株式報酬に係る 2016 年度税制改正

Japan Tax Update
株式報酬に係る 2016 年度税制改正
Issue 121, May 2016
In brief
2016 年度(平成 28 年度)の税制改正により、内国法人が個人から受ける役務提供の対価として譲渡制限付
株式を交付した場合の法人税法ならびに所得税法上の取扱いが新たに規定されました。改正法人税法で
は、内国法人が個人から受ける役務提供の対価として、当該内国法人又は当該内国法人の 100%親法人の
譲渡制限付株式を交付したときは、被付与者において給与等課税事由が生じた日に、内国法人が役務提供
を受けたものとして役務提供の対価に係る費用を損金算入することが認められます。そして、株主総会の決
議等一定の要件を経て譲渡制限付株式が役員給与として交付されるときは、事前確定届出が不要の役員給
与として損金算入が認められることとされました。
被付与者においては、譲渡制限付株式についての制限が解除された日における価額をもって収入として申
告することとされます。
上記の取扱いは、2016 年 4 月 1 日以後に交付が決議される譲渡制限付株式について適用されますので、3
月決算法人で役員報酬として交付を検討される場合には、株主総会のスケジュールを見込んで、適用の要
件や手続等の確認を行うことが必要になると思われます。
In detail
1.
役務提供の対価として譲渡制限付株式等が交付された場合の法人税法上の取扱い
内国法人が個人から受ける役務提供の対価として、「特定譲渡制限付株式等」(下記の要件を満たす譲渡制
限付株式等)を交付したときは、被付与者において給与等課税事由が生じた日に、内国法人が役務提供を
受けたものとされます(法法 54①)。
なお、被付与者において給与等課税事由が生じないときは、内国法人の当該役務の提供を受けたことによる
費用の額又は当該役務の全部若しくは一部の提供を受けられなかつたことによる損失の額は、当該内国法
人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません(法法 54②)。
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特定譲渡制限付株式等(注)
発行法人(法令 111 の
2①)
譲渡制限等(法令 111
の 2②)
交付の効果(法法 54
①)
給与等課税事由(法令 111
の 2④)
損金算入金額(法令 111 の
2⑤)
申告要件等(法法 54③)
個人から役務提供を受ける法人又は当該法人の 100%親法人(交付の時から譲渡制
限期間終了の時まで 100%の資本関係が見込まれていること)
 譲渡(担保権の設定その他の処分を含む)について制限がされており、かつ、譲渡
制限期間が設けられている
 個人が譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと等、譲渡制限付株式の
発行法人が譲渡制限付株式を無償で取得することとなる事由が定められていること
役務の提供の対価として個人に生ずる報酬債権の給付と引換えに当該個人に交付さ
れるものその他当該個人に給付されることに伴つて報酬債権が消滅するもの
所得税法に規定する給与所得、事業所得、退職所得及び雑所得の課税が生じること
特定譲渡制限付株式等の交付につき給付され、又は消滅した債権の額に相当する金
額
特定譲渡制限付株式等の一株当たりの交付の時の価額、交付数、その事業年度に
おいて譲渡についての制限が解除された数その他当該特定譲渡制限付株式等の状
況に関する明細書を当該事業年度の確定申告書に添付
(注)内国法人を合併法人とする合併により、当該合併に係る被合併法人の特定譲渡制限付株式を有する者に対し交
付される当該内国法人の譲渡制限付株式その他の政令で定める譲渡制限付株式を含みます。
2.
役員給与として特定譲渡制限付株式等が交付される場合
内国法人が支給する役員給与で損金算入が認められるのは、退職給与、新株予約権を対価とする給与、使
用人兼務役員に対する使用人分の給与の他は、法人税法 34 条 1 項に定める、①定期同額給与、②事前
確定届出給与、③利益連動給与のいずれかに限られています。役員給与として特定譲渡制限付株式等が
交付される場合は、交付決議等の一定の要件を満たす限りにおいて、事前確定届出が不要とされます(法法
34①二)。
交付の決議
交付
3.
役員の職務執行開始日から 1 月経過日までに開催される株主総会等において決議
決議日から 1 月経過日までに特定譲渡制限付株式等を交付
所得税法上の取扱い
個人が役務提供の対価として特定譲渡制限付株式の交付を受けた場合には、当該特定譲渡制限付株式に
係収入金額(所法 36②)は、当該特定譲渡制限付株式についての制限が解除された日における価額とされ
(所令 84①)、当該金額が当該特定譲渡制限付株式の取得価額と定められました(所令 109①二)。
4.
適用関係
上記の取扱は、内国法人が 2016 年 4 月 1 日以後にその交付に係る決議(当該決議が行われない場合には、
その交付)をする特定譲渡制限付株式等に適用されます(改正法附則 24)。所得税法上は、2016 年分以後
の所得税について適用されます(改正所令附則 5)。
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