ポリアニリン‐金属水素化物複合材料における水素吸放出

B02
発表題目:ポリアニリン-金属水素化物複合材料における水素吸放出挙動の解明
発表者:○吉田 曉弘、鶴見 翔太、溝口 雅、上田 渉(神奈川大工学部物質生命化学科)
水素は燃焼時の生成物が水のみのクリーンな燃料であり、高効率で電力に変換できることからエネル
ギーキャリアとして注目されている。しかし、常温常圧下で気体であり、他の燃料と比べて体積当たり
のエネルギー含有量が小さいため、高密度で水素を貯蔵できる材料の開発が進められている。例えば、
水素化リチウム(LiH)に代表される軽金属の水素化物は、正電荷を持った金属イオンと負電荷を持ったヒ
ドリド(H-)から構成されており、これら正負の電荷を持ったイオンが静電的に引き合っていることから
高密度の水素吸蔵状態を実現できる材料である。しかし、これらの材料から水素を取り出すためには、
高温に加熱する必要があり、これが金属水素化物を水素吸蔵材料として実用化を妨げる要因の一つであ
る。具体的には、水素化リチウムから水素を放出させるためには 800~900℃といった高温が必要であ
る。
発表者らは、LiH と共役系炭化水素高分子であるポリアセチレン(PA)、ポリパラフェニレン(PPP)を複
合化させることで、LiH 単独より大幅に低温の 300 °C で水素を放出することを明らかにした。これは、
水素化リチウム単独時には、水素放出時にヒドリド上の水素をリチウムイオンへと移動させ、高エネル
ギーの物質である金属リチウムを生成させる必要があるのに対し、電子を受け取る性質がある共役系高
分子を共存させると、共役系高分子がヒドリドからの電子を受け取ることで、金属リチウムを生成させ
ずにより低いエネルギーで水素を放出させることができるからである(添付の図を参照)。さらに最近、
発表者らはヘテロ原子を含む共役系高分子であるポリアニリン(PANI)を水素化リチウムと複合化させる
ことで、PA や PPP との複合体より低温の 250 °C で水素を吸放出させることに成功した。そこで本発表
では LiH と PANI の複合体における水素放出の低温化メカニズムについて報告する予定である。
本内容は 5 月 23 日(月)から開催される石油学会第 59 回年会で発表される。