびにその後の行動・効果をアンケート
により把握するとともに 、一定期間内における DM の受取・開封状況を全件モニタリングに
よって、DM による行動喚起の実態についても定量的に把握することを目的とする。
2. 調査項目
◆DM の定義 : 封書、ハガキ、情報誌・カタログ、同梱パンフレット
① DM メディア 接触・到達状況(受取通数/開封・閲読数)
② 情報メディアとしての意識やイメージ
③ 広告・情報メディアとしての評価(情報源、決定要因・行動喚起実態、要因など)
3. 調査フレーム
□ 調査エリア : 関東エリア 1 都 6 県(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬)
□ 対象者 : 20~59 歳 男女
□ サンプル数 : 事前調査 7,624 サンプル、日記調査回収数 216 サンプル
□ 利用モニター :
株式会社 マクロミルが保有するインターネット調査モニター
□ 調査手法 : インターネット調査
□ 調査期間: 【事前調査】2015 年 12 月 1 日(火)~2015 年 12 月 4 日(金)
【本調査】2015 年 12 月 5 日(土)~12 月 21 日(月)
□ 実施機関: 株式会社 マクロミル
4、調査項目一覧
事前調査では対象者の DM に対しての意識、日記式調査では調査期間内に受領した DM の
実態を聴取する。
分析の視点としては、事前調査では対象者属性による DM 意識、日記調査では受領した DM
の実態を把握することを目的とする。
これにより、DM メディアの持つポテンシャルと実態の両面を把握することを目的とする。
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DM
事前調査
設問形式
REPORT
日記調査
2016-No.2
設問形式
SQ6 1週間のDM受取通数(本人)
SA
問1 一人あたりの1週平均「ダイレクトメール」受取通数
FA
SQ7 1週間のDM受取通数(ご自宅合計)
SA
問3 DMの宛先
SA
SQ8 開封・閲読する情報内容(購入・利用経験あり)
MA
問6 DM閲読状況
SA
SQ9 受け取り経験のない差出人からのDM閲読状況
SA
問6 本人宛のDM閲読状況
SA
SQ10 開封・閲読する情報内容(購入・利用経験なし)
MA
問4 DMの送付方法
SA
SQ11 DMに希望する情報内容
MA
問4 本人宛のDMの送付方法
SA
SQ13 DMによる情報を希望する業界・サービス分野
MA
問5 DMのタイプ・形態
SA
SQ12 開封・閲読する業界・サービス分野
MA
問5 本人宛のDMのタイプ・形態
SA
問7 本人宛のDM送付元の業種
SA
問8 本人宛のDM案内内容
MA
問12 DM印象・評価
SA
問9 DM閲読後の行動
MA
問9 本人宛のDM閲読後の行動
MA
問10 本人宛のDM閲読後の行動理由
MA
問13 閲読後のDMの扱い
SA
問13 本人宛の閲読後のDMの扱い
SA
問14 タイプ別DMの受容度
SA
問15 メディアアクセスDMの受け取り有無
SA
■調査結果の要約
1、DM 受取の実態【日記式実態調査による DM 関与】 ※カッコ内右の数字は前年調査
●今回調査期間での実態としての本人宛 DM の受取通数は 1 週間平均 6.6 通(5.8 通)
。
男性平均 6.4 通(5.8 通)に対し女性平均は 6.9 通(5.7 通)ともに前年比で1割以上増加
となった。個人情報流出事件の影響からの回復の可能性がうかがえる。
また、高年収層程受取通数は多く、年収 900 万円以上層では 8.0 通(8.9 通)と、平均を
2 割程度上回っている。
●宛先は、自分 54.0%(55.7%)
、配偶者 16.0%(16.4%)
、子供 8.4%(5.9%)
、その他家族
11.4%(13.5%)
、無宛名 10.2%(8.5%)
。
●受取 DM のタイプは、はがき 42.0%(45.2%)
、封書 25.9%(24.3%)、大型の封書 15.8%
(14.3%)
、A4 サイズはがき 10.4%(10.1%)
、の順。
●DM の送付方法では、「郵便」が約 5 割で突出している。次いで高いのは「広告郵便」「ゆ
うメール」と続くが 1 割台にとどまる。
差出人業種別でみると、「郵便」の割合が高いのが、クレジットカード関連、郵便局・銀行
関連で 7 割を超えるスコアであった。メガネ・コンタクトレンズも 7 割近い。
「広告郵便」では、食料品メーカー・食品店関係、衣料品・アクセサリー・時計、家電量販
店が 2 割台と高くなっている。
●対象 2,647 通の内、自分宛、家族宛含めて開封・閲読されたのは 59.7%(62.2%)。
自分宛の DM(1,429 通)については 80.9%(78.7%)と高い閲読率となった。
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【DM の開封・閲読率】
●自分宛受取 DM の内容は
・
「新商品・サービスの案内」33.9%(29.6%)
・
「特売・セール・キャンペーンの案内」24.8%(21.5%)
・
「商品・サービスの利用明細・請求書」13.7%(15.1%)
がトップ 3。
●WEB に誘導するタイプの DM(QR コードや AR など)について
WEB アクセス型の DM について、今回から調査対象としたが、受取経験率は全体ベース
で 54.7%、実際に QR コード等を利用して WEB にアクセスした人は 30.1%となった。
受取経験率、アクセス率ともに男性層が高いスコアとなっており、男性 20 代~40 代では
受取経験率 70%前後、アクセス率 40%前後と、セグメントによっては「DM⇒WEB」
誘導が実際に一般的になりつつある傾向が見られる。
●DM と E メールの受取状況
一人あたり1週間の受取通数は、DM が 6.6 通に対してEメールは 65.6 通と、DM の約 10
倍となっており、時系列的に見てもこの 3 年はほぼ同様の傾向となっている。
2、DM が提供する情報に対する意識
※カッコ内右の数字は前年調査
●DM に希望する情報内容としては、「クーポンの案内・プレゼント」44.9%(54.2%)
、
「特
売・セール・キャンペーンの案内」41.7%(50.9%)、「試供品の案内・プレゼント」39.8%
(49.5%)といったお得情報が 4 割前後と上位を占めている。
属性別にみると、上記のようなお得情報に関するニーズは男性に比べ女性の方が高い。
●DM による情報を希望する業界やサービス分野
「食料品メーカー・食料品店関係」26.4%、
「デパートなど流通関係」24.1%、
「家電量販店」
「衣料品・アクセサリー・時計関係」23.1%、
「郵便局・銀行関係」
「旅行・ホテル・旅行代
理店関連」
「クレジットカード関連」22.2%、
「通信販売メーカー」21.3%などのスコアが高
くなっている。
属性別に見ると、男性では「家電量販店」31.8%、
「旅行・ホテル・旅行代理店関連」25.5%、
「自動車関係」24.5%が高く、女性では 「食料品メーカー・食料品店関係」32.1%、
「デパ
ートなど流通関係」31.1%、
「衣料品・アクセサリー・時計関係」28.3%、
「通信販売メーカ
ー」26.4%等のニーズが高くなっている。
●開封・閲読する情報内容
「購入・利用経験あり」先の DM では「役所などからの案内」70.8%(72.7%)、
「利用明
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細・請求書 64.8(68.1%)
、
「保険などの更新・見直しの案内」38.9(42.1%)など実際の取
引関連や公的なもののスコアが高く、
「特売・セール・キャンペーン案内」46.8%(56.9%)
、
「クーポンの案内・プレゼント」46.8%(53.2%)、
「カタログや情報誌の送付」43.1%(49.1%)、
「新商品・サービスの案内」39.4%(41.7%)、
「試供品の案内・プレゼント」38.0%(44.9%)
などの具体的メリットのあるものがこれに続く。
これに対し、
「購入・利用経験なし」先からの DM では「クーポンの案内・プレゼント」53.8%
(44.0%)、
「新商品・サービスの案内」48.7%(44.0%)、
「試供品の案内・プレゼント」43.6%
(39.4%)、が「経験あり」層よりもスコアが高く、「特売・セール・キャンペーンの案内」
43.1%(45.8%)も加えて新規顧客から反応を引き出すためには、具体的メリットをわかり
やすく提示することの重要性がうかがえる。
3、本人宛 DM の「行動喚起率」は受け取った人の 19.0%(前回 12.7%)
※カッコ内右の数字は前年調査
●DM による行動喚起として、
「話題にした」
「インターネットで調べた」「来店した」といった
行動をとった比率は閲読者の 23.5%(前回 16.2%)。 受取 DM 総数に対しては 19.0%
(12.7%)となった。
DM から口コミ、DM からネット検索といったクロスメディア効果も確認でき、結果として
来店行動喚起への貢献もうかがえる。 前々回調査の 11.3%と合わせて、受取った DM の行
動喚起効果 11%~19%の幅で継続的に確認することができた。
●今まで捕捉できなかった行動喚起効果
この調査で注目したいのは、従来 DM の「レスポンス」として捕捉されていた、 具体的な
資料請求や購買行動に加えて、
「話題にした」
「インターネットで 調べた」
「来店した」など
の行動まで引き起こしていたことで、その 割合は DM 閲読者の 23.5%(16.2%)に達して
いる。
つまり、今まで DM の効果とされていた「レスポンス率」と比べて、数倍の間接的効果が
見込めると確認できたことになり、この調査の大きな収穫のひとつと言える。
【DM を受取った後どんな行動をとったか】
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●DM のクロスメディア効果が確認できた
DM から派生する行動の種類もクチコミやサイトアクセス、リアル店舗への来店など、様々
な経路を経ており、クロスメディアの起点としての役割も確認できた。
今回特に目立ったのは、
「ネットで調べた」の 9.7%(閲読者ベース)で、今や WEB 誘導が
DM 効果の大きな役割を担っている状況が見て取れる。
●若年層に強い DM
年齢層別に見た行動喚起率は、男性 20 代 52.3%、女性 20 代 50.5%、女性 30 代 49.6%と
平均の 2 倍以上のスコアとなり、DM が若年層に高い効果を持つことを示している。
●DM 閲読後の行動理由は、「興味のある内容だったから」50.7%(49.1%)、「ちょうど良
いタイミングだったから」32.7%(33.1%)が高スコアとなっている。次いで「クーポンな
どの特典があったから」22.1%(14.9%)、
「書いてある内容に魅かれたから」21.0%(14.3%)、
「割引特典に魅かれたから」18.4%(19.4%)、となった。
属性別にみると、行動率の高い男性 20 代では「クーポンなどの特典があったから」47.4%、
「割引特典に魅かれたから」26.3%、などが上位にあがっている。
●閲読後の DM は、47.8%(44.3%)が保管、友人や家族に渡すのが 4.4%(5.8%)、破
棄が 47.8%(50.1%)。
4、
「どこから来た DM か」が重要:受取意向は顧客 DM77.3%に対し「名簿」DM は 14.3%
※カッコ内右の数字は前年調査
●DM リストの受容性は「顧客」>「紹介」>「名簿」>「無宛名」
DM リストのタイプ別に、「顧客」「会員システムからの紹介(代行リスト)」「取引なし
先(名簿リスト)」「無宛名」の4つについて「DM 受取意向」を 5 段階評価で比較したとこ
ろ、「受取りたい」「まあ受取ってもよい」の合計で、「顧客」が 77.3%(81.0%)だった
のに対し、会員紹介は 49.0%(47.2%)、取引関係のない相手からの DM は 14.3%(11.6%)、
無宛名は 9.3%(7.9%)と、差出し者との関係性によって非常に大きな差が示された。
逆に「受取りたくない」「あまり受取りたくない」の合計は顧客では 10.2%(8.8%)に対し、
取引なし先では 66.7%(68.0%)、無宛名では 72.7%(72.3%)と非常に低い受容性を示し
ている。
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【最後に】
今回の調査「DM メディア実態調査 2015」及び「DM メディア実態調査 2014」「DM メディ
ア実態調査 2013」
「DM メディア実態調査 2012」については協会ホームページの「DM 資料
館」>「調査統計資料」にて要約版及び完全版(協会会員のみ)を閲覧いただけます。詳細に
ついてはこちらもぜひご参照ください。
椎名 昌彦
(一社)日本ダイレクトメール協会
専務理事
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