30P-0467

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MyD88 欠損による新規糖尿病発症メカニズムの解明
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審良 静男 2 ,
小澤 光一郎(
広島大院医歯
◯横山 匠太 1 ,細井 徹 1 ,松尾 俊 1 ,
薬,2 阪大院薬)
【背景】今や世界的な問題である糖尿病の発症に、感染防御に働く免疫応答が深
く関わっていることが注目されている。免疫応答受容体である TLR4 は本来、細菌
を認識して炎症を引き起こすが、最近になって飽和脂肪酸が TLR4 に結合すること
が明らかとなった。すなわち高脂肪食をとりがちな肥満者の生体内で、飽和脂肪
酸が TLR4 を介して慢性的な炎症反応を起こし、糖尿病が発症するという仮説が提
唱されている。そこで本研究では、TLR4 に直結するアダプタータンパク MyD88 に
着目し、MyD88 とメタボリックシンドロームの関係について検討を行った。
【結果と考察】まずグルコース負荷試験により、MyD88 欠損マウスは耐糖能低下を
示すこと、またそれは高脂肪食摂取によって増悪することを見出した。一方で、
コントロールマウスと体重、脂肪量、摂食量、行動量に差はなく、上記の耐糖能
異常はこれらの因子非依存的であることと推察された。さらに、MyD88 欠損マウス
の血中インスリン濃度が上昇していたことから、同マウスは2型糖尿病である可
能性が示唆された。糖尿病発症の危険因子と言われる TNF-αの発現量は MyD88 欠
損によって減少し、炎症反応の低下が認められたが、驚いたことに MyD88 欠損マ
ウスで顕著な肝細胞死や肝機能障害(ALT 上昇等)が観察された。この原因を究明
したところ、JNK(細胞死誘導因子)の著しい活性化を認めた。次に、血中コレス
テロールを測定したところ、高脂肪食摂取の MyD88 欠損マウスにおいて高コレス
テロール血症が確認された。さらに、同マウスにおいてコレステロール合成系律
速酵素 HMG-CoA レダクターゼの発現も上昇しており、MyD88 欠損マウスはコレステロー
ル合成系の制御困難な状態であることが推測され、その結果、糖尿病の病態を示
していると考えられた。