「昨年の暑熱対策を見直そう」 経営指導

家畜改良事業団
昨年の暑熱対策を見直そう !
桜も咲き終わり、4~5 月は人間にとっては最も過ごしやすい時期です。しかし、日本飼養標準によると乳牛
は初産牛で 23 度、2 産以上で 21℃になると暑熱の影響が出てきます。これは広島県内では 4 月下旬頃には記
録してしまう気温です。今が暑熱対策を見直す最後のチャンスです。昨年の 7~9 月の検定成績を再チェックし、
昨年と同じことを繰り返さないようにしましょう。
図に検定成績表の最初の 1 枚目の牛群成績のうち中央に掲載される「移動 13 カ月成績」を示しました。
この図を使って昨年の暑熱状況をみてみましょう。
(図)
1 乳量(ポイント 1)
暑熱の影響としては、最初に「乳量が夏季に下がっ
ていないか」をチェックしましょう。乳量が下がって
いれば「暑熱の影響があった」ということで、送風、
日差し、給水等を再度チェックします。「送風扇の出
力が落ちていないか」、「日差し対策としての屋根の
加工が古くなっていないか」、「給水量は十分か」など
チェックすることは無数にあります。
乳量のチェックは通常の搾乳量でも良いのですが、
より正確に見たいときは「標準乳量」を利用すると良
いでしょう。標準乳量とは、検定日に立会した 1 頭ご
との乳量を産次や分娩季節、搾乳日数などで補正した
乳量なので、異なる条件下にある牛たちを同じ土俵で
比較することが可能な数値です。標準乳量は、四季そ
れぞれの乳量も同じ土俵で比較することができます。
図では、昨年の 7、8、9 月に標準乳量が低いことから、
暑熱対策は不十分であったと推測できます。また、こ
の中でも 9 月が最も標準乳量が低くなっていることか
ら、暑熱対策を早めに止めてしまったと考えられます。
カップや水槽の汚れなど確認してみてください。粗飼
料が食い込めない状態が続くと、ルーメンアシドーシ
ス等のきっかけになってしまいます。更に食欲が減退
すると、栄養不足により蛋白質率も低下します。
3 体細胞数(ポイント 3)
7~9 月は牛の体力(健康)が低下することで抵抗力が
減り、乳房炎を罹患しやすく体細胞数が増加する時期
です。また、梅雨の 6~7 月、秋雨の 9~10 月は湿気も
高く注意が必要です。湿気が高い時期にミストや散水
を多用すると、牛床が乾燥しなかったり、牛体に付着
した水滴が乾燥せずに、乳房炎発症の温床となってし
まうことがあります。図でも、昨年の 8、9 月、本年
の 6 月と体細胞数が高いことが分かりますので、この
農家の暑熱対策とともに湿気対策、牛床の管理に課題
があると推測できます。
4 繁 殖(ポイント 4)
夏季には繁殖性が低下してしまうことはよく知られ
ているところです。暑熱がおよぼす繁殖への影響とし
ては、「良い発情が来ないので授精を見送る」という事
2 乳脂率、蛋白質率(ポイント 2)
暑熱対策でもっとも重要なことは牛の食欲を減退さ 例が多いことが挙げられます。そこで授精状況でモニ
せないことです。熱を多く発生し、採食量が減退する タリングする内容としては、図に示した授精頭数の増
のは【乾草 > サイレージ > 濃厚飼料】の順になります。 減が目安となります。
よって、最初に影響が出てくるのは「粗飼料を食い込 図の例でも、夏季の授精頭数が激減しており、夏バ
めないことによる乳脂率の低下」となります。夜涼し テから良い発情が来ていないことが推測できます。夏
くなってから乾草を与える等の工夫が必要です。また、 バテは食欲の減退による栄養状況の悪化によるところ
これは飲水量が十分でないと反芻が弱くなることも大 が大きいので、前述の乳成分値を確かめてください。
きな要因なので充分な飲水ができるようウオーター
詳細は岡山種雄牛センター(電話 0868-57-2475)
四宮、または大島までお問い合わせ下さい。
広島
2016年
(平成 28年)4月
〔№ 265〕 14
森税理士の
「ちょっと気になる税務のはなし」
アグリビジネス・
ソリューションズ株式会社
代表取締役 森 剛一氏
第95 回
税務相談窓口
事業推進課 経営指導相談係
■問い合わせ先
TEL:0824-64-2072 Fax:0824-64-2233
部門別原価計算(作目別損益計算)
先月の「製品別原価計算」の紹介に続き、今月
は「部門別原価計算」に触れます。
「原価の部門別計算とは、費目別計算において
把握された原価要素を原価部門別に分類集計す
る手続を云い、原価計算における第二次の計算
段階である」
(原価計算基準 15)とされています。
個別原価計算、すなわち、農畜産物の単位当
たりの原価を計算する前提として、部門別(作目
別)の原価計算が必要になります。
ただし、農産物については、畜産物と異なり、
部門別の総原価を単純に生産量で割れば農産物
の単位当たりの原価を計算できるため、厳密な
意味での個別原価計算では必要ありません。こ
のため、農産物の原価計算は、一般的には部門
別原価計算(作目別損益計算)が基本になります。
(表) 製造原価(生産原価)の構成
1 原価部門の設定
「原価部門とは、原価の発生を機能別、責任区分別
に管理するとともに、製品原価の計算を正確にするた
めに、原価要素を分類集計する計算組織上の区分」(原
価計算基準 16)をいいます。農業においては、作目ご
とに原価部門を設定することが一般的です。
2 部門個別費と部門共通費
「原価要素は、これを原価部門に分類集計するに当
たり、当該部門において発生したことが直接的に認識
されるかどうかによって、部門個別費と部門共通費と
に分類する」(原価計算基準 17)こととしています。
1 部門個別費
特定の部門で消費したと認識できる原価要素を部門
個別費といいます。「部門個別費は、原価部門におけ
る発生額を直接に当該部門に賦課」
(原価計算基準 17)
します。農業会計では、作目ごとに部門を設定して作
目ごとに部門個別費を賦課することになります。材料
費に属する費用(種苗費、素畜費、肥料費、飼料費、
農薬費、敷料費、燃油費、諸材料費)は、原則として
部門個別費として取り扱います。
2 部門共通費
特定の部門で発生したことが認識できない原価を部
門共通費という。「部門共通費は、原価要素別に又は
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その性質に基づいて分類された原価要素群別にもしく
は一括して、適当な配賦基準によって関係各部門に配
賦する」(原価計算基準 17)ものです。実務的には、財
務会計において共通部門を設定して会計処理を行い、
部門共通費を集計し、さらに部門別原価計算において
部門共通費を各原価部門に配賦することとなります。
配賦基準としては、売上高の割合や作付面積・稼動面
積の割合などが用いられます。
3 実務の対応
パソコン簿記では、仕訳に部門コードを付して部門
管理します。種苗費、素畜費は、購入の仕訳に直接部
門コードを付すことができます。肥料は購入の時点で
どの作物の圃場に散布するかわかりませんが、継続記
録法によって購入時に資産計上した原材料勘定を、消
費の都度、肥料費に振り替える仕訳に部門コードを付
けることも可能です。
しかし、例えば動力光熱費が複数の部門にまたがる
費用、すなわち部門共通費である場合、発生の都度、
仕訳に部門コードを付けることができません。このた
め、部門共通費については、とりあえず共通部門とし
て仕訳しておき、部門別原価計算において期末に使用
割合などにより費用を部門別に按分する必要がありま
す。なお、部門共通費の按分の作業は会計ソフトで仕
訳により行うよりも、表計算ソフトによるのが現実的
です。