Title 国家と宗教( Abstract_要旨 ) - Kyoto University Research

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国家と宗教( Abstract_要旨 )
中山, 健男
Kyoto University (京都大学)
1966-03-23
http://hdl.handle.net/2433/211746
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
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学 位 の 種 類
法
学
博
学 位 記 番 号
論 法 博 第 10 号
学位授与 の 日付
昭 和
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題目
国家 と宗教
論 文 調 査 委員
教 授 大 石 義 雄
越年
3 月 23 日
(主 査)
論
文
教 授 加 藤 新 平
内
容
の
要
教 授 杉 村 敏 正
旨
この論文 は, 2 章 か ら成 り, 算 1 葦では, 諸外国 における政教 関係 についてのべ, 第 2 章では, わが国
におけ る政教分離 についてのべてい る。
第 1 茸 は, 9 節 か ら成 り, 算 1 節で は, 序説 として, 諸国の政教 関係 が複雑多様で あ り, これを分類す
る上 に, 非 常な困難を伴 う所以 についてのべ, その中で, 政教非分離国中スペ イン とイギ リス を と り 上
げ, 政教分離国か らは, ドイツ ・ アメ リカ合衆国 ・ スイス ・ フランス ・ ソ連 の 5 か国を とり上 げ る理 由を
のべている。
算 2 節で は, スペ インの場合 を とり上 げてい る
。
ここで は, 分離がほ とん ど行 われず, したが って, 信
教の 自由に も支 障を来 たす典型的な例であ るとしてい る。
第 3 節で は, イギ リスの場合 を とり上 げてい る。 ここで は, イギ リスにおけ る新 旧両教の対立 か ら, 国
教制の確立 に至 るい きさつ, 東 に国教派 と非国教派 の対立 を通 じて, 次第 に宗教的寛 容 と平等 が実現 され
て来 たいきさつをのべてい る
。
斗
第 4 節で は, ドイツの場合 を とり上 げて い る。 ここでは, 教皇権 と皇帝権 との争 い, 宗教改革以後 の新
旧両教の争 いを経て, 両教が国家 によ り平等 の地位を認め られ, やがて, 徐 々に, 政教分離体制が確立 さ
れ るに至 るい きさつをのべてい る。
第 5 節で は, ア メ リカ合衆国の場合 を とり上 げてい る。 ここで は, アメ リカ合衆国は, 政教分離を極 め
て厳格 に行 うことをたて まえ としてい る国であ ることをのべ, 兵役 と信教の 自由, 公立学校 と宗教, 教団
に対す る国の財政援助, および国の施設 の中における宗教の 4 項 目に分 け, 宗教 に関す る数 々の判例を紹
介論評 し, 関連す る法令 などについて も論及 してい る。
第 6 節で は, スイス, 第 7 節ではフランス, 第 8 節で は ソ連邦 の場合 を とり上 げてい るが, いずれ も,
大体 において は同様の趣 旨で あ り, 国は, 教団の活動 に対 して, 自由放任の立場を とるわけではな く, 公
共の秩序 に とって有害 と認 め る場合 には, これを制限禁止す ると同時 に, また国民 にとって有益 と認め る
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場合 には, これ に対 して便宜をほか ってい ることを詳説 してい る。
第 9 節では, 以上の諸国の例を もととして, 政教分離の定義づげと分離の相対性 の由 って来 たる所以を
理論づけよ うとしてい る。
第 2 葦 は, わが国におけ る政教分離 についてのべたものであ り, 6 節か ら成 って い る。
第 1 節では, 序説 として, 旧憲法下の政教分離 について論 じ, 神社 は国民道徳的施設 として国家が設 け
た もので あ ることを説 き, いわゆ る通説 とちが って, 旧憲法下 に も政教分離 は制度的 に認 め られていたと
説 いてい る。
第 2 節では, 現憲法下 の政教分離 についてのいわゆ る多数説 の見解を紹介 し, 第 3 節では, 現憲法下 の
政教分離 についてのいわゆ る少数説の見解 を紹介 している。
第 4 節では, 第 3 節 にのべ たいわゆ る少数説 の立場を手がか りとして独 自の意見 を展開 してい る。
第 5 節では, 公立学校 における宗教教育 についてのべてい る。 すなわち, 憲法89条 も政教分離に関す る
規定であ り, 同条項の趣 旨を20条の条項 との関連 において論ず るため, 公立学校 におけ る宗教教育の問題
を中心 と して論 じてい る。
第 6 節では, 国家 と神社 との関係 についてのペている。 すなわち神社 は, 社会的実体 と しては, 国民遺
徳 的要素 と宗教的要素 とを兼 ねそなえた ものであ るとな し, 神社 によ っては, 第 1 の要素の強いもの と第
2 の要素の強い もの とがあ り, これを一律 に制度上宗教 と して敬 して遠 ざけることは, 国民精神の支柱を
国民か らとり除 くことにな るとのべてい る。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
この論文 は, 比較憲法論的研究を基礎 と しなが ら, 国家 と宗教 との関係 を論 じた ものである。 第 1 章で
は, 諸外国の立法例を通 じて見 た国家 と宗教 との関係を論 じ, 第 2 章では, わが国 における国家 と宗教 と
の関係 を憲法 との関係 において論 じ, 神社 の特殊性 に論及 して い るO
国家 と宗教 との関係 において重要 な意味を持つ憲法原則 と しての政教分離の原則 については, 著者 は,
その相対的性格を無視 しえない もの とかんがえている。
国家 と宗教 との関係 を憲法 との関係 においてのべ た著作は, わが国において も, これ まで全然出ていな
いわけではない。 しか し, この論文のよ うに, 広汎な比較憲法論的体系的な著作 は見 当 らない。 論 旨の或
る部分 については, 問題の性質上, 批判の余地 もあると思 われ る。 しか し, 今 日わが国において, 国家 と
宗教 との関係 についての国法学的研究書 と して, この論文以上 の体系的な ものは存在 しないのであ り, こ
の論文 は, この分野での顕著 な業績であることは疑 な く, 今後 国家 と宗教 との関係 について研究す る者 に
とっては, 無視す ることので きない貴重な参考資料であ る。
よ って, この論文 は法学博士の学位論文 と して の価値があるもの と認め る。
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