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第5章
実証事業の検証と今後の課題
5-1 実証事業の検証と今後の課題
≪検証項目≫
青葉が丘公園内の親水ひろばに水を導水する小規模な“流れ”を利用する発電計画でしたが、
自然の水流により“電気を発生させる”という水力発電としての発電システムの“原理機能”は、
確認できた。
ただ、らせん式水車・発電装置については、発電装置設置の斜路部に 2 台の装置(らせん式と
縦軸式)を設置したため、必要な落差を得ることが出来ず、発電出力規模も当初想定出力(23.5W)
に達することは出来なかった。
※(当初、縦軸水車発電装置は、斜路部の横に新規水路を設置する計画であった。)
他の発電方式(縦軸式、下掛け式)のうち、縦軸式水車・発電装置については、当初想定の発電
規模(2.5W 程度)にほぼ等しい発電出力を確認できましたが、下掛け式水車・発電装置については、
親水ひろばへの導水量が全般的に少ないため、当初想定(2.5W 程度)の半分(1W)程度の出力しか発
電を確認することができなかった。
今回の実証事業実施にあたり、発電装置を設置した導水路の全体が“開渠”であるため、周辺
樹木等からの落下物が多く、水車羽根部に溜まり水車回転を止める現象が頻発に発生した。
写真 5-1-1 に落ち葉、種子を示す。
写真 5-1-1 縦軸水車の羽根に挟まった落ち葉(左)や落下樹種 (長さ約 20cm) (右)
落ち葉・落下種子が詰まった写真を
載せます。
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水力発電計画の経済性を判定する指標として一般的に用いられている手法は、
「建設単価法」
である。この手法には、発電出力(W)当たりの建設単価と発電電力量(Wh)当たりの建設
単価の2種類で評価する方法がありますが、発電電力量(Wh)当たりの建設単価で評価する
方法が一般的である。
今回の実証事業実施にあたり、3種類の水車・発電装置別の経済性を検討した結果は、表 5-1-2
のとおりである。
表 5-1-2
水車・発電装置別の経済性一覧表
水車の型式区分
項
目
備
流水式(縦軸)
螺旋式
最大出力(W)
23.5
発電電力量(Wh)
3,443.3
考
下掛け式
6~11 月間
183 日間
青葉が丘公園付近の防犯灯、
電力供給先
概算工事費
橋梁欄干イルミネーション等
1,710 千円
780 千円
LED 防犯灯
730 千円
経済性を有する発電規
kWh 当たり
建設費
投資回収年
497 千円
226 千円
212 千円
模の建設費は、150 円
/kWh とされている。
経済性効果は
>50 年
認められない。
今回実証実験に用いた 3種類(らせん式、縦型式、下掛け式)の水車・発電装置につい
ては、いずれも発電電力量(Wh)当たりの建設単価が出力規模(W)に比べ、非常に高い
ことから採算性は合わず、経済性効果は認められない。
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≪今後の課題≫
今回の実証事業では、町民が多数集まりやすい町の中心部の青葉ヶ丘公園内に水車・
発電装置を一体化した小規模な発電システムとして設置し、自然な水の流による“発
電”の仕組みを理解してもらうための工夫をした。
しかしながら、今回の様な極めて小規模な“水力発電システム”の場合、水路流下物
による”取水障害”は、発電停止に直結する事象であることも確認できた。
このことから、普段の水路および発電装置(特に回転部)の監視、異物除去等の維持管
理(メンテナンス)が重要であると確認できた。
これらの課題については、通常時の“維持管理(メンテナンス)”が容易となるような
発電システムとして機器類を改良すること、水路設備の改修等の対策をとることにより
一定程度 課題解消が可能と考えられる。
今回実証実験に用いた らせん式水車、縦型式水車、下掛け式水車については、導入
費用及び発電量から将来の採算性が合わないが、これらの水車は、開放型で水の流れか
ら電気エネルギーが生み出される過程を実際に見ることができ、環境・エネルギー問題
についての理解を深めるために活用することができると考える。
5-2 森町での水力発電の普及促進に向けて
今回の実証実験に用いた水車は普及啓発を目的に開放型の水車を導入したため、採算性は
合わないものとなっているが、今後、森町でマイクロ水力発電や中小水力発電を普及活用して
いくためには、発電量に対する建設費や維持管理費の低減が条件となってくる。そのため、密
閉型で効率のよいペルトン水車などの衝動水車、フランシス水車・プロペラ水車などの反動水
車などを利用したり、人工水路、ダムなどの水利施設や上下水道施設など導水がある程度整備
されている箇所へ設置することにより初期経費を抑えることが重要と考えられるが、専門的な
知識が必要とされることから、実施計画を進めるにあたっては水力発電事業を行っている事業
者などのアドバイスを受けながら現地調査や流量調査などを実施し、実現可能性について検討
していく。
また、水利施設や排水などで利用した場合は、発電した電気の自家消費による電気料金の低
減や、固定価格買取制度を利用した売電収入を施設の維持管理費へ充当することも可能となり、
CO2の排出の抑制による環境への貢献だけでなく、施設のランニングコストの低減も期待で
きる。
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森町には北海道で唯一の地熱発電所や、全国でも類を見ない地熱利活用の成功事例など特色
のある新エネルギー・再生可能エネルギー活用事例があり、マイクロ水力発電や中小水力発電
を活用することで、森町の環境に対する先進的な取組みを町内外に発信し、森町の基幹産業で
ある農林水産業を守ることで環境面からの「もりまちブランド」の形成に資することができる
ものである。
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