Title Ehrlich腹水癌に対する家兎抗血清と制癌剤の併用に関す る実験的

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Ehrlich腹水癌に対する家兎抗血清と制癌剤の併用に関す
る実験的研究( Abstract_要旨 )
土橋, 修
Kyoto University (京都大学)
1966-11-24
http://hdl.handle.net/2433/212024
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【17
氏)
橋
はし
学
8
】
学 位 の 種 類
土
つち
医
学 位 記 番 号
論
学位授与 の 日付
昭 和 41 年 11 月 24 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
E h rlich 腹水 癌 に対す る家兎抗 血 清 と制癌剤 の併 用 に
関す る実験 的研究
論文 調査 委員
教(㌔ 等
医
論
修)
お きむ
士
博
博
第 327 号
圧 一 夫
文
内
教 授 木 村 忠 司
容
の
要
教 授 半 田
肇
旨
免疫療法 と化学療法 の併用 によ り, 担癌 動物 に, 著明な延命効果を認めた報 告 が 若 干 あ るが , この場
令 , 制癌効果増強がいかなる機序で行なわれ るかば, 不 明のまま放 置されている。 本実験 は, この点を解
明す るため , 担癌 マウスにて, 抗血清 と制癌 剤 (M itom ycin C 或いは E ndoxan) の単独投与時 , および,
同時併用投与時 における, 腺癌細胞の形態学的変化を, 光学顕微鏡で , 経時的 に比較観察 し, 細胞効果 と
延命効果 の相互関係を追究 した。 担癌 マウスは, E hrlich 癌細胞 5 ×106 個移植群 (普通量移植群) と,
2 ×1 0 5 個移植群 (少量移植群 ) に分 け, 実験 は, 腫療接種後 4 或いは 7 日目に治療 を行な った末期治療
実験 と, 接種後48 時間 目に治療 を行な った早期治療実験 に分 けた。 実験動物の生存 目数 は, 対照帯 , 抗血
清単独投与群 , 制癌剤単独投与群 , 併用群 の順 に延長 した。 併用群 における延命効果 は, 末期治療実験で
は著 明でなか ったが, 早期治療実験では顕著であ った。 細胞学的には, 抗血清単独投与群では, 処 置後短
時間内に, 腫癌細胞の多数 は, 変性 , 死滅 した。 変性 の程度 は, 腫癌細胞増殖 が軽度であるほど, また,
抗血清投与 量 が 大 量 とな る ほ ど 著 明 で あ った が, 大量の抗血清を投与 して も, 抗体 の作用を受 けない
refractory cells が, 腰湯細胞の約 4 % に認め られた。 制癌剤単独投与群 に お い て は, 投 与 後数時間よ
り数 日にわ た り, 分裂指数 の低下および異常分裂の増加を見 た。 併用群 においては, 処 置後短時間内に,
抗血清単独投与群 に類似す る腫癌細胞の変性 を , 続 いて制癌剤単独投与群 と同様 の, 分裂指数 の低下 , 異
常分裂の増加 を認めた。 この場合 , 抗血清 の作用 によ り, 早期 に, 多数 の腫癌細胞が死滅す るため, 抗血
清 の作用をまぬがれた残部の細胞 に対す る制癌剤の作用効果 が問題 とな るが, 本実験 における観察の範 囲
内では, 制 癌 剤 単 独 投 与 時 の細胞変化 と著 しく異 なる点 は認めがた く, 抗血清 と制癌剤 は, 互 いに独立
に, 時相を異 に して腫癌細胞 に作用す るごと く見受 け られた。
一般 に, 担癌動物 において , 腫癌細胞数 が少数 の場合 には, 制癌剤 による延命効果 が極 めて顕著 に現わ
れ ることが知 られてお り(少数細胞効果) , 抗血清 と制癌剤の併用時 において , 形態学的には, 抗血清 と制
癌剤の作用 は相加的で あるにかかわ らず , 著 明な延命効果 を もた らしうる事実 は, 抗血清のため, 短時間
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内に大多数 の腫癌細胞が死滅 し, 残 った少数 の腫癌細胞 に制癌剤 が作用す るため と考えれば, 説 明可能で
ある。 本実験では, いかに大量 の抗血清 を使用 して も, 腫癌細胞 の 4 % 以上は, 抗血清 の作用 をまぬがれ
るため, 普通量移植一併用群 に対 し, 普通移植量の 4 % に相 当す る少量移植群 に制癌剤 のみを単独投与 し
たが, 前者 において, 後者 にまさる延命効果 , 或いは細胞効果 を認 め得 なか った。 この ことは, 併用群 に
おいて, 少数細胞効果以上の刺痛効果 を もた らし得なか ったことを示す。 末期治療実験 において , 延命効
果 が顕著でなか ったのは, 腫癌細胞数 が著 しく多 く, 十分大量 の抗血清 を投与 しえなか ったので , 抗血清
の作用 をまぬがれ る腫場細胞が多 く, 少数細胞効果 が十分現われなか ったため と考 え られ る。 従来 の文献
において, 抗血清 に種 々の作用機序 の異 る制癌剤を併用 した場合 , 制癌剤 のいかんにかかわ らず , すべ て
同様の延命効果 を認めた事実 , 或いは, 一定量以上の抗血清を投与 して も, よ り以上の延命効果 を認めな
か った事実 は, 抗血清 と制癌剤 の併用効果 が, 少数細胞効果 によるとす る説 の妥 当性 を示す もので ある。
以上 よ り, 異種抗血清 と制癌剤の併用時 における制癌効果 は相加的で あ り, この場合見 られ る顕著な延
命効果 は, 少数細胞効果 によ り説 明 しうると結論 したO
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
免疫療法 と化学療法 の併用 は担癌動物 に著明な延命効果 を もた らす が, その作用機序を解 明す るため ,
担癌 マウスに抗血清 と制癌剤
(M itom ycin C, Endoxan) を単独 にあるいは同時 に併用 して投与 し, 腫癌
細胞の形態学変化を経時的 に比較観察 し, 細胞効果 と延命効果 の相互 関係を追究 した。
抗血清単独投与では短時間 内に腫癌細胞の多数 は変性死滅 し, 腰癌細胞増殖 が軽度で あるほど, 投与量
が大なるほど著明で あるが , 大量で も抗体 の作用を受 けない細胞が 4 % あ った。 制癌剤単独投与で は数時
間 よ り数 日間 にわ た り分裂数 の低下 および異常分裂の増加 をみた。 併用投与で は短時間後 に変性 を , 続 い
て分裂数 の低下を認め, 抗血清の作用をまぬがれた細胞 に対す る制癌剤 の効果 も, 制癌剤単独投与時 と異
な る点 は認めがた く, 抗血清 と制癌剤 は独立的 に時相を異 に して作用す るもの と判 断された。 また抗血清
のため短時間 内に大多数 の腫癌細胞が死滅 し, 残 った少数腫癌細胞 に制癌剤が作用 したため併用法では著
明な延命効果 を得 られた もの と理解 された。
以上 よ り, 異種抗血清 と制癌剤の併用 による制癌効果 は相加的で あ り, 顕著な延命効果 は少数細胞効果
によることが判 明 した。
本論文 は学問的 に有益で あ って医学博士 の学位論文 と して価値 ある もの と認定す る。
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