講演テーマ 「みんなちがって、みんないい」 川 越 市

平成27年度
人権問題講演録
講演テーマ
「みんなちがって、みんないい」
川 越 市
新垣勉 氏
プロフィール
戦後の沖縄に米兵を父に日本人を母に生まれる。
生後まもなく不慮の事故により失明。その後、両親の離別、父の
帰国等あり祖母の許で成長。14歳、祖母亡き後、天涯孤独とな
る。
ある牧師との出会いによって人生を生きなおす勇気と希望を
得、立ち直り、東京クリスチャンカレッジ進学。
その後、西南学院大学神学部を卒業するも、音楽への思いを貫
き34歳で武蔵野音楽大学声楽科に進み同大学卒業。同大学院修
了。マリオ・デル・モナコを育てたヴォイストレーナーの世界的
大家、A・バランドーニ氏に師事。
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平成27年度人権問題講演会
講師 テノール歌手
新垣
勉 氏
皆さん、こんにちは。
きょうは、このような貴重な皆さんの大切な時間の中お招きをいただきまして、
本当にうれしく思います。短い時間ですけれども、ご一緒させていただければうれ
しく思います。
私も歌い手のはしくれですので、歌わないと何か寂しいですので、歌を入れて、
その間におしゃべりも入れたりしたいと思います。よろしくお願いいたします。
では、1曲目に、北原白秋作詞、山田耕筰作曲「かやの木山」。
(歌「かやの木山」)
♪・・・・・
(拍手)
「かやの木山」を聞いていただきました。
先ほど始まる前に、市長さんやほかの方々と写真を撮っていただいたんですけれ
ども、私は写真を撮るのがどうも苦手でして、笑いなさいというとますますかたく
なってしまうんですね。そのときの写真を撮って くれたカメラマンのお嬢さんは大
変愉快な方で、私を笑わせるの専門だなと思って感動しましたけれども、 「はい、
何枚か撮りますよ」と言って、「なんまいだー」と。(笑)私はあさってお寺に講
演に行くんですけれども、それで、初め 「ボーズ」と聞こえたんですよね。明後日
お寺に行くからかな、お寺で講演だけれどもと。そうではなくて 「ポーズ」だった
んですね。(笑)だから、なかなか、その間のとり方がうまいんですね。こうやっ
て写真を撮る人もこういうふうに、きょう多分にこっと 写っていると思うんですよ
ね。非常に印象的でございました。
今度は、きょうは晴れていますけれども、私 、割と歌っているときはいつも晴れ
ているんですよ。台風の中で歌ったことがありましたけれども、コンサートが終わ
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ってみたら台風が過ぎ去っていたり、それで大体いいくじを引いちゃうものですか
ら、ほかのくじは当たらないんですよ。 (笑)もう商店街に行っても 、くじが当た
らないんです。2時ごろ行っても3時に行っても「くじ」というぐらいなもんで、
(笑)なかなか当たらないんですよ。だからいいくじを引いて 、きょうも晴れてい
るわけですけれども、皆様方の行いがきっといいということもございますでしょう。
さあ、今度は、冬の歌って本当に少ないですよね。秋の歌、春の歌って比較的多
いんですけれども、冬を歌った歌って、私がまた見つけるのがへたなのかもしれま
せんけれども、きょうは 「北風小僧の寒太郎」、この歌は、NHKの 「みんなのう
た」という番組で取り上げられた歌ですので、ヒットしたんだそうですね。私も知
りませんでしたけれども、この歌を歌ったのは何と堺正章さん、 「さよならと書い
た手紙~いつも幸せ過ぎた~ 」(拍手)ありがとうございます。スパイダー スです
けれども、堺正章さんの歌った歌です。 「北風小僧の寒太郎」、私も正式には初め
て歌います。では、お聞きください、「北風小僧の寒太郎」。(拍手)
(歌「北風小僧の寒太郎」)
♪・・・・・・
(拍手)
どうですか。初めてにしてはいいでしょう。(笑)ありがとうございます。
この「寒太郎~」も、本当はやろうかやるまいか迷ったんですよ。でも、皆さん
のこの温かい拍手を聞くと、 やってみたくなった。皆さんは乗せるのがうまいとい
うことですね。(拍手)ありがとうございます。
日本のいい歌というのは、日本の独特の四季の変化というものがだんだん温暖化
によって、あるいはいろんな風景だとかそういうものでなかなか、落語家さんも大
変だそうですね。いろいろ落語するために昔の、落語は大体江戸時代ですよね。落
語っていつから始まったんでしょうかね。恐 らく仏教のお坊さんの説法、例えば法
然上人だとか親鸞上人、そういうことから始まっていったんじゃないかなという、
そんな気もしないでもないんですけれども、そうやって 、今また落語ブームですけ
れども、私も大変落語が大好きです。枕が 面白いんですよね。1つの落語でもやっ
ぱり枕がどういうのになるかというのが楽しみなんですよ。みんな枕が違うわけで
すよね。皆様方の前に足は向けられませんから、やっぱり枕ということですね。
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(笑)
さあ、次の歌は、これも皆さんおなじみだと思いますよ。冬の歌。「心の窓にと
もし灯を」という歌ですけれども、この歌は昭和34年、歳末助け合い運動の一環と
してつくられた希望の歌ということですね。テレビの歌の広場だとか、ザ ・ピーナ
ッツによって披露されたということでございますけれども、この歌も非常に私もよ
く覚えていますね。何とも切なさがある中で暖かみのある、そういう歌ですよね。
では、この「心の窓にともし 灯を」歌ってみたいと思います。これも私も何十年ぶ
りぐらいに歌います。お聞きください。
(歌「心の窓にともし灯を」)
♪・・・・・・
(拍手)
「心の窓にともし灯を」、懐かしいと思われる方もいらっしゃるでしょ うね。き
ょうはそういう懐かしい歌を皆さんに聞いていただこうと思っています。
この歌も最近余り聞かないですけれども、このごろは静かな童謡、唱歌のブーム
でもありますけれども、私も随分 、日本の学童用唱歌のCDもつくってくれという
問い合わせも来たりしますけれども、いろ んな聞きたいと言っていただいて、あと
何年歌えるかわかりませんけれども、できるだけつくりたいなと思っておりますけ
れども、「冬の星座」という、この歌も中学の教科書の歌、堀内敬三さん、いろん
な歌を随分訳していらっしゃいますけれども、その訳詞でW. S.ヘイスという人
の曲で、このヘイスさんという方は、アメリカでもたくさんいろんな曲をつくった
人らしいんですね。恐らく日本の文部省の音楽取調というか、そのとき に随分貢献
なさった方であるのかもしれませんね。このヘイズさんの曲、例えば 、「故郷の廃
家」とか「いくとせくるとせふるさと来てみれば~ 」とか、いい歌がいっぱいあり
ますね。「冬の星座」、皆さん懐かしいと思って歌ってみます。
(歌「冬の星座」)
♪・・・・・・
(拍手)
さあ、次の歌は、またいい曲ですね。「イエスタデイ」。ビートルズのナンバー
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ですね。これを歌いたいと思います。
(歌「イエスタデイ」)
♪・・・・・・
(拍手)
「イエスタデイ」を聞いていただきました。
次の曲は、これも皆さんよく知っているフォスター、皆さん、きょうのこれ 、何
を見てこられましたか。「ポスター」 。(笑)フォスターは日本人に愛されている
曲をいっぱいつくっていますね。 「田舎のバスは~」とか、(笑)「 スワニー河」
とか、それから「金髪のジェニー」と、いっぱいいい歌がありますけれども、アメ
リカのシューベルトなんていう名前をつけた人もいるぐらいだけれども、素敵な歌
曲をつくっていますね。 当時のアメリカの古きよきメロディーが聞こえてくる、そ
ういう歌曲がたくさんありますけれども、「夢見る人」、お聞きください。
(歌「夢見る人」)
♪・・・・・・
(拍手)
「夢見る人」を聞いていただきました。
先ほど紹介していただきましたけれども、私も一応 、皆様の前で歌わせていただ
くようになって35年、本当にあっという間に来てしまいましたけれども、とにかく
歌を通じていろんな方々に出会ってきました。歌を通じて人と人との出会い、また、
全国いろんなところに行かせていただきまして、それぞれ 、このごろはお取り寄せ
でどこのおいしいものをいただくことができますけれども、やはりその土地その土
地でおいしいもの、私も食べることが好き だものですから、そこそこに行くと、い
ろいろありますけれども、何が変わったかなと思いますと、やはりみんなやっぱり
健康志向になりました。ですから随分皆さん薄味になられましたよね。これとても
いいことですよね。塩味、塩加減、それからお砂糖、これはやっぱりちょうどいい
加減になってきたというか、そういうだんだん、それでも まだ日本人は塩分の摂り
過ぎだなんて言われますけれども、やっぱり薄味というのは大変大事だそうで すね。
味つけ一つで違いますので、特に昨今、 脳血管、高血圧だとか心臓病、そうした 病
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気が襲うこともありますし、やっぱり薄味。
私も35のときに、薄味好きだったんですけれども、だんだんだんだん味が濃くな
ってきたんでしょうかね。私も狭心症発作で、上が 200で下が120でぶっ倒れたこと
ありますけれども、これ、何とか一命とりとめまして歌わせていただいております
けれども、だからそのときにもう一回命を新しくいただいたという、そんなつもり
で、私も今までいろんな歌を歌ってきたけれども、 これからはやっぱり平和という
ことを一番大事なキーワード、こういうことを考えて、そして 、やっぱりそういう
思いというか感謝という気持ち、 歌わせていただいているという気持ち、そういう
ふうにこれからいこうというふうに、その病気を 転機に、さらに自分の肝に銘じて
歌ってまいりましたけれども、なかなかいつもそうできる とは、凡人でございます
から、ですけれども、気持ちだけはいつもそういうふうにいたいなと、そういうふ
うに思っております。
金子みすゞさんという方、皆さんご存じですよね。金子みすゞさんという方は 、
明治36年1903年、山口県に生まれたんですね。この方は昭 和5年、26歳で亡くなっ
た。26歳という若さにもかかわらず、短い人生だったにもかかわらず、明治から大
正 に か け て 、特に大 正期に 活躍した童謡 詩人と 言われて、 512もの詩を書いたと 言
われています。すごいですよね。それこそ当時の童謡運動というのが 、大正時代は
大正ロマン、この時代に 「婦人倶楽部」だとか「婦人画報」、「金の星」とか、そ
ういう雑誌などでも大変紹介され、特に西条八十さんという有名な詩人、歌をたく
さんつくっていますよね。「歌を忘れたカナリアは~」とか、いい歌がいっぱいあ
りますよね。
金子みすゞさんが非常にこ の十四、五年、大変また注目し直された、再評価され
たとも言えると思いますね。非常に素敵な詩がありますね。 「私と小鳥と鈴と」と
いう歌があります。この歌は、私はこの詩は大変好きで、私 が今あちらこちらでオ
ンリーワンという話をしていますので、人と比べないで生きていこう、みんなその
人にしかないすばらしいその人らしさがあるんだよという話をあちらこちらでして
います。人と比べないでいいんだよ、電車は特急とか新幹線あるけれども、人生は
道草したっていいんだよ、遠回りでいいんだよという話を中学校や小学校では話を
することがよくあります。
人と比較しないで生きる、これは大事ですね。誰々ちゃんに負けたらだめよとか、
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それから、奥様が、皆様はそんなことないでしょうけれども、ほかのところである
らしいですよ。あなた、隣の御主人はもう課長になっているのに、あなた まだヒラ
じゃないのと。(笑)埼玉県にはそういう方はいらっしゃらないと思いますけれど
も、そういうふうに比較しない。大事ですよね。
金子みすゞさんの「私と小鳥と 鈴と」という詩に何とか歌曲のような難しい歌じ
ゃなくて、子どもたちが一緒に歌えるような歌がないかなということで、 「みんな
のうた」というNHKの番組のほうからお声を掛けていただいたときに、杉本竜一
さん、「BELIEVE」という歌があるでしょう。皆さんよくご存じですよね。
きょう譜面を持っていませんから歌いませんけれども、その杉本竜一さんにお願い
したら二つ返事で引き受けてくださって、素敵な曲ができたんですよ。つくってい
ただいたんです。これをみんなのうたで歌わせていただきました。
それから、もう一つ、これは伊藤康英 さんという方で、やはり音楽大学で作曲を
教えていらっしゃる方がたくさんいい曲をつくっていらっしゃるんです。もともと
は吹奏楽の曲をたくさんつくっていらして、この十数年、また、たくさんいい日本
の歌曲をつくっていらっしゃる。この先生と実は私、おそば屋さんで、私そばが大
好きなんですよ。手打ちのそば。私はそういう話をすると、私のコンサ ートに来る
方はいい方ばかりなものだから、ぽーんと送って くださる方がいらっしゃるんです
よ 。 皆 さ ん 、 そ ん な お 気 遣 い な く 、 結 構 で す よ 。 ( 笑 ) 忘 れ て く だ さ い 。 Please
forget about it.そんなお気になさらずに。話ですから。そば屋さんで、私、うど
んじゃなくてそばを食べていた。手打ちそば。そうしたら、私 のところへやってこ
られまして、その先生は私の顔を覚えていらして、うちの子どもたちが教科書で
Try to Be the Only One.と いうの を習 っていて 、そ れで写 真を見ま した といっ て、
テレビでも聞いています とおっしゃってくださって、ありがたいことで、その先生
がまたすばらしい先生で、たくさん自分のおつくりになった詩をくださったんです。
もういい曲がいっぱいで、もう歌い切れないぐらい、いい歌がいっぱいあるんです
よ。
この先生の作品、それを歌い比べというのをやってみたいと思います。それはど
っちがいいとか悪いんじゃないんですよ。そうじゃなくて、視点が違うんですよ。
例えば、皆さんあるでしょう、そういうの。 「海は荒海向こうは佐渡よ~」という
中山晋平の詩があるとしたら、同じ詩に「海は荒海向こうは佐渡よ~」と、これは
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またこれで素敵。1つは童謡で1つは歌曲という感じですよね。そういう感じで 、
同じ歌でもどこを強調するかによって、随分歌って変わってくるんです。それはち
ょっとひとつ皆さん聞き比べて味わってみてください。どちらも素敵な歌です。
(歌「私と小鳥と鈴と(杉本竜一作曲)」)
♪・・・・・・
(拍手)
(歌「私と小鳥と鈴と(伊藤康英作曲)」)
♪・・・・・・
(拍手)
「みんなちがって、みんないい」と普通行きそうですよね。それが「いい~」と
いうふうに終わっているところが面白いですよね。私はおつくりになった伊藤先生
にそっと聞いてみました。私のない頭で考えたことですから、先生これひょっとし
て、「いい~」としたかったんだけれども、 「いい~」で終わったということは半
分ドレミファソと、ちょうど半分で終わっている。これは恐らくこういうふうな終
わり方をあえてしたということは意味があったんでしょう。先生恐らく 、みんない
いんだよねえ、というそんな感じでそうなさったんじゃないですか と言ったら、い
や、よくぞ当ててくださいましたと言ってくださいました。私、うれしかったです
ね。私の感性もそんなに、まんざら感性も悪くないんだなと。誰も褒めてくれない
から自分で褒めて。(笑)(拍手)
音楽ってそういうのが面白いですね。つく り手というのはやっぱり 詩に対してそ
ういうふうなメッセージの伝え方というのがあるんですよね。この先生の歌はとて
も、歌曲でも現代、いわゆる調がなくなって、もうとても歌いづらい歌もたくさん
あるんですよ。だけれども、この先生はそんな に童謡、唱歌みたいに優しくはない。
けれども、難しいかというと、私でも歌えるぐらいにつくってくださっているとい
うことで、歌いやすい、そして人々の心にも残りやすいというので、やっぱりこう
いう心配りというのはうれしいですよね。そういう歌曲をたくさんつくっていただ
きたいですね。そういうふうに思いながら、またいい歌をまた歌わせてくださいな
んてお話しているんですけれども。
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11月にバースデーコンサートで35周年のコンサートをやらせていただいたんです
よ。そのときのが3月か4月かわからないですけれども、発売する予定です。 どう
しても欲しいーとおっしゃる方、後で名前と住所を残してくだされば、出ましたよ
という案内をお送りします。後で怒られませんかね、余計な話をするななんて。
(笑)大変失礼いたしましたけれども、ついこういう性分なものですから、お許し
ください。ぜひ聞いてみたいと思われる方は残してください。無理にとは言いませ
んけれども、ぜひ聞いてください。
35年という中で、おいしいものに出会ったりいろんな素敵な人に出会ったり、そ
れから素敵な音楽に出会ったり、いろいろなところに行かせていただいたり、やっ
ぱりこれは自分が歌い手冥利に尽 きるなとそういうふうに思いますね。ときどき 、
歌うと、中学校、小学校とか行くと、おじさん、歌うまいね ーと。一応私もはしく
れで歌っている。(笑)でも、子どもの率直な声だからうれしくなりますけれども、
でも、何が一番うれしいかといったら、歌を聞いて元気をもらいました、それが一
番うれしいですね。
先日の報道ステーションで、古舘伊知郎さんに、これを見てくださった方いらっ
し ゃ い ま す か 、 ち ょ っ と 拍 手 を ( 拍 手 ) 。 あ り が と う ご ざ い ま す 。 58人 の 方 が 。
(笑)本当は皆さんもっと見てくださったんでしょうけれども、遠慮深いおしとや
かな方ですから、はい、見たよと言わず、こっそりと、 またそれもうれしいことで
す。古館さんが、私、最後に仕事から帰って、つらいときがあったりいろいろする
と、新垣さんの歌で慰められます、元気をもらいますと言ってくださった。いや、
うれしかったですね。それ以外にもいろんな方からそう言っていただくんですけれ
ども、そういう声をいただくことが一番歌っていてうれしいなと思います。
これからもまた歌い続けたいなと思っているんですけれども、 アブラハム・リン
カーンという人を皆さんご存じですよね。アブラハム ・リンカーンという人は 、お
母さんがいつも小さいころから言っていた言葉あるんですよ。何と言ったかという
と、世界がお前を呼んでいる。アブラハムや、世界がお前を呼んでいるよ。いい言
葉ですね。私も小さいころそう言ってもらえばもう少しましになったんじゃないか
と思いますけれどもね。(笑)誰もそんなふうに言ってくれる人いなかった。皆さ
んもきょう、お子さんであったりお孫さんであったり、お家に帰って、太郎ちゃん、
花子ちゃん、ちょっとおいで。世界がお前を呼んでいるよ。どうしたの急にという
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感じで。(笑)もう遅いよとかね。(笑)
そういうふうに人ってやっ ぱりその人の素敵なところ、その人の持っている いい
ところを引き上げてあげるといいですよね。これは子どもも 大人も一緒だと思いま
すよ。よくプロ野球のコーチの方とか監督の方の いろいろインタビューを聞くと、
今の入ってくる若い人たちはなかなかぼんと叱れないと。すぐしょげてしまうと。
私が言ったんじゃないですよ。そういう話をよく聞きますね。そういうときに、あ
あ、そうだよな。でも別に今に限らず、私ももう 63になりました。とにかくとりあ
えず年齢関係なく、みんながうれしいですよね。
やっぱり減点法と加点法というのがあるんですよ 。いいところを見つけてあげる。
それで点数を加えていく。ここもいい、ここもいい、こっちもいいよ。だけれども、
ここをこうするともっといいよと引き上げてあげるといいんですよ。ところが、あ
あ、だめ、これもだめ、これもだめ、だめだめと怒っちゃって、もう難しいね、 上
がるのは。そういうのって大事なんですよね。ですから、減点法じゃなくて、加点
法、これが大事ですよね。皆さんもどうぞこれをぜひなさってください。
もう皆さん既に人生の達人がここへ いっぱい来ていらっしゃると思いますから 、
私が言うまでもないと思います。これをすると 、我々の周りって変わりますよね。
やっぱりその人のいいところを伸ばしてあげる。それはもうとても大切なこ とだな
と私は思ったりしますね。そのように思ったりしますけれども。
何ていうんですか、人間って、叱ると怒るっていうのは違うんですよね。日本歌
曲にありますでしょう。「叱られて~」、あれを「怒られて~」(笑)じゃないで
す よ ね 。 叱 ら れ て 。 怒 る と い う の は 感 情 を む き 出 し に す る の を 怒 る 。 getting
angryで す ね。でも 叱る 。感情じゃな く て、こうしたほう が いいよ、ここはこ う し
たほうがもっといいよと 叱る。だから怒ると叱るでは、このごろなかなか区別が難
しい。普通やっぱり私は 叱るというほうがとてもいいですよね。怒ってはいけない。
でも、人間そういいながら、私なんかも代表みたいなものかもしれませんけれども、
本当は叱るということがいいですよね。
やっぱりそういう意味では、怒らないで、怒りを持たないで生きられるためには
何だろうなと思ったら、そういうとき、私自分でも言い聞かせているんですけれど
も、心の栄養が大事ですよね。もう今 、日本は、もちろん例外はありますけれども、
やっぱり普通は三食足りないという人は余りいないですよね。例外はあり ます。そ
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ういう大変な中に生きていらっしゃる方は多分いらっしゃる。だけれども、普通は
大体贅沢しなければ、朝昼晩、おまんまを何とかいただくことができます。
そういう中で、でも心の栄養というのはとても大事だなと思います。心の飢餓状
態、心にやっぱり余裕というか潤いというか、そんなものが必要じゃないかと思 う
んですよね。その潤いをどこで見つけるか。それは家族であったり 周りであったり、
いい本に出会ったりいい音楽に出会ったり、そういういいものに出会うということ
はとても大事かなと思うんですよね。
私もこれから歌い続けてい きたい、そういうふうに思っておりますけれども、最
後に、私が出会った人の中でどうしても忘れられない、そしてお世話になった一人
は、寺島尚彦先生という方がいらっしゃいます。 この方も作曲家で、大学の作曲を
専門に教えていらっしゃった先生ですけれども、 私も二、三回お会いしましたけれ
ども、大変温厚な方で、 余り口数はないけれども、非常に温かい、そばにいらっし
ゃるだけでほっとさせるような方なんですよ。残念ながら天に帰っていかれました。
がんで。本当に残念でした。もっとこの先生とお話をしたかったなと思うぐらいの、
そういう方でしたけれども、その先生の作品で、たくさん素敵な歌があるんですけ
れども、やっぱり平和、命ということを考えると、どうして もこの歌を最後に歌わ
ざるを得ないんです。歌いたいんです。寺島尚彦 作詞、作曲、「ひとつだけの命」。
(歌「ひとつだけの命」)
♪・・・・・・
(拍手)
ピアノの伴奏をしていただきましたヒロセミツル さんです。どうぞ盛大な拍手を。
(拍手)
〈 終了〉
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