平成28年度 防衛関係費について

主計局主計官 堀内
特集
平成 28 年度
防衛関係費について
斉
1.はじめに
平成 28 年度の防衛関係費については、
「平成
26 年度以降に係る防衛計画の大綱について」及
び「中期防衛力整備計画(平成 26 年度~平成 30
2.防衛力整備に関する中長期的
枠組み
(1)平成 26 年度以降に係る防衛計画の
大綱
年度)について」
(平成 25 年 12 月 17 日国家安全
昨今の安全保障環境を踏まえた、おおむね 10
保障会議及び閣議決定)等を踏まえ、警戒監視能
年程度にわたる我が国の防衛の在り方の指針とし
力の強化や島嶼部における防衛態勢の強化等を図
て、平成 25 年 12 月に「平成 26 年度以降に係る
るとともに、厳しい財政事情の下、調達改革等を
防衛計画の大綱」(以下「大綱」という。)が決定
通じた一層の効率化・合理化を徹底し、対前年度
された。大綱では、今後の防衛力については、特
比+ 1.5%(+ 740 億円)の 5 兆 0,541 億円を計
に重視すべき機能・能力についての全体最適を図
上している。このうち SACO 関係経費*1(28 億
るとともに、シームレスかつ状況に臨機に対応し
円)、米軍再編関係経費 (1,766 億円)及び新
て機動的に行い得る実効的なものとしていくこと
たな政府専用機の取得経費(140 億円)を除いた
が必要であり、ハード及びソフト両面における即
部分は対前年度比+ 0.8%(+ 386 億円)の 4 兆
応性、持続性、強靱性及び連接性も重視した統合
8,607 億円となっている。
機動防衛力を構築するとされている。
*2
本稿では、防衛力整備に関する中長期的枠組み
あわせて、日米安全保障体制は我が国自身の努
を概観した上で、防衛関係費の三分類と新規後年
力とあいまって我が国の安全保障の基軸であり、
度負担、平成 28 年度予算における主要事業、自
①「日米同盟の抑止力及び対処力の強化」のた
衛官の定員等及び調達効率化への取組等について
め、日米防衛協力のための指針の見直しを進め、
概要を説明するとともに、防衛予算にかかる今後
日米防衛協力を更に強化していくこと、②海賊対
の課題を紹介する。
(図表 1:防衛関係費予算の
処、人道支援・災害救援といった分野のほか、海
ポイント(概要)
)
洋・宇宙・サイバー分野など「幅広い分野におけ
る協力の強化・拡大」を進めていくこと、③「在
日米軍駐留に関する施策の着実な実施」として、
在日米軍再編を着実に進め、米軍の抑止力を維持
*1)SACO 関係経費とは、沖縄に関する特別行動委員会(SACO:Special Action Committee on Okinawa)最
終報告に盛り込まれた措置を実施するために必要な経費を指す。
*2)米軍再編関係経費とは、「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」
(平成 18 年 5 月 30 日閣議
決定)及び「平成 22 年 5 月 28 日に日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取
組について」(平成 22 年 5 月 28 日閣議決定)に基づく再編関連措置のうち、地元の負担軽減に資する措置を実
施するために必要な経費を指す。
17
ファイナンス 2016.5 図表 1 防衛関係費予算のポイント(概要)
特集
○ 28 年度の防衛関係費は、5 兆 541 億円(+1.5%)
。中期防対象経費は、4 兆 8,607 億円(+0.8%)。
○中期防対象経費については、
「中期防衛力整備計画」に沿って、南西地域の島嶼部における防衛態勢の強化等を図る
とともに、装備品の調達の効率化等を推進。
○沖縄等の基地負担軽減等のために行う米軍再編事業等を着実に推進するため、所要の予算を措置。(1,794 億円)。
○在日米軍駐留経費負担(「思いやり予算」)については、新たな特別協定の締結に際し、福利厚生施設等で働く労働
者の負担人数削減や格差給・語学手当等の段階的廃止等の見直しを行う一方、米軍司令部等で働く労働者の負担人
数の増加等により、ほぼ現状維持。
○新規後年度負担については、将来における予算の硬直化を招きかねないことから、総額を抑制しつつ、メリハリを
徹底、2 兆 2,875 億円を計上(▲ 10.7%)。うち中期防対象経費は、2 兆 800 億円(▲ 9.6%)。
【28 年度防衛関係費】
50,541 億円
(+1.5%)
【27 年度防衛関係費】
49,801 億円
(+2.0%)
中期防対象経費の増
+386 億円(+0.8%)
(48,221 億円→48,607 億円)
米軍再編等経費の増
+322 億円
政府専用機の増
+32 億円
(うち中期防対象経費 +0.8%)
しつつ、地元の負担を軽減していくこと等が明記
中期防においては、大綱に示された防衛力の役
されている。特に、沖縄県については、安全保障
割にシームレスかつ機動的に対応するよう、各種
上極めて重要な位置にあり、米軍の駐留が日米同
事態における実効的な抑止及び対処を図るため、
盟の抑止力に大きく寄与している一方、在日米軍
①周辺海空域における安全確保、②島嶼部に対す
施設・区域の多くが集中していることを踏まえ、
る攻撃への対応、③弾道ミサイル攻撃への対応、
普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍施設・区域
④大規模災害等への対応、等を重点的に強化する
の整理・統合・縮小、負担の分散等により、沖縄
こととしており、その実施に必要な金額につき、
の負担軽減を図っていくとしている。
平成 25 年度価格でおおむね 24 兆 6,700 億円程度
このような方針に基づき、大綱においては、将
を目途としている。あわせて、調達改革を通じ、
来の主要な編成、装備等の具体的規模について、
一層の効率化・合理化を徹底した防衛力整備に努
図表 2 のとおり定めている。
(図表 2:平成 26 年
め、おおむね 7,000 億円程度の実質的な財源の確
度以降に係る防衛計画の大綱について(別表)
)
保を図ることとされた結果、本計画の下で実行さ
(2)中期防衛力整備計画
(平成 26 年度~平成 30 年度)
れる各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、お
おむね 23 兆 9,700 億円程度の枠内とすることと
されている。
上述の通り、大綱に定める防衛力の在り方がお
このような方針に基づき、中期防は、主要な装
おむね 10 年程度の期間を念頭に置いたものであ
備品の具体的整備規模について、図表 3 のとおり
ることを踏まえ、その当初 5 年間である平成 30
定めている。
(図表 3:中期防衛力整備計画(平
年度までの具体的な防衛力整備の計画として、
成 26 年度~平成 30 年度)について(別表))
「中期防衛力整備計画(平成 26 年度~平成 30 年
度)
」
(以下「中期防」という。
)が平成 25 年 12
月に決定された。
18 ファイナンス 2016.5
平成 28 年度予算特集③
平成 28 年度防衛関係費について
図表 2 平成 26 年度以降に係る防衛計画の大綱について(別表)
陸上自衛隊
機動運用部隊
現状(平成 25 年度末)
約 15 万 9 千人
約 15 万 1 千人
約 8 千人
中央即応集団
1 個機甲師団
基幹部隊
地域配備部隊
地対艦誘導弾部隊
地対空誘導弾部隊
護衛艦部隊
海上自衛隊
基幹部隊
主要装備
潜水艦部隊
掃海部隊
哨戒機部隊
護衛艦
(イージス・システム搭載護衛艦)
潜水艦
作戦用航空機
航空自衛隊
航空警戒管制部隊
基幹部隊
主要装備
戦闘機部隊
航空偵察部隊
空中給油・輸送部隊
航空輸送部隊
地対空誘導弾部隊
作戦用航空機
うち戦闘機
8 個師団
6 個旅団
5 個地対艦ミサイル連隊
8 個高射特科群 / 連隊
4 個護衛隊群(8 個護衛隊)
5 個護衛隊
5 個潜水隊
1 個掃海隊群
9 個航空隊
47 隻
(6 隻)
16 隻
約 170 機
8 個警戒群
20 個警戒隊
1 個警戒航空隊(2 個飛行隊)
12 個飛行隊
1 個飛行隊
1 個飛行隊
3 個飛行隊
6 個高射群
約 340 機
約 260 機
将 来
15 万 9 千人
15 万 1 千人
8 千人
3 個機動師団
4 個機動旅団
1 個機甲師団
1 個空挺団
1 個水陸機動団
1 個ヘリコプター団
5 個師団
2 個旅団
5 個地対艦ミサイル連隊
7 個高射特科群 / 連隊
4 個護衛隊群(8 個護衛隊)
6 個護衛隊
6 個潜水隊
1 個掃海隊群
9 個航空隊
54 隻
(8 隻)
22 隻
約 170 機
28 個警戒隊
1 個警戒航空隊(3 個飛行隊)
13 個飛行隊
-
2 個飛行隊
3 個飛行隊
6 個高射群
約 360 機
約 280 機
注 1:戦車及び火砲の現状(平成 25 年度末定数)の規模はそれぞれ約 700 両、約 600 両 / 門であるが、将来の規模はそれぞれ約 300
両、約 300 両 / 門とする。
注 2:弾道ミサイル防衛にも使用し得る主要装備・基幹部隊については、上記の護衛艦(イージス・システム搭載護衛艦)、航空警戒管
制部隊及び地対空誘導弾部隊の範囲内で整備することとする。
図表 3 中期防衛力整備計画(平成 26 年度~平成 30 年度)について(別表)
区 分
種 類
整備規模
機動戦闘車
99 両
装甲車
24 両
水陸両用車
52 両
ティルト・ローター機
17 機
陸上自衛隊
輸送ヘリコプター(CH-47JA)
6機
地対艦誘導弾
9 個中隊
中距離地対空誘導弾
5 個中隊
戦車
44 両
火砲(迫撃砲を除く。)
31 両
護衛艦
5隻
(イージス・システム搭載護衛艦)
(2 隻)
潜水艦
5隻
その他
5隻
海上自衛隊
自衛艦建造計
15 隻
(トン数)
(約 5.2 万トン)
固定翼哨戒機(P-1)
23 機
哨戒ヘリコプター(SH-60K)
23 機
多用途ヘリコプター(艦載型)
9機
新早期警戒(管制)機
4機
戦闘機(F-35A)
28 機
戦闘機(F-15)近代化改修
26 機
航空自衛隊
新空中給油・輸送機
3機
輸送機(C-2)
10 機
地対空誘導弾ペトリオットの能力向上(PAC-3 MSE)
2 個群及び教育所要
共同の部隊
滞空型無人機
3機
注:哨戒機能を有する艦載型無人機については、上記の哨戒ヘリコプター(SH - 60K)の機数の範囲内で、追加的な整備を行い得る
ものとする。
19
ファイナンス 2016.5 特集
区 分
編成定数
常備自衛官定員
即応予備自衛官員数
特集
3.防衛関係費の三分類と新規後
年度負担
部における防衛態勢の強化等を図るために必要と
なる機動戦闘車や新早期警戒機の取得、海上作戦
防衛関係費については、①人件・糧食費(隊員
センターの整備等に係る経費を計上するととも
等に支給される給与等及び営内で生活している隊
に、艦船や航空機を始めとする装備品の修理費の
員等の食事などに係る経費)
、②歳出化経費(過
増 加 等 の 結 果、 対 前 年 度 比 + 271 億 円 の 1 兆
去に締結した契約に基づいて生じる当年度の支払
0,692 億円となっている。
い)
、③一般物件費、の 3 分類により整理してき
平成 28 年度予算における新規後年度負担額は、
たところである。(図表 4:防衛関係費の推移(3
対前年度比で▲ 2,749 億円(▲ 10.7%)の 2 兆
分類))
2,875 億円となっている。この内訳は、航空機の
平成 28 年度予算では、人件・糧食費について
まとめ買いなど主要装備品に係る経費が 9,855 億
は、民間準拠を基本とする人事院勧告を踏まえた
円(対前年度比▲ 2,248 億円)
、その他の装備品
給与改定等により、対前年度比+ 351 億円である
に係る経費(修理費・通信維持費)が 1 兆 0,945
2 兆 1,473 億円となっている。また、歳出化経費
億円(対前年度比+ 50 億円)
、SACO・米軍再編
については、艦船建造や航空機購入に係る今年度
関係経費及び政府専用機取得経費が 2,075 億円
の支払額の増加等により、対前年度比+ 118 億円
(対前年度比▲ 550 億円)等となっている。(図表
となる 1 兆 8,377 億円となっている。さらに、一
5:後年度負担の推移)
般物件費については警戒監視能力の強化及び島嶼
図表 4 防衛関係費の推移(3 分類)
【歳出予算】
(単位:億円)
24 年度予算
一般会計
人件・糧食費
歳出化経費
一般物件費
防衛関係費
(増▲減額)
(伸率%)
復旧・
復興経費
20,701
(▲215)
-
16,655
(▲3)
1,124
9,782
25 年度予算
一般会計
20,701
19,896
(▲215) (▲806)
26 年度予算
復旧・
復興経費
一般会計
-
19,896
20,930
(-) (▲806) (+1,034)
27 年度予算
復旧・
復興経費
一般会計
-
20,930
21,121
(-) (+1,034) (+192)
28 年度予算
復旧・
復興経費
一般会計
-
21,121
21,473
(-) (+192) (+351)
復旧・
復興経費
-
21,473
(-) (+351)
17,779
17,149
972
18,121
17,944
367
18,311
18,260
329
18,589
18,377
115
18,492
(+1,121) (+494) (▲152) (+341) (+796) (▲605) (+191) (+316) (▲38) (+277) (+118) (▲214) (▲97)
12
9,793
(▲396)
10,493
280
10,773
9,974
4
9,978
10,420
(▲385) (+712) (+268) (+980) (▲519) (▲276) (▲795) (+446)
-
10,420
10,692
(皆減) (+443) (+271)
-
10,692
(-) (+271)
47,138
1,136
48,274
47,538
1,252
48,789
48,848
371
49,219
49,801
329
50,130
50,541
115
50,656
(▲614) (+1,136) (+522) (+400) (+115) (+515) (+1,310) (▲881) (+429) (+953) (▲42) (+911) (+740) (▲214) (+526)
(▲1.29)
(皆増)
(1.09)
(0.85) (10.17)
(1.07)
(2.76)(▲70.36)
(0.88)
(1.95)(▲11.36)
(1.85)
(1.49)(▲65.14)
(1.05)
うち、SACO・米軍再編関係経費及び政府専用機関係経費
SACO・米軍再編
関係経費
(増▲減額)
(伸率 %)
685
-
685
734
-
734
1,010
-
1,010
1,472
-
1,472
1,794
-
1,794
(▲442)
(▲442)
(+49)
(+49) (+276)
(+276) (+462)
(+462) (+322)
(+322)
(▲39.21)
(▲39.21)
(7.15)
(7.15) (37.53)
(37.53) (45.80)
(45.80) (21.87)
(21.87)
政府専用機関係経費
108
108
140
48,550
48,607
140
うち、SACO・米軍再編関係経費及び政府専用機関係経費を除く既存経費
既存経費
(増▲減額)
(伸率 %)
46,453
1,136
47,589
46,804
1,252
48,055
47,838
371
48,209
48,221
329
115
48,722
(▲172) (+1,136) (+964) (+351) (+115) (+466) (+1,035) (▲881) (+154) (+383) (▲42) (+341) (+386) (▲214) (+172)
(▲0.37)
(皆増)
(2.07)
(0.76) (10.17)
(0.98)
(2.21)(▲70.36)
(0.32)
(0.80)(▲11.36)
(0.71)
(0.80)(▲65.14)
(0.35)
(注)1.
( )は対前年度予算増▲減額及び伸率である。
2.24 年度予算の歳出化経費のうち 3 億円、新規後年度負担のうち 7 億円、25 年度予算の一般物件費のうち 0.02 億円、歳出化経
費のうち 6 億円、新規後年度負担のうち 1 億円、26 年度予算の一般物件費のうち 0.1 億円、歳出化経費のうち 10 億円は財務
省計上のもの(札幌病院の建替え)である。
3.25 年度予算については予算計上ベースであり、各会計間の重複(689 億円)を考慮していない。
4.計数は、四捨五入のため、合計と符合しない場合がある。
20 ファイナンス 2016.5
平成 28 年度予算特集③
平成 28 年度防衛関係費について
図表 5 後年度負担の推移
既定分
年度
主要装備品等
伸率
24
25
26
27
28
伸率
[17,253] [▲ 0.3] [6,856]
18,476
6.8
6,856
伸率
伸率
[6.5][10,397] [▲ 4.3][13,106]
6.5
11,620
6.9
17,299
21,733
[23,206]
25,623
▲ 6.4
6,009
[17.8] [8,560]
25.6
9,915
[13.9] [9,686]
17.9
12,103
▲ 12.4
11,290
[42.5][11,818]
65.0
11,818
[13.2][13,521]
22.1
13,521
▲ 2.8
13,106
1.5
▲ 10.7
9,855
▲ 18.6
13,020
[0.5]
31,583
4.5
[5.2][31,087]
15,009
14.5
[2.4]
32,308
2.3
[4.7][13,343] [▲ 3.2][33,721]
4.7
14,572
▲ 2.9
[14.4][16,317]
14.4
18,011
23.6
▲ 3.7
[8.5]
36,304
[22.3][39,523]
[21,734] [▲ 6.3] [8,834] [▲ 8.8][12,899] [▲ 4.6][18,842]
22,875
伸率
[1.5][30,359]
[13,788]
[20,378]
合計
その他
12.4
[17.2]
43,635
[15.5][40,576]
23,662
31.4
46,537
20.2
[2.7]
6.7
(注)1.計数は四捨五入によっているので符合しない場合がある。
2.SACO、米軍再編(地元負担軽減に資する措置)経費を含む。また、復旧復興にかかるものは除く。
3.財務省計上分としてその他に 24 年度 7 億円、25 年度 1 億円を含む。
4.24 年度新規後年度負担の上段[ ]は、X バンド衛星通信の整備・運営事業に係る額(1,224 億円)を除いた額である。
5.26 年度新規後年度負担の上段[ ]は、政府専用機の調達に係る額(1,355 億円)を除いた額である。
6.27 年度新規後年度負担の上段[ ]は、固定翼哨戒機(P - 1)の長期契約による増分(2,417 億円)を除いた額である。
7.28 年度新規後年度負担の上段[ ]は、哨戒ヘリコプター(SH-60K)
(1,020 億円)
、特別輸送ヘリコプター(EC-255LP)の
PBL(43 億円)及び練習ヘリコプター(TH-135)の PBL(56 億円)の長期契約による増分並びに、政府専用機の調達に係
る額(22 億円)を除いた額である。
8.24 年度以降の既定分における上段[ ]は、上記 4.
、5.、6.及び 7.にかかる翌年度以降における既定分を各々除いた額で
ある。
図表 6 自衛隊の能力等に関する主要事業(計数は契約ベース)
(1)周辺海空域における安全確保
※計数はいずれも初度費除きの数字
④迅速な展開・対処能力の向上
・哨戒ヘリコプター(SH-60K)17 機の取得(1,026 億円)
・ティルト・ローター機(V-22)4 機の取得(447 億円)
・新哨戒ヘリコプターの開発(244 億円)
・輸送機(C-2)1 機分の機体構成品等の取得(87 億円)
・新早期警戒機(E-2D)1 機の取得(260 億円)
・機動戦闘車 36 両の取得(252 億円)
・早期警戒管制機(E-767)の能力向上(61 億円)
・水陸両用車(AAV7)11 両の取得(78 億円)
・滞空型無人機(グローバルホーク)システムの一部の取得
・水陸両用作戦関連部隊等の整備(106 億円)
(146 億円)
・南西警備部隊の配置(195 億円)
・イージス・システム搭載護衛艦(DDG)1隻の取得(1,734 億円)
・潜水艦(SS)1 隻の建造(636 億円)
(2)島嶼部に対する攻撃への対応
①常続監視体制の整備
(3)弾道ミサイル攻撃への対応
弾道ミサイル攻撃への対応
・イージス・システム搭載護衛艦 2 隻の能力向上(77 億円)
・与那国島の沿岸監視部隊に関連する施設の整備(55 億円)
・BMD 用能力向上型迎撃ミサイル(SM-3Block Ⅱ A)の日米共
・新早期警戒機(E-2D)の取得(再掲)
・滞空型無人機(グローバルホーク)システムの一部の取得(再掲) 同開発の継続(15 億円)
・PAC-3 ミサイルの再保証(65 億円)
②航空優勢の獲得・維持
・戦闘機(F-35A)6 機の取得(1,084 億円)
※その他関連経費(整備用器材等)として、別途 307 億円
・新空中給油・輸送機(KC-46A)1 機分の機体構成品等の取得
(231 億円)
・救難ヘリコプター(UH-60J)8 機の取得(350 億円)
・11 式短距離地対空誘導弾 1 式の取得(40 億円)
③海上優勢の獲得・維持
・哨戒ヘリコプター(SH-60K)の取得(再掲)
・イージス・システム搭載護衛艦(DDG)、潜水艦(SS)の建造
(再掲)
・12 式地対艦誘導弾 1 式の取得(120 億円)
・可変深度ソーナーシステムの開発(85 億円)
ゲリラ・特殊部隊による攻撃への対応
・機動戦闘車の取得(再掲)
・NBC 兵器による攻撃への対処(10 億円)
・個人用装備の取得(9 億円)
・新多用途ヘリコプターの共同開発(129 億円)
(4)大規模災害等への対応
・災害時における機能維持・強化のための耐震改修等の促進
(130 億円)
・美保基地における災害対処拠点の整備(36 億円)
・ティルト・ローター機(V-22)、水陸両用車(AAV7)、哨戒ヘ
リコプター(SH-60K)、救難ヘリコプター(UH-60J)、輸送機
(C-2)1 機分の機体構成品等の取得(再掲)
・野外手術システム 1 式の取得(3 億円)
21
ファイナンス 2016.5 特集
(単位:億円、%)
新規後年度負担
図表 7 主要装備品(主なもの)の整備規模
特集
区分
種 類
陸上自衛隊
海上自衛隊 航空自衛隊
27 年度
28 年度
機動戦闘車
-
36 両
輸送防護車
-
4両
水陸両用車(AAV7)
30 両
11 両
ティルト・ローター機(V-22)
5機
4機
12 式地対艦誘導弾
-
1式
03 式中距離地対空誘導弾
1 個中隊
-
11 式短距離地対空誘導弾
1式
1式
中距離多目的誘導弾
12 セット 12 セット
10 式戦車
10 両
6両
99 式自走 155mm りゅう弾砲
6両
6両
護衛艦(8,200 トン型)
1隻
1隻
潜水艦(2,900 トン型)
1隻
1隻
固定翼哨戒機(P-1)
20 機
-
哨戒ヘリコプター(SH-60K)
2機
17 機
新早期警戒機(E-2D)
1機
1機
戦闘機(F-35A)
6機
6機
戦闘機(F-15)近代化改修
(8 機)
-
基地防空用地対空誘導弾
1式
-
(注)1.
( )書きは、既装備品の改善に係る機数を示す。
2.27 年 度 に お い て は、 上 記 整 備 数 量 の ほ か、 護 衛 艦
(8,200 トン型)について、イージス・システムを取得
するとともに、共同の部隊の装備として、滞空型無人
機(グローバルホーク)システムの一部を取得。
3.28 年度においては、上記整備数量のほか、新空中給
油・輸送機(KC-46A)について、1 機分の機体構成品
等を取得するとともに、共同の部隊の装備として、滞空
型無人機(グローバルホーク)システムの一部を取得。
4.平成 28 年度予算における主
要事業
平成 28 年度予算では、前述の方針に沿い、防
衛力整備等を着実に推進するために必要な事業を
推進しているところ、その主な内容は下記の通り
・潜水艦(SS)の建造(1 隻:636 億円)
東シナ海をはじめとする周辺海域の警戒監視
能力等の強化のため、「そうりゅう」型 12 番艦
(2,900 トン)を建造。
・新早期警戒機(E-2D)の取得(1 機:260 億円)
南西地域をはじめとする周辺空域の警戒監視
能力の強化のため、新早期警戒機を取得。
・滞空型無人機(グローバルホーク)システムの
一部の取得(3 機分の機体構成品等:146 億円)
広域における常続監視能力の強化のため、滞
空型無人機(グローバルホーク)システムの一
部を取得。
(2)島嶼部に対する攻撃への対応
島嶼部に対する攻撃へ対応するため、常続監視
体制の整備、航空・海上優勢の獲得・維持、迅速
な展開・対処能力の向上、指揮統制・情報通信体
制の整備を実施。
・戦闘機(F-35A)の取得(6 機:1,084 億円)
現有する戦闘機(F-4)の減勢に対応し、戦
闘機部隊を維持するとともに、抑止力及び対処
能力を向上させるため、後継機として戦闘機
(F-35A)を取得。
・ティルト・ローター機(V-22)の取得(4 機:
447 億円)
(図表 6:自衛隊の能力等に関する主
である*3。
輸送ヘリコプターの輸送能力を速度や航続距
要事業、図表 7:主要装備品(主なもの)の整備
離の観点から補完・強化し、水陸両用作戦にお
規模)
ける部隊の展開能力を強化するため、ティル
(1)周辺海空域における安全確保
ト・ローター機を整備。
・機動戦闘車の取得(36 両:252 億円)
我が国周辺の海空域において、切れ目のない監視
機動運用を基本とする作戦基本部隊等の機動
態勢を構築するため、情報収集や警戒監視態勢の
展開能力を強化するため、航空機等での輸送に
強化に必要な装備品の取得等を実施。
適した機動戦闘車を取得。
・哨戒ヘリコプター(SH-60K)の取得(17 機:
1,026 億円)
・与那国島の沿岸監視部隊に関連する施設の整備
(55 億円)
現有の海自哨戒ヘリコプター(SH-60J)の
南西海域における各種兆候の早期察知機能の
後継機として、対潜探知能力や攻撃能力が向上
強化に向け、付近を通行する艦船や航空機の監
した SH-60K を取得。
視を行う沿岸監視部隊を与那国島に新編するた
*3)予算額は、(5)及び(6)を除き、契約額ベース(初度費を除く)。
22 ファイナンス 2016.5
平成 28 年度予算特集③
平成 28 年度防衛関係費について
めに必要となる関連施設を整備。
弾道ミサイル攻撃に対し、我が国全体を多層
航続距離や搭載重量等を向上させた輸送機を取
得し、有事における機動展開等に対応できる態
勢を整備。
的・持続的に防護する体制を強化するとともに、
・水陸両用車(AAV7)の取得(11 両:78 億円)
ゲリラ・特殊部隊による攻撃に対応する態勢を整
災害時における島嶼部、浸水地域への部隊派
備。
遣能力を向上するため、海上機動性及び防護性
・イージス・システム搭載護衛艦(DDG)の建
に優れた水陸両用車を整備。
造(1 隻:1,734 億円)
弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図
・災害時における機能維持・強化のための耐震改
修等の促進(130 億円)
り、我が国を多層的かつ持続的に防護する体制
災害救助活動の拠点となり得る庁舎、隊舎等
を強化するため、イージス・システム搭載護衛
について、機能維持や強化を図るための耐震改
艦(8,200 トン)を建造。
修等を実施。
・イージス・システム搭載護衛艦の能力向上(2
隻:77 億円)
(5)基地対策等の推進
平成 24 年度に着手した「あたご」型護衛艦
基地対策等に係る平成 28 年度予算は、4,509
2 隻の弾道ミサイル対応に向けた改修を引き続
億円(対前年度比+ 84 億円)であり、防衛関係
き実施。
費に占める割合は 1 割弱程度となっている。
・PAC-3 ミサイルの再保証(65 億円)
本事業においては、自衛隊や防衛施設の運用等
PAC-3 ミサイルについて、耐用期限の到来し
により発生する障害の防止等を図るため、基地周
た部品を交換するとともに、全体の点検を実施
辺対策として住宅防音や周辺環境整備を実施する
し、所要数を確保。
(1,192 億円)とともに、防衛施設用地等の借り
・新多用途ヘリコプターの共同開発(129 億円)
上げや水面を使用して訓練を行うことによる漁業
現有する陸自多用途ヘリコプター(UH-1J)
補償等を実施している(1,397 億円)ところであ
の後継として、各種事態における空中機動及び
大規模災害における人命救助等に使用する新多
用途ヘリコプターを開発。
(4)大規模災害等への対応
る。
なお、在日米軍駐留経費負担(「思いやり予算」)
については、平成 28 年度から 32 年度までの 5 年
間を期限とする新たな特別協定(
「日本国とアメ
リカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第
各種の災害に際して、十分な規模の部隊を迅速
六条に基づく施設及び区域並びに日本国における
に輸送・展開するとともに、統合運用を基本とし
合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条につい
つつ、要員のローテーション態勢を整備すること
ての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ
で、長期間にわたり、持続可能な対処態勢を構築。
合衆国との間の協定」
(平成 28 年 4 月 1 日))にお
・救難ヘリコプター(UH-60J)の取得(8 機:
いて、福利厚生施設等で勤務する労働者について
350 億円)
我が国が負担する人数の削減や格差給・語学手当
救難態勢を維持・強化するとともに、多様な
等の段階的廃止等といった見直しを行う一方で、
事態に実効的に対処し得る態勢を整備するた
米軍司令部等で勤務する労働者について我が国が
め、救難ヘリコプターを取得。
負担する人数の増加等により、ほぼ現状維持とし
・輸送機(C-2)の取得(1 機分の機体構成品等:
87 億円)
たところである。平成 28 年度予算では、人事院
勧告等の影響により労務費全体が増加しているこ
23
ファイナンス 2016.5 特集
(3)弾道ミサイル攻撃等への対応
現有する空自輸送機(C-1)の後継機として、
とを踏まえ、対前年度比+ 21 億円の 1,920 億円
特集
を計上している。
・陸上自衛隊においては、島嶼部への侵攻があっ
た場合に速やかに上陸・奪回・確保するための
(6)米軍再編等の推進
水陸両用作戦に係る機能を強化するための要員
の充足(40 人)
米軍の再編等に関しては、その抑止力を維持し
・海上自衛隊においては、南西地域における警戒
つつ、沖縄県をはじめとする地元の負担軽減を図
監視態勢等を強化する艦艇、潜水艦の増勢に対
るため、在日米軍の兵力態勢の見直し等について
応するための要員の充足(77 人)
の具体的措置を着実に推進することとし、平成
・航空自衛隊においては、対領空侵犯措置等の各
28 年度予算では、下記の事業を実施するため、
種事態への防空態勢を充実させ、即応性の向上
対前年度比+322億円の1,794億円を計上している。
を図るとともに、警戒監視態勢を強化するため
・SACO 関係経費(28 億円)
の要員の充足(79 人)
SACO 最終報告(平成 8 年 12 月 2 日)に盛り
また、防衛政策上の喫緊の課題に対応するた
込まれた措置のうち、日米安全保障協議委員会
め、ヨルダン、UAE 及びモンゴルに防衛駐在官
(いわゆる「2+2」)共同文書による変更がない
ものについて、着実に実施。
・米軍再編関係経費(1,766 億円)
在沖米海兵隊のグアム移転、普天間飛行場の
を派遣することとしている。
6.調達効率化の促進
平成 28 年度においては、装備品取得の全般に
移設、厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載
わたり、一層の合理化・効率化を図るため、各種
機の移駐等を推進。
の取組を推進し、同年度以降で 1,500 億円のコス
5.自衛官の定員等
自衛隊の定員は、厳しさを増す安全保障環境を
踏まえ、大綱及び中期防に従って、充実及び強化
を図っている。航空自衛隊において、宇宙監視シ
ステムの整備に向けた準備態勢の強化のため増員
(3 人)を行う一方で、効率化・合理化の取組等
により減員(▲ 3 人)を行うなど、自衛官の定員
を増やすことなく、求められる多様な任務にしっ
かりと対応できるよう、防衛力整備に必要な体制
を構築することとしている。
自衛官の実員は、大綱及び中期防を踏まえ、南
ト縮減を図ることとしている。主な取組内容は下
記の通りとなっている。
(図表 8:中期防期間中
における調達改革について)
(1)長期契約を活用した装備品等及び役
務の調達〔縮減見込額:148 億円〕
・哨戒ヘリコプター(SH-60K)17 機の一括調達
〔縮減見込額:114 億円〕
一括調達による材料費、労務費等の減少によ
り、調達コストを縮減。
・PBL への長期契約の導入〔縮減見込額:34 億円〕
陸自輸送ヘリコプター(EC-225LP(3 機)
)
西地域における警戒監視態勢及び実効的な対処能
及び海自練習ヘリコプター(TH-135(15 機))
力の充実・強化を図るため、平成 28 年度におい
につき、機体部品の取得・修理及び機体の整備
て、関連する自衛隊の部隊において 196 人の実員
等に関する包括的な契約(PBL:Performance
を増員することとしている 。
Based Logistics)を導入し、これらに要する
*4
この実員の増員に伴う配置先は以下のとおりで
コストを縮減。
ある。
*4)自衛官の定員とは自衛隊の任務遂行に必要な自衛官の人員数、実員とは実際に配置する自衛官の予算上の人員数
をいい、予算編成においては実員に基づいて人件費の積算を行っている。
24 ファイナンス 2016.5
平成 28 年度予算特集③
平成 28 年度防衛関係費について
図表 8 中期防期間中における調達改革について
26 年度
27 年度
28 年度予算
81 億円
336 億円
432 億円
装備品のまとめ買い
331 億円
350 億円
465 億円
民生品の使用・仕様の見直し
250 億円
423 億円
455 億円
長期契約制度の導入
-
417 億円
148 億円
PM/IPT 制度の導入
国際共同開発・生産の推進
-
-
-
29 年度
30 年度
特集
施策の例
維持・整備方法の見直し
(ロジスティクスの改革)
2 年度間の要効率化額
3,310 億円
(単年度あたり 1,655 億円)
単年度計
660 億円
1,530 億円
1,500 億円 達成率 52.7%
累 計
660 億円
2,190 億円
3,690 億円
7,000 億円
中期防衛力整備計画(平成 26 年度~平成 30 年度)
Ⅵ 所要経費
1 この計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、平成 25 年度価格でおおむね 24 兆 6,700 億円程度を目
途とする。
2 本計画期間中、国の他の諸施策との調和を図りつつ、調達改革等を通じ、一層の効率化・合理化を徹底した防衛
力整備に努め、おおむね 7,000 億円程度の実質的な財源の確保を図り、本計画の下で実施される各年度の予算の
編成に伴う防衛関係費は、おおむね 23 兆 9,700 億円程度の枠内とする。
3 この計画については、3 年後には、その時点における国際情勢、情報通信技術を始めとする技術的水準の動向、
財政事情等内外諸情勢を勘案し、必要に応じ見直しを行う。
(2)維持・整備方法の見直し〔縮減見込
額:432 億円〕
・PBL の新規導入〔縮減見込額:64 億円〕
陸自戦闘ヘリコプター(AH-64D)の搭載機
器について、PBL を導入し、維持・整備コスト
を縮減。
(3)装備品のまとめ買い〔縮減見込額:
465 億円〕
・艦対空ミサイル(SM-2)のまとめ買い〔縮減
見込額:312 億円〕
減少により、調達コストを縮減。
(4)民生品の使用・仕様の見直し〔縮減
見込額:455 億円〕
・作戦用通信回線統制システム整備時の仕様の見
直し〔縮減見込額:124 億円〕
作戦用通信回線統制システムについて、これ
まで別個に整備していた交換機と無線制御装置
を一体化することを通じ、調達コストを縮減。
・ネットワーク運用支援器材への民生品の活用
〔縮減見込額:29 億円〕
イージス艦に搭載予定の対空ミサイル(SM-
戦闘機用データリンクの運用支援器材を取得
2)について、平成 28 年度から 30 年度にかけ
するに際し、その一部を民生品とすることを通
て調達が必要となる数量を一括調達し、材料
じ、コストを縮減。
費、労務費等の減少により、調達コストを縮
減。
・救難ヘリコプター(UH-60J)のまとめ買い
〔縮減見込額:37 億円〕
7.今後の課題
大綱及び中期防でも言及されているとおり、格
段に厳しさを増す財政事情を勘案し、一層の効率
平成 28 年度から 30 年度にかけて調達が必要
化等を徹底した防衛力整備が求められている。こ
となる 8 機を一括調達し、材料費、労務費等の
のような状況を踏まえ、
「特定防衛調達に係る国
25
ファイナンス 2016.5 平成 28 年度予算特集③
平成 28 年度防衛関係費について
庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特
施。〔403 億円〕
特集
別措置法」
(平成 27 年法律第 16 号)の活用など
・給与改定に伴い不足する自衛隊員等の給与、為
により、一括調達を通じたコストの削減を図って
替レートの変動に伴い不足する外貨関連経費、
きている。
災害により被災した装備品の復旧経費等を計
反面、こうした取組の結果、後年度負担額が過
上。〔544 億円〕
度に増加した場合には、将来における歳出化経費
の過剰な上昇を招き、ひいては防衛予算の硬直化
に至ることも懸念される。平成 28 年度予算では、
前述の通り、新規後年度負担額を大幅に抑制した
ところであるが、平成 29 年度以降においても、
防衛関係費について、硬直化を回避し、持続可能
な水準に収まるよう、各年度の予算総額に加え
て、新規の後年度負担についても、適正化に努め
ていく必要がある。
(参考)平成 27 年度補正予算について
平成 27 年度補正予算においては、①自衛隊の
災害対処能力の回復、②自衛隊の安定的な運用態
勢の確保等を図るため、1,966 億円を計上してい
る。主な事業は以下のとおりである。
・全国各地で発生した災害への対処等により損耗
が進んでいる装備品の回復や災害対処能力の向
上 等 を 図 る た め、 輸 送 ヘ リ コ プ タ ー(CH47JA)
、多用途ヘリコプター(UH-60JA)及
び救難ヘリコプター(UH-60J)を整備すると
ともに、救難飛行艇(US-2:1 機)
、軽装甲機
動 車(38 両 )
、NBC*5 偵 察 車(1 両 ) 及 び 96
式装輪装甲車(8 両)等を調達。
〔494 億円〕
・厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、警戒監視
態勢の強化、テロ等への対処能力の向上等自衛
隊の安定的な運用態勢の確保を図るため、情報
収集体制の整備及び多用機(OP-3C 及び EP-3)
に搭載する情報収集機材の老朽化対策等を実
施。〔526 億円〕
・米軍所在地域の負担軽減を迅速かつ的確に実施
するため、厚木飛行場から岩国飛行場への空母
艦載機の移駐に伴う施設整備、嘉手納飛行場に
おける海軍駐機場の移転に伴う施設整備等を実
*5)NBC:核(nuclear)、生物(biological)、化学物質(chemical)による特殊災害を指す。
26 ファイナンス 2016.5