基礎研究 基礎研究 ■ キーワード 井上 和仁 教 授 ■ 理学部 ■ 生物科学科 水素・再生可能エネルギー・紅色細菌・光合成細菌 農業・林業・水産業・食品加工所あるいは家庭からの有機廃棄物は、そのままでは 環境負荷が大きいため適切な処理を要します。近年では、より環境負荷の低い処理 方法が期待されています。当研究室では、紅色光合成細菌を利用して、太陽光エネ 研究概要 ルギーを用い、有機酸などから水素を生産する“光生物学的水素生産”の研究を行っ ています。すでに遺伝子工学的に紅色光合成細菌を改良し、実験室環境下で有機酸 を原料とした水素生産の高効率化に成功しました。この研究成果をもとにして、光 合成を利用したクリーンで再生可能なバイオ燃料の技術開発を目指します。 紅色光合成細菌を利用した光生物学的水素生産の特徴 生活汚水などから得られる有機酸をもとに水素生産が可能なので、有機廃棄物処理 研究の 特徴・比較・ 優位性 を行いながら水素生産が見込める。可視光ならびに近赤外光を利用できるので太陽 エネルギーの利用効率を高められる。間伐材や海藻、わら等といった未利用バイオ マスの資源量は大きく、これらを利用した再生可能エネルギーの大量生産の実現が 可能である。 紅色光合成細菌の電子伝達と水素生産 応用研究 紅色光合成細菌を利用した 光生物学的水素生産 今 後 の 展 望 当研究室で作出した水素の再吸収を行わない紅色光合成細菌の変異株を用いて、発生し た水素がバイオリアクター内に蓄積することを実証した。有機酸種の選択や培養条件を 工夫して水素生産効率の向上を目指す。生活汚水や廃材から効率よく有機酸を産生する 暗発酵細菌と紅色光合成細菌を組み合わせた二段階培養の実施が検討課題である。 水素低透過性の柔軟プラスチック素材を用いたフロート型バイオリアクターの開発や将 来に向けた屋外条件下での中規模なスケールでの実証試験を計画している。 MESSAGE I N F O R M A T I O N Nagashima KVP, Vermeglio A, Fusada N, 紅色細菌による水素生産では、窒素と水素の混合 ガスとして得られるので、これを安価に分離できる膜 等の技術開発が必要です。水素ガスの分離精製・貯蔵等 の取り扱い技術を持っている企業等との提携を希望します。 Nagashima S, Shimada K, Inoue K (2014) Exchange and Complementation of Genes Coding for Photosynthetic Reaction Center Core Subunits among Purple Bacteria Journal of Molecular Evolution 79, 52-62 永島賢治、櫻井英博、井上和仁 (2014) 紅色光合成細菌による水素発生. 監修 三宅 淳、佐々木健「光合成のエネルギー利用と環境 応答」シーエムシー出版 154-162 問い合わせ先:産官学連携推進課 神奈川県横浜市神奈川区六角橋3-27-1 TEL:045-481-5661(代) [email protected]
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