試薬ラベルと 工学倫理と安全管理 SDSの読みかた 化学薬品を管理する法令 化学物質の危険性 化学物質の危険性 急性毒性 皮膚刺激 発赤・水疱・潰瘍 発がん ベンゼン、Crなど 神経症状 麻酔・錯乱・多発性神経炎 肝障害 クロロホルムなど 窒息 腎障害 Cdなど 中枢神経障害 トルエン、Hgなど 酸欠 N2 閉塞性窒息 Cl2 分泌物で窒息 組織性窒息 CN− 内呼吸阻害 化学物質の危険性 燃焼 GHS Globally Harmonized System of 火災 慢性毒性 classification and labeling of chemicals 大抵の有機溶剤 発火 アルカリ金属など 爆発 過塩素酸塩、ピクリン酸など 化学品の分類および表示に関する世界調和システム 世界的に統一されたルールに従って、 化学品を危険有害性の種類と程度により分類し、 環境汚染 大気汚染 四日市喘息 (SOx) 水質汚染 水俣病 (有機水銀) 土壌汚染 イタイイタイ病 (Cd) その情報が一目でわかるようラベルで表示したり、 安全データシートを提供したりするシステム 1 化学物質のラベルの見かた 化学物質のラベルの見かた ラベルに必要な情報 JIS Z 7253 : 2012 危険有害性を示す絵表示 1. 危険有害性を示す絵表示 2. 注意喚起語 3. 危険有害性情報 4. 注意書き 5. 化学品の名称 6. 供給者を特定する情報 7. その他国内法令によって表示が求められる事項 化学物質のラベルの見かた 化学物質のラベルの見かた 注意喚起語 危 警 険 危険有害性の性質とその程度を示す語句 高 [例] 重大性 低 化学物質のラベルの見かた 引火性液体及び蒸気 飲み込むと有毒 皮膚に接触すると有毒 発がんのおそれ 危険有害性の 告 喚起語なし 危険有害性情報 Hコード Hazard 注意書き Pコード Precautionary 安全対策、応急措置、保管・廃棄方法などを指示する語句 化学物質のラベルの見かた 国内法令によって表示が求められる事項 [例] 毒物及び劇物取締法 医薬用外毒物 熱、火花、高温などの着火源から遠ざけること 取扱い後はよく手を洗うこと 保護眼鏡を着用すること 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと etc. 医薬用外劇物 消防法 危険物第4類 第二石油類 非水溶性 2 化学物質のラベルの見かた 化学物質のラベルの見かた すぐに対応すべき事項はラベルから情報を得る 「絵表示」「注意喚起語」「危険有害性情報」から 火薬・自己反応性物質・有機過酸化物 危険有害性の性質と取扱方法をイメージする 着火源を遠ざける 「注意書き」は取扱者にとって直ちに必要な情報 詳細な対応は SDS をあわせて参照する 化学物質のラベルの見かた 他の物質の燃焼を助長 爆発性 可燃性 引火性固体・液体 自然発火性固体・液体 火気厳禁 着火源を遠ざける 物質によっては禁水・不活性雰囲気 化学物質のラベルの見かた 飲んだり吸ったりすると急性健康障害 支燃性ガス・酸化性物質 急性毒性 熱・可燃物から遠ざける 手洗い励行 取扱時飲食厳禁 目・皮膚・衣類への付着を避ける 高圧ガス 接触した金属を腐食 皮膚・目に損傷 高圧ガス・液化ガス 腐食性物質 換気の良い場所におく 高温の場所は避ける 目・皮膚・衣類への付着を避ける 手洗い励行 化学物質のラベルの見かた 単回・複数回曝露で特定健康障害 化学物質のラベルの見かた 呼吸器感作性・生殖細胞変異原性・ 発癌性・特定臓器毒性・ 吸引性呼吸器障害 手洗い励行 取扱時飲食厳禁 粉塵等の吸引を避ける 眼に対する重篤な損傷 環境放出で環境に対する悪影響 水生環境有害性 環境への放出を避ける 重篤ではない健康有害性 急性毒性 皮膚・眼刺激性 気道刺激性 麻酔作用 それぞれの有害性に応じた対応 3 SDSの読みかた SDSの読みかた SDS = 安全データシート Safety Data Sheet 化学物質を提供する際に、化学物質の危険有害性情報を 1. 化学物質等および会社情報 提供先に提供するための文書 2. 危険有害性の要約 3. 組成および成分情報 化学物質の安全な取扱い、事故の未然防止 危険性 物理的:引火・爆発 有害性 急性毒性 環境影響 SDSに必要な情報 JIS Z 7253 : 2012 4. 応急措置 化学的:異常反応 5. 火災時の措置 慢性毒性 6. 漏出時の措置 7. 取扱および保管上の注意 8. 曝露防止および保護措置 SDSの読みかた SDSに必要な情報 JIS Z 7253 : 2012 SDSの読みかた 9. 物理的および化学的性質 実験室にSDSを備えておくことが望ましい 10. 安定性および反応性 11. 有害性情報 14. 輸送上の注意 SDSは一般的な使用を前提に記載されているので、 自分の実験での取扱い実態と照合して危険予測を行う 15. 適用法令 16. その他の情報 まず「2. 危険有害性の要約」を見て、 危険性、健康・環境への影響を事前に把握する 12. 環境影響情報 13. 廃棄上の注意 有害性の高い化学物質、良く使う化学物質は 非専門家にも理解できるように、マニュアル化する (eg. 神奈川産業保全推進センター) 4 化学物質を管理する法令 化学物質を管理する法令 急性毒性・慢性毒性 労働安全衛生法 毒物及び劇物取締法 火災 労働安全衛生法 目的 健康の確保 化管法 大気汚染防止法・水質汚濁防止法など 義務主体 = 事業者 日本の労働者の 安全の確保 環境汚染 労働安全衛生法 消防法 ○○しなければならない ○○させてはならない 強行規定・罰則あり (最高刑は懲役7年、罰金300万円) 快適な職場環境の形成促進 ○○するようにしなければならない ○○するように努めなければならない 努力義務規定・罰則なし 学生は法的には労働者ではないが、 国立大学法人の判断で労働者に準じた扱いとなる 労働安全衛生法 誰が義務を果たすのか? 安全衛生管理体制 総括安全衛生管理者 義務を果たすのは代表者 = 学長 安全管理者 権限と責任の委譲 衛生管理者 国立大学法人は人間ではないから 学長 ⇒ 理事 ⇒ 学部長 ⇒ 学科長 ⇒ 管理責任者 労働者の責任 事業者が労働者に課した義務を守らなければ 通常は事業場の代表者が兼務する 第一種衛生管理者 (製造業など : 有害業務を伴う) 第二種衛生管理者 (金融業など : 有害業務を伴わない) 産業医 50万円以下の罰金を科す規定がある 民事的には過失相殺 5 労働衛生関係政令・省令 労働安全衛生法施行令 労働安全衛生規則 有機則 (有機溶剤中毒予防規則) 有機溶剤による中毒の予防 特化則 (特定化学物質障害予防規則) 電離則 (電離放射線障害防止規則 ) 作業環境管理 – 工学的対策 作業管理 – 個別管理的対策 健康管理 – 医学的対策 エックス線・放射性同位元素による障害の予防 有害物質に触れないで済むようにする 使用の中止・他の物質への転換 作業方法の改善 密閉化・遠隔操作 空気中の有害物質濃度を低く保つ 作業環境測定 許容濃度 通常の勤務形態 (8時間/日、40時間/週) で曝露されても、 ほとんどの人に健康上の悪影響が見られない濃度 日本産業衛生学会の定める濃度 管理濃度 局所排気装置 作業環境管理の良否を判断する管理区分を決める濃度 全体換気 法令で定められている濃度 作業環境測定 作業環境測定 特定化学物質による急性・慢性障害の予防 作業環境管理 労働衛生の3管理 作業環境測定 作業管理 保護具 A測定 : 室内の平均的化学物質濃度を調べる測定 防塵マスク・防毒マスク B測定 : 発散源の近くでの濃度を調べる測定 保護衣・保護眼鏡・保護手袋 管理区分 : 測定値を管理濃度と比較して決定 第1管理区分 : 測定値が有意水準95%で管理濃度以下 第2管理区分 : 測定値の平均が管理濃度以下 保護具に頼って環境改善を怠ってはならない 環境は良好であり維持に努める 作業環境に改善の余地あり 第3管理区分 : 直ちに原因を調べて改善する必要 6 健康管理 有機則 特殊健康診断 雇入時、配置転換時の健康診断 定期健康診断 (6か月に1回) 自覚症状・他覚症状 血液検査 肝機能・貧血 尿検査 体内代謝物 その他、眼底検査・握力・肺活量など 第1種有機溶剤等 (クロロホルム等は特定化学物質に移行) (ジクロロメタン等は特定化学物質に移行) これらを5%を超えて含有する混合物 有機則 局所排気装置 管理 囲い式フード(ドラフト) 0.4 m/s 以上 外付けフード 側方吸引 0.5 m/s 以上 労働者の指揮 上方吸引 1.0 m/s 以上 局所排気装置の点検 (毎月) 保護具の使用状況監視 有機則 n-ヘキサン, トルエン, メタノール, アセトン, エーテル, THF, 酢酸エチルなど これらを5%を超えて含有する混合物 第2種有機溶剤等 取り扱う化学物質に応じた検査 有機則 二硫化炭素・1,2-ジクロロエチレン 掲示 有機溶剤作業主任者の選任 (試験研究の場合を除く) 局所排気装置の定期自主検査 (毎年) 有機則 作業環境測定 健康診断 6か月に1回 尿検査(トルエン・ヘキサンなど) 肝機能検査(クロロベンゼンなど) 眼底検査 (CS2) 保護具の使用 貯蔵および空容器の処理 空容器は密閉するか、屋外の一定場所に集積 7 特化則 特化則 第1類物質 PCB, Be* など 製造は厚労大臣の許可要 第2類物質 特定第2類物質 : 密閉した施設で製造 局所排気装置 ガス状 0.5 m/s 以上 粉塵状 1.0 m/s 以上 HF, ベンゼン*, CH3Iなど オーラミン・マゼンタ : 膀胱癌をおこす染料 特別有機溶剤 クロロホルム*、ジクロロメタン*など 管理第2類物質 クロム酸*, NaCN, KCN, Hg, Mnなど 第3類物質 H2SO4, HNO3, HCl, NH3(aq), PhOH, HCHOなど *印 : 特別管理物質 : 発癌性⇒作業記録を30年保存 特化則 用後処理 : 除塵・排ガス処理・排気処理・ぼろ等の処理 漏洩の防止 : 設備についての規制 管理 特定化学物質作業主任者の選任 (試験研究の場合を除く) 労働者の指揮 局所排気装置の点検 (毎月) 保護具の使用状況監視 物質 作業主任者 資格 有機溶剤 有機溶剤 作業主任者 有機溶剤作業主任者 技能講習修了者 特別有機溶剤 特定化学物質 作業主任者 有機溶剤作業主任者 技能講習修了者 特定化学物質 特定化学物質 作業主任者 特定化学物質及び 四アルキル鉛等 作業主任者 技能講習修了者 局所排気装置の定期自主検査 (毎年) 特化則 作業主任者 掲示 特化則 作業環境測定 作業記録保存 : 特別化学物質 (ベンゼン、クロロホルムなど) 30年保存 (発癌性物質⇒特に長期保存が必要) 健康診断 6か月に1回 物質は多岐にわたるので、検査項目もいろいろだが 大部分は有機溶剤の健康診断項目と重複 保護具の使用 8 毒劇物 毒劇物 毒物及び劇物取締法 薬事法 医薬用外毒物 毒薬 医薬用外劇物 劇薬 毒物及び劇物取締法 第二条 (定義) 毒物とは、別表第一に掲げる物であって、医薬品及び 医薬部外品以外のものをいう。 劇物とは、別表第二に掲げる物であって、医薬品及び 医薬部外品以外のものをいう。 毒性の強弱は毒物・劇物を定義しません 毒劇物 毒劇物 医薬用外毒物 医薬用外劇物 HCN, NaCN, KCN HCl, H2SO4, HNO3 Hg, Se NaOH, KOH HF Br2, I2 POCl3 MeOH NaN3 CCl4, CHCl3 危険物 使用量を記録 第1類 酸化性固体 過塩素酸塩、無機過酸化物など 第2類 可燃性固体 金属粉・硫黄など 第3類 禁水性物質 Na、LiAlH4など 第4類 可燃性液体 可燃性有機溶媒一般 第5類 爆発性物質 過酸化物・ニトロ化合物など 第6類 酸化性液体 施錠された保管庫に保管 危険物 消防法による規定 過塩素酸・硝酸など 危険物第4類 — 引火点で分類 特殊引火物 : 極めて引火しやすい 第一石油類 : 室温で引火 二硫化炭素, ジエチルエーテルなど 非水溶性 トルエン, 酢酸エチルなど 水溶性 アセトン, アセトニトリルなど アルコール類 : 炭素数3以下の飽和1価アルコール 9 危険物 危険物 混ぜたら危険! 1 2 3 4 5 6 第4類 特殊引火物 50L 1 酸化性固体 – × × × × ○ 第4類 第一石油類 200L (非水溶性)、400L (水溶性) 2 可燃性固体 × – × ○ △ × 第4類 アルコール類 400L 3 禁水性物質 × × – △ × × 4 可燃性液体 × ○ △ – △ × 5 爆発性物質 × △ × △ – × 6 酸化性液体 ○ × – × × × 違う類の危険物は混ぜたらダメ 化学物質排出把握管理促進法 指定数量 — 保管してよい数量の目安 PRTR制度 etc. 実験室における危険物の保有 全危険物について合計して指定数量の0.2倍まで ex. エーテル5L, トルエン5L, エタノール10L : 5 5 10 + + = 0.15 50 200 400 化学物質排出把握管理促進法 PRTR制度 環境や生態系に有害なおそれのある化学物質について、 事業所からの環境への排出量、事業所外 への移動量を、 事業者が自ら把握し国に対して届け出るとともに、 国は排出量・移動量を集計し、公表する制度 試薬業者 大学(研究室) 産廃業者 集計・報告は 環境へ排出 環境安全推進センターの 仕事です 10
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