(様式4) 博士論文内容要旨 氏名(本籍) 寺島顕一(福島県) 学位の種類 博士(理工学) 学位記番号 学位授与年月日 学位授与の要件 学位規則第 10 条第 1 項該当 研究科 福島大学大学院共生システム理工学研究科(博士課程) 学位論文題目 局所的な磁気構造解析のためのモンテカルロシミュレーション 論文審査委員 (主査)山口克彦 二見亮弘 馬塲一晴 論文目次 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 序論 シミュレーション手法 異なる径のトーラスリングにおける磁化過程 熱アシストを用いたトーラスリングの還流構造スイッチング 鋭敏化した Alloy600 のマイナーループ解析 マイナーループの磁気的非破壊検査への応用 まとめ 論文内容要旨 本論文の内容は、ナノスケール下において様々な特徴を持った系を対象として、モ ンテカルロ法による磁気構造解析が可能であるかを検証するものである。第1章では 全体の背景になる事柄について記述し、第2章ではシミュレーション手法について説 明する。第3~6章では、モンテカルロ法の特性を検証するために複数の磁性体を対 象とし、シミュレーションと解析結果について説明する。最後に第7章で全体のまと めを述べる。 まず「第3章 異なる径のトーラスリングにおける磁化過程」では、異なる乱数列 を用いることで磁化状態にわずかな差異が生じる事が、結果にどのような影響を与え るかを検証するために、ナノスケール磁性体の一例としてトーラスリングの磁気特性 シミュレーションを行った。これにより、トーラスリングの持つ2通りの磁化反転過 程が、リングサイズに依るのではなく、反転核が生成される場所によって決定される ことを明らかにした。さらに反転中のスピン挙動についても説明した。 「第4章 熱アシストを用いたトーラスリングの還流構造スイッチング」では、磁 化の温度依存性を計算した例として、トーラスリングの磁化反転過程の一つである還 流構造を取り上げた。安定状態の一つである還流構造は時計回りと反時計回りの二種 類存在する。どちらになるかはランダムに決まるが、ここでは高温状態からの冷却過 程において,一部の温度帯にのみ直線電流による円形磁場を印加することで還流構造 を制御することを試みた。これにより、磁場はキュリー点付近でのみ印加すればよく、 高温または低温時に印加しても制御することはできないことを示した。 「第5章 鋭敏化した Alloy600 のマイナーループ解析」では、安定状態ではない 状況下における磁気特性が、モンテカルロ法により解析することが可能であるかを検 証するために、ガウス分布に従い磁性粒子を配置した分散系を対象としてマイナール ープのシミュレーション結果について記述した。分散系は劣化したニッケル基合金の 結晶粒界面付近をモデル化した物であり、これもナノスケールの磁性体と言える。こ れにより、マイナーループには実験と計算の間に差異が確認されたが、それぞれの保 持力とヒステリシス損による比較が可能であり、結果として実験による解析結果に則 したガウス分布を示すことができた。 「第6章 マイナーループの磁気的非破壊検査への応用」では、粒子間距離が全て 異なる場合でも、モンテカルロ法によるマイナーループのシミュレーション解析が可 能であるかを検証すために、磁性粒子を大きな空間内に均一に配置した均一系を対象 とした解析結果について記述した。第5章で使用した分散系は、中心部に粒子が集中 しており中心から離れるにつれ粒子数が減少していたが、局所的に見れば磁性体が均 一に分散していると考えられ、これをモデル化したものである。各マイナーループの 保持力とヒステリシス損の解析に加え、磁性粒子の集まりであるコロニーの概念を導 入した。これにより、系に存在する磁性粒子の分布を、保持力とヒステリシス損から 見積もることが可能であることを示した。 以上の結果から、それぞれの系が持つ特徴が、磁気特性や温度依存性に表れること が確認できた。さらにモンテカルロ法によるシミュレーション解析が、磁性体の局所 構造や温度との関係性を知るうえで有効であることが確認できた。
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