Nutritional Management of Horses on a Breeding Farm 生産牧場における栄養管理 Kentucky Equine Reserch はじめに 典型的な繁殖牧場には、種々な年齢と用途の馬がいます。馬たちの栄 養要求量はそれぞれ異なります。若馬は、完全に、そして最適に成長す るために適切な栄養を必要とします。そうして成熟し、求められる仕事 をこなすことが出来るようになります。繁殖牝馬には、未来の世代を生 み育てることに集中できる栄養スケジュールが必要とされます。同様に 種馬には、最高の結果が得られるように、エネルギー要求量のバランス を注意深く管理し、授精能力に必要な栄養管理を供給し、休養期間に太 らないような管理が必要です。このように、繁殖牧場では、それぞれの クラスの馬が、適切に給餌され、管理されなければなりません。 高品質の牧草がすべての馬の飼料の基礎ですが、配合飼料の設計と製 造によって、繁殖牧場における若馬の給餌において、これまで特定のラ イフステージで行われていた多くの推量による栄養管理がなくなりまし た。 エン麦が濃厚なエネルギー源として考えられてきた日が過ぎ去って久 しいです。評判が良い飼料製造業者は、繁殖牝馬や種馬と同様、馬の生 産サイクルの種々の段階で、若い馬に適した配合飼料をプロの馬の栄養 士と共に考案しています。製造業者の推奨に従って給餌すれば、これら の配合飼料を給与することで、若馬の最適な成長と発達のために栄養要 求量が満たされることを保証します。 この「繁殖牧場の馬の栄養管理」の項目では、離乳馬、1歳馬、妊娠 馬、泌乳馬や種牡馬をどのように栄養管理すれば最良の結果を得られる かの概観を述べます。必要に応じ、補足的サプリメントが推奨されま す。 繁殖牝馬 ブリーダーであれ、個人的な生産であれ、どのような形態の生産であ っても繁殖牝馬の存在が最も重要です。すべての重要な遺伝的な貢献に 加えて、分娩の前後にわたり、子馬の成長を保護し促進する環境を提供 します。 受精の瞬間から妊娠期間を通して、また泌乳期から離乳時まで、子馬 の健康にとって母馬からの栄養が重要であることは、疑いの余地があり ません。 妊娠馬 妊娠期には、繁殖牝馬の栄養要求量に見あうように注意深い考慮が必 要です。 最近、専門家は妊娠期間を2つの大きな期間に分けています。すなわ ち (1) 受胎から妊娠8ヵ月まで(妊娠早期;第1妊娠期および第2期妊 娠期) (2) 妊娠9ヵ月齢からおよそ11ヵ月齢または出産まで(妊娠後期;妊 娠第3期) 第1と第2期の繁殖牝馬のための餌の必要条件は、成馬の維持管理に 必要な栄養と同等です。さらに、妊娠最後の第3期の間に胎児の成長が最 も急速であることがよく知られており、妊娠の最後の3カ月の間にエネ ルギーとタンパク質のようなある特定の栄養を増加させることが、勧め られていました。 しかしながら、一部の重要な栄養素は、妊娠9ヵ月齢よりかなり前に増 やすべきであることが、最近の研究で明らかにされました。繁殖牝馬 は、妊娠の最初の4ヵ月間の維持と同じように繁殖牝馬は養われるべきで すが、すべての月でそれぞれ異なる月、つまり8つの期間として考えるべ きです。 これらの変化をもたらした研究は、母馬の馬体の維持と胎児の成長だ けでなく、総称的に胎児外組織と呼ばれる、明らかな妊娠組織ではない 胎盤や乳腺のような組織を作り出し維持するための栄養的な必要性を見 いだしたのです。妊娠早期(0〜4ヵ月齢)や妊娠後期(9〜11ヵ月齢) には栄養的な要求量に変化は無いものの、新しい推奨では妊娠中期(5 〜8カ月齢)に栄養要求量の変化がみられます。 非胎児組織の発達と維持のために、タンパクやエネルギー要求量は、 平均的な大きさの繁殖牝馬(体重500kg)で妊娠中期の維持量より5〜 8%増加します。タンパクやエネルギーと違い、ミネラル要求量の増加 は妊娠後期、約7ヵ月齢に現れます。このことは、非胎児組織の発達と維 持には、主にタンパクとエネルギーが寄与しており、非常にわずかな量 のミネラルしか必要としないということを示唆しています。 品質の良い良く設計された配合飼料やビタミンとミネラルのサプリメ ントを給与することによって、繁殖牝馬が中程度からやや肉づきが良い 程度のボディコンディションに維持できていれば、エネルギーとタンパ クの要求量は満たされていると考えられます。 給餌管理 繁殖牝馬は、中程度からやや肉づきが良い程度のボディコンディショ ンに維持するべきです。BCS(ボディコンディション)でいえば、1〜 9のスコアの5または6になります。繁殖牝馬の中程度のBCSとは、ア バラは浮いて見えず、しかし触ると触れることが出来、き甲周辺、肩や 尾根部には脂肪の蓄積を感じるという程度です。繁殖牝馬は泌乳のピー ク時にBCSを急激に下げることが知られており、それに対応するために 妊娠後期にやや肉づきを良く調整されることが多いでしょう。 常に繁殖牝馬には十分な牧草を供給して下さい。少なくとも最低の1日 の要求量を満たす、体重の約1.5〜2%の牧草が必要です。繁殖牝馬は何 の制限もなく、青草や乾草を食べることが出来るべきで、自由摂取が基 本です。多くの繁殖牝馬は牧草だけでBCSを維持できます。 もし、繁殖牝馬が牧草によって適切なBCSを維持できるなら、IRペレ ットのようなビタミンとミネラルのサプリメント、またはサプリメント ペレットを給与すれば、胎児の適切で健康的な成長のために必要な栄養 をすべて満たすことが出来ます。この給餌スケジュールは、適切なBCS を維持できるなら、早期および後期妊娠期間にも適合します。 もし、繁殖牝馬が牧草だけでは適切なBCSを維持できないなら、繁殖 牝馬用に設計された適切な配合飼料を与えることが理想的です。 飼料の袋につけられた札や製造業者の指示が書いてある印刷を見て、 注意深くその指示に従って下さい。給与量を守らず、指示よりも少ない 量を与えた場合、栄養の摂取量が不足するでしょう。例えば、1日に2.8 〜6.4kg給与するという指示が書いてあれば、1日に最低2.8kg与え、ボデ ィコンディションを維持するための必要に応じて増量します。 それぞれの繁殖牝馬の要求量に応じて給餌して下さい。品種によって もカロリー要求量(やエネルギー効率)は異なります。季節による青草 の品質や量が異なることに気づき理解する必要があり、繁殖牝馬のBCS を維持するために、わずかな変化も見逃さず、BCSをつけることを管理 上の仕事にしておきます。 妊娠馬は常にきれいな水を飲めるようにしておきます。鉱塩(ミネラ ルを含有してもしなくても良い)を置きます。配合飼料、サプリメント ペレットまたはビタミンとミネラルのサプリメントによって、十分なミ ネラルを供給されており健康な馬には、ミネラルを含有した鉱塩は不要 です。 獣医師によって勧められたワクチン接種と駆虫を実施して下さい。そ して定期的な削蹄、歯の鑢削を行って下さい。 上がり馬の管理 パフォーマンスホースから繁殖牝馬への転向は、栄養学的な見地からも 挑戦です。 つい最近までトレーニングをしていた(特にレースを引退したとして も)牝馬は、繁殖のためには最適なコンディションではないでしょう。 また、特別な取り扱いを必要とするかもしれません。 上がり馬は、以前のトレーニングプログラムから徐々にペースダウ ンさせるべきです。強度なトレーニングやそれに伴うマネジメント に慣れている個々の馬たちは、急激に給餌量を減らし、青草のある 放牧地へすぐに放牧すべきではありません。そうすれば、急激に体 重を減らしてしまうかも知れません。そのかわり、パフォーマンス 用の飼料から、舎飼い中や穏やかな群れで放牧する際に、ボディコ ンディションを維持する程度の飼料へ移行することから始めます。 給餌管理 一旦、上がり馬が環境に慣れたら、体重を測定します。生産のサイクル に入った繁殖牝馬同様、上がり馬も中程度からやや肉づきの良いボディ コンディションに維持すべきです。これは、1〜9の評価システムの BCSにおける5または6にあたります。 中ぐらいのBCSでは、その肋骨は見えません。しかし、若干肋骨の上に 脂肪を触れる程度で、き甲周辺や肩、尾根部にも若干の脂肪を触りま す。 エネルギー源によって適切なボディコンディションを維持できます。ハ ードな運動がなくなったことと同時に良質な牧草を自由摂取できること で多くの牝馬は体重が増加するでしょう。 もし、牧草単独で体重増加に十分なカロリーを供給出来ない場合、よく 設計された配合飼料を使います。 飼料袋のタグあるいは袋にプリントされる製造業者の指示に従い、慎重 に給餌量を調節します。給餌が推奨量以下の場合、栄養の摂取量が不足 します。例えば、もし推奨量が1日に2.8から6.4kgであるなら、牝馬が、 ボディコンディションを維持するために必要に応じて増加させ、1日に 少なくとも2.8kgを与えるべきです。 体重増加には時間を要します。BCSがひとつ上がるには数カ月を要する 場合もあるでしょう。体重増加のためには上質の牧草を自由摂取できる ようにし、配合飼料を食べ過ぎないように気をつけてください。ボディ コンディションを定期的に評価することで、牝馬が体重を増やしている かどうか確かめることが出来ます。ほとんどの牝馬にとって、1日に体重 450kgあたり4.5から6kgの配合飼料で十分体重を増加させます。 もし、牝馬の体重が増加し、良質の牧草だけで体重を維持できるのな ら、栄養要求量に合致させるために、サプリメントペレットもしくはビ タミンとミネラルをうまく配合したサプリメント、例えばI.Rペレット (KERの商品)を与えるべきです。 2歳馬の管理 2歳馬の管理では、成長とパフォーマンスの両方に必要な栄養を考慮し なければなりません。 馬が満2歳に達する時までに、ほとんどの馬は成熟した体高まで成長して います。馬によっては数センチ成長するかもしれませんが、縦方向の成 長はほとんど完全に終了しています。成長板が閉鎖するため、完全な骨 格の成熟は、生涯の早い時期に、おそらく6歳以前に終了しています。 多くの2歳馬は、成熟した競走馬の体型をしていません。それは、馬体 の幅、胸幅や四肢、また胴回りや脇腹の厚みに欠けています。また筋肉 のボリュームも成馬に及びません。 上背の成長はほぼ終了しているでしょうが、2歳馬の骨格やその他の組 織は、成熟にはまだほど遠いのです。加えて、多くの馬は、彼らが成熟 するずっと前からアスリートとして活躍しなければなりません。 サラブレッドを例に挙げれば、18ヵ月齢という若さでレースのトレーニ ングを開始し、おそらく2歳に達する前にレースに出走します。ショウホ ースであればもっと早く鞍をつけられ調教され、騎乗されるでしょう。 それゆえ、2歳馬では、パフォーマンスに必要な栄養と成長に必要な栄 養の両方が求められるのです。 給餌管理 2歳馬の栄養要求量に関しての研究は多くありません。主として、成長 のための栄養要求量とパフォーマンスのための栄養要求量のそれぞれの 情報を組み合わせて考えられています。KERは、中程度の運動をするた めの栄養要求量を満たすようにうまく設計された配合飼料が、成長に関 しても有益であることを発見しました。 かなり多くのバランサータイプの配合飼料(ただし、体重100kgあたり 0.5kg以上にならないことが理想)を2歳馬が摂取するため、高品質の配 合飼料は適切なタンパク質、カルシウム、リンを含んでいるべきです。 2歳馬でカロリー制限をすることは(太りやすい馬を除き)ほとんどあ りませんが、サプリメントペレットを使用したビタミンとミネラルの強 化が必要です。 大量の配合飼料を給与することはリスクを伴います。配合飼料の一部を 植物油または米油などで置き換えることが出来ます。このようなエネル ギーが濃縮した添加剤は、飼料のボリュームを増やさずにカロリーを追 加出来、餌の量を増やさず、または減らすことが出来ます。もう一つの 給餌量を減らすやり方は、1回の飼い葉を2回以上に分割して与える方 法です。昼間の飼い葉は、朝や夕方の飼い葉の量を減らすために重要で す。馬は1日中高品質から中程度の品質の乾草を食べることが必要であ ることを忘れてはなりません。これは、馬の退屈しのぎや胃潰瘍および 後腸アシドーシスを予防するだけでなく、エネルギー吸収量を増やす効 果があるのです。 2歳馬の栄養要求量は成長期の馬と成馬のパフォーマンスホースの中間 です。2歳馬がトレーニング中であれば、成馬用のどの高品質の配合飼 料も与えることが出来るでしょう。運動によるエネルギー要求を満たす ための給餌量の増加は成長のための栄養も満たすでしょう。 このような2歳馬では、よく設計された電解質サプリメントを与えるこ とによって、発汗によって失われる電解質を補給することができます。
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