本日の発表 変電所の接地システム構造 接地システムの役割と課題①

本日の発表
変電所の接地システムについて
変電所の接地構造改良による
耐雷性の向上
接地システムの構造と役割
接地システムの課題と必要性
接地システムの周波数依存性
接地極の周波数依存性
接地線(裸線と被覆線)の周波数依存性
新しい接地システムの開発
電位上昇の低減法
電圧伝達特性の改善法
実験による効果検証
電力技術研究部 き電研究室
副主任研究員
森田 岳
発表の総括
Railway Technical Research Institute
Railway Technical Research Institute
1
2
接地システムの役割と課題①
変電所の接地システム構造
対象
地絡故障
雷撃
周波数
低周波(直流・商用周波)
高周波(10kHz~1MHz)
接地システムの動作
地絡電流の経路になる
雷サージを大地に流す
俯瞰図
立ち上げ線
連接線
地表
断面図
接地線
裸電線
(円形断面)
接地システムの電位上昇抑制
変電所機器の防護
接地システム内の電位差低減(等電位化)
性能評価の指標
接地抵抗
接地インピーダンス
(サージインピーダンス)
技術基準
あり(接地抵抗値)
なし
接地インピーダンス
接地極
接地極
外線への波及防止
地表
0.75m 以上
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サージインピーダンス
定常特性
100ms~
過渡特性
1ms~10ms
過渡的なインピーダンスの上昇
インダクタンス等の影響
耐雷性向上における課題①
接地抵抗
サージインピーダンスの低減
時間
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4
課題② 等電位化の重要性
耐雷性向上の必要性
配電盤室
雷撃
特高しゃ断器
昭和~平成初期の変電所
近年の変電所
ICT技術の導入
配電盤
配電盤側で
絶縁破壊発生
避雷器
制御線
地面
大地表面電位
ピット等
過電圧の伝搬
配電盤に
印加される電圧
機械式リレーによる配電盤
コンピュータによる配電盤(ME盤)
機械式リレーによる遠制装置(伝送装置)
TCP/IP制御の遠制装置(伝送装置)
耐雷性向上の課題②
高周波での接地システム内の等電位化
ICT機器は雷撃に対して脆弱 → 変電所の耐雷性向上が必要
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接地極の周波数依存性
• 先行研究
– 電磁界解析(FDTD法など)
– 分布定数回路理論(Sundeの式ほか)
接地棒の長さ
• 上2手法: 計算にスキル必要、設備設計で実用的でない
– 定性的現象論
• インピーダンス低減のため、接地線の太径化・短尺化
• 今回検討の成果
– 構成要素(接地極・接地線)毎に理論検討
– 物理現象を明確化・簡易な計算手法を開発
インピーダンス (Ω)
接地システムの周波数依存性
200
100Hz(理論値)
100Hz(実測値)
1MHz(理論値)
1MHz(実測値)
150
100
50
0
0
短い接地棒(極)
f高→Z小
• 接地極: Maxwell方程式から近似解析解を得た
• 接地線: 分布定数回路理論を準用(Sundeより簡易)
(雷対策に有利)
– その結果、接地システム改良の道筋を得た
10
20
30
40
接地棒の長さ (m)
透過深度
h
長い接地棒(極)
f高→Z大
(雷対策に不利)
理論値: 鉄道総研による解析式
実験値: S. Mousa, thesis for the degree of PhD, Cardiff University, 2014
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接地線の周波数依存性①
裸線
電圧伝達特性
・・・接地システムの電位上昇に関係
1000
2000
100
1500
10
電圧 (V)
被覆線
特性インピーダンス (W)
特性インピーダンス
接地線の周波数依存性②
裸線
被覆線
1
0.1
100
1E+0
・・・接地システムの等電位化に関係
被覆線の特性
1000
500
プロット:実測値
曲線: 解析式
裸線の特性
0
0
101
1E+1
線種によるインピーダンスの比較
裸線の方がインピーダンスが小さい
(裸線の方が雷対策に有利)
102
1E+2
103
1E+3
周波数 (Hz)
104
1E+4
105
1E+5
106
5
10
15
25
30
35
40
図: 雷インパルス(波頭長0.5ms程度、波高値73A)印加における電圧伝達特性
線種による電圧伝達特性の比較
被覆線の方が電圧伝達特性に優れる
(被覆線の方が雷対策に有利)
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・・・特性インピーダンス
と相反する特性
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接地システム改良の方法論
接地極は上限長さ
透過深度 h
1.5m(湿潤大地)
~ 15m(岩石質)
を守れば元々耐雷性に優れる
10
接地線のインピーダンス低減法
耐雷性向上の2本柱
• 電位上昇の低減
インピーダンス低減
• 等電位化
電圧伝達
特性の改善
接地極
接地極
45
注入点からの離隔 (m)
1E+6
裸線のインピーダンス周波数特性
f高→Z大
(雷対策上の課題)
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• 【理論】埋設線の周波数依存効果
– 物理現象は複雑
• 埋設線と大地の表皮効果
– 特性: 周波数上昇 → 特性インピーダンス増加
• 高周波の接地線インピーダンス低減対策
– 太径化(複導体化含む)/短尺化
– 高周波電線の採用 【講演後、実物展示を予定】
接地線
接地線の性能向上が鍵
高周波領域での
インピーダンス低減
電圧伝達特性の改善
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• 平編線(矩形断面) 入手しやすく検証実験で採用
• リッツ線
強度や生産面で実用化に適
– 大原則: 地絡故障でも性能確保(現状非悪化)
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高周波電線
電位上昇の低減効果検証
接地線の線種変更による比較 ・・・実験による検証
平編線 ・・・扁平な形状で、電流分布が偏りにくい(表皮効果:小)
今回検証試験
で採用
リッツ線 ・・・素線を全て絶縁し、表皮効果を抑える
素線の構造
絶縁被覆(エナメル)
地表下 0.75m
に埋設
模擬雷注入
(雷インパルス)
端部
避雷器接続点
模擬(注入点)
成果実用化
で採用予定
条件1
格子間隔
4m
裸銅撚線
(円形断面)
接地極
(銅棒電極)
心線(銅)
導体断面積
同一(22mm2)
条件2
平網線
(矩形断面)
接地線の線種のみを変え特性比較
※ 他にも同軸ケーブルが弱電分野(制御線・通信線など)で良く用いられる。
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試験回路図
VE
大地表面電位
オシロスコープ
0
試験用接地極
(P)
VE
接地インピーダンス:
I
電流注入回路
10
インパルス発生器
供試接地
地中の電流経路
接地システム内の電位差
電位上昇(サージインピーダンス)
A
地表面
試験用接地極
(C)
C極の付近
・・・電位降下
平編線(最大6.2Ω)
8
6
4
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
時間 (ms)
電位上昇は大きく低減
サージインピーダンス: 約70%に低減
Railway Technical Research Institute
平編線
0.15
0.10
0.00
0.0
・・・時間に対する関数
従来電線
0.20
0.05
2
0
供試接地の付近
・・・電位上昇
0.25
従来電線(最大9.1Ω)
電圧 (kV)
V
電流センサ
インピーダンス (W)
電位測定回路
電位上昇の低減効果検証
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
時間 (ms)
電圧伝達特性は改善されず
電位差: 殆ど変化なし
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等電位化の方法
新しい接地システムの構造
被覆線の並列
俯瞰図
立ち上げ線
(接続線)
被覆電線
連接線(第1層)
裸線
電位分布
被覆 平編線
(矩形断面)
被覆線のみの場合(電圧伝達特性に優れる)
連接線 (第2層)
裸線のみの場合(インピーダンスに優れる)
被覆線による接地極の連接
被覆線の電位(等電位化)
さらに電位上昇低減
接地極
開発のコンセプト
1. 接地線に高周波電線を採用
2. 被覆線を並列(二層化)
裸線の電位
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裸 平編線
(矩形断面)
→ サージインピーダンスの低減
→ 等電位化
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耐雷性能向上の確認試験
端部
避雷器接続点
模擬(注入点)
10
0.25m
格子間隔4m
裸 平編線
(矩形断面)
提案方式(最大4.9Ω)
8
6
4
2
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
提案方式
0.15
0.10
0.00
3.0
時間 (ms)
電位上昇はさらに低減
サージインピーダンス: 約50%に低減
Railway Technical Research Institute
従来方式
0.20
0.05
インピーダンスのピーク
が見られない
0.0
導体断面積
統一(22mm2)
0.25
従来方式(最大9.1Ω)
0
被覆 平編線
(矩形断面)
接地極
(銅棒電極)
接地システム内の電位差
電位上昇(サージインピーダンス)
地表下 0.75m
に埋設
電圧 (kV)
模擬雷注入
(雷インパルス)
・・・実験による検証
インピーダンス (W)
従来方式と同一条件で比較
耐雷性向上の評価
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
時間 (ms)
電圧伝達特性も改善(等電位化)
電位差: 約60%に低減
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発表の総括
変電所の接地システム
課題: 耐雷性の観点では不十分
耐雷性向上: 電位上昇低減、等電位化が必要
接地システムの周波数依存性
接地極: 短い接地棒が耐雷性に有利
接地線: 接地線の特性改善が肝要
裸線: インピーダンス:小、 電圧伝達特性:不良
被覆線: インピーダンス:大、 電圧伝達特性:良
新しい接地システムの開発
高周波電線採用: 接地インピーダンスの低減
裸線と被覆線の並列: 電圧伝達特性の改善
電位上昇: 約50%に低減、電位差: 約60%に低減
累積頻度分布
(過去の統計データ)
現状
推定雷害頻度
約20%に低減
1/5
累積頻度(対数目盛)
推定雷害頻度
新しい接地システム
導入の場合
2倍
雷電流(対数目盛)
文献例: 「電気・電子機器の雷保護」、電気設備学会、オーム社、2011
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