Title 持続的ないし間歇的脳選択灌流冷却法によるbloodless

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持続的ないし間歇的脳選択灌流冷却法によるbloodless
craniotomyの実験的研究 - 特に後出血の検討および微細循
環の改善について( Abstract_要旨 )
高瀬, 卓郎
Kyoto University (京都大学)
1966-09-27
http://hdl.handle.net/2433/211960
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
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学 位 の 種 類
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学位授与 の 日付
昭 和 41 年 9 月 27 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
持続 的な い し間歓 的脳選択 潅流冷却 法 によ る blood less
cran iotom y の実験 的研究
博
第 318 号
- 特に後 出血の検討 および微細循環の改善につ いて論文 調査 委員
教(㌔ 等
田
肇
教 授 木 村 忠 司
論
文
内
容
の
要
教 授 本 庄 一 夫
旨
脳神経外科手術 において, 出血を任意 に control L , bloodless craniotom y ない L craniotom y under
controlled bleeding がで きれば理想的である。 全身的侵襲を最少限度 にとどめ, 時間的制約な く blood1ess craniotom y を行 な う試 み と して, A -A shunt による脳潅流冷却法 をえ らび, 犬を用いて, 潅流量
・ 潅流圧 ・leakage ・ 脳温 ・ 食道温 ・ 直腸温 ・ 冷却血液温 ・ 血圧 ・ 後 出血 の有無等 につ いて検討 した。
1 . 熱交換器 ・pum p ・bubble frap よ りな り, oXygenafor は含 まず容量約 200 m l の体外循環回路を
用い, - 側総額 動脈 よ り導 いた血液を この回路で冷却 し同側総禦 動脈 よ り潅流 , 対側総額 動脈および両側
椎骨動脈 を結集 し脳 を選択的 に冷却 した。 全身血圧 よ り 5- 10 m m H g 高 い潅流圧 , 6- 8 m l/kg/m in の
潅流量を用い, 平均 17・6分で潅流側脳温 は平均 20oC に下降 し, 15- 23oC の脳温 を約30分間保持 した。
この場合食道 ・ 直腸温はそれぞれ平均 28.5oC , 29.5oC に保 った。
冷却 ・ 復温期を通 じて出血傾 向の有無 を検討 し, 線維素溶解現象 の先進 , フィブ リノ- ゲ ン値 ・ 血小板
数の減少 を主 と した, 血液凝固 ・ 線溶各因子 の変動を認め, 軽度 の出血傾 向は否定 し得 なか ったが, 後 出
血 の危険性 はな くこの面 か らは本法 は臨床上使用可能であると考えた。 しか し生存率 が極めて悪 く, 長期
生存 は18例中 5 例 にとどま り, 死 因につ いては上記潅流諸条件およ び 出 血 傾 向 と は 別 に intravascular
clotting の危険性 が考え られた。
2 . その解 決方法 の一つ の試み と して streptokinase による線溶能 の活性化を試 み, 7 例中 6 例 の生存
を得 た。 しか し H eparin, Streptokinase の手術への併用は当然 かな りの出血傾 向をきた し, この ことは
当初の 目標 とも矛盾 し, このまま応用す ることは不可能である。
3 . 血液冷却超低体温法 において問題 とされる- マ トク リッ ト値 ・ 粘開度 の増 加 , 血 液 有 形 成 分 の破
壊 , および血流阻害を きたす intrrvascular clotting, intravascular aggregtion などを併せ考え, 全血
のみによる潅流 , ことに脳血管 内に全血が入 った状態で持続的 に血流停止を行な うことは m icrocirculati
on に対 して有害であると考 え, 次 の変法 を試 みた。
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1 ) 潅流 に先立 ち, 全身血液 を- マ トク リッ ト値で術前倍の75- 85% に稀釈 し, この稀釈 した血液で 悩
潅流冷却 を行 な う。
2 ) 脳低温維持期間 に, 脳血流 の完全遮 断 にとらわれず , 必要 に応 じて持続的ない し問飲的に低流量潅
疏 (1- 3 m l/k g /m in) を行 な う。
3 ) 持続的 に脳血流遮 断を行な う場合 には, 血流遮 断直前すなわ ち脳冷却終了直後 に冷却 した生理的食
塩水 による脳血管 内血液の w ash ou t を行 な う。
この方法 を 9 匹 につ いて試みた結果 7 例 の生存 を得 , 死亡 2 例の うち 1 例は神経学的 にはほぼ完全 に恢
復 しなが ら術後 12 時間で死亡 , 他の 1 例は昏睡 のまま16時間後 に死亡 した。 また血液凝固線溶各因子の変
動は, 当初の方法 による結果 とほ とんど同 じ傾 向を示 し, 後 出血の危険性 は否定 し得 た。
上記実験 よ り, 微細循環 の改善 を行な うことによ り, bloodless craniotom y を 目的 と した本法 は臨床
上応用可能 であると結論 した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
全身的侵襲 を最少限度 にとどめ時間的制約な く出血 を任意 に control L b lood less craniotom y を行 な
う目的で, 犬 を用 い選択的脳濯流冷却法 の臨床応用の可能性 を検討 した。
1 ) 熟交感器 , pum p, bubb le
frap よ りな り oxygenator を含 まない容量約 200 m l の体外循環回路 を用いた。 全身血圧 よ り 5- 10 m m
H g 高 い潅流圧 , 6- 8 m l/kg/m in の潅流量 を用 い る と平 均 17 .6 分で潅流側脳温は平均 20oC に下降す
る。 この 15- 23oC の脳温 を約30分間保持す ると, 食道 , 直腸温はそれぞれ 28.5oC ,29.50 に保 たれ る。
2 ) 冷却 , 復温期を通 じこの潅流条件では後 出血の危 険性 はない。 しか し生存率 が 低 い。 3 ) strep tokinase による線溶能 の活性化を行 な うと生存率 は高 いが出血傾 向がます。 4 ) 以上 の こ と よ り次の変法 を
試 みた。 a) 潅流 に先だ ち全身血液を- マ トク リッ ト値で術前値 の75- 85% に稀釈す る。 b) 脳底温維持期
間 に必要 に応 じ持続的ない し問歓的 に 1- 3 m l/kg /m in の低流量潅流を行 な う。 C) 持続的 に脳血流遮 断
を行な う場合 には脳冷却終了直後 に冷却 した生理的食塩水 による脳血管 内血 液 の w ash ou t を行な う。
この微細循環 の改善 を図 る方法 によ り, 後 出血 の危険 もな く生存率 も高め得 て, 本法 は臨床的応用可能 と
考 えた。
本論文 は学術上有益 に して医学博士 の学位論文 と して価値 あるもの と認定す る。
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