5.医薬品

産業アウトルック
2016年4~6月期
5.医薬品
トピック:
2016 年 度 薬 価 改 定 、
▲7.8%の薬価引下げ
北浦
健介
2016年度薬価改定では、薬剤費削減が医療費増加抑制策の中心に位置付けられ、
薬価ベースで▲7.8%の大幅な引下げとなりました。製薬企業毎にみれば、製薬
大手では、概して新薬創出加算(注1)対象品目が多く、薬価の引下げ影響が業
界平均対比小幅に止まった一方、中堅以下の先の多くでは、後発医薬品への置
換が進まない長期収載品(注2)の追加引下げや特許切れに伴う引下げ等から大
幅な引下げを強いられる見通しで、損益の下振れも想定されます。
(注1)代替品がない、薬効が高い等の要因で販売価格が安定している新薬に対する薬価の加
算、(注2)特許切れに伴い既に後発医薬品が販売されている新薬
国内医薬品市場:
2015年高薬価品の売上
伸長により市場拡大
国内医薬品市場をみれば、高齢化の進行や医療の高度化等に伴って一人当たり
の医薬品使用額が増加、市場規模の拡大が続いてきたものの、ここ数年は薬価
のマイナス改定や後発医薬品への切り替えの影響が著しく、拡大ペースが鈍化、
2014年には縮小に転じました。もっとも、2015年には高薬価のC型肝炎治療薬
や抗がん剤等が売上高を大きく伸ばしたこと等から、市場は再び拡大に転じた
とみられています。
国内製薬大手の業績:
2015年度第3四半期は
増収増益で着地、
2015年度通期でも増収
増益の見込み
2015年度第3四半期の国内製薬大手8社の売上高は、特許切れした製品の売上高
が後発医薬品への切り替えにより減少したものの、国内外での新薬の販売拡大
や円安等が寄与し、前年同期比+7.8%の増収となりました。また高採算の新薬
販売の拡大や医薬品の導出によるロイヤリティ収入の伸長もあって営業利益率
が17.2%と同+2.4%p改善、営業利益も増加しました。通期でも国内外での新薬
の販売拡大等で前期比+5.8%の増収、営業利益も増益となる見込みです。
今後の見通し:
業績の二極化が進む中、
活発な買収の動きは続
く
製薬企業毎の業績をみれば、新薬の上市が進んでいるか否かで二極化が進んで
おり、今後も有望な開発パイプラインを継続的に確保できるか否かが業績を左
右するとみられます。このため、各社は注力分野を絞り込んだ上で研究開発強
化やパイプライン買収を進めると同時に、非注力分野のパイプラインの売却や
長期収載品事業の切り離しも進めていくとみられます。
国内医薬品市場(注1)及び薬価改定率の推移
後発医薬品の割合(数量ベース)
年度推移
60%
13年4月算定
基準変更(注2)
50%
40%
10年4月、12年4月
算定基準変更(注1)
30%
55.5 60%
月次推移
15年11月
59.7
4
30%
20%
10%
10%
(注1) 10年4月、算出対象から、
経腸成分栄養剤・特殊ミルク製
剤を除外。12年4月、生薬及び漢
方製剤を除外。
(注2)算出対象から、後発薬のな
い医薬品を除外。
0%
0%
05060708091011121314(年度) 13/7 14/1 7 15/1
(出所)厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」より弊行作成
7
(年/月)
製薬企業大手8社の業績推移 (注)
(兆円)
7
6
売上高(左軸)
営業利益率(右軸)
-5.8%
-6.0%
-6.0%
-5.7%
-7.8%
-9.0%
02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (暦年)
(出所)厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」より弊行作成
(注1)国内生産金額+輸入金額-輸出金額により弊行推計
(注2)14年4月の消費増税対応分上乗せ前の実質改定率
0
発表
対象企業
企業名
金額
(注1)
目的 本社 (億円)
開
米
882
企業名
時期
13/9 大塚製薬
20%
13/10 アステラス製薬
Mitokyne
開
米
709 (注2)
14/2 大日本住友製薬
Edison
開
米
102 (注2)
14/5 参天製薬
Merck
販
米
611 (注3)
14/6 Meiji Seika ファルマ
Medreich
製
印
296
14/7 協和発酵キリン
Archimedes Pharma
販
英
392
14/9 第一三共
Ambit Biosciences
開
米
14/12 大塚製薬
Avanir Pharmaceuticals
開
米
15%
3
10%
0
-6.7% -5.2%
2
25%
4
1
-6.3%
薬価改定率
(右軸)
(注2)
海外企業買収事例(2013年9月~2016年3月)
営業利益(左軸)
5
2
-3.0%
-4.2%
6
40%
0.0%
国内医薬品市場(左軸)
8
50%
20%
10 (兆円)
5%
0%
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 予 (年度)
(出所)各社決算短信より弊行作成(アステラス製薬、エーザイ、塩野義製薬、
第一三共、大日本住友製薬、武田薬品工業、田辺三菱製薬、中外製薬)、
アステラス製薬等5社はIFRSを採用している
(注)14年度営業利益は、武田薬品工業の訴訟関連費用を控除して算出。15年度
営業利益予想は、アステラス製薬及び中外製薬ではコア営業利益を使用。
Astex Pharmaceuticals
447 (注2)
4,251
15/2 そーせいグループ
Heptares Therapeutics
開
英
475 (注2)
15/2 武田薬品工業
Toplam Kalite
販
トルコ
145 (注2)
15/11 アステラス製薬
Ocata Therapeutics
開
米
468
(出所)各社プレスリリースより弊行作成(買収金額100億円相当以上)
(注1)開=開発パイプライン強化、販=販路・製品ラインアップの強化、製=生産強化
(注2)マイルストンを含めた最大価額 (注3)眼科用医薬品のみ
本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊行が一般に信頼できると思われる資料に基づい
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