さぴあ 幼児教室「サピックスキッズ」が 体験イベント「 『算数脳』 の育て方 「皆さんの机の上にある筒型の布 袋にはいろいろな形をした物が入っ ています。それがどんな形をしてい るか、袋の両端から手を差し込んで、 触るだけで確かめてみましょう」と 渋谷先生が呼び掛けると、子どもた ちは興味津々で手探りを始めます。 これは、視覚的な情報を遮断して、 指の感触(触索)だけで物の特徴を 感じ取る学びで、造形のイメージを 高める効果があります。 「 指 で 感 じ 取った 形 を、 さ ら に、 紙 に 描いて 表 す 」 という 課 題 にス テップアップ。 「丸が二つつながって いるものがあるよね。穴が開いてい るのがわかりますか」との先生の説 明を聞きながら、子どもたちが描い た絵は、雪だるまのような形をした 大小二つの円。二つが少しだけ接し たものもあれば、完全にくっついた ものもあります。また、小さいほう の円には穴が開いているのです が、 それを描き忘れた子もいます。これ は触索したものを形にして表現する 学び。 「描き終わったら、本 物を出 して比べてみましょう。形だけでな く、大きさも同じくらいに描けまし たか」と渋谷先生が聞くと、子ども たちはお父さんやお母さんと、自分 の“作品”の出来具合を確認します。 そして、改善点に気づいたところで 再チャレンジ。中央に穴が開いた正 方形を確認しますが、今度は多くの 子が特徴をしっかりとらえて表現す ることができていました(図 参照) 。 さらに、課題は立体図形の表現方 法に移ります。袋の中の立方体の小 さな積み木を触り、その形を紙に描 きます。悩みながら子どもたちが描 いたのは、 複数の四角形が縦横にくっ ついた展開図のようなものや、大小 の正 方 形が 重なっているものなど、 立方体とはいえない絵ばかり。渋谷 先生によると「幼児期には立体図形 を二次元に描き表すという概念があ りません。これらの絵も、ひとつの 成長過程。心配は無用です」とのこ と。そして、観察を経て、先生と一 緒に、正方形の上辺や右辺に斜めの 平行線を描き加えるなどして立体図 形を描く表現方法を学びました。 続いては、直角二等辺三角形の紙 製のパズルを組み合わせて、さまざ ま な 形 を 作 り 出 す 課 題に 取 り 組み ます。直角二等辺三角形は、組み合 わせれば、正方形や台形、平行四辺 形など、いろいろな基本図形を作り 出すことができるので、図形構成を 学ぶのに最適です。渋谷先生は、 「人 工的な造形への意識を高めるのが目 的です」と話します。子どもたちは、 用紙に描かれたさまざまな図にパズ ルを乗せて、チョウや家などの形を 作るのに夢中です。 最後は、直角二等辺三角形 枚で 作った正方形から1枚ずつ移動して、 指定された5パターンの形に組み替 えていく課題に挑戦 (図 参照) 。 「元 の形を記憶して、次の形との違いを 見比べることで、形を見極める能力 」を開催 ~図形と幼児教育~ 2014年 月に、代々木に開校した「サピックスキッズ」は就学前のお子さんを対象とした幼児教室。幼児期 からの基礎教育で長年の実績がある「こぐま会」とサピックス小学部のコラボレーションで運営されています。 月 日(日・祝)には代ゼミタワーで、 「 『算数脳』の育て方~図形と幼児教育~」と題した体験イベントを開催。こ の春、新年中・新年長となる子どもたちとその保護者の方が多数参加しました。 「見ないで触って」形を感じる 体験授業に親子で参加 サピックスキッズ代々木校の渋谷 充 先 生が登壇し、 「 皆さん、こんに ちは」とあいさつすると、会場のあ ちらこちらから「こんにちは!」と 元気の良い返事が返ってきます。 この日、子どもたちが体験するの はこぐま会が提唱する「三段階学習 法」に基づいた図形の授業です。渋 谷先生は、 「遊びなど体を動かす体 験、教材などを用いた働き掛けから、 ペーパーワークへと、 段階でつな ぐ学び方です」と、保護者の方への 説明を挟みながら授業を進めていき ます。 が高まります」と渋谷先生が説明し ている間も、子どもたちは真剣な顔 でパズルを動かしています。 3 書などで図形の基本知識を教えた後 に、いきなり面積や体積などに発展 していきます。これでは図形をとら える感覚は養われません。低学年で の学びは体験として蓄積されていく ものだからです」と話す久野先生。 こぐま会では、 「基本図形とその構 成」 「立体構成」 「展開図と線対称」 など七つのステップで図形学習を展 開していますが、 「どのステップも、 粘土や折り紙といった具体物で、形 を作ったり、切り離したりという体 験を通じて、図形に対する感覚を育 てることから始めます 」とのこと。 続いて、 オンライン講座「gacco」 と提携した講義画像から、円錐の形 を理解するために、子どもたちが粘 土で円錐を製作している様子が紹介 されました。 できあがるのは、必ずしもきれい な円錐ではありませんが、 「 観 察し たことをどのように作り方へと反映 させたのかが、幼児教育では大切。 このプロセスを省いて、ただ知識を 詰め込むだけでは、感覚は養われま せん」と強調する久野先生。最後に 「ご家庭でも、身の回りのものを使っ 4 て、図 形 に 触 れる 遊 び を た く さん やっていただきたい。そして、でき たかできなかったかではなく、試行 錯誤した過程の発想を評価しましょ う」と話しました。 身体を使っての造形遊びが、小学 校での学び、ひいては中学受験へも つながっていきます。お子さんの中 学受験を考えている保護者の方々に とっては、実りある内容となったこ とでしょう。 「うーん。どうやるんだろう」。子どもたちは直角二等辺三角形 を使っていろいろな図形を作ります TEL.03-6276-8603 http://sapixkids.sapix.com 20 早期に養っておきたい 図形処理のセンス 気づけるかどうかを試すような問題 は多くの中学校で出題されています。 小林先生によると、これらを解くた めのセンスは、 年生になって養う のは容易ではないとのこと。幼児期 から鍛えておきたい部分といえます。 「今日体験したパズル遊びなどを通 じて、温かい目でサポートしてあげ てください」と結びました。 具体物を使った遊びが 幼児教育では不可欠 最後は、こぐま会代表の久野泰可 先生による「幼児期における図形教 育」と題する講演です。 「小学校の 学習指導要領での図形学習は、教科 2 ●申込方法 電話受付:03-6276-8603 (受付時間:日曜・月曜・祝日をのぞく10:00 ~ 18:00) 「幼児期にたくさんの図形に触れさせてくだ さい」と、小林暢太郎先生は強調します 4 3 さぴあ MAY 2016 24 25 さぴあ MAY 2016 ※お子さまは動きやすい服装でお越しください。 ※年 長 生 は、2010年4月2日 ~ 2011年4 月1日生まれのお子さまとなります。 年 中 生 は、2011年4月2日 ~ 2012年4 月1日生まれのお子さまとなります。 ●時 間 年長生 10:00 ~ 11:30 年中生 13:00 ~ 14:30 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-55-1 ベルヴュオフィス代々木 1・2F 幼児教室 サピックスキッズ 代々木校 ●受講料 3,240円(税込)※当日、現金にてお支払いください。 ●持ち物 コップの 付いた水筒 (またはコップと水筒) 、上履き (お子さま用)、 ハンカチ、スリッパ(保護者の方) ●日 程 2016年5月15日(日) 1 授業の後は、子どもたちは隣室に 設けられた託児コーナーに移動。こ こからは、残った保護者に向けての 講演会です。 「中学入試における図形 初めに、 問題」について、SAPIX小学部 低 学 年 責 任 者の小 林 暢 太 郎 先 生が 解説。具体例としてまず示したのは、 関西の最難関・灘中の過去問です。 おうぎ形の中に引いた垂線で囲まれ た部分の面積を求めるもので、大人 にも難問に見えますが、小林先生は 「垂線で区切られた形の中に、三角 定規と同じ直角三角形を発見できれ ば、意外に簡単に解けるのです」と 説明。スライドを使って解き方を紹 介すると、保護者の皆さんは「なる ほど」とばかりに、何度もうなずき ました。 こうした基本図形や合同な図形に 4枚の直角二等 辺 三角形を1枚ずつ動 かして、さまざまな形を作っていきます 図2 年長生・年中生対象 特別体験授業のご案内 6 「袋の中にこんな形をした物が入っているか な」。渋谷充先生の問い掛けに、子どもた ちは「あった!」と大きな声で答えます 袋の中には上のような形のパズルと立 方体の積み木が入っています 図1 1 こぐま会代表の久野泰可先生は「試行錯誤 した過程の発想力を評価してください」と 話します トピックス
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