石油探鉱開発における技術革新 と石油鉱業(その4=最終章)

本田 博巳
東京大学大学院
新領域創成科学研究科
アナリシス
石油探鉱開発における技術革新
と石油鉱業(その4=最終章)
はじめに
この連載も今回で最終回となる。今回も北米地域、特にアメリカ合衆国の石油鉱業に焦点を合わせる。
この章でも三つの油田の発見を里程標とする歴史区分に従う(図 1)
。第 1 章から第 3 章まで、いわゆる
在来型石油資源の探鉱開発を歴史の順序に従って記述した。この第 4 章では、その歴史的展開の最近段
階での技術革新による、非在来型の石油資源であるシェールガス・オイルの探鉱開発について記述する。
その後、歴史の順序を一旦捨象し、石油の探鉱開発の各段階を並列し比較しつつ、各段階の成立・推進
要因を抽出し、石油資源の将来展望を試みる。
第 3 章では、特に供給側(石油鉱床の探鉱・開発)における探鉱開発の基本的な考え方である背斜説を
中心軸にとって、近代石油鉱業の黎明期から 2 0 世紀最後期までの探鉱開発における背斜説の位置付け
たど
(準
と発展の過程を辿った。背斜説概念の発展のなかで、鍵となる油田の発見年を里程標に、四つの段階
備段階、早期確立段階、発展段階、震探イメージング段階)に分け、各段階での背斜説を基礎とした探
鉱開発の様相を見た。背斜説が探鉱開発の実践の場に置かれ、その実践の場が山地・丘陵地から平原・
平野に移行し、さらに砂漠地帯・海上に及び、石油の生産量が順調に伸びた。また 1 9 7 0 年に現実化し
たアメリカ合衆国でのピークオイルを越えてなお、地震探鉱技術と層序解釈の進歩によって、油ガス田
の発見・生産が継続した。背斜説は地震探鉱技術による地下イメージングの段階に至り、より広域の堆
積盆(basin)全体を見渡して石油探鉱開発を考える石油システム概念、あるいは、その石油システムの
なかでリスクの所在と大小を考え、最小の投資で最大の評価結果を得るプレイ・プロスペクトの構成に
至った。
Development of Anticlinal Theory
0.5
1840
1.5
Direct
Surface Geological Observation
Local Observation
Regional
Tight reservoir Boom
Seismic Imaging Period
M. K.Hubbert’s Peak Oil
1948 Ghawar
1927 Schlumberger
1931 East Texas
2
1917 AAPG
W. Rogers “Rock Oil”
1858 H. Rogers
“Geology of Pennsylvania”
1859 Drake well
1861 T.S. Hunt “Rock Oil”
2.5
1
Appalachian age
Play Concept and Petroleum System
Development Period
Orton’s Worry
NorthNorth-eastern states
3
Early Period
1901 Spindletop Gusher
Preparatory Period
1885 Eötvös torsion balance
3.5
BBbl/ 年
Telaga Said Oil Field (Indonesia)
1885 I.C. White “Geology of Natural Gas”
4
Shale Age
US Shale
Gas/Oil
Onshore and Offshore
Multichannel
Multichannel--seismic imaging
Inversion Cube
FractureFractureMonitoringMonitoringseismics
Subsurface Observation
High
Global Observation Local
Resolution
Observation
Tight Reservoirs
DSDP--IPOD-DSDP
IPOD--ODP
ODP
1800
1805
1810
1815
1820
1825
1830
1835
1840
1845
1850
1855
1860
1865
1870
1875
1880
1885
1890
1895
1900
1905
1910
1915
1920
1925
1930
1935
1940
1945
1950
1955
1960
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
0
出所:生産量推移データは DOE/eia(米国エネルギー省エネルギー情報局)統計による
図1 アメリカ合衆国の原油生産量推移と石油鉱業に関連する歴史的事件の関係
1 石油・天然ガスレビュー
?
年
アナリシス
次の段階では、石油システム概念のなかで、移動・集積の概念の領域に限定し、キッチン領域内の、
従前は根源岩と考えられてきた層を対象とした石油探鉱開発を試みるようになった。非在来型の探鉱の
一つとされる、いわゆるシェールガス・オイルの探鉱開発が成功し、顕著な衰退段階にあったアメリカ
合衆国の原油生産量を 2 0 0 7 年頃から急反転増加させ、ピーク生産量近くまで回復させるほど大きな寄
与をしてきた。この期間にはリーマンショックなどがあったが、その影響も認められないほどに、原油
生産量は急増した。油価が約100US$/bblを超すような高水準にあったことが、その経済的推進力であり、
シェールガス・オイルの技術的前提には、1 9 7 0 年代以降に準備された石油鉱業上流部門での低浸透性
貯留層の開発技術の創始があり、1 9 9 0 年代のシェール探鉱開発において総合され、改良され、機能的
に応用された成果であったと言えよう
(Gold, 2 0 1 3)。
この第 4 章では、第 3 章からの続きとして、まず、シェールの時代(Shale Age)がどのような段階に
あるのか、記述する。シェール革命と呼ばれる、背斜説での探鉱開発を覆したとされる石油探鉱開発技
術の歴史のなかでの位置付けを考えてみよう。さらに、石油鉱業の近未来を想像してみたい。
1. 第 4 章:石油の燃料資源としての未来
(1)
シェールの時代前史
開発への投資がごく短期間で消滅し、石油の生産量が同
1 9 世紀半ばから現在まで、石油に対する需要は継続
様に急激に減退する。このような急激な石油生産量の衰
して増加してきた。1 9 世紀後期から石油の新たな需要
退が起きることが危惧された。石油の代替資源が見付
が出現し、その供給源も量的に増大し、地域的にも拡大
かっていない状況では、社会の既存インフラが固定され
してきた。
20世紀半ばに、
供給源の有限性と生産量のピー
ているために、キャンベル・クラッシュが発生すると、
クの到来が予測され、アメリカ合衆国での 1 9 7 0 年に現
直ちに危機的な燃料資源不足、エネルギー不足を生じる。
実化した。その予測を 1 9 5 6 年 5 月に、テキサス州サン・
現状では、代替エネルギーについてさまざまな努力が
アントニオでの学会で提示した Marion King Hubbert
なされ、提案と試行がなされてきているが、石油の現在
(1 9 0 3 ~ 1 9 8 9)に因み Hubbert’s Peak(あるいはピー
までの社会的地位を十全に代替できる資源がないという
クオイル)と呼ぶ(Hubbert, 1 9 5 6)
。1 9 7 5 年に Hubbert
事実は動かし難い。2 0 世紀半ばから 2 0 世紀後期にかけ
は世界規模でのピークオイルの到来を1995年と予測し、
て期待され、世界各地で多数建設され稼働した原子力発
その後、1 9 9 8 年に修正している。
電は、継続的な最高出力での稼働が達成できていないに
1 9 8 8 年 に Colin J. Campbell は“The Coming Oil
もかかわらず、1 9 8 6 年のチェルノブイリ事故、2 0 1 1 年
Crisis”
と題する本を出版し、世界規模で、石油が枯渇段
の福島事故は、深刻な原発事故の現実を示した。また代
階に入ることを警告した。これを契機として、2 0 世紀
替資源候補とされてきている太陽光発電、風力発電、潮
末から 2 1 世紀初頭にかけて議論されたこの世界規模で
力発電はいずれも電力需要に対応する安定した供給力に
のピークオイルの出現の正否とその議論の社会的影響の
不足が大きい。
ちな
波及が恐れられた。すなわち、ピークが到来したと認め
ると、投資の見返りに対する期待感が薄れ、急激な石油
(2)危機感とその解消の歴史
投資の減退が起き、石油生産量が急減する
(キャンベル・
1 9 世紀半ばでのランプ灯油原料が、捕鯨の衰退から
クラッシュ〈Campbell Crush〉という)
。これは、代替
鯨油供給が限界に達し、鯨油⇒石油と置き換わったこと
の資源開発のめどが全く立っていない段階でピークオイ
と、現在の石油生産量の推移を比較してみよう。近代石
ルが到来し、キャンベル・クラッシュが発生したならば、
油鉱業は、鯨油ランプ灯油の枯渇という資源供給の危機
世界恐慌以上の破滅的な状況が生じ得る、と。
から生まれた。その最初期でも、事業化に当たって、企
すなわち、未開発石油資源量の限界と生産量の衰退傾
業の起業理念としてのビジネスモデルが設定されていた
向によって、将来の石油生産が投資に見合うことを保証
と推定できた(図 2)
。Drake 井の掘削も、Standard Oil
できないと考える消極的な社会反応によって、石油探鉱
の起業・発展もこのモデルにおいて欠けている部分を創
2016.5 Vol.50 No.3 2
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
設することで成立したと考
えてよい。Drake 井の事業
All known; no risk
Oil pond
Ladling oil
much labor needed
Limited amount of oil ladled
では、市場の存在は確認さ
れていたが、実際、どのよ
うに供給するかについて、
その意識があったかどうか
不明である。Drake 自身は
Drake 井の成功の経済的な
利益には浴さなかったこと
から、市場に対する意識は
少なくとも弱かったと想像
で き る。 他 方、Standard
The Drake well established the
subsurface potential
Supply of crude oil
Subsurface oil pool
Drilling a well
Large amount of oil sprung
Refinery Plants
Transportation:
Not yet well established
Market; consumers
Risk still unknown
at that time
High Business Risk;
to need a large amount of investment
Demand is here!
Size and sort to be increased
Low Business Risk
出所:筆者作成
図2 The Oldest Oil Business Model
Oilの中心人物であったJ. D.
Rockefeller. Sr. は事業リス
クの小さい製油部門・輸送部門から事業を起こし、市場
震探査法の優越性、進歩の促進につながった。
を寡占化する方向に向かい、その後、リスクの大きい探
鉱開発部門へと拡大していった。明らかに、彼は事業リ
(3)背斜説の進歩と行き詰まり感の発生
スクを意識して事業展開したと推定できる。事業が必要
近代石油鉱業の探鉱技術の中心にある背斜説は、その
とするインフラストラクチャーを独占することで商品
準備段階では、地表露頭での直接観察に基づく推論に
(この場合は石油)の市場を制御し、商業的な大成功をも
よった理念であった。背斜軸部での石油徴候の高い頻度
たらした。Standard Oil の成功は、鯨油の枯渇によって
がその主要観察事実であった。背斜軸部の試掘が実行さ
生じた供給力の隙間を、需要を地域的に拡大することで
れると、背斜説に対する信頼は増大していった。局所的
広げ、需要の増加に伴い、商品供給量の確保のために生
な背斜構造から、広域の地質構造に注目して、地域的な
産過程に踏み込んだ点にある。
石油産状を観察する視点が、White(1 8 9 2)によって示さ
次の石油資源の枯渇の危機感は、石油需要が急速に増
れたことは既に述べた(本論説第 3 章 ; 本田 ,2 0 1 6)
。この
加した 1 9 世紀末期に、オハイオ州、インディアナ州な
White の広域的な観点は多くの石油探鉱家に継承され、
どで生じた(Orton,1 8 8 9)
。すなわち、この地域での主
AAPG(American Association of Petroleum Geologists:
要貯留層である Trenton 石灰岩層が油ガス田を形成する
石 油 地 質 家 協 会 ) の 特 集 号“Structure of Typical
条件を見出し、その形成条件が妥当する地域は限定され
American Oil Fields”
(Vo. 1・2;AAPG, 1 9 2 9)では、当
ていることから、石油生産の将来的な継続を危ぶんだも
然のように背斜系列、断層系の広域的分布と油ガス田の
のである。いわば、石油探鉱開発可能な地域の有限性か
分布の関係が述べられ、油ガス田形成が議論されている。
ら来る資源危機感であった。
この観点は、石油の有機起源説に基づく石油の生成・
この危機感に対する技術的対応は、石油探鉱開発地域
移動・集積についての議論が優勢になるなかで、これと
の拡大であった。既開発地域の開発が飽和した時には、
並行して進歩した堆積盆概念と融合し、統合されていっ
地形状況の似た地域への活動の拡大、山地・丘陵地域か
た。堆積盆の発達史に、石油鉱床の形成史を重ねて読み
ら平原・平野へと地域の移動が進んだ。さらに海洋へと
解く方法が石油探鉱に一般化した。その結果、石油鉱床
活動の場は広がった。その拡大には、探鉱開発技術ばか
の形成史を堆積盆発達史として解読し、試掘位置の選定
りではなく、掘削技術、土木技術などの進歩が並行して
に応用されていった。その理念的な発展は、石油システ
進んだことが重要であった。拡大する探鉱開発の場での
ム 概 念 と し て 整 備 さ れ た(Magoon and Dow, 1 9 9 1,
中心理念は背斜説であった。
1 9 9 4)
。石油システムに基づく石油の探鉱開発の場は、
陸域から海域に石油の探鉱の場が拡大していくと、地
石油集積領域に必然的に集中することとなった。一つの
下地質を間接的に知る必要が生じた。このための技術と
堆積盆での石油集積領域の背斜探鉱が終結すると、その
して、地震探査法が導入された。探査の目標が背斜構造
堆積盆は、石油探鉱開発の過熟成段階にまで達し、石油
であったことが、地下の堆積層の形状を知ることにつな
鉱業の対象としては、その地域は放棄されることになる。
がり、より直接的な幾何形状を描出する手段となった地
以上のように、探鉱開発技術の発展は、自然観察事実
すき ま
3 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
の集積に基づいて背斜構造から作業仮説を、試掘によっ
ExxonMobil)
。いわば、地震探査の比較可能性の保証で
てその仮説を試す、また次の商業規模油ガス田の存否を
あり、ネジの規格が同じであれば、世界中、どこでも互
試すということの繰り返しであった。自然観察は目で直
換 性 が あ る こ と と 同 様 な 制 度 で あ る(Rybczynski,
接見る事実を超えて間接的な計測による事実を測定し、
2 0 0 1)。このような標準化は、アメリカ合衆国の南北戦
それらを基に推論し、
仮説を立てるようになっていった。
争時の兵器の部品に互換性がないことから生じた戦況を
探鉱理念としての背斜説は、その構成要素の各論的研究
左右する問題が発端となって、工業製品の規格化が励行
(例えば、根源岩の質の同定とその含有する有機物の量
されるようになったことと並行関係にある。石油システ
の計測、砂岩貯留層の物性の測定など)
の進展に従って、
ム・プレイ・プロスペクトによって、探鉱評価の道筋を
堆積盆内での生成・移動・集積論にまとめられていく。
その集団内であれば誰もが理解でき、反復して同じ結果
石油地質学の知見の集積、アイデアの 2 0 世紀での到達
が出るようにする制度である。多年の統一された訓練と
点は石油システム概念ということになる。
熟練者による教育によって制度維持がなされれば、時期
石油システムとその実践的評価概念でプレイ、あるい
の異なるプロジェクトであっても比較が可能になる。
はプロスペクト・リードに従った探鉱活動が 1 9 9 0 年代
初期から一般化する。1 9 8 5 年前後までは、石油システ
(5)地震探査の進歩と探鉱成果
ムの構成要素
(生成・移動・集積)
は、別個に評価されて
1 9 7 0 年代以降、コンピューターの進歩に伴う、地震
いたが、1 9 9 0 年頃には、一連の過程の流れ(システム)
探査技術の進歩の効果はどのように現れたであろうか。
のなかの構成要素として、一体感をもって表現され評価
コンピューターの発達による計算能力の向上によって、
されるようになった。システムという標語を使用しなく
1 9 5 0 年代までに確立されていた数理物理学的方法が、
ても、
実質的にシステムを枠として各評価要素を扱った。
現実のデータ処理で実現されるようになった。1 9 3 0 年
1 9 9 0 年代中期に近づくと、システムという用語は一般
代 に 確 立 し た ラ ド ン 変 換 に よ る X 線 -CT(Computed
的にも広く普及し、石油探鉱開発活動での標準的な考え
Tomography:コンピューター断層撮影法)はその一例
方として浸透した。
であった。同様に、多くの信号処理理論が地震探査デー
タに適用されるようになった。
(4)
標準化概念としての石油システム
地震探査記録の質の向上と並んで、解像度の向上した
ここで標準ということを強調しておきたい(橋本,
地震探査記録をより実態的に解釈する方法として震探層
2 0 1 3)
。多数の探鉱開発プロジェクトを上限額のある探
序学が開発された(Payton, 1 9 7 7)。震探層序学の適用に
鉱開発投資のなかで最良最適な対象に投資するために
より、擬時間層序枠の設定が行われるようになり、堆積
は、多くの地域から提案される多様な地質類型のプロス
過程の解析、堆積盆解析が可能となった。これにより多
ペクトを一列に整序し、その優劣を見返りの大きさ、成
くの堆積盆の実態が読み取れるようになった。地震探査
功率などの評価値から、選出することが必要である。こ
記録(断面あるいはキューブで表示される)から読み取れ
のためには、一個人の優秀な探鉱家、開発家が全ての提
る堆積体単元の累重関係、構造地質学的な形状に基づく
案を評価すべきある。探鉱家、開発家は個性が強く、偏
堆積盆全体の地史的・石油地質学的解析ができるように
りが生じやすい半面、評価の比較が必要な場合、また一
なり、地震探査記録に基づく石油鉱床の形成論の進歩に
人では、処理できる提案の数に限界がある。メジャーと
つながった。その様式化の一つが石油システム概念であ
呼ばれる大規模企業では、1 年に 7 0 0 ~ 1,0 0 0 件の提案
る。堆積盆全体を観察できる地震探査記録は、陸域では、
があり、均質な評価基準で、プロジェクト相互の比較が
一様な記録の質で収録することが難しいが、海域では、
有意であるための統一された評価方法を適用し、評価の
均質な長距離の 2 次元地震探査断面記録、3 次元地震探
質を統一することが前提条件となる。
査キューブ記録の収録は一般的に容易であり、地質学的
例えば、ある会社では、地震探鉱記録の収録前の物理
なモデルを構築するために、その質も十分高い記録が収
探査船について船舶、探査装置の整備状態、作動状態に
録可能である。
関する事前検査をベテラン技術者が行い、収録される記
1 9 6 0 年代後半以降、海域での石油探査が進み始め、
録の質を一定以上に保つことが義務付けられている。ま
海上での地震探査を担う物理探査船が多数建造された。
た、その記録処理についても、その会社の標準処理方法
海域での試掘コストが高いことも影響し、試掘段階から、
を設定し、処理技術者の技量の良否が地質解釈段階での
3 次元地震探査を実施することが一般化している。さら
致 命 的 な 誤 謬 を 生 ま な い よ う に し て い る( 例 え ば、
に、同一地域の反射波の記録を、時を移して収録し比較
2016.5 Vol.50 No.3 4
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
することで、
調査域の時間変化を追うことも行われる(時
代までのデータの総数を 1 9 8 0 年代のデータの総数に対
間差地震探査・4 次元地震探査と呼ばれる)
。地震波が
して両方の総数が一致するように規格化し、両者を比較
弾性波であることを利用し、坑井で得られた岩石の物性
しやすくしたものである。両者の頻度分布は、同一の母
データを基準にして、岩石としての記録に逆変換して、
集団から採集したサンプルであることは、検定するまで
貯留層特性
(孔隙率、浸透率、水飽和率など)
をキューブ
もなく、視覚的に判定できる。1 9 5 0 年代までは、初期
データとして表示することも行われている。今後さらに
の地震探査法、坑井対比による構造図、層序断面図によっ
収録技術面、解釈技術面での進歩が期待されている(松
て実施された探鉱の結果である。また 1 9 8 0 年代のデー
岡・本田 , 2 0 1 4a, 2 0 1 4b)
。このような地質学的なデー
タは、ランプセッティングでの深海扇状地での砂層の堆
タを提示できるようになれば、
背斜探鉱の水準を超えて、
積学の知見が適用され、層序の対比は単なる岩相対比で
地 震 探 査 で 石 油 集 積 を 直 接 描 出 す る DHI(Direct
はなく、堆積相に注目し、時間面と認識できるマーカー
Hydrocarbon Indication:炭化水素鉱床直接検知地震探
(火山灰層、不整合面)と仮説的に設定する層序対比マー
査指標)を基に石油探査が行われることになろう。質感
カーによる地震層序学による成果であった。両者の頻度
を表現することができれば、地質学が地震探査上で成立
分布グラフが一致するのは、探鉱手法の差異は、発見埋
することになる。
蔵量に偏りを生じさせず、堆積盆固有の油ガス層の形成
地震探査法の収録から地質解釈までの進歩によって、
能力によることを示していると考えるべきである。
一旦、枯渇したと見なされた堆積盆が、息を吹き返すこと
この事例では油ガス田開発においては、油層・ガス層
がある。地下に賦存する石油鉱床の場合、直接的な方法
の対比を数次にわたり改訂し、未開発油層を発見し得た
で探鉱開発される金属資源などの枯渇と異なり、地震探査
例である。多数の坑井が掘削されてきたことを思うと、
などの間接探鉱法によるため、技術進歩があった場合には
さらに坑井間に新たな油層が発見されていったことに不
再評価をすべきことになる。例えば、アメリカ合衆国中央
思議な気がしないでもない。探鉱技術における革新的技
平原にあるDenver-Julesburg 堆積盆がその事例である。
術進歩があっても、探鉱対象となる堆積盆の性格によっ
図 3 はその油ガス田の規模の頻度分布である。明緑色
て、発見される石油鉱床の規模と頻度は、投下した資金
の棒は、1 9 5 0 年代までのデータ(Arps and Roberts,
と作業量(坑井数)に比例した数量にしかならないという
1 9 5 8)と 1 9 8 0 年代のデータ(Davis, 1 9 8 7; Davis and
ことを示す事例とも言えよう。
Cheng, 1 9 8 9)である。図 3 左は両者を重ねて表示した
石油の探鉱開発活動が、このような在来型の石油鉱床
ものである。左は生データによる。図 3 右は、1 9 5 0 年
探鉱開発の過熟成段階に入った場合、その先は、石油探
■1950年代まで
Re-scaled Early discoveries and Original Late ones
Denver-Julesburg Basin: Oilfield size distribution
200
140
120
100
80
180
Frequency of fields in the class
Frequency of fields in the class
160
1980年代まで
60
40
160
140
120
100
80
60
40
20
0
1950 年代までのサンプルを規格化
200
系列 1
系列 2
180
■1980年代まで
20
1950年代まで
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16
Class (n) of reserves sizes (2 ×1,000bbl)
n
0
1
2
3
4
5
6
7
8
Class (n) of reserves sizes (2n×1,000bbl)
出所:Arps and Roberts, 1958; Davis and Cheng, 1989; Davis, 1987
図3 Denver-Julesburg 堆積盆の既発見油田規模分布
5 石油・天然ガスレビュー
9 10 11 12 13 14 15 16
アナリシス
鉱開発を諦めるのか? 油ガス田内部に探鉱余地を求め
孔隙径分布、孔隙率、浸透率などの評価要素により、ど
るのか? 各油ガス田の周辺を探鉱開発の場とするの
の程度の炭化水素が生成され、排出されたかを評価する
か? その堆積盆の深部に可能性を求めるのか? その
(例えば、Fuse, et al., 1 9 9 6; Tsukada, et al., 1 9 9 6)。従
活動領域を他の地域に移動させるのか? さらに、従前
来は、層位トラップ探鉱を正当化する技術根拠を得るた
は、石油鉱床が形成されているとは認められなかった地
めに行われることが多かった。その評価は概算評価で十
層を対象とする石油探鉱開発を試みるのか? という選
分機能する。石油は根源岩層内で生成されて以後、その
択肢が残る。上記のDenver-Julesburg堆積盆での事例は、
ごく少量しかその根源岩から排出されず、多くはその根
既存油ガス田の周辺と既存坑井の間を探鉱開発した例で
源岩内にとどめられると考えられている。堆積盆に広く
ある。また、アメリカ合衆国での近年のシェールガス・
分布する石油の大半が実はキッチン領域に分布し、根源
オイル探鉱は正にこの最後の場合の事例と言える。
岩層内にとどまるのであれば、キッチン領域を対象とし
て試掘が行われてもよいはずである。しかし、根源岩の
(6)
シェール資源の後継は?
多くを成す泥質岩はごく低浸透性であり、その含有する
ここで、地球のどこに石油鉱床があったか、を振り返
地層流体を流動させ、取り出すには長時間を要する。そ
ると、地殻上層部(深度 6,0 0 0m 程度)の堆積岩層の中に
の対策として、①坑井の根源岩層との境界面積を拡大す
賦存することが確認されてきた。また、石油鉱床は、堆
ること(水平掘り)、②水圧破砕法により、根源岩層にフ
積盆の石油システムの集積領域の中にあった。石油の密
ラクチャー(割れ目)を生じさせ、人工のフラクチャー
度は、地層の孔隙の大部分を占める地層水より小さいた
内で浸透率を改善すること(いわゆるフラクチャリン
めに、石油集積構造を成す水理学的に上方に閉じた領域
グ)が行われる。また、酸による坑井内、地層内の洗浄
(トラップ)に集中している。石油鉱床は連続性に優れ、
が実施される。
広く連続的に分布する、泥質層に上部を閉じられた背斜
破断による人工地震が生じることを利用して、人工破
構造にトラップを形成しやすい。そのような相対的に狭
断領域の形状、大小、フラクチャーの坑壁からの深さな
い領域に、他所で生成された石油が流動し、集まって形
どをモニターする。このような貯留層刺激法は、1 9 7 0
成されたと考えられてきた。そこで、石油鉱床のような
年代後半から 1 9 8 0 年代に盛んになったいわゆるタイト
石油の濃集する領域は、集積領域にしかないのか、と発
油層(チョーク油層など)の生産性の改善のために用い
想することが許されるであろうか ?
られた(図 4;Fritz, Horn, and Joshi, 1 9 9 1)。既存の掘
実際に、根源岩を評価する場合、TOC(Total Organic
削技術、貯留層改質技術、地下イメージング技術と地震
Carbons)、炭化水素組成、熟成度、根源岩の全岩堆積、
観測技術の改良と組み合わせによった方法である。
よ そ
Naturally fractured zone
+ artificial hydrofracturing
Austin Chalk: Eastern, Central Texas
Not compatible with each other
Eagle Ford Shale Gas Zone: Southern-most Texas
出所:Fritz, Horn, and Joshi, 1991
図4 Austin Chalk Oil Development: Late 1970’s through Early 1980’s
2016.5 Vol.50 No.3 6
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
シェールガス・オイルの探鉱開発理念として用いられ
(7)シェール資源の将来への楽観論と悲観論
た考え方は、石油システム概念のなかで、キッチン領域
これまで見てきたように現時点(2 0 1 6 年 3 月 3 1 日)ま
を探鉱開発のターゲットとするものである(図 5)
。水平
では、アメリカ合衆国のシェールガス・オイルの生産は
掘り坑井は、シェールの内部ではガスとして挙動し、地
2 0 1 4 年 1 1 月以来の油価の低迷にもかかわらず、生産量
表に上がってから石油液相
(原油として取引される)とな
は維持されてきた。油価低迷の近時、坑井の掘削が減少
ることを期待される地下での原油帯・ガス帯の境界部に
するなかで、生産量は維持されていることから、1 坑井
構造上部から下部に向かって掘削される。テキサス州南
あたりの生産量が以前より多くなっていることが推定で
部、Eagle Ford 層でのシェールガス・オイルの生産井
きる(図 6)。シェールガス・オイル層に対する坑井のデ
がこのような掘削の仕方の典型と言える。
ザイン(掘削深度、水平坑の長さ、スウィートスポット
生成されたが移動しなかった、
あるいは、結構(fabrics)粒
子に吸着された炭化水素
+
シェール資源
探鉱開発領域
在来型探鉱開発領域
Kitchen Area
Accumulation Area
水平掘り坑井による有効層厚の拡大
人工破砕による浸透性の改善
=
シェールガス・オイル
Hydrocarbons generation
出所:Magoon and Dow(1991, 1994)
図5 石油システムにおける石油の生成場と集積場
No change between 2015 and 2016
出所:Frantz, et al., 2005、DOE/eia, March 2016
Effects of OPEC’
s maintaining their level of
図6 oil and gas production in 2015 and 2016
7 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
の同定などのシェール層に対する生産最適化のための作
に大きく影響することになる
(図 8;Banks, 2 0 0 7)
。
業方法)
が地域別に確立されてきたと考えてよい。では、
悲観論者は、局所的には、シェールガス・オイルの生
シェールガス・オイルの生産は今後もこの傾向が維持さ
産の減退の速い点を強調するだろう。それは初期コスト
れるであろうか ? シェール資源開発は北米(アメリカ
と初期生産量、生産量のプラトー期間の長さの調整をい
合衆国、カナダ)を越えて、全世界に拡散していくであ
かに取れるかにかかる。できる限り、既往の諸施設の利
ろうか? 既にポーランドではシェールガスの試掘がな
用を優先し、諸物資も再利用を図ることとなる。また、
された。
大局的には、現在の在来型油ガス田と処理プラントや消
前者については、シェール資源開発生産技術は経験技
費地への輸送経路(天然ガスはパイプラインあるいは
術であり、観察によって芳しい結果は得られず、撤退し
LNG タンカーを要する。原油はパイプライン、鉄道、
た企業もある。他方、ドイツ南部アルプス北麓地域での
舗装された道路網)を要する。このようなインフラがな
試掘が始まっている。まだ、企業化できる商業生産は可
い場合、特に天然ガスは、輸送面が障壁となり、商業化
能になっていない。北米地域と欧州地域の本質的な差異
が難しい。
は、整備されたインフラス
トラクチャーが既にある場
合、シェールガス・オイル
開発での設備投資が小さく
1,000
て済むという経済環境の差
900
異にあろう。
800
2 0 1 4 年 1 1 月までの段階
700
での北米地域では、シェー
600
ルガス・オイルの生産井周
辺の開発技術としては、完
成に近づいたと言えよう。
しかし、在来型油ガス田の
<1/1/91
>1/1/91 and <1/1/98
>1/1/98
Primarily Waterfracs
500
Large Cross-linked Fracs
400
Small Cross-linked or Foam Fracs
300
開発での生産井 1 坑あたり
200
のコストとシェールガスの
100
水 平 掘 り 坑 井 のそれとで
0
は、
リグ稼働時間からして、
Mcf/ 日
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
1,600
日
2,000
1,800
出所:Frantz, et al., 2005
後者が高コストであること
図7 Barnett Shale Well Performance by Date
は明白である。経済的な限
界をどのような水準に設定
できるか、が鍵となる。
し た が っ て、 油 価 が
70US$/bblか50US$/bblか、
ではなく、シェールガス・
オイルの生産井の挙動が初
期に累計生産量の大半を達
成し、減退が速いことから
Production
Build-up
Economic limit
Additional investment
(in e.g. refracturing or
初期コスト(掘削費、施設
生産量の水準とシェールガ
Costs
(Investment)
ス・オイルの生産の経済的
出所:Banks, 2007
限界までの期間をいかに長
くするかが、全体の経済性
Time
F&D phase
(図 7;Frantz, et al., 2 0 0 5)
、
費など)の多寡、減退した
Declit
Plateau
Cost and production structure of gas from shale field(brown)
図8 and conventional field(black)
2016.5 Vol.50 No.3 8
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
2. 石炭と石油の棲み分け
石炭と石油はともに燃料資源であり、競合し得る関係
ンブリアン基盤と古生界地塊の分布域と重なる。亜褐炭
にある。この点をアメリカ合衆国での歴史事情に鑑み振
- 褐炭の堆積盆は白亜系中央海盆の分布域と重なる。
り返っておく。
図 1 1 にアメリカ合衆国の無煙炭の生産量の推移を示
す(McCabe, 1 9 9 8)。1 8 6 0 年から 1 9 0 0 年頃までは、炉
(1)
石炭のランク
燃料としての石油需要が主体であった時期であり、石炭
図 9 に、単位重量熱量と燃焼炭素量を指標とした、石
との競合関係が認められて不思議はない。しかし、無煙
炭のランクに関しての名称の関係を示す。熟成の進行に
炭も石油も順調な増産が進んでおり、競合していない。
従い、揮発成分が増加し、
その後、減少する。高温・
るためであろう。
(2)アメリカ合衆国の石炭
資源の分布
・低揮発分瀝青炭からメタ無煙炭に向かっ
て、揮発分を失っていく。
図 1 0 に、アメリカ合衆
・揮発分の行き先:熱分解?放出+移動?
国の本土 4 8 州の石炭資源
・石炭ガス
の分 布 と 基 盤 構 造を示し
た。左図は石炭堆積盆の分
・CTLの歴史•地下石炭火災での回収注入水
中のメタン
燃焼炭素量(乾燥・灰分は除去)%
高圧条件下に揮発分が抜け
布、右図は地質基盤の構造
単元の分布を示す。破線の
長方 形 は 左 図 の 範囲を示
す。アメリカ合衆国の無煙
大
出所:US Coal Montage から抜粋
炭堆積盆は大半がプレ・カ
図9 石炭の熟成と揮発分の相対量
出所:East, 2013(左)、Miall, 2013(右)
図10 USA Coal Basin Map
9 石油・天然ガスレビュー
単位重量熱量
小
アナリシス
ま た 無 煙 炭 の 生 産 量 に は、
Million Short Tons
100
1918 年と 1942 年にピーク
石油と石炭の分業
が認められ、それぞれ、第一
褐炭生産量の伸びた時期
80
次世大戦、第二次世界大戦と
石油と石炭の棲み分け
20
石油と石炭の競合があり
得べき期間だがない!
0
1840
1860
1880
1900
1920
係すると思われる。
石油の役目を
褐炭が一部代行?
第二次世界大戦後は無煙炭
WWWW-II
Cushing Discovery
Drake Well
Spindletop Discovery
40
WW--I
WW
製鉄業の伸びる時期
Depression
East Texas Discovery
60
関連する鉄鋼生産の推進と関
の生産量は単調に減退傾向を
示す。既存燃料資源であった
石炭と石油は、燃焼による発
熱の機能的な差異から、用途
す
を棲み分け、競合せずに探鉱
1940
1960
1980
年
(注)Short Ton(米トン)= 907.185kg
出所:McCabe, 1998 に加筆
開発が進んだ。この棲み分け
は、大恐慌を経て、第二次世
界大戦まで継続した。
しかし、
図 1 2 が、第二次世界大戦後
図11 USA Production of Anthracite(1830 ~ 1995)
の石炭(無煙炭、褐炭、
亜褐炭、
800
Bituminous, Sub-bituminous, Lignite
MM short Tons
700
Anthracite
MM short Tons
Bituminous
600
亜炭)の生産量を示すように、
40
減退傾向が顕著な無煙炭の生
35
産量に対して、褐炭の生産量
30
500
25
US Peak Oil
400
Sub-bituminous
300
Anthracite
200
Lignite
100
0
1949
1959
1969
1979
1989
1999
図12 アメリカ合衆国の石炭種別生産量推移
2009 年
原油生産量のピークの出現以
降の亜褐炭・亜炭の生産開始
20
と増加傾向が顕著である。
15
第二次世界大戦後、石油生
10
産量がまだ減退期に入る以前
5
0
出所:DOE/eia, 2016
の増加と緩いピークの出現、
に、Hubbert(1 9 5 6)による
石油資源の限界説(ピークオ
イル説)が提唱され、1 9 7 0 年
に現実にそのピークが出現す
ると、代替燃料資源として亜
褐炭、亜炭の開発が開始し増
産され、現在まで継続してい
これは、無煙炭が鉄鋼生産でも還元剤としての需要があ
る。石油の燃料としての需要を充足するために、代替し
り、
必ずしも競合関係にはなかったということであろう。
たと考えてよいであろう。
3. 石油システムとシェールガス・オイルの探鉱開発におけるスウィートスポット
(1)水 平掘り坑井と人工水圧破砕法(ハイドロフラク
チャリング
〈hydro-fracturing〉
法)
本田〈2 0 1 4〉
)
。在来型石油鉱床の形成過程の一つである
生成された炭化水素の 1 次移動との関係、低浸透性貯留
図 13 にシェールガス・オイルの探鉱開発の地質技術
層の刺激法の一つであるハイドロフラクチャリングは 1 次
的な現象面を整理した(Magoon and Dow, 1 9 9 4:松岡・
移動の経路は広い範囲の孔隙を連結していることが必要
2016.5 Vol.50 No.3 10
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
で、炭化水素が流動するためにその連結経路を形成する。
Chalk 油層の原油の根源岩であり、自身がシェールガス・
天然でも同様の現象が起きていると推定される。実際、1
オイル層となっているという、断裂を鉛直(重力方向に)
次移動の現場としか見えない低浸透性のシェールのコア
移動経路とするタイプの石油システムである。したがっ
も採集されている。現在のシェール資源開発は、自然が
て、Austin Chalk-Eagle Ford 層を層理面に対し鉛直に
数万年~数百万年かけて生成している石油鉱床形成過程
切る断裂が発達する地域はAustin Chalk油層のスウィー
を数年~十数年で、人工的に行っているものであろう。
トスポットであり、断裂がないか、あるいは少ない場所
このような視点から、生成・移動・集積という過程の
は Eagle Ford 層のシェールガス・オイルのスウィート
生成・移動の局面において自然状態で、いわばフェアウェ
スポットであると考えられる。
イとなっている箇所を知ることは、より効率の高い水平
掘り坑井の掘削位置、掘削方向、掘
削長を設定する基準を得ることにな
ろう。微妙な構造の比高の変化、自
然破断系の認識、広域的な水理系を
制御するシール層の同定などが鍵と
なる評価対象要素であろう。
図 1 4(Fritz, et al., 1 9 9 1)の水
平掘りのモデル図は、テキサス州の
中央部に発達するバルコーン断層
帯に並行して発達するチョーク層
(Austin Chalk)の油層に関するもの
である。その探鉱が 1 9 7 0 年代から
始まった。チョーク層は低浸透性
で、生産能力が期待できないとされ
ていたが、人工破砕処理による浸透
性の改善、さらに水平掘りによる坑
井の油層との接触面の顕著な増加
によって、商業生産が実施されるよ
うになった。Eagle Ford 層は直上
部のチョーク層よりも粘土質で、石
灰質泥岩である。
シェールオイル・ガス
では、キッチン領域に
移動経路と集積領域
が重複する地質状況
にある。
キッチンで生成された炭
化水素の多くはその生成
場の近傍にとどまり、集積
場へは移動しない。
在来型では生成場で
あるが、非 在 来 型で
は探 鉱 開 発 場となる
領域。
キッチン内にとどまった炭
化水素は、根源岩の孔隙
の結構(fabrics)が変化
することによって、短距離
移動が可能である。
孔隙結構の改変によって、
移動可能となる炭化水素
は坑井まで移動可能とな
る。
泥岩の卓越する領域
であり、低 浸 透 性 の
泥岩の浸透性の改善
方法が課題。
フラクチャリングがそ
の解決方法の一つ。
水 平 坑 井 により、坑
井壁と対象層の接す
る面 積を拡 大する方
法も寄与した。
出所:Magoon and Dow(1994)と松岡・本田(2014)に加筆
図13 石油システムによるシェールガス・オイルの探鉱・開発場の意味付け
Conventional tight
Austin Chalk well
Eagle Ford 層 は シ ェ ー ル ガ ス・
Shale gas/oil well
for the Eagle Ford
オイルの生産層として、現在稼働中
であり、Austin Chalk とは自然断裂
により、水理学的に連結されてい
る。この断裂が高頻度の場所では、
Austin Chalkが油層として発達度が
Naturally fractured zone
高く、頻度が低いと Eagle Ford 層
のシェール資源ポテンシャルが高
い傾向にある。この Eagle Ford 層
を仕上げ、ハイドロフラクチャリン
Eagle Ford Shale
Artificially hydrofractured
グを実施する。これにより、天然ガ
スと液相の両方を比較的高いレー
ト で 生 産 が 可 能 と な る。Austin
Chalk-Eagle Ford 層の成す石油シス
テ ム で は、Eagle Ford 層 が Austin
11 石油・天然ガスレビュー
出所:Fritz, Horn, and Joshi(1991)に加筆引用
在来型の Austin Chalk 油田と非在来型
図14 の Eagle Ford Shale Gas/Oil の油田
アナリシス
出所:Miall, 2008
The Tectonic Elements for the Sedimentary
図15 Basins of the United States and Canada
出所:DOE/eia, 2015(左)、Miall, 2008(右)
図16 アメリカ合衆国本土 48 州でのシェールガス・オイルの開発・生産堆積盆
(2)
アメリカ合衆国
(本土 4 8 州)
のシェール堆積盆
と基盤分布である。そのシェールガス田堆積盆の分布は、
北米地域の堆積盆(図 1 5、図 1 6)には、①北米大陸
プ レ・ カ ン ブ リ ア ン 基 盤 の 分 布 と 重 な る(DOE/eia,
地塊の上に乗るものと②その辺縁部~周辺部にあるもの
2 0 1 5; Miall, 2 0 0 8)。
との 2 類型がある(Miall, 2 0 0 8)
。図 1 5 は、アメリカ合
シェールガス・オイルのプレイを成す堆積盆は多くが
衆国本土 4 8 州とカナダの地質構造大単元の構成を示す。
大陸地塊上に発達する古生界、下部中生界のものである。
その大単元の分布と構成は、北米大陸塊(プレ・カンブ
上述した Eagle Ford 層のシェールプレイは大陸地塊の
リアン基盤)の分布と重なる(Miall, 2 0 0 8)
。図 1 6 は、
辺縁部のプレイである。図 1 5 左は、北米大陸の地質大
アメリカ合衆国本土 4 8 州のシェールガス堆積盆の分布
構造を示す。その核はプレ・カンブリアン基盤を持つ大
2016.5 Vol.50 No.3 12
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
陸地塊であり、多くの古生界・中生界の堆積盆を擁して
緩く、堆積盆の元来の形状を残すものが多い。類型②は、
いる。中央では、古第三系の塩湖堆積盆が分布する。大
類型①に比して、総じて若く、集中的な石炭層の発達す
陸地塊の周辺には、古第三系、新第三系の堆積盆が現在
る地層が少なく、Appalachia 堆積盆といえども、変形
の海岸線に並行して分布する。
度が相対的に高い。したがって、カリフォルニア州のロ
堆積盆の形状に関して、類型①は構造変形の変形度が
サンゼルス堆積盆などでは、褶曲波長の高い反射構造が
しゅうきょく
The Barnet Shale Gas/Oil Producing Wells
The Mississippian Barnett Tectonic Elements
出所:Pollastro, et al., 2007
下部石炭系 Barnett Shale 層の構造単元分布図(左) Barnett Shale 層からの天然
図17 ガス・原油生産井の分布(青色破線での囲みの内部)(右):ガス井は赤点、油井は緑点
Burnett Shale Gas Producing Area Texas, U.S.A.
Subsurface structural Map of Top/Barnett Shale
DEEP
Barnett Shale Gas
Reserves Estimate
出所:Pollastro, et al., 2007(左、右)、Browning, et al., 2013b(中)
テキサス州北部の Fort Worth 堆積盆でのシェールガス・オイル井の分布図
(左)
図18 とシェールガス・オイル層である Barnett Shale 層の上限の構造図(右)
13 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
油田を形成する。類型①にシェールガス・オイルの開発
ある。両者の比較から、石油(天然ガスとその液相)の分
地域が分布している。
布が広域的な構造単元分布によって単純に規制されてい
ることが示されている。すなわち、Barnett Shale 中で生
(3)
事例:Barnett Shale 堆積盆
成された石油が Barnett Shale 自身の中に滞留している
シェールガス・オイルの探鉱開発の事例として、最も
ことが推定される。また、図 1 8 右に示す Barnett Shale
よ く 研 究 さ れ た ア メ リ カ 合 衆 国 テ キ サ ス 州 の Fort
上限の地質構造図はさらに細かくこの構造規制を示す。
Worth 堆 積 盆 の 下 部 石 炭 系(Mississippian)Barnett
図 1 8 は Barnett Shale Gas 層の上限の構造図(右)
、
Shale 層を示そう。Newark East 油田がこの堆積盆に
埋蔵量分布図(中)、生産井分布図(左)の比較。埋蔵量分
1 9 8 1 年に発見・開発されて以後、
顕著な発見はなかった。
布図での分布は 2 0 1 2 年基準であり、他の二つの図の示
1 9 9 0 年代に入って、ターゲットを Barnett Shale に絞り
す分布より南東側に広がっているのは、経年に従った作
水平掘りとハイドロフラクチャリングで臨み、
成功した。
業の進展を示す。天然ガスと原油の分布は盆央側に天然
図 1 7 は、 テ キ サ ス 州 北 部 Fort Worth 堆 積 盆 で の
ガスが、浅部に向かって石油液相が分布することが示さ
Barnett Shale 層の構造単元構成図と油ガス田分布図で
れている。彼らの 2 0 0 7 年の論文では東部中央とその南
部が空白域だったが、その後
の活動で埋蔵量図が示すよう
GAS RESERVES
に液相・天然ガスが開発され
てきている。
Barnett Shale の開発に当
たっては、事前の埋蔵量評価
• OGIP: 444Tcf as of 2010
がまず評価方法から課題で
あった。在来型貯留層の埋蔵
量の評価では、既存の評価法
GAS
が確立されるなどし、物質均
Liquid
衡法によるシミュレーショ
ン、 生 産 挙 動 のシミュレ ー
ションが行われ、
SPE
(Society
of Petroleum Engineers:世
界石油工学者協会)
、SEC
(Securities and Exchange
Commission:米国証券取引
出所:www.eia.gov/oil_gas/rpd/shaleusa1.pdf
図19 The Barnett Gas Resourcesand Oil and Gas Productions
初期3カ月最大生産レートvs12カ月累計生産量
初期3カ月最大生産レートvs24カ月累計生産量
委員会)などによって評価法
初期3カ月最大生産レートvs60カ月累計生産量
(注)a: 1次相関係数、b: 1次相関での垂直切片(縦軸との交点)、R2: 1次相関でのデータの分散(1に近い値のほうが、1次相関性が強い)
出所:Frantz, et al., 2005
垂直井と水平掘り井の場合での初期 3 カ月最大生産レート vs 累計生産量
図20(12 カ月、24 カ月、60 カ月の 3 ケース)
2016.5 Vol.50 No.3 14
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
Hydrofracturing
4,000
3,500
• Combined microseismic
monitoring result for Wells
A to E horizontally drilled.
3,000
feet
2,500
• The five wells make a unit
of shale gas production.
2,000
1,500
• This hydrofracturing is
performed in the stages 1
through 11.
1,000
500
0
出所:Vermylen and Zoback, 2011
ハイドロフラクチャリングでの破断発生位置の微小地震観測によるマッピング
図21(色別で段階的フラクチャリングの破断状況を示す)
と評価が規格化された。
チャリングはこの生産単元ごとに、実施しようとする
図 1 9(右上)は Barnett Shale Gas の埋蔵量評価値(緑
ゾーンを区分して、各坑井の区分を揃え、同時に実施す
色)
と累計生産量
(深紅色)
の経年変化を示す。1 9 9 2 年か
る。図 2 1 では、ステージ 1 から 1 1 まで、順次段階的に
ら生産が試験的に始まり、順次増加、1 9 9 8 年から地域
フラクチャリングを実施した。その進行状況は、小地震
的な拡大が顕著に進み始め、2 0 0 4 年以降、堆積盆全体
波をモニターして解析し、小地震震源の震源位置を測量
にわたって、探鉱開発が展開された。図 2 0 は、生産開
し、断裂の態様を図示する。
始後 3 カ月での最大生産量(縦軸)と生産開始後 1 2 カ月、
このような坑井グループを構成する理由は、ある領域
2 4 カ月、6 0 カ月までの累計生産量をそれぞれクロスプ
全体の対象シェール層の流体流動特性を人工的に生じさ
ロットした三つのグラフを比較する目的で作成した。縦
せる断裂系により改質し、そのなかのシェール層に含ま
軸は短期の生産能力を示す。また、横軸は、累計生産量
れる炭化水素(天然ガス)を坑井に流入させ、地表に回収
によって長期の生産能力示す。三つの累計生産期間での
する効率を向上させることにある。元来シェール層の浸
このクロスプロットを比較することで、初期生産能力と
透性は極めて低く、坑井のごく近傍の地層流体しか坑井
長期生産能力の時間変化と生産能力の経済評価の基礎
に流入しないので、複数の坑井の間全体に可能な限り一
データを得る。
様に断裂系を生じさせ、なおかつ隣り合う坑井同士が相
図 2 1 は、ハイドロフラクチャリングの仕様をまとめ
互干渉しないようにハイドロフラクチャリングを実行す
たものである。シェールガス・オイルの生産は、方向・
るのが理想である。
向きを揃えて平行に水平掘りされた坑井を数坑をまと
坑井間の相互干渉は、1 坑の生産量のピークからの生
めて生産単元を構成し、実施される。ハイドロフラク
産量、貯留層圧力の早急な減退を生じさせる。
4. 資源量評価と資源探鉱・開発・技術の革新
図 2 2 に、Gray(1 9 7 7)の天然ガス資源の探鉱開発ピ
加筆したものを示す。三角形の上位の頂点は「資源が市
ラミッドの Masters(1 9 7 9)による図示一部を改訂し、
場に流れ、商品化された段階の石油」を示す。技術的な
15 石油・天然ガスレビュー
Additional
Cost
IMPROVED TECHNOLOGY
HIGHER PRICE
アナリシス
FIRST
CLASS
Conventional Reservoirs
LOWER GRADE RESERVOIRS
LOWEST GRADE RESERVOIRS
Shale Gas
Shale Oil
Stimulation: Hydrofracturing
Large effective thickness: Horizontal Drilling
NON-PRODUCTIVE TIGHT ROCKS
出所:Modified from Masters(1979)
図22 Resource Triangle
リスクは消滅し、商業リスクのみが付随する状態では三
数以上の坑井での試行生産を実施し、水平坑井の生産挙
角形の底辺は、ある条件下での資源量の限界を示す。第
動を見て生産推移を類型化し、フラクチャリングの方法、
一級のランクの資源は坑井により生産され、消費地まで
初期生産量、生産ゾーンの時間的移動方法(生産区間を
輸送されるべき状態の原油などと同等と評価できる量を
改修する)などをパラメーターとした上でデータバンクを
一般に、埋蔵量と呼ぶ。地下の第一級の良質な貯留層か
構成し、坑井のログパターン類型との比較により生産挙
ら地表に回収し商品化される。回収では技術リスクを伴
動を予想する。さらにそれに基づいて、期待可採鉱量評
うが、石油鉱業での他のリスクに比して小さい。浸透性
価を行う。埋蔵量の評価方法は多数提案されてきており、
が低いなどの問題で、僅少の生産レートしか期待できな
地域、層準によるシェール層の個性を反映させた方法が
い貯留層は、第一級の貯留層と比べると、浸透性などで
採られている。
質的に低いランクとなるが、油価が一定以上の水準にあ
数値的に資源可採鉱量、埋蔵量などの在来型の評価値
り、生産の経済性が保証できる場合は、地表への石油の
の名称を流用して、シェールの資源量を確度と並行する
回収に有意な寄与を期待できるものである。ここまで回
ように示すが、その拡大が、資源ピラミッド(三角形)
の
収可能とすると、量的な規模が大きくなる。さらに低浸
底辺を押し下げていくような評価になっているかどうか
透性の貯留層の石油生産寄与を期待すると、三角形の底
は未確定である。人工的に実施するハイドロフラクチャ
辺は下がり、その面積は大きくなり、期待される回収量
リングによるシェール層の破断系がマクロからミクロス
が拡大する。また、ここまでが在来型の石油資源量を代
ケールまでどのような幾何学的形状に形成されている
表する。ここまでの資源の回収では油価がさらに高くな
か、時間的に安定しているか、など未解明な要素が多い。
る必要がある。すなわち、より高度な技術を要し、回収
過去に開発・生産し得なかった既発見資源を開発・生
のためのコストが大きくなっても採算が取れることが必
産し、市場に提供し得るようにする技術革新は、大局的
要である。シェールガス・オイルの回収はこの在来型石
に見て必然的に資源ピラミッドの底辺を押し下げ、埋蔵
油資源量の底辺を押し下げる効果に相当する。
量を増加させる。その技術革新は、探鉱作業での、どこ
シェールガス・オイルの領域まで底辺を押し下げるた
にあるか分からない資源の存在を確認し、分布を確定す
めには、大きなリスクを負う覚悟が必要となる。まず、
るリスクよりもはるかに軽度のリスクと言える。図 2 2
1 9 8 0 年代まで回収量、回収可能量の評価方法が確立さ
に示した資源三角形の底辺を押し下げるリスクは技術リ
れていなかったことを挙げよう。これには、在来型の容
スクが大きい上に、見返りの大きさの保証が難しい点、
積法のようにパラメーターを経験的に決めて計算によっ
一層リスクが高くなる。既存の技術モデルがない場合に
て、一応納得できる数値を算出することが難しい。一定
は、相当な覚悟が、経営的に見て必要となる。
2016.5 Vol.50 No.3 16
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
5. 背斜探鉱の限界
ここまで、準備段階の背斜説から石油システムまでの
ラップすることもあり、この場合も背斜頂部には貯留層
概念の拡大、適用領域の拡大を軸に解説した。この節で
を欠き、砂層は高まりの堆積物供給側のみに集中するこ
は、単なる背斜構造による重力・浮力との関係で成立す
とになる。インドネシアの東カリマンタン・マハカムデ
る油ガス田という観点から、構造トラップに拡張された
ルタ沖の深海ファンのプレイではこの類型が多い。その
背斜説の持つ限界を考えたい。
西セノ油ガス田発見は期待されたが、探掘が進むにつれ
背斜説による探鉱活動の対象の一つに微妙なトラップ
埋蔵量が萎 み、オペレーターであった Unocal 株の暴落
(subtle trap)のプレイがある。観察方法、探査方法の分
しぼ
に乗じて Chevron が Unocal を買収した事件もあった。
解能とノイズの関係で、地下の地層の形状の把握がプロ
White(1 8 8 5)が挙げた「十分な規模の背斜」がその時々
スペクトを認定するためのデータが量的にも質的にも不
の経済状況に適合する規模を持ち、期待埋蔵量が開発・
足する場合、プロスペクトの認定が難しい。量的に十分
生産の商業性を保証するかどうか、現在も「閉塞構造」
の
である場合でも、地震探査での往復走時を深度に変換す
規模として問われる。世界中の背斜構造が全て試掘され
る誤差によって、地質構造の形状が真の構造形態が解明
た時、なお、探鉱投資が継続されるであろうか ?
できる最適な試掘位置の選択を誤るほど歪む場合があ
発見された油ガス田が必ずしも開発されるわけではな
る。このような誤差による歪みが致命的になるのは、多
い。事例として、水深 4 0 0m を超える深海域での天然ガ
くの場合、構造の比高(relief)が低いことによる。この
ス田開発がある。深海でのガス生産坑井を制御する技術
ような構造では、埋蔵量評価の精度が探掘井が増えても
は未開発である。未だに深海域での天然ガス開発例がな
向上しない場合が多い。インドネシア中部スマトラ地域
いのは、この点の障壁の解消ができていないからである。
のカンパール地溝北部の盆央部での発見油田の埋蔵量評
また、できたとしても、ガス生産を中断し、坑井を改修
価が定まらず、開発に至らなかった事例もある。
するような場合、海水の対深度の温度分布、水圧分布な
背斜構造の軸部・頂部は、断裂が生じやすいために、
どの水界構造から、1 0 ~ 0 ℃の海水に触れているパイ
そこから油ガスが漏出してしまう場合が多い。上部の
プ内の天然ガス(メタンガスが主体)が水和し、パイプ内
シール層が粘土鉱物などの構成率が高い岩石の層である
でハイドレーション・ブロッキングを起こすことを防止
場合は、変形が流動による場合は、このような破断、断
する必要がある。電熱コイルヒーターをパイプに巻くこ
裂を生じず、シール層は断裂から逃れやすい。背斜構造
と、水温の高い地層水などを二重壁のパイプの外側を通
のように見えるが、地層の褶曲原因が岩塩ドームの形成
すことなどが考えられるが、パイプ、施設維持のコスト
を主因とする場合、ドーム頂部の貯留層は、岩塩の動き
は尋常ではない。今後、さまざまな未解決の課題を克服
によって薄化し、あるいは排除されてなくなり、翼部の
する努力を要する。
みに油ガス層が発達する場合が多い。Spindletop 油田は
遠隔地域での発見油ガス田の開発も坑井元でのガス処
その典型事例である。
理、輸送方法が課題となる。さらに、商業的開発が可能
構造頂部が削剥され、貯留層に欠如する場合もある。
かどうか、技術課題の他、商業課題(売り先の確保、輸
また、砂層の堆積時に成長する背斜構造が海底に比高の
送方法の確立など)があることを忘れてはならない。
いま
低い高まりとなる。砂層がその高まりに向かってオン
6. 炭化水素資源開発の技術革新によるシェール資源開発の展開
シェール資源の生産国であるアメリカ合衆国の原油生
単純な技術革新以上の成果を誇っている。
産量は、1 9 7 0 年にピークに達して以来、減退傾向を示
1 9 8 0 年代後期からの原油資源の供給可能性の限界の
してきたが、2 0 0 7 年以後、定常的に明瞭な増加傾向に
顕在化が近いと警告されるようになったが、現実には
転じている。
このような状況を
「シェール革命」
と呼んで、
2 0 1 4 年までの生産量は、高油価環境もあって依然プラ
17 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
トー・上昇の傾向にある。1 9 9 8 年には、Campbell と
同一の物質(例えば炭化水素)であっても、従来のその資
Laherrère(1 9 9 8)
によって、油ガス田の究極埋蔵量の分
源の生産現場・生産方式とは異なる生産現場・生産方式
布は対数放物分布をとること、従前からの生産方式での
による生産物が出現すると、その資源種の生産量は回復
石油生産量がピークオイルを迎え、これまでの安価な石
し得る。Hubbert の好む理由付けで説明すると、ロジ
油を期待できなくなることが主張された。
しかしそれも、
スティック方程式が制御する過程での内的成長率の増加
2 0 0 5 年頃までで、
「ピークオイル」説に対する賛否の議
が起きる場合、このような生産量の増加への反転増加が
論は盛りを過ぎ、現時点では議論自体に意味がなくなっ
生じる。あるいは全く別の大規模なプールからの生産・
たと考えられ、沈静化している。
供給が始まったと考え得る(本村・本田 ,2 0 0 7)。かつて
かつての鯨油の枯渇における石油による灯油の代替が
の石油の資源としての台頭は、現在のシェール資源の台
異種資源の同一機能物による代替であったことと異な
頭とは異なることを指摘しておきたい。鯨油⇒石油の代
り、1 9 7 0 年代からのピークオイル騒動とその解決策と
替過程での諸事情は、シェール資源開発の状況下では適
してのシェールガス・オイルは、産状の異なる同一物に
用できない。
よる既存資源の延命であり、枯渇傾向にある生産物は、
7.「2 1 世紀の背斜説」
を構成する意義は何か
石油鉱業の既存成立条件を形成する諸概念の再考と、
あった。またCTL
(Coal to Liquid:石炭の液化)
、
GTL
(Gas
再構築が必要な段階に既に入っている。既往の技術で対
to Liquid:天然ガスを原料とする液化炭化水素の合成)
応できる資源開発環境が限定されることを自覚すること
は、いわば石油を製造するために、石炭(kerogen という
によって、現在あるいは近い将来での継続性のある投資
石油の根源物質が石炭の類型の一つであることを考える
を、石油に振り向けることができる。
と、石炭も石油同類型とし得る)
、天然ガスを原料として
では、
「2 1 世紀の背斜説」とは何か ? 具体性のない言
使用するものである。また、地表での反応器プラントに
葉以上のものでしかなければ、実効性がない。シェール
よる合成であるため、地下に賦存される資源を坑井によっ
ガス・オイルまでの石油探鉱開発の目標は、炭化水素で
て地表に回収するという既存技術の応用もできない。
8. 将来
では、
「石油システム・シェールガス・オイルの次は ?」
とが可能であろうか。まず、この点を問う必要がある。
を、いかに考えるか。石油システム、プレイ、プロスペ
年間たかだか 1 0 程度のプロジェクトを扱う会社であれ
クトを一組にして、試掘候補の選定に用いるには、まず
ば、むしろ個別的に評価し、投資の可否決定を行う能力
評価技術の精度が問題である。多数プロスペクトの比較
が求められると考える。
評価の点では技術的な均質性も重要である。しかし、日
独自の探鉱開発での価値観を持っているか。その価値
本企業の実態として、比較において統計的有意性を保証
観は実践の場でテスト済みか。この点は、人材教育と関
できる数のサンプルを採れるかは大いに疑問である。1
わるであろう。またこのテスト自体に多額の投資と長期
年間に 7 0 0 ~ 1,0 0 0 のプロジェクトの提案があり、その
間の積み重ねが必要となることを知っておくべきであろ
なかから、会社がその経営政策として設定する年間発見
う。石油鉱業での失敗の典型は何もしないことである。
量を実現するために、各提案を過去を含めたプロスペク
1 0 の提案を 1 0 回否決すれば、9 回は正解であろうが、
ト集団のなかで順位付ける評価方法を年間 1 0 0 程度まで
まぐれ当たりすら起きない。
の提案数の集団に合理的に選択し、整理し、運用するこ
多数の候補案件から、「有望」と評価される新規探鉱開
2016.5 Vol.50 No.3 18
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
発案件を発掘するためには、一定の規格化された方式を
る。政治的な障壁のある地域を調べる。遠隔地・難地域
(海
決めておく必要がある。石油システム、プレイ、プロス
域)を調べる。②掘削技術障害(例:異常高圧層の存在)
ペクトの連携はその目的に沿うように、1 2 0 年ほどかけ
によって試掘が到達しない地域、深度帯を調べる。サン
て確立された仕組みである。会社設立後、一旦大規模油
ドトラブルなどの生産技術障壁のある地域を調べる。
ガス田を発見し、経営的に安定期に入ると、新規の高い
異常高圧地域は、予測に関しては、地震探査記録の応
リスクの探鉱プロジェクトを嫌がる傾向が出てくる。し
用など進歩が見られるが、掘削技術としては、依然不可
かし、油ガス田の寿命は長くて 3 0 年、例外的に 7 5 年程
能に近い。石油地質学的課題としても、異常高圧領域で
度であり、最盛期は 1 0 年以下と考えてよい。
石油の集積が起きるか、という課題は未解決であり、そ
新規案件における障壁は、①地質学的な背景情報の不
もそも異常高圧領域を試掘する価値があるのかどうかも
足する地域、②政治的な障壁、③遠隔地・難地域
(海域)
、
判然としていない。掘削できないから石油地質学が進ま
④掘削技術障害(例:異常高圧層の存在)
、⑤生産技術障
ず、また、異常高圧領域に石油が集積することを確立で
壁、などである。以下に筆者の知る事例をそれぞれ挙げ
きないから、あえて試掘する決断もし難い、という消極
る。例えば①地質学的な背景情報の不足する地域を調べ
的な悪循環が生じている。経営的決断が必要であろう。
9. 結語として
人は未来に背中から入る、と言われる。石油探鉱開発
な、自然現象に即した新規アイデアをその基礎知識・技
企業は、まさに未来への視界はゼロ
(真っ白)
で、視界に
術の常識の枠から獲得する努力が必要となる。
ある過去と今進みつつある現在の状況を見て、時の流れ
新規技術には、その最終目的達成のための中間手段と
に乗って、未来に入っていく。過去と現在は、いわば未
なり、その新規技術を支持する既存技術が必要であり、
来のあるべき姿を想像するための参考モデルとして見る
その既存技術の実効性の実現には、改良が必要となる。
ことになる。
背斜説に対する掘削技術がこれに相当する。初期石油技
術においては、探鉱掘削生産などの分野はなく、全体が
(1)
過去と現在
一つであった。新規技術の成果が、社会に受け入れられ
データベースは過去の事例の集積であり、過去の人々
るには、その成果としての商品の持つ需要充足目的だけ
の物の見方によるバイアスのかかった過去の情報であ
ではなく、経済性の実現が必要である。社会に対する貢
る。
したがって、
未来を予想するためには、
①
「過去の人々
献をどう実現するか。既存インフラストラクチャーとの
の物の見方」
と、②
「過去の人々の挙動、および環境とそ
整合性の維持は不必要な社会インフラの新たな建設を必
の結果」
の 2 面の情報を知ることが前提になる。
要としないこと、さらに技術の規格化を実現して、社会
この最終章では、背斜説から発展した石油システム概
全体でその技術成果を利用できることを要する。
念を再考したことから始まるシェール革命と、さらにそ
新規技術は業界あるいは広く社会一般に流布している
の先の未来展望、またその展望の実現のために今なすべ
部品、あるいは概念の利用によるサポートが充実してい
きことを考えた。石油鉱業の整理された形でのビジネス
なければ、特異な新案としてしか認識されない。南北戦
モデルの設定に既に、現時点で欠けるか不足する要素に
争での武器部品の交換不可能性の問題、ねじの互換性の
対する投資という観点と、企業リスクの観点が入ってい
要請を通して標準・規格制度の制定が新規技術を支える
た点を強調しておきたい。
ことになる(橋本 ,2 0 1 3;Rybczynski, 2 0 0 0)。石油システ
技術革新(Innovation)というと大跳躍のように聞こえ
ムなどは石油探鉱開発での標準化、規格化の達成であっ
るが、技術進歩に大きな跳躍はない。九つの既存技術が
たと言える。
一つの新規技術を生かす。既存インフラストラクチャー
1 8 5 0 年代、背斜説は、Edwin Drake の勇敢な US$5 0 0
の利用のない新技術はあり得ない。基礎知識と基本技術
の自己投資によって、当時の経済的無理を押さえ込み、
の習得・錬磨
(九つの既存知識の習得)
と一つの新規なア
近代石油産業確立への道に踏み込むための呪術性を獲得
イデア
(一つの新規技術)
が技術革新を可能にする。自由
したが、層位トラップは、現在でも経営者から忌避され
19 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
ることが一般である。層位トラップと称するプロスペク
あるいは 2 0 年後の社会への、どれほどの寄与に結び付
トの試掘の失敗事例があまりに多いためであろう。
け得るか。
新規技術に結び付く新説を提示するには、提案者の既
往技術との密接な関連が鍵となる。提案し、テストを経
最後に、筆者が 2 0 1 3 年までに考慮した、今後の石油
た背斜説でさえ、
1910年頃まで反対意見が残ったことは、
探鉱の場になり得ると思う地域を挙げておきたい。
「中
記憶しておく価値があろう。
るも八卦、中らぬも八卦」であるが、リストアップし、
はっ け
調査することなしには前進はない。否定的な評価も、調
(2)
未来へ
査候補の空白を埋めることになる。既に活動が開始され
背斜説においては、事前の地表観察技術を利用でき、
た地域は排除したつもりである。
観察記録を理解する人のいることがその前提条件であっ
た。これは、教育するということに対する要請を意味す
①デルタ関連
る。また、この教育の向こう側に進むために将来の具体
ロシア(ⅰ)レナ川デルタ地帯の過去への追跡、
(ⅱ)
的技術展開を読む能力の育成が必要である。
レナ川の低海水準期のデルタ地帯とその延長部の深海
将来展望においては
「無理」
ということの把握、「必要」
扇状地、(ⅲ)エニセイ川の低海水準期のデルタ地帯、
ということの把握を通して、
「無理」
を何が
「無理」にして
深海扇状地
いるのかを分析し、周辺技術を学び応用することが必要
げんせい
長大な河川系を背景にして、大型の現世(地質時代
である。Drake井の例で言えば多様な分野の結合を図り、
としての現代)デルタは河口部に発達する。エニセイ
実現していったことは驚愕にすら値する。経済的な「無
川は河口部が内陸側に深く切れ込んでおり、デルタの
理」
、物理学的、かつ原理的な「無理」はこの過程で峻別
形状が不明瞭であるが、堆積量が大きい。この点は南
しなければならない。経済的な「無理」に対してのみ「嘘
米のラプラタデルタと比較できる。両デルタは、カナ
の効用」
は実効性を持つが、物理学的、かつ原理的な「無
ダの MacKenzie 川のデルタ地域での石油探鉱・開発
理」は押し通すと事故につながる。serendipity(偶然に
の先行事例がある。特に開発方式が確立されている点
発見する方法)ということは石油鉱業では、不可避な要
が魅力になる。気象条件、夏季でのツンドラの障害、
素であるが、物理学的、原理的な
「無理」
には適用されな
ツンドラからの CO2 の排出問題など課題は多数ある。
うそ
い。また、
石油探鉱開発では
「無理」
の多くが経済的な「無
理」である。
「見る前に跳べ」ではなく、一旦、場の選択
②石油探鉱開発過熟成堆積盆
をした後は
「まず見よ、そして跳べ
(跳ばない選択肢はな
アルゼンチンの San Jorge 堆積盆(ゴンドワナ大陸
い)
」
ということが、石油探鉱開発での鉄則であろう。
のジュラ紀からの内陸湖沼成堆積盆)。
世界の石油業界では、詐欺罪はないと言われる。石油
アンデス山脈に沿った位置の、同様な Neuquén 堆
の探鉱開発では他の事業に比べて事業リスクが著しく高
積盆はシェールガス・オイルの探鉱・開発の場として
いからである。探鉱の専門家になるには、
「無理」と思え
再生した。在来型油田の開発が進み枯渇に至った堆積
ることに突破口を見出す辛抱と
「諦めの悪さ」
が必要であ
盆で、インフラストラクチャーが完備し、北米域と同
る、と多くの成功者は言う。踏み込まねば発見できず、
様の条件にあった。では、もう一つの堆積盆はどうか。
さらに投資しなければ開発できず、設備と社会インフラ
ストラクチャーの不備な場所では、そのためのコストは
③炭酸塩岩貯留層探鉱
膨大である。現在、中東地域からの安価な天然ガスの供
テチス(Tethys)海(古地中海)の領域の分布内調査。
給が確約されている環境では、新たな地平線を越えるだ
デボン系、二畳系、ジュラ系、白亜系の追跡と地下
けの踏み込みは躊 躇される傾向にある。1 0 年あるいは
分布の整理。隠れた炭酸塩岩体の分布を推定する。
ちゅうちょ
2 0 年先、今の躊躇がいかなる結果を生むか、社会全体
でシミュレーションをすべき時期であろう。
④今後のシェールガス・オイル探鉱・開発場の選択条件
現在の技術進歩は物理学 - 化学系、生物 - 医学系が主体
(ⅰ)中部デボン系より若い地層が数千メートル以上の
となっている。石油探鉱技術でも同様であるが、物理学
- 化学系、生物 - 医学系の進歩が新たな石油鉱床の発見、
既発見未開発油ガス田の開発、生産終了油ガス田の再開
発等にどれほど向けられているか。そしてまた、1 0 年
層厚をもって、分布すること。
(ⅱ)プレ・カンブリアンの基盤のなか、あるいは辺縁
部にあること。
(ⅲ)堆積盆全体の構造変形度が小さく、沈降が主体の
2016.5 Vol.50 No.3 20
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
構造運動に支配されてきていること。
ニア州のMonterey珪質頁岩の位置付けが問題となる。
(ⅳ)断裂系は、顕著な発達を示さないこと。
しばしば、比較され、似ているとされる日本の中新統
条件(ⅰ)は陸上植物の出現という条件と同値にな
女 川層(秋田県)珪質岩のシェールガス・オイルの可
おんながわ
る。石油層の発達と直接関連する。条件②と③は地質
能 性 に 関 連 す る。 近 時 で は 女 川 層 の 研 究・ 実 践 が
学的に
(ⅱ)
が
(ⅲ)
の前提になる。
(ⅳ)
は生成された石
Monterey 層より先行する状況にあるが、両者とも
油の移動に関係する条件になる。
シェールガス・オイルに関しては、まだ端緒に就いた
これらの条件に関して、アメリカ合衆国カリフォル
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6.(Appendix(p. 2 0 4-2 1 6)
:
(p.2 0 4)The“ Anticlinal Theory”of Natural Gas(originally published as“ Natural
Gas Supplement”in the American Manufacturer in April, 1 8 8 6, p.1 1-1 3, and(p.2 0 5-2 1 6)
“Enunciation of
Anticlinal Theory”should be highlighted.)
2016.5 Vol.50 No.3 22
石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)
執筆者紹介
本田 博巳(ほんだ ひろみ)
1975~2012年、石油資源開発(株)
、インドネシア石油(現・国際石油開発帝石〈株〉
)で主にインドネシアの探鉱プロジェクトに従事。
京都での2012年から3年半の修業の後、現在、さらに東京大学大学院新領域創成科学研究科で泥質岩に関連する地質諸現象について勉
強中。泥岩内での破棄物の封入技術評価、シェール資源の探鉱法への応用を考えている。身体の経年“劣化”により、野外調査がつら
と
くなりつつある。雪の降り出す直前、11月上旬に秋田で行う川沿いの地表調査など、還暦を疾うに過ぎた年寄りの冷や水も地球温暖化
に対する抵抗になろうかと思いつつ。趣味は将棋、読書など。博士(工学)
。
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