席に着く

じ
う
と
う
じ
ゅ
ん
慈雨等潤
城東小学校 校長だより 第 11 号 平成 28 年 5 月 23 日
【席に着きなさい】
子どもたちの学習の様子を見ようと、1年生の教室に行きました。わたしに気づいた1
年生の子どもたちは
「あ、校長先生だ」
「校長先生、おはようございます」
と声をあげます。心優しい担任の湊先生は、
「校長先生が来られました。今、挨拶の仕方を勉強したね。校長先生にどんな挨拶をした
らいいでしょう。みなさん、立ってご挨拶をしましょう」
と、子どもたちを促してくださいます。
「校長先生、おはようございます!」
子どもたちの元気な声。わたしも挨拶を返します。
「おはようございます。みんな上手に挨拶ができました。しっかり勉強しましょうね」
学習を中断させてしまったことに恐縮しつつ、子どもたちの気持ちを切り替えさせ、学
習に戻してやらなければならないと考えたわたしは、子どもたちに言いました。
「さあ、席に着くよ。パッと席に着きなさい」
わたしの指示に従って、子どもたちはさっと席に着く。…という展開を予想していたの
ですが、豈図らんや、子どもたちの動きが鈍い。席に着こうと動き出したのは、ほんの数
名。ほとんどの子どもたちが立ったままなのです。どうしたことだ。わたしは気をとり直
し、もう一度、子どもたちを促します。
「先生が“パッ”と言ったら、席に着くんだぞ。さん、はい“パッ!”」
同じです。席に着こうとはしない。なぜだ。なぜ、わたしの言うことが聞けないんだ。
わたしがイラッとしそうになったとき、湊先生が優しく子どもたちに語りかけます。
「椅子に座りましょう」
パッと席に着く子どもたち。え、なぜ?
どうして…?
あ、そうか!
1年生の子ど
もたちにとっては「椅子に座る」が日常使う言葉であり、馴染みの薄い「席に着く」とい
う言葉の意味がすぐには分からなかったのです。どんなに素直な子どもたちであっても、
意味の分からない指示には従いようがありません。子どもに分かる言葉を!
反省です。
湊先生の顔をにこやかに見つめる1年生の子どもたち。この子どもたちがやがて「席に
着く」という言葉の意味を知り「着席」という言葉を使えるようになっていくのですね。