天理大学学報 2 0 3:2 7 3 5,2 0 0 2 スポーツにおける社会化要因の検討 一 競技スポーツ参与に影響 を及ぼす他者 と活動継続要因について 一 太 田 雅 夫1 ) 柳 津 裕 哉2) A St udyoft heFact orsi nSport sSoci li a 2 : at i on - Si gni f i cantOt her I ndi vi dua ls and Cont i nui ng Act i vi t y Fact ors t hatEf f ectCompet i t i veSport sPart i ci pat i onMas aoOht alandYuyaYanagl S aWa2 Abst ract Pas tr es e ar c ho nt hes o c i al i z at i o no fs po r t ss t ar t sf r o mt hei s s ueofho w pe opl ee nt e ri nt oo rbe ins g po r t spar t i c i pat i o n.Thi sr e s e ar c hf o c us eso nt hei nt e m er di at epr o c es s eso rpeo pl ewhos t r o ngl yanddi r e c t l ypar t i c i pat ei nc o mpe t i t i ve s po r t sandho pest oc l ar if yt hes po r t sval ueso fs i g ni ic f anto t he ri ndi vi dual sand o ft hepar t i c i panthi ms e l fwhi c he fec thi ss po r t sac t i vi t i es . SuⅣe yr es ul t sar easf わl l o ws : 1 )Fo ri ndi idualf v ul lpar t i c i pat i o ni nc o mpe t i t i ves po r t s ,t heg r eat e s ti nf lue nc e ar et hec o ac hands c ho o lt eac he r . 2)Fo rva luei t e mst hatar ef ac t o r si nc o nt i nui ngpar t i c i pat i o n,加̀i nni ng' ' wast he l s , "" i mpr o vi ngr es ul t sandr ec o r d, "" s e ns e s t r o nge s tf わl l o we dby` ì mpr o vl ngS 女i l , ' '廿̀us t r at i o n, ' '` t̀ e amwo r k, ' '" ac qul nngt e c hni queands t r at e gy, ' ' o rac hi e ve me nt " i nt e r ac t i ngwi t ho t he r s , ' '" appe anngl nS po r t i nge ve nt s , ' '` ẁi nnl ngawar ds , ' ' ands oo n.Thes ear er e c o g ni z e dasval uesunl quet Os po r t s . とが一般的であ り16),換言すれば,個人が帰 1. は じ め に 属 している当該社会の価値体系 を個人の意識 So c i al i z at i o n) 」 は,社会学や心 「 社会化 ( 下 に内面化 してい くプロセスである。すなわ 理学,教育学な どの学問分野 において,人の 成長 を考 える際 に共通 に用いられている鍵概 ち 「 社会化」 は 「 当該社会 における個人の価 値の内面化 の過程」 と定義 して よい。 念 である と言 え よう。具体 的 な理解 と して しか しなが ら,研究史か ら見れば,個人が は,個人がおかれている社会的状況の中で, 他の要因によって受動的に社会化 されてい く さまざまな社会的役割 と結びついた態度や行 のか,あ るい は主体 的 に社 会化 してい くの 動 を人が身につけてい く学習過程 と捉 えるこ か, さらには折衷論的に他者 との相互作用 に 1)天理大学体育学部 2)天理大学体育学部研究生 1.De pa r t me nto fHe a l t ha ndSp o r tSc i e nc e s , Te nr iUni v e I ・ S i t y 2.Re s e a l ・ C hSt ud e n t ,De p rt a me n to fHe a l t ha ndS po r t Sc i e n c e s , Te nr iUni v e r s i t y 28 スポーツにおける社会化要因の検討 - 競技スポーツ参与 に影響 を及ぼす他者 と活動継続要酎 こついて - よって社会化が促進 されるのか といった論議 ボーッ的役割- と社会化 されるという仮説に が続 いてお り14)15),社 会化 に関す る共通理解 個人的属性」 基づいている15)。 ここで言 う 「 には未 だ至 っていないの も事 実 であ る。 ま とは,性,年齢,婚姻,職業,余暇時間,体 た,主体的な社会化論の立場 と相互作用論 に 力,スポーツ技能,価値観など,文字通 り参 よる社会化論の立場 を統合 し,新 しい枠組み 与者 本 人 の 多面 的要素 で あ る。「 重 要 な他 を考 える必要性 も提起 されている1 2 ) 。それ ら 者」 は,親, き ょ うだ い,友 人,隣 人,教 は先 にも述べ たように社会化概念が個人の成 柿, コーチな ど本人 と相互作用 し合 う者 を指 長 を考 える上で広 く応用可能であることの一 す。「 社会的状況」 は, まさに社会化が行 な 端 を示 していると同時 に,社会化研究の方法 われる場 における制度的,文化 的状況,環境 論 的不備で もある と指摘 されている1)O さら 条件や生活場面の特徴 を指 しているì ) 9 ) 。 に,現代社会の特徴 として,価値体系の多元 また, このスポーツ参与 を時間的に捉 える 性や多様性が存在 してお り, これ まで容認 さ ならば 「 参与する段階」,「 一貫 した参与の段 れて きたいわゆる社会化モデルに合致 した社 階」,「 脱参与の段 階」が考 え られてい る 1 5 )。 会化 パ ター ンのみが想定 され るだけで はな しか しなが ら, これまでスポーツへの社会化 く,その社会化 自体 も不連続 になる可能性が 問題 は,社会化 プロセスに影響 を及ぼすマク 高い とい う指摘 もある6 ) 0 ロレベルの要因や社会化する者の個人的属性 スポーツにおける社会化研究は,1 9 7 0年代 について深 く掘 り下 げた研 究 は少 ない4)。 こ に萌芽 し,これまで多 くの研究的蓄積 を持 っ れ らは研究の手続 きの困難 さが原 因であると l l ) 1 7 ) 。特 に Ke nた領域である とい える2)3)7)10) 考えられる。 さらに, これまでの先行研究 に スポーツへの社 yo n らの枠組 を土台 とした 「 会化 ( So c i al i z at i o ni nt oSpo r t ) 」研究は,人 Spo r ti nが どの よ うにス ポ ー ツ に参 与 ( vo l ve me nt ) してい くのか とい う問題 を,役 おいては,人がスポーツと関わる,まさにそ Ro l el ear ni ng)概念 を用いて 「 個人 割学習 ( 的属性 ( Pe r s o nalat t r i but e s ) 」,「 重要な他者 かに始 ま りの重要性 も理解で きるが,筆者 ら ( si g ni 丘C antot he r s ) 」,「 社会的状況 ( Soc i al s i t uat i o n) 」 に集約 され る さまざまな要因 と の関連で述べ られて きた。すなわち,多様 な 個人的属性 を有する役割学習者は社会化場面 ポーツ活動 を継続 し,生活化 してい くのか と の中で,重要なる他者 によって影響 され,ス の始 ま りに多 くの関心が置かれ,人がスポー ツを自己の生活 に走着 させ るプロセスにはあ ま り関心が払われなかったといってよい。確 は,それ と同様あるいはそれ以上に,なぜス いった生涯スポーツの文脈 に沿 った実証的な 調査研究が必須 であると考 えている。 これ らの諸問題 を解決 に導 くための緒 とし て,本研究では一つの関心 を追求することが 重要である と考 えた。それはスポーツ活動の 定着性 とで も言 うべ きスポーツにおける社会 化の姿である。人はさまざまな社会的状況の 中でスポーツに参与 し,活動 を継続 してい く のであるが,その定着 に機能 した 「 重要な他 者」の存在や本人に活動継続 を志向 させてい る内面化 されたスポーツの価値 に焦点を当て ることは,人がスポーツと長い間関わるため の要件 を導 き出す ことにつながるのではなか Eenyon,G.S. 図- 1 社会化過程の 3要因 ( & Mc phe rs on,B.D.1 9 7 3 ) ろうか。 本研究では,その多 くが競技 スポーツ活動 29 太 田 ・柳 津 を生活の中心 に位置づ けていると言 って もよ トリーの実体 を尊重す る意味 か らも,それ以 い体育学部学生 を対象 に,彼 らの初期 的スポ 外 の要求 はせず,対象者が強 く印象づ け られ ーツ参加の契機 ,それに影響 を及 ぼ した重要 ているで きごとや感情 についての記述 も期待 な他者,本格的な競技 スポーツ選手 と しての していることを伝 えた。 役割取得 に影響 を及 ぼ した重要 な他者,競技 3.結果および考察 スポーツ活動継続 の要因 としてのスポーツに 対す る価値意識1 3 ) を明 らか に したい。 上記の記述調査 の結果, ライフヒス トリー これ らの検討 を経 ることで,彼 らが どの よ の 自由記述が十分でなか った 4ケース を除外 うなルー トを辿 って現在 に至 っているのか, して,227名 の調査 結果 か ら,以下 のパ ター 具体的 には,スポーツ とどの ように出会い, ン化 されたスポーツ参与の 3つの タイプが明 それ を継続す る ようになったのか とい う我 々 らか になった。 これ らの 3タイプは,大別す の関心 に対す る答 えが明 らか になると考 え ら る と現在競技 スポーツに参与 している群 と参 れる。 この ような実証的な研究 を積み重 ねて 与 していない群 に分 けることがで きる。 また い くことで,人 とスポーツとの望 ましい出会 前者 では,特定種 目のみ に参与 して きた もの いや直接的参与の継続 に有益 な示唆 を与 える と複数種 目に参与 して きた もの とに分 けるこ ことが可能 となろ う8 ) 。 とが で きた。 この基準 は対 象 こそ は異 な る 2.研究の方法 が,一流競技者 のスポーツキ ャリアを研 究 し た先行事例 において も報告 されている5)。 本研 究では2002年1 0月,対象者 ( T 大学体 育 学 部 2年 次 生 :有 効 回 答 数,男 1 44,女 特定の競技 スポーツ 1種 目に強 タイプ A: く参与 し,継続 して きたタイプ。 83,計227人) に 自由記述 方式 を用 い て, 自 己のスポーツに関わるライフヒス トリーを文 タイプ B:2-3種 目程度の経験 を有 し, 章化 させ た。対象者 に体 育学部生 を選択 した 最終的に特定の競技 スポーツ 1種 目に強 のは,前述 した ように現時点で競技スポーツ に参 与 している者が多い こと, また過去 にお く参与 し,継続 して きたタ イプ。 タイプ C: 特定の競技スポーツに強 く参与 いて もスポーツ参与経験がある と容易 に推測 して こなかったタイプ。現在 のスポーツ で きることが理 由である。 また, 2年次生 は 参与 はない。 大学 とい う社会 において,入学後一定 の時間 が経過 し,個 々がそれぞれのスポーツ的役割 表- 1 スポーツ参与パターンの類型別集計 n ( %) を獲得 している と判断 したか らである。 男子 この文章化 については,研究的 な第一の関 女子 合計 心か ら,特 に,各 自のスポーツ参与が どの よ A 6 0(41. 7) 4 3(51 . 8) 1 0 3(45. 4) うに開始 され,それ を経験,継続 して きたか B 5 7(3 9. 6) 3 0(3 6. 1 ) 8 7(3 8. 3) とい う点 について,可能 な限 り詳細 な記述 を C 2 7(1 8. 7 ) 1 0(1 2. 1 ) 37(1 6. 3) す るように口頭で求めた。具体 的 には,本人 のスポーツ参与の開始時期 ,それに影響 を及 ぼ した他者,本格 的 に競技 スポーツに参与 し 表 - 1か ら,調査対象者 の83. 7% (タイプ た時期 ,競技スポーツへの参与 に影響 を及ぼ A+タイプ B)が特定 の競 技 スポーツに部活 した他者,過去お よび現在 においてスポーツ 動 で強 く参与 し,現在 も継続 していることが 活動 を継続 している要 因に関 してであ った。 明 らか になった。 これは調査対象者が体育学 しか しなが ら,個 々が感 じているライフヒス 部学生であることか ら当然の結果であろ う。 30 スポーツにおける社会化要因の検討 - 競技スポーツ参与 に影響 を及ぼす他者 と活動継続要因について - 一 万,1 6. 3%の 者 (タ イ プ C) は,何 種 目 かのスポーツ参与経験 を有 しなが らも,現在 が存在 していたことは言 うまで もない。 表 -3は タイプ A にお け る初期 のス ポ ー では特定の競技 スポーツに直接 的に参与 して ツ参与 に関わった重要 な他者 を示 した もので いない ことが明 らかになった。 また,女子の ある。 ほ うが男子 よ りタイプ A の比 率が1 0%高 い ことがわか った。 次 にタイプごとのスポーツ参与開始時期 と 秦-3 初期のスポーツ参与に関わった重要な 他者 ( タイプ A) n 重要 な他者 について述べ てい きたい。 1) タイプ A 表 12は タイ プ Aのス ポ ー ツ参 与 開始 時 男子 父 母 女子 ( %) 合計 . 1 9( 31 . 7). 9( 2 0. 9) 2 8(2 7. 2) 1 4( 2 3. 3) 1 2( 2 7. 9) 2 6(25. 2) 期 をみた ものである。 表 か らわか る ように タイプ A のス ポー ツ 参与 は,男女 とも小学生期 と中学生期 に最 も 先輩 7( l l. 7) 5( l l . 6) 1 2(l l . 7) 兄 6( 1 0. 0) 6( 1 4. 0) 1 2(l l . 7) 指導者 祖父 3(5. 0) 0(0. 0) 4(9. 3) 2(4. 7) 7( 6. 8) 2( 1 . 9) Q (0.0) . 2(4.7) 1(2. 3) 2( 1 . 9) 1( 1 . 0) 多 く集 中 している。ついで比率が高いのは幼 児期 である。 この点は調査 の記述 にみ られる ように小学校以前 には地域 のスポーツクラブ や道場 な ど,小学校 ではそれ らに加 えて学校 蘇 の クラブ活動や スポーツ少年 l 乳 中学校 では ライバ ル 運動部活動 といったスポーツ組織形態 に帰属 近隣の人 1(1 . 7) o(0. 0 ) 1( 1 . 0) して きたこととつ なが っている。 また,高校 プロ選手 o(0. 0) 1 ( 生期 でのスポーツ参与開始 は, ご く少数,大 親戚 o (0.0) 1( 1 . 0) 学生期 か らの競技スポーツ参与 は全 く認め ら なし 1(1 . 7) 1(1 . 7) 1(1 . 7 ) o(0. 0) 1( 0(0. 0 ) 1 . 0) 1 . 0) れ なか った。以上 の こ とか ら, タイ プ A は 長期 にわたって特定 1種 目の競技スポーツ参 与 を継続 している と言 える。 また,スポーツ 参 与 開始 時 期 は,幼 児 期 か ら中学 生 期 に 97.1%が 含 まれ て お り,後述 す る タイプ B と同様 ,かな り早期であることが明 らかにな った。今回の調査 において,幼児期 における 初期的スポーツ参与が特徴 的だったスポーツ と して,柔道,水 泳 をあ げ る こ とが で きる が, これ らのスポーツ参与の促進 には,対象 者 を取 り巻 く社会的状況 としての環境 的要 因 タイプ A) 秦 -2 スポーツ参与開始時期 ( n ( %) 男子 女子 合計 幼児期 l l(1 8. 3) 3( 7. 0) 1 4(1 3. 6) 小学生期 31(51 . 7) 21(49. 0) 5 2(5 0. 5 ) 中学生期 1 6(2 6. 7) 1 8(42. 0) 3 4(3 3. 0) 高校生期 2( 3. 3) 1( 2. 0) 3( 2. 9) 0) 0(0. 0) 0(0. 0) 大学生期 0(0. 重複回答 秦-4 スポーツ参与を強 く決定づけた重要な 他者 ( タイプ A) n ( %) 男子 女子 合計 指導者 1 6( 2 7. 0) 1 8( 41 . 9) 3 4(3 3. 0 ) 先輩 6( 1 0. 0 ) 1 3( 30. 2) 1 9(1 8. 4) 友達 7( l l . 7) 5( l l . 6) 1 2(l l . 7 ) 父 2(3. 3) 2(4. 7 ) 4( 3. 9) 母 1(1 . 7 ) 2(4. 7) 3( 2. 9) ライバル 1(1 . 7) 1(2. 3) 2( 1 . 9) 1(1. 7) 1(2. 3) 2( 1 . 9) なし 莱 o (0.0) 1(2.3) 1( 1.0) 重複回答 男子 は父が最 も多 く,ついで友達,母があ げ られた。女子 は母が最 も多 く,父,友達が それに続 いた。加 えて,先輩,兄,姉等の本 31 太 田 ・柳 津 人 よ りも年長者 の影響 が強 い こ とが わか っ た。 秦- 5 初期のスポーツ参与時期 ( タイプ B) n ( %) 特定のスポーツ種 目に参与す ることを考 え た場合,誰で もが最初 か ら競技者であること は考 えられない。す なわち,誰 もが初心者の 幼児期 1 0(1 7. 5 ) 8(2 6. 7).1 8(2 0. 7) 小学生期 3 9(6 8. 4) 1 5(5 0. 0) 5 4(6 2. 1 ) 時期 を経 て徐 々にさまざまな技術 を獲得 し, 中学生期 5( 8. 8) 6(2 0. 0) l l( 1 . 2) 体力 の向上 とあい まって, 自己の技能 を向上 高校生期 0( 0. 0) 1( 3. 3) 1( 1 . 2) させてい くのである。そ して当然の ことでは 大学生期 0( 0. 0) 0( 0. 0) 0( 0. 0) あるが,個 人のスポーツ能力が一定以上 に達 不明 3( 5. 3) 0( 0. 0) 3( 3. 4) した場合,初めて試合 ・競技会等 に出場で き るのであ り, ここか ら本格的な競技 スポーツ における社会化が開始 される。 本研 究で は,表 -3に示 した,言 わば 「ス 秦- 6 初期のスポーツ参与に関わった重要な 他者 ( タイプ B) n ポーツに接近,接触,初めての参加 を促す重 男子 要 な他者」 とは別 に 「 すでに参与 しているス 女子 ( %) 合計 ポーツ参加 をよ り固定的 にす ることに影響 を 及 ぼす重要な他者」 の存在 を重要視 した。そ れは,対象者の多 くが競技 スポーツに参与 し 父 兄 ● 5 W 1 6(1 8. 4) 7(1 2. 3) 3(1 0. 0) 1 0(ll . 5) ていることを前提 に した場合,その競技スポ ーツにおける参与 に影響 を及ぼ した 「 重要 な 他者」への視点で もある。 その視 点 か ら, タイプ A にお い て スポ ー ツ参与 を強 く決定づ けた重要 な他者 を示 した 先輩 先生 弟 その他 6(1 0. 5) 6(1 0. 5 ) 0( 0. 0) 1( 1 . 8) 1( 3. 3) 0( 0. 0) 1( 3. 3) 0( 0. 0) 7( 8. 0) 6( 6. 9) 1( 1.1 ) 1( 1.1) ものが表 -4である。 重複 回答 教 師 を含 表 -4に示 す よ うに,指 導 者 ( む),先輩,友達が他 よ りも比率 が高 い。表 -3で高率であ った父,母 は低率であった。 表 -6は タイプ B にお け る初期 の ス ポー また,男女別 にみ る と,女子 のほ うが指導者 ツ参与 に関わった重要 な他者 を示 した もので と先輩の影響力が高い といえる。 これ らの こ あ る。 とか ら,スポーツ活動 を個人が競技スポーツ これ をみ る と,男子 は友 達 が最 も多 く, 活動 と して よ り強 く定着 させ て い くため に 母,父が同数で続 き,先輩,先生の数 も多か は, とくに教 師 を含 む指導者の存在が重要な った。女子 は母が最 も多 く,続 いて友達,父 位置 を占め ることが明 らかになった。 が多かった。 また男女共 に,家族の一員であ 2) タイプ B 0%前後存在 していた。 これ らを る兄,姉が1 表 -5は タイプ Bのス ポー ツ参 与 開始 時 み て も, タイ プ B の初期 スポー ツ参 与 開始 期 をみた ものである。対象者のスポーツ参与 に も,年長 者 の影響 が大 きい こ とが わ か っ 時期 は,幼児期 ,小学生期 に集 中 してお り, た。初 め てス ポー ツに参加 す る とい う こ と 女子 の場合 は中学生期,高校生期 に及 んでい は,本人の意思決定 に何 らかのスポーツ経験 る者 もい る。 この表 か ら,男 女 と もタイ プ を有す る人の体験 に基づ く価値意識や関心, A と同様 に参与 開始 時期 は早期 で あ る こ と また,スポーツは していな くとも他者のスポ が明 らかになった。 ーツに対す る価値観 や態度 な どが反映 されて 32 スポーツにおける社会化要因の検討 競技 スポーツ参与 に影響 を及ぼす他者 と活動継続要因について - い る と言 える。それが家族 に代表 される本 人 り,友達や先輩の姿 に憧れ を抱 くことを契機 の身内 にある人や同一生活圏に存在す る人で としてあげた者が約半数 を占めた。 さらに入 あれば,本 人の将来 におけるスポーツ活動 に 学前 に何 らかの情報 をすで に得 て,入部 した 大 きな影響力 を持 っていることは容易 に想像 い運動部が決 まっていた,あるいは友達がや で きる。一方,友達 は近隣,学校での遊 びや っていたので何 とな く等 の記述 もみ られた。 体育, クラブ活動等 で,楽 しさや競争心 を共 タイ プ B で は,高校 生期 に中学校 でや って 有 で きる存在 と して,時 には身近 な社会化モ きた種 目とは違 う種 目を選択 した とい う者が デル として, またライバル としての関係 を構 多かった。男子では, 大学生か らの参与が21% 築 してい くのであろう。 に も及 んだ。 これは,調査対象集団 にお ける 特徴 であ り,大学入学後, アメ リカンフッ ト 義 - 7 本格的スポーツ参与開始時期 ( タイプB) n( %) 男子 幼児期 小学生期 0( 0.0) 女子 0( 0. 0) 合計 0( 0.0) ボール部 に入部す る者が多 いことが反映 され た結果である。 表 -8には,衣 -7におけるスポーツ参与 を強 く決定づ けた重要な他者 を示 した。 7(1 2. 2) 6(2 0. 8) 1 3(1 4. 9) 初期参与時の重要 な他者 と比べ て も,家族 l(3 6. 7) 3 3(3 8. 0) 中学生期 2 2(3 8. 6) l や先輩,友達 等 の影響 力 は減 少 し,指 導 者 高校生期 1 6(2 8. 1 ) 1 2(4 0. 0) 2 8(3 2. 2) 大学生期 1 2(21 . 1 ) 1( 3. 3) 1 3(1 4. 9 ) ( 教 師 を含む)の影響力が高率であった。特 に女子 は5 0%の者が指導者 をあげている。初 期時 に高率 を示 していた友達の影響力は減少 した。以 上 の こ とか ら, タ イ プ B に お け 秦-8 スポーツ参与を強 く決定づけた重要な 他者 ( タイプ B) n ( %) 指導者 先輩 父 友達 1 2(21 . 1 ) 5( 8. 8) 3( 5. 3) 2( 3. 5) 1 5(5 0. 0) 3(1 0. 0) 5(1 6. 7) 4(1 3. 3) 27(31 . 0) 8( 9. 2) 8( 9. 2) 6( 6. 9) 母 柿 2( 3. 5 ) 3(1 0. 0) 5( 5. 7 ) 3) 2( 2. 3) 1( 1 . 8) 1( 3. 兄 0( 0. 0) 1( 3. 3) o( 0. 0) 1( 3. 3) 栄 1( 1.1) 1( 1 . 1 ) る,本格 的 スポー ツ参 与 は, タイプ A と同 様 に,指導者 ( 教 師 を含む)の影響が強い こ とがわか った。 3)タイプ C タイプ C は,調査 において全体 的 に明確 なスポーツ参与 に関する記述が非常 に乏 しか ったことが特徴 的であ った。 この点 には,体 育学部学生 であ りなが ら,現在 ではスポーツ 活動 に直接 的な参与 を していない ことも要因 として考 え られる。 しか しなが ら,著者 は, それ らの記述内容 に接 して 「スポーツにおけ る脱社 会化の問題」 として別 な観点か ら研究 重複 回答 す る必要性 を認識 した。 表 -9には, タイプ C にお け る初期 の ス 表 -7には, タイ プ Bの者 が特 定 の競 技 ポーツ参与時の重要な他者 を示 した。 スポーツ 1種 目に深 く参与す るようになった これ をみ る と,父,母,兄,柿,先斐等,本 時期 を示 した。 人 よりも年長者 の影響が強い と言 える。 この 率 である。 中学生期 は,学校 の課外活動 とし 点 は, タイプ A お よび タイプ B と同様 であ った。友達 の影響 も母 と同程度であった。 て運動部活動が盛 んになる時期 である。調査 記述調査か ら得 られた結果 は,前述 した通 の記述 に よる と,本 人が その活動 実 態 を知 り内容的 に非常 に乏 しく,特定の競技 スポー 全体 的 にみ る と,中学生期 と高校生期が高 33 太田 ・柳滞 秦- 9 初期のスポーツ参与における重要な他 者 ( タイプC) 秦-1 0 内面化 されたスポーツの価値 ( タイプ A+タイプ B) n ( %) n( %) 父 兄 守 友達 男子 1 6(5 9. 2) 7(2 6. 0) 6(2 2. 2) 8(3 0. 0) 女子 / 合計 5(5 0. 0) 21(5 7. 0) 5(5 0. 0) 1 2(3 2. 4) 4(40. 0) 1 0(27. 0) 2(2 0. 0) 1 0(27. 0) 男 技能の向上 なし その他 3(l l . 1 ) 1( 1 0 4(1 0. 8) 0) 1( 2. 7) 1( 3. 7) 0( 0. 0( 0. 0) 1(1 0. 0) 1( 2. 7) 合計 1 8(1 5 . 4 ) l l(1 5 . 1 )2 9日 5 . 3 ) 成績. 記録の向上 1 0( 8. 5 )Il o(1 3 . 7 )2 0(1 0 . 5 ) 達成感 9( 7 . 7 ) 1 0(1 3 . 7 ) 1 9(1 0 . 0 ) 悔 しさ 先輩 女 l l( 9 . 4 ) 6( 8. 2 ) 1 7( 8. 9 ) .0 ) 他者 との交流 1 0( 8 . 5 ) 5( 6 . 8 ) 1 5( 7 . 9 ) 大会出場 1) 6( 5 . 6( 8 . 2 ) 1 2( 6 . 3 ) 重複 回答 ツに強 く参与す ることがで きなか った とい う 快感 人間的成長 5( 4. 3 ) 2( 2 . 7 ) 7( 3 . 7 ) 3( 2 . 6 ) 4( 5 . 5 ) 7( 3 . 7 ) ことが読み取れた。他 の タイプの記述 と比較 指導者志望 5( 4 . 3 ) 2( 2 . 7 ) 7( 3 . 7 ) して,強 くスポーツに参与す る契機 となる重 挑戦 3( 2 . 6 ) 3( 4 . 1 ) 6( 3 . 2 ) 要 な他者 と出会 え なか った こ とが指摘 で き その他 6( 5 . 1) 4 (5 . 5 ) 1 0( 5. 3 ) る。 さらに,特定競技種 目の強い印象やその 合計 1 1 7( 1 0 0 . 0 )7 3( 1 0 0 . 0 )1 湘( 1 0 0 . 0 ) 重複 回答 関わ りに関す る記述 は認め られ なか った。 タ イプ C の経験種 目数 は,多 い者 で は 6種 目 を数 えた。 6種 目の経験 を有す る者 は,その ような目的 を持 ってその種 目を継続 している 記述 の中に,つ まらない,面 白 くない といっ のかは多様 である。 また,種 目が異 なれば内 た感情的な表現や所属 していた集団のメ ンバ 面化 された価値意識 も異 なって くる場合 もあ ーのや る気 のなさ,試合 に勝 てない等 の理 由 る と考 えられ る。 で次 々 と種 目を変 えていることが特徴 的であ 全体的 に 「 勝利」 をスポーツの価値 として った。その他,スポー ツを継続 しなかった理 認識 している者が最 も多かった。それは多 く 由 として, レギュラーになれなか った,ケガ の記述内容 にみ られる通 り,彼 らが競技 スポ を して継続で きなかった等の記述が認め られ ーツに参与 して 「 勝利」 とい う成功経験 を有 た。 この ように タイ プ C の者達 が,強 くス しているか らである。 この成功経験 は,彼 ら ポーツに参与で きなかった要因 としては,前 に達成感や快感 ,他者か らの賞賛 といったさ 述 した ように個人 に影響 を及ぼす重要 な他者 まざまな価値 を導いているのである。 との出会 いの契機が乏 しかった こととスポー 次 いで男子 で は,技 能 の 向上 ( 1 5. 4%) , ツ活動 を継続す る価値意識が形成 されなか っ l l .1%)が 続 き,女 子 技 術 ・戦 術 の獲 得 ( たことが示唆 された。 は,技 能 の向上 ( 1 5.1%),成績 ・記録 の 向 4)内面化 された競技 スポーツの価値 上 ( 1 3. 7%) と達成感 ( 1 3. 7%)が支持 され タイプ A とタイプ B の調査 か らは,競技 ていた と言 える。 スポーツの継続 か ら内面化 されたスポーツの 価値が認 め られた。それ らの記述か ら導 き出 された価値意識項 目を表 -1 0に示 した。 特定種 目を継続 して きた者 にとって, どの 4.ま と め これ までのスポーツにおける社会化研究, と りわけスポーツへの社会化研究 は,人が ど 34 スポーツにおける社会化要因の検討 一 競技スポーツ参与に影響 を及ぼす他者 と活動継続要因について - の ようにスポー ツに参与 してい くのか とい 文 う,いわばスポーツ参加の始 ま り ( 初期的ス ポーツへの参与) に焦点 を合 わせた ものが多 1)安 献 昌圭,藤原健固 ( 1 9 9 6)スポーツ消 かった。 しか しなが ら,人のスポーツ参加は 費者行動研究の社会学的視座,スポーツ 最終的に本人の意思の力 によるものであ り, 社会学研 究 4, 日本 ス ポー ツ社会 学会 「 スポーツは継続す ることが望 ましい」 と前 6 3 -7 8 編,法政大学出版局 :東京 ,pp. 提 した場合,その人のスポーツ参与 をより強 固にする影響力 を持 った重要な他者や活動継 続の理 由を明 らかにする必要があろう。 本研究では,以上のような視点か ら競技ス 2)Ei t z e n,D.S.andSage,G.H.( 1 982) r i c an Spo r t ,Wm.C. So c i o l o g yo fAme Br o wnCo mpany,U.S. ,pp.831 94 1 9 8 2)スポーツ参与の社会化 3)江刺正吾 ( ポーツへの社会化過程 をこれまで成功裡 に経 にみ られる性差の検討,体育 ・スポーツ て きたと考 えられる体育学部学生 を対象 とし 社会学研究 1,体育 ・スポーツ社会学研 たスポーツを主題 としたライフヒス トリー記 1 3 7 -1 6 0 究会編,道和書院 :東京 ,pp. 4)藤 田紀昭 ( 1 9 9 8)ある身体障害者のスポ 述調査 を実施 した。 その結果,以下の ようなことが明 らかにな った。 ーツへの社会化 に関す る研究,スポーツ 社会学研 究 6, 日本 ス ポー ツ社会学会 1)対象者 をスポーツ参与の形態か ら分類 し 強 く参与 し,継続 して きた タイプ (タイプ 編,法政大学出版局 :東京 ,pp. 7 0 8 3 5)萩裕美子,図本明徳,野川春夫,山田哲 ( 1 9 9 8) トライアス リー トの過去のスポ A),② 2-3種 目の経 験 を有 し,最 終 的 ー ツ活動 に関す る研 究 一 過去 のスポ に特定 の競技 ス ポー ツ 1種 目に強 く参 与 ーツ活動 における参加パ ターンの類型化 し,継続 して きた タイプ (タイプ B),③ とその特徴 につ いて - ,鹿屋体育大学 特定の競技スポーツに強 く参与 してこなか 学術研究紀要 ,pp. 21 -3 3 6)塙敏 ( 1 9 8 8)スポーツと社会化,スポー たところ,①特定の競技スポーツ 1種 目に った タイプ (タイ プ C) の 3経 路 が認 め られた。 ツ社 会学講義,森 川貞夫,佐 伯 聴 夫 編 2) タイプ A お よび タイプ B ではスポーツ 参与の開始時期が非常 に早期 だった。 著,大修館書店 :東京 ,pp. 1 2 4 -1 3 4 7)裏戸 修,永 島惇 正,川辺 光,萩 原美代 3)個人の競技 スポーツ参与 に強 く影響 を及 子,加藤爽子 ( 1 9 77)直接的スポーツ関 ぼ した 「 重要な他者」 として, とくに教 師 与の分析 とその要因に関する研究,体育 社会学研究 6,体育社会学研究会編,道 を含む指導者の存在が大 きかった。 4)競技 スポーツの継続要因 としての価値意 2 5 -5 6 和書院 :東京 ,pp. 識項 目は 「 勝利」が最 も支持 され,次いで 1 9 7 7)ス 8)影山健,今村浩明,佐伯聴夫 ( 成績 ・記録の向上」 「 達 「 技能の向上」 「 ポーツ参与の社会学 について,体育社会 , , 成感」などが続いていた。 学研究 6,体育社会学研究会編,道和書 以上のことか ら,スポーツへの社会化 を促 進 してい くためには,人 とスポーツを強 く関 21 院 :東京 ,pp.19)金崎良三 ( 1 9 85)スポーツ-の社会化理 わ らせ る影響力や一定の成功経験 に導 く能力 論,現代スポーツの社会心理,徳永幹雄 を持 った指導者の存在が必要条件 と言える。 他,遊戯社 :東京 ,pp, 31 39 また今後 は,スポーツに参与で きなかった事 ,「脱社会化」や 例 に焦点 を当て 1 9 77)ス 1 0)小椋博,森川貞夫,枝村亮一 ( 「 疎外」 と ポーツに対する態度,特 に勝利志向の分 いった面での実証的な調査研究 を進めたい。 析,体育社会学研究 6,体育社会学研究 太田 ・柳津 会編,道和書院 :東京 ,pp. 5 7 1汀 l l )久保和之 ( 2 0 01 ) スポーツ-の社会化論 再考,日本体育学会第5 2回大会号 ,p. 221 1 2)Mc Phe r s o n, B. D.( 1 981)So c i al i z at i o n: t o war d a ne w waveo fs c ho l ar l yi nql l l r yl naS po r tC O nt e Xt , Pape rpr e s e nt edatt heme e t i ngso ft heNASSS, Fo r tWo r t h,TX, 1 3)丹羽勧 昭,金子洋子 ( 1 9 8 3)大学運動部 月 の態度 か らみ たスポー ツの文 化 的特 徴,体育 ・スポーツ社会学研究 2,体育 ・スポーツ社会学研究会編,道和書院 : 東京 ,pp.6-7 1 9 8 3)ス 1 4)太田雅夫,北村薫,斉藤定雄 ( ポーツにおける主体的社会化論の研究, 順 天堂大学保 健体 育 紀 要 ,2 6,pp.9- 1 6 1 9 8 4)スポーツと社 1 5)岡田猛,山本数人 ( 会化論 についての一考察-So c i alAge nt と So c i a l i z eeの 相 互 作 用 の 観 点 か ら - ,体育 ・スポーツ社会学研究 3,体育 ・スポーツ社会学研究会編,違和書院 : 東京 ,pp. 7 9 -95 ,E.a n dSnyde r ,E.E. ,( 1 976) 1 6)Spr e i t z e r So c i al i 2 : a t i o ni nt oSpor t :A n Expl o r at o r y Pat h Anal ys ys ,Re s e ar c h Quar - l y,47( 2) ,p.238 t e r 1 9 99)エ リー ト競技者の個人史 1 7)吉田毅 ( にみ る困難克服 の様相 一 主体 的社 会 0回記 化論 の展 開 - , 日本体育学会 第5 念大会,体育 ・スポーツ関連学会連合大 会号 ,p. 2 6 9 35
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