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実学教育から学んだ
酪農民の気持ち
社団法人ジェネティクス北海道 専務理事
麻 里 紘 三さん
農業経済学科第3期生
(昭和41年度卒業)
経産牛1頭当たり年間乳量は約
を搾っているわけではないけれ
方式)の待機牛が400頭程度お
8,300㎏です。10年前の約7,500
ど、酪農家の延長線上の仕事を
ります。この中から、毎年80頭
㎏に比べると、単純に1頭当た
やっている。そういう気持ちを
ーまず最初に「ジェネティク
力から種雄牛の能力を評価する
ス北海道」とは、どのような組
織なのか―を教えてください。
程度の種雄牛が後代検定にかけ
り800㎏の乳量増が図られたわ
持って、
農家の生産物を胸を張っ
道家畜改良事業団と株式会社・
られ、上位40位に選抜されると、
けです。この要因は飼養管理技
て販売してきました。
ジャパン ホルスタイン ブリ
供用牛として本格的な精液の生
術や肥培管理技術の向上など、
ーデング サービスの家畜人工
産・供給体制に入ります。一方、
酪農家自身の努力によるところ
園大学で学んだこと、体験した
授精事業が事業統合して誕生し
上位40位に入らない種雄牛は、
も大きいのですが、その根っこ
ことが基礎となって、その後の
たのが『ジェネティクス北海道』
原則的に即淘汰されます。そう
には改良事業によって雌牛の資
30数年間の社会人生観が築き上
です。両組織が事業統合するこ
いう意味では、家畜改良はリス
質が確実に上がってきたことも
げられてきたし、その延長線上
とによって、国際水準の遺伝的
クの高い事業なんですよ」
間違いないでしょう。また、こ
で酪農畜産の仕事に奉職してき
こ数年は穀物類を中心とする配
たんだな…と思いますね」
「今年4月に社団法人・北海
ー日本の酪農発展に、遺伝的
能力を有する種雄牛を作出し、
改良の果たした役割は大きい。
その精液を北海道を中心に日本
合飼料の多給によって、乳量が
国内に供給するなど、酪農およ
「酪農経営は、基本的に生乳
び畜産農家を家畜改良面から強
を生産して、それを販売代金に
ーところで、酪農学園大学で
力に支援し、貢献していくこと
変える商売です。当然、重要な
学び、お仕事に何か影響を与え
を目的としています。
のは乳量をたくさん出す乳牛を
た出来事はありますか。
伸びているのも事実ですね」
今、振り返ってみると酪農学
ー最後に酪農学園に期待する
こと、学生たちに伝えたいこと
はありますか。
「今、私が一番心配している
のは酪農後継者が少なくなって
今年7月末現在、ホルスタイ
育てることです。もちろん、健
「高校を卒業した当時、私に
いることです。これは酪農業界
ン428頭、黒毛和種75頭の合わ
康で連産に耐え得る体型を持ち
とって酪農は夢とロマンの代表
だけでなく、地域の崩壊にもつ
せて503頭を繋養しています。
合わせていることも大切です。
でした。酪農学園大学で学び、
ながります。そういう意味では、
ただし、実際に精液を供給して
ですから、
統計的に優れた種雄牛
酪農家になることが、私の将来
酪農学園大学の役割は非常に大
いるのはホルスタイン27頭、黒
を集中的に利用することによっ
の目標でした。結果的に、酪農
きいものと期待しています。
毛和種が68頭です。特にホルス
て乳牛の改良は深まります。
家になるという最終目標を達成
また、学問としての知識を身に
することはできませんでした
つけることも大切ですが、酪農
が、私には酪農家と同じ気持ち
学園大学には“実学”を教える
で仕事に取り組んできたという
場、そして学ぶ場であってほし
自信はあります。それは酪農学
いと思います。そして、日本の
園在学中、道内各地で行った酪
酪農・畜産の発展に貢献する人
農実習の経験が大きな影響を与
材をたくさん輩出してほしいと
えていると思います。実際に乳
願っています」
ちなみに平成12年の北海道の
タインは、後代検定(子孫の能
P
R
O
F
I
L
E
【プロフィール】
社団法人ジェネティクス北海道
専務理事 麻里紘三さん
昭和19年2月11日、北海道初山別村出身。
酪農学園大学・農業経済学科を昭和42年
3月卒業後、同年4月にホクレン農業協
同組合連合会に入会。北見支所畜産課を
皮切りに名古屋支店、大阪支店、本所や
道内各支所で食肉鶏卵や素牛、生乳の販
売業務等を経験し、平成8年2月にホク
レン酪農部長に就任。平成12年2月には
北海道家畜改良事業団に参与として出向
(平成13年2月にホクレン退職)し、同
年6月から現職。趣味は30年間続けてい
るゴルフでハンデ13の腕前。また、現
在は渓流釣りに夢中で、6月から10月の
期間中は毎週のように山間の川に出かけ
ている。父から教え継いだ「協力は強力」
が信条。57歳。