アジア・マーケット・マンスリー

Contents
M
情報提供資料
アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
アジア・マーケット・マンスリー
2016年5月号
経 済 調 査 部
【インド】 準備銀行による景気支援や財政再建への取組は足元軟調なルピー相場を支えるのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1ページ
【アジア・マーケット・ウォッチ】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6ページ
【インド】 準備銀行による景気支援や財政再建への取組は足元軟調なルピー相場を支えるのか*
【図1】 民間消費等にけん引され、3期連続で+7%超となった実質GDP成長率
 10-12月期のGDPは前期より減速も底堅い伸びを持続
(%)
2月下旬より多くの新興国通貨が対米ドルで上昇する中、インド・ルピー相場の軟
調さが目立ちます。昨年は、中国景気の減速や一次産品価格の低迷を背景に多くの
新興国の景気と経常収支が悪化、こうした中で堅調な景気拡大が続くインドのル
ピーは例外的に買持ちにされました。足元では、投資家のリスク選好度の回復に
伴って同通貨が売戻されていることに加え、経済改革の停滞懸念も通貨の上値を重
くしています。本稿では、インドの景気物価動向、金融政策の方向性などについて
概観した上で、足元で軟調なルピー相場の今後の動向について考察します。
同国の景気は昨年末にかけて鈍化したものの、緩やかな拡大を続けています。2月
上旬、政府は、昨年10-12月期の実質GDPが前年比+7.3%と前期の+7.7%より鈍化した
ことを公表(図1左)。併せて、昨年4-6月期と7-9月期の成長率は、+7.0%→+7.6%と
10-12月期のGDPの需要側では、固定資本投資が鈍化する一方で、民間消費が堅調に
14
実質GDPと実質GVAの前年比 (四半期)
実質GDP
2011-12年市場価格
(国内総生産、市場価格)
8
統計誤差
純輸出
在庫投資
固定資本投資
政府消費
民間消費
7
6
実質GVA
5
(総付加価値、基礎価格)
4
注) 旧基準:2006年1-3月期~2014年7-9月期
新基準:2012年4-6月期~2015年10-12月期
注) 期間は、
2012年4-6月期~2015年10-12月期
3
(%)
(年)
部門別実質生産の前年比 (四半期)
製造
12
10
伸びました。民間消費は前年比+6.4%と前期の+5.6%より加速。物価の沈静化による
8
購買力の改善等から都市部家計の消費が堅調に伸びました。政府消費は同+4.7%と前
6
期の+4.3%より上昇しました。固定資本投資は同+2.8%と前期の+7.6%より減速。政
4
府投資は伸びたものの、多額の債務と過剰設備を抱える民間部門の投資が低迷した
2
模様です。外需では、総輸出が同▲9.4%と前期の▲4.3%より落込み幅が拡大する一
0
方、総輸入も同▲10.8%と前期の▲3.4%より落込み幅が大きく拡大。この結果、純輸
-2
出の寄与度は+0.5%ポイントと前期の▲0.1%ポイントより反発しました(図1左)。
-4
サービス
建設
農林漁業
注)直近値は
2015年10-12月期
2012
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
(%)
2012
2013
(年)
2014
2015
出所)インド中央統計局、CEIC
【図2】 2月の鉱工業生産の前年比は4ヵ月ぶりにプラスの伸びに回復(右)
インド準備銀行(RBI)等が重視する実質総付加価値(GVA)も同+7.1%と前期の+7.5%よ
込みは+7.6%と前年度の+7.2%を超過、今年1-3月期に+7.7%の成長を見込んでいます。
実質GDP(旧基準)
2004-05年要素費用
9
実質GDP(新基準)
2006 2008 2010 2012 2014 2016
+7.4%→+7.7%へと上方修正されました。経済実態をGDPより正確に反映するとして
り鈍化しました(図1右)。同時に公表された2015-16年度(~2016年3月)のGDP成長率見
実質GDP前年比 (支出項目別: 四半期)
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
2013
2014
2015
(*)本稿は、「エマージング・マーケット・マンスリー」にも掲載しています。
(年)
16
14
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
(%)
鉱工業生産前年比 (月次)
祝祭日調整済
(線)
祝祭日調整前
(棒)
注) 祝祭日調整: 10、11月期のみ同2カ月平均を使用
直近値は、2016年2月
2009
2011
(年)
2013
2015
出所)インド中央統計局、CEIC
1
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アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
 底堅い伸びを続けるサービス部門の生産
生産側のGVAでは、製造業や建設業が加速した一方、農林漁業や金融・不動産等が
減速しました(図2左)。農林漁業は同▲1.0%と前期の+2.0%より反落。雨不足に伴う不
作によります。鉱業は同+6.5%と前期の+5.0%より上昇しました。製造業は同+12.6%と
前期の+9.0%より加速。しかし、同期の製造業生産は+1.0%と前期の+4.7%より減速、
自動車産業が集積する南部で大雨による洪水被害が生じ、生産が一時急減しました。
【図3】 都市部の家計消費にけん引され堅調な耐久消費財生産の伸び(左)
(%)
(%)
鉱工業生産の前年比(月次)
30
注1) 祝祭日の影響を除くため
10-11月は2ヵ月間平均を使用
20
非耐久消費財
45
30
中間財
10
10
(%)
注1) 祝祭日の影響を除くため
10-11月は2ヵ月間平均を使用
15
(左軸)
15
5
GVA統計と鉱工業生産統計のかい離は余りにも大きく、今後GVA統計が大きく下方修
正される可能性も無視できません。建設業は同+4.0%と前期の+1.2%より上昇しました。
鉱工業生産の前年比(月次)
20
0
0
0
サービス部門は同+9.4%と前期と変わらず。流通・ホテル・運輸・通信が同+10.1%と前期
の+8.1%より加速し、政府消費の伸びを受けて公共サービス等も同+7.5%と前期の
-10
-5
耐久消費財
+7.1%を上回ったものの、金融・不動産等が同+9.9%と前期の+11.6%より減速しました。
月次の景気指標を見ると、生産活動は今年初より緩やかな加速を続けています。2月
-20
発。宝飾品、セメント、商用車等の生産が加速しました。
 堅調に伸びる耐久消費財と低迷する非耐久消費財の生産
-20
2011
2012
2013
2014
2015
2016 (年)
-45
2011
(%)
(%)
消費者物価の前年比 (月次)
より落込み幅が拡大。雨不足に見舞われる農村部家計の消費の低迷によるとみられま
11
14
す。資本財は同▲9.8%と前月の▲20.9%より落込み幅が縮小しつつ、4ヵ月連続のマイ
10
12
9
10
8
8
外需の回復が期待しづらい中、今後も都市部を中心とする民間消費が景気をけん引
するでしょう。第7次給与委員会の勧告に伴う公務員給与引上げも同消費を支える見込
2014
2015
2016 (年)
でしょう。また、インド気象局(IMD)は今年の雨季の降雨量が平年を6%上回ると予想。
4
2年連続の雨不足を経て降雨量が回復すれば、農業所得と農村部家計の消費を押上げる
3
とみられます。昨年度(~2016年3月)通年のGDP成長率は+7%台半ばと前年度の+7.2%
2
食品物価
6
総合物価
6
5
食品物価の前年比 (月次)
16
コア物価
7
みです。落着いた物価の下での名目賃金の上昇で家計の購買力が改善し消費を支える
より上昇し、今年度は+7%台後半へと緩やかな景気の加速が続くと予想されます。
2013
【図4】 食品物価の鈍化もあり、総合消費者物価の前年比は2ヵ月連続で低下
12
財政収支目標の達成を意識する政府が投資歳出を抑制した影響もあったとみられます。
2012
出所)インド中央統計局、CEIC
都市部家計の堅調な消費が背景です。一方、非耐久消費財は同▲4.2%と前月の▲3.1%
と多額の債務を抱えた民間企業による設備投資も低迷しており、年度末の3月にかけて
-30
注2) 直近値は2016年2月
注2) 直近値は2016年2月
-30
財別の鉱工業生産(2月)では、耐久消費財が同+9.7%と前月の+5.8%より加速(図3左)。
ナスに(図3右)。変動の大きいゴム絶縁電線が大幅に落込みました。また、過剰な設備
消費財(左軸)
資本財(右軸)
-15
の鉱工業生産は前年比+2.0%と前月の▲1.5%より反発(図2右)。プラスの伸びは4ヵ月ぶ
りです。鉱業と電力の伸びが前月を上回り、製造業も同+0.7%と前月の▲2.8%より反
-15
-10
その他
野菜・果物
穀物・豆
牛乳・卵・
肉・魚
4
2
0
注) コア物価は食品
と燃料を除く
直近値は2016年3月
-2
-4
2012
2013
2014
2015
2016
(年)
注) 食品消費者物価の前年比と
主要項目別寄与度、直近値は2016年3月
2012
2013
2014
2015
2016
(年)
出所)インド中央統計局、CEIC
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
2
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アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
【図5】 昨年9月以来となる追加利下げを行った準備銀行(右)
 総合消費者物価の伸びは6ヵ月ぶりに+4%台に低下
足元の物価は落着いています。3月の総合消費者物価は前年比+4.8%と前月の+5.3%
より鈍化(図4左)。食品が同+5.3%と前月の+5.5%より低下(図4右)、燃料も同+3.4%と前
月の+4.6%より鈍化し、総合物価を押下げました。食品では、豆類が同+34.2%と前月
の+38.5%より鈍化(季節調整前の前月比は▲1.9%と3ヵ月連続でマイナス)。雨不足に
伴って急騰していた同物価は、年初より沈静化しています。燃料では、ガソリン、軽
油、LPガスなど幅広い品目において、前年比の落込み幅が拡大しました(図5左)。食品
と燃料を除くコア物価も同+4.5%と前月の+4.8%より鈍化しました。
(ルピー)
80
燃料小売価格(日次: リッター当たり価格)
ガソリン
総合消費者物価の前年比は+5%前後と昨年の+4.9%に近い水準となると予想されます。
 追加利下げと流動性の緩和を行った準備銀行
予想以上の物価の鈍化が見られる中、インド準備銀行(RBI)は利下げと流動性の緩和
を通じて、景気の下支えを図っています。4月5日、RBIは金融政策見直しで政策金利
を6.75%から6.5%に引下げました。利下げは昨年9月以来となります(図5右)。
前回2月、RBIは政策金利を据置きつつ、声明で「新年度予算に含まれる構造改革が
経済の成長力を高めつつ歳出を抑制した場合、金融政策が景気を支える更なる余地を
作るだろう」と追加利下げの要件を明示。その後、2月29日に政府は新年度予算案を公
表。中央政府の財政赤字のGDP比は3.5%と前年度(改定見込値)の3.9%より低下(図6左)、
財政再建に向けた中期計画に沿った数値でした。第7次給与委員会の勧告に基づく公務
員給与等の引上げが避けられない中、市場参加者の一部は3.5%を超える赤字幅を予想。
上記の赤字幅は財政健全化に向けた政府の強い姿勢を印象付けました。公務員給与の
増加等で経常歳出が17.3兆ルピーと前年比+11.8%伸びたものの、資本歳出を2.5兆ル
ピーと同+3.9%に抑制(図6左)。国有銀行への資本注入額を市場予想を下回る2,500億ル
ピーに抑え、1%の法人税率引下げも対象を小規模企業に限りました。一方、インフラ
投資や農業・農村部の支援等の重点分野には手厚い予算配分がされました。
限界貸出制度
(MSF)金利
10
60
9
8
50
レポ金利
7
(政策金利)
6
軽油
40
リバース・レポ
(RRP)金利
5
4
30
注) デリーにおける価格
直近値は2016年4月29日
でしょう。また、国際的な燃料価格の低位安定、雨季の降雨量回復や国際穀物価格の
安定を背景にした食品物価の落着きも、物価の上昇を抑える見込みです。今年通年の
銀行間
翌日物金利
11
伴う消費の押上げになどによる間接的な物価上昇も見込まれます。もっとも、政府は
同給与の引上げを時間をかけて行うとみられ、物価押上げは急激なものとはならない
政策金利と銀行間金利 (日次)
12
70
今後は、第7次給与委員会の勧告に従って公務員給与等の引上げ等が行われる見込み
です。住宅手当の引上げによる住宅関連物価の直接的な上昇に加え、給与の引上げに
(%)
13
20
2007
注) 直近値は
2016年4月29日
3
2
2009
2011
2013
2015
2009
(年)
2011
2013
2015
(年)
出所)Indian Oil Corporation、インド準備銀行(RBI)、CEIC、Bloomberg
【図6】 政策金利に比べ下げ幅が限定的な大手銀行の貸出金利(右)
中央政府予算(年度: 4月~翌年3月)
2012-13 2013-14 2014-15 2015-16 2016-17
年度
単位: 兆ルピー
実績
実績
実績 改定見込 予算案
総歳入(a)
9.20
10.57
11.53
12.50
14.44
7.42
8.16
9.04
9.48
10.54
税収
民営化収入等
0.26
0.29
0.38
0.25
0.57
総歳出(b)
14.10
15.59
16.64
17.85
19.78
12.44
13.72
14.67
15.48
17.31
経常歳出
内)利払
3.13
3.74
4.02
4.43
4.93
内)補助金
2.57
2.55
2.58
2.58
2.50
1.67
1.88
1.97
2.38
2.47
資本歳出
財政収支(a-b)
-4.90
-5.03
-5.11
-5.35
-5.34
4.67
4.54
4.53
4.41
4.25
市場調達純額
GDP比: %
総歳入(a)
9.1
9.3
9.2
9.2
9.6
7.3
7.2
7.2
7.0
7.0
税収
民営化収入等
0.3
0.3
0.3
0.2
0.4
総歳出(b)
13.9
13.7
13.3
13.2
13.1
12.3
12.1
11.7
11.4
11.5
経常歳出
内)利払
3.1
3.3
3.2
3.3
3.3
内)補助金
2.5
2.2
2.1
1.9
1.7
1.7
1.7
1.6
1.8
1.6
資本歳出
財政収支(a-b)
-4.8
-4.4
-4.1
-3.9
-3.5
(%)
11
政策金利と銀行貸出金利 (日次)
貸出基準金利
10
9
政策金利
8
7
注) 貸出基準金利(Base Rate)は
インド・ステート銀行による
直近値は2016年4月29日
6
5
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(年)
出所)インド財務省、インド準備銀行(RBI)、Bloomberg
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
3
M
アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
【図7】 預金残高の伸びの低迷に伴って上昇する銀行の預貸率(左)
 金利コリドー幅を圧縮し銀行間流動性水準を引上げ
政府は、同予算案で中期的な財政健全化目標を堅持しつつインフラ投資など経済の
供給能力の強化策を導入し、「経済の成長力を高めつつ歳出を抑制」する姿勢を表明。
財政再建指向の予算案と落着いた物価が今回の追加利下げを後押ししたとみられます。
今回、RBIは流動性管理の枠組みを変更し、(a)金利上下限の圧縮、(b)銀行間流動性
の水準の引上げ、(c)現金準備(CRR)の日々充足下限の引下げ(95%→90%)などを決定(準
備率は預金債務の4%であり、2週間の平均残高ベースの充足が要件)。これまでの累積
(%)
40
預貸率と貸出・預金前年比 (月次)
(%)
(億米ドル)
80
預貸率(右軸)
75
利上下限(コリドー)を政策金利±1%から同±0.5%に圧縮(図5右)。(b)については、全銀
準を中立水準とするべく、時間をかけて資金供給を行います。RBIは、従来、流動性
3,200
70
25
3,000
貸出(左軸)
20
65
今回の措置の背景には、政策金利が昨年初より累計1.5%ポイント低下した一方、銀
15
60
10
注) 直近値は
2016年3月
預金(左軸)
不良債権を抱えた銀行の収益性の悪化、(2)高金利の小額貯蓄制度との競合に伴う預金
金利が4月以降国債金利に連動するよう変更され、金利水準は低下を始めています。
55
(年)
行う構えとみられます。今後も銀行間短期金利は政策金利に近い水準で推移するもの
の、コリドー幅の縮小で需給変動時の金利変動は抑えられるでしょう。また、流動性
赤字の解消で不確実性が低下する中、銀行は預貸金利の引下げを行うと予想されます。
直近値:
2016年4月22日
2,000
2009
2011
2013
2015
(年)
主要新興国通貨の対米ドル相場騰落率
主要新興国通貨の対米ドル相場騰落率
(2014年12月31日~2015年12月31日)
(2015年12月31日~2016年4月29日)
アジア
NIEs
東南
アジア
南アジア
中南米
消する見込みです。資金供給手段について、RBIは「純対外資産と純国内資産を調整す
る」としており、国債購入のみでなく、ドル買い介入(非不胎化介入)による資金供給も
ル
ピ
ー
安
外貨準備(左軸)
【図8】 昨年下げ幅が小さかったルピーは今年のリスク選好相場の波に乗れず
(4)に関しては、恒常的な銀行間流動性の赤字がRBIによる短期資金供給で賄われて
いたことが問題でした。RBIは、今後時間をかけて流動性供給を行い流動性赤字を解
2,400
42
44
46
48
50
52
54
56
58
60
62
64
66
68
70
出所)インド準備銀行(RBI)、CEIC、Bloomberg
金利の下げ渋り、(3)預金の伸びの低迷に伴う預貸率の上昇(図7左)、(4)銀行間流動性の
ひっ迫などがあったとみられます。(2)に関しては、既に政府が所管する同貯蓄制度の
ル
ピ
ー
高
2,200
5
2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016
行貸出金利が同0.7%ポイント程度しか低下しないなど(図6右)、金融緩和効果の波及が
遅いことへの懸念があったとみられます。貸出金利の下げ渋りの背景には、(1)多額の
2,800
2,600
供給。銀行間の短期市場金利が政策金利に近い水準で推移するよう管理してきました。
 流動性の緩和で銀行貸出金利低下を促す準備銀行
3,400
30
の水準(金融調節前)をNDTLの1%相当の赤字としつつ、同0.75%相当の資金を変動金利
レポ貸出(7-14日)で供給し、残り0.25%相当を翌日物レポ貸出制度(政策金利を適用)で
直近値:
2016年4月29日
↔
行の純預金債務(NDTL)の1%相当の赤字となるように調整してきた銀行間流動性の水
(ルピー/米ドル)
ルピー相場(右軸)
3,600
35
利下げ効果の浸透(銀行貸出金利の低下)等が目的であるとみられます。(a)については、
限界貸出制度(MSF)金利を7.75%→7%、リバース・レポ金利を5.75%→6%に変更し、金
為替相場と外貨準備
3,800
欧州
中東
アフリカ
韓国
台湾
シンガポール
マレーシア
タイ
東南
フィリピン
アジア
南アジア インドネシア
インド
ブラジル
メキシコ
中南米
コロンビア
ペルー
ポーランド
欧州
ハンガリー
中東
トルコ
アフリカ
南アフリカ
韓国
台湾
シンガポール
マレーシア
タイ
フィリピン
インドネシア
インド
ブラジル
メキシコ
コロンビア
ペルー
ポーランド
ハンガリー
トルコ
南アフリカ
(%)
アジア
NIEs
-35 -30 -25 -20 -15 -10
-5
0
(%)
-2
0
2
4
6
8 10 12 14 16
出所)Bloomberg
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
4
M
アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
【図9】 2014-15年に加速した証券投資資本の流入は足元でやや鈍化(左)
 今後の追加利下げの可能性を排除しなかった準備銀行
今回の声明は、前回と同様に政策姿勢は引き続き緩和的と記述。「機会が訪れた際に
更なる政策行動を取るべく、今後も経済と金融状況を注視する」と、追加利下げの可能
性を示唆しました。前述のとおり2月の鉱工業生産は前年比+2.0%と4ヵ月ぶりにプラ
スに転じたものの(図2右)、設備投資の低迷などを背景に勢いを欠きます。RBIは、雨
季の降雨量が農産物物価に与える影響や国際資源価格の変動の一般物価への影響を注
視しつつ、年後半に0.25%の追加利下げを行う機会を慎重に探ると予想されます。
通貨ルピーは年初より4月29日にかけて対米ドルで0.3%下落(図7右)。米利上げ見通
(億米ドル)
60
(億米ドル)
外国人純買越額(日次)
100
0
20
-50
0
-100
株式
-20
注) 20日移動累計
直近値は
2016年4月28日
-40
が流入し(図9左)、米利上げ開始や中国景気に対する懸念から多くの新興国通貨が下落
する中でもルピーは底堅く推移しました。米ドル高基調と資源安に伴って中で多くの
新興国通貨が売持ちとされる中、ルピーは例外的に買持ちにされていたとみられます。
 年初来やや軟調なルピーも今後は底堅く推移か
しかし、今年に入ると状況は一変。投資家のリスク選好度が高まるとともに、昨年
-60
2013
(億米ドル)
年例外的に買持ちとされたルピーの売戻しが生じたとみられます。また、昨年11月8日
300
に開票されたビハール州議会選挙で与党インド人民党(BJP)が予想外の惨敗を喫したこ
200
と(本レポート2015年12月号 参照)や、上院の過半を占める野党の抵抗によって経済改
100
2015
2016
2001
(年)
経常収支 (四半期)
(億米ドル)
経常移転
サービス
0
経常収支
-100
しかし、高い潜在成長力、落着いた物価、安定化した 国際収支構造(図9右、図10)、
-200
高水準の金利など同通貨の支援要因は健在。また、2月下旬以降の予算国会の前半には
-300
水路法等の経済改革関連法案が上下院を通過、上院野党の抵抗で重要法案審議が停滞
-400
という状況は変化しています。資本流入の加速局面ではドル買い介入(外貨準備増強と
-500
流動性供給のため)が相場上昇の速度を抑えようものの、相場変動の抑制は変動性調整
-600
済みの金利水準を高めるでしょう。今後、米利上げが意識されドル高が進む局面では
-700
ルピーの打たれ強さが発揮され、同通貨は底堅く推移すると予想されます。(入村)
-250
2014
2006
2011
(年)
【図10】縮小する経常赤字と足元で堅調に増加する直接投資純流入額(右)
400
象を強め、海外株式投資家による失望売りとルピー安を招いたと考えられます。
注) 4四半期移動平均
直近値は
2015年10-12月期
-200
出所)インド証券取引委員会(SEBI)、インド準備銀行(RBI)、CEIC、Bloomberg
売込まれ割安感のあるブラジル、マレーシア、コロンビア等の通貨が急伸し(図8)、昨
革関連の重要法案の審議が難航したことも、政権の求心力低下と経済改革の停滞の印
経常収支
(a)
-150
興国の景気と経常収支が悪化。燃料の純輸入国として資源価格低下の恩恵を受けつつ
堅調な景気回復が続くインドは例外的な存在でした。同国の資本市場には多額の資本
直接投資
(b)
債券
しや中国景気の底割れ懸念の後退に伴って、2月下旬より多くの新興国通貨が上昇する
中でも不振でした。昨年は、中国景気の減速や一次産品価格の低迷に伴って多くの新
基礎収支
(a+b)
50
40
基礎収支 (四半期)
貿易
所得
注) 直近値は
2015年10-12月期
2005 2007 2009 2011 2013 2015
(年)
350
300
250
200
150
100
50
0
-50
-100
-150
-200
-250
-300
-350
国際収支 (四半期)
直接投資
総合収支
経常収支
証券投資
その他
投資
注) 直近値は
2015年10-12月期
2005 2007 2009 2011 2013 2015
(年)
出所)インド準備銀行(RBI)、CEIC
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
5
M
アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
【アジア・マーケット・ウォッチ】 アジア通貨の対ドル相場(1)過去3年間
中国元
6.0
52
6.1
54
インド・ルピー
56
6.2
58
6.3
香港ドル
台湾ドル
28
7.74
29
7.76
30
7.78
60
31
62
6.4
7.80
64
6.5
32
66
6.6
70
2014
2015
2016
(年)
7.84
34
2013
韓国ウォン
2014
2015
2016
1.20
1,050
1.25
1,100
1.30
1,150
1.35
2014
2015
2016
2013
(年)
2014
マレーシア・リンギ
シンガポール・ドル
1,000
2013
(年)
アジア通貨安
ドル高
7.82
33
68
6.7
2013
アジア通貨高
ドル安
2015
2016
(年)
タイ・バーツ
2.8
28
3.0
アジア通貨高
ドル安
30
3.2
3.4
32
3.6
3.8
34
4.0
4.2
1.40
1,200
アジア通貨安
ドル高
36
4.4
1.45
1,250
2013
2014
2015
2016
2013
(年)
2014
インドネシア・ルピア
9,000
2015
2016
(年)
4.6
2013
2015
2016
(年)
2013
ベトナム・ドン
フィリピン・ペソ
40
38
2014
2014
2015
2016
(年)
スリランカ・ルピー
120
20,500
41
10,000
11,000
アジア通貨高
ドル安
21,000
42
130
43
21,500
44
12,000
45
13,000
22,000
140
46
47
14,000
アジア通貨安
ドル高
22,500
48
15,000
2014
2015
2016
(年)
150
23,000
49
2013
2013
2014
2015
2016
(年)
2013
2014
2015
2016
(年)
2013
2014
2015
2016
(年)
注) 単位は、アジア通貨/米ドル(1米ドル=アジア通貨)、直近値は、2016年4月29日、出所)Bloomberg
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
6
M
アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
【アジア・マーケット・ウォッチ】 アジア通貨の対ドル相場(2)過去6ヵ月間
中国元
6.25
64
6.30
インド・ルピー
32.0
65
6.35
6.40
香港ドル
台湾ドル
7.74
アジア通貨高
ドル安
7.76
32.5
7.78
66
33.0
6.45
67
6.50
6.55
7.80
33.5
68
アジア通貨安
ドル高
7.82
6.60
6.65
2015/10
2016/1
2016/4
(年/月)
韓国ウォン
1,100
1.32
1,150
1,200
1,250
2015/10
2016/1
2016/4
(年/月)
2016/1
2016/4
(年/月)
シンガポール・ドル
34.0
2015/10
3.8
1.34
3.9
1.36
4.0
1.38
4.1
1.40
4.2
1.42
4.3
1.44
4.4
1.46
2015/10
2016/1
2016/4
(年/月)
フィリピン・ペソ
インドネシア・ルピア
13,000
69
2015/10
4.5
2015/10
2016/1
2016/4
(年/月)
7.84
2015/10
マレーシア・リンギ
34.5
(年/月)
タイ・バーツ
アジア通貨高
ドル安
35.5
36.0
36.5
2016/1
2016/4
(年/月)
ベトナム・ドン
37.0
2015/10
22,100
46.0
22,200
142
22,300
144
22,400
146
22,500
148
46.5
2016/4
35.0
45.5
13,500
2016/1
140
アジア通貨安
ドル高
2016/1
2016/4
(年/月)
スリランカ・ルピー
アジア通貨高
ドル安
47.0
14,000
47.5
14,500
48.0
15,000
2015/10
2016/1
2016/4
(年/月)
48.5
2015/10
2016/1
2016/4
(年/月)
22,600
2015/10
2016/1
2016/4
(年/月)
150
2015/10
アジア通貨安
ドル高
2016/1
2016/4
(年/月)
注) 単位は、アジア通貨/米ドル(1米ドル=アジア通貨)、直近値は、2016年4月29日、出所)Bloomberg
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
7
M
アジア・マーケット・マンスリー 2016年5月号
留意事項
◎投資信託に係るリスクについて
◎為替変動リスク
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としているため、当該資産の市場に
おける取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動します。したがって、投資者のみなさまの投資元金
が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失を被り、投資元金を割り込むことがあります。運用
により信託財産に生じた損益はすべて投資者のみなさまに帰属します。
投資信託は預貯金と異なります。また、投資信託は、個別の投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取
引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なりますので、ご投資にあたっては投資信託
説明書(交付目論見書)、目論見書補完書面等をよくご覧ください。
海外の株式や公社債、REIT、オルタナティブ資産は外貨建資産ですので、為替変動の影響を受けます。そ
のため、為替相場が円高方向に進んだ場合には、投資元金を割り込むことがあります。
新興国への投資は上記リスクに加えて以下のカントリーリスクを伴います。
◎投資信託に係る費用について
ご投資いただくお客さまには以下の費用をご負担いただきます。
■購入時(ファンドによっては換金時)に直接ご負担いただく費用
・購入時(換金時)手数料 … 上限 3.24%(税込)
※一部のファンドについては、購入時(換金時)手数料額(上限 37,800円(税込))を定めているものがあ
ります。
■購入時・換金時に直接ご負担いただく費用
・信託財産留保額 … ファンドにより変動するものがあるため、事前に金額もしくはその上限額またはこれらの
計算方法を表示することができません。
■投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用
・運用管理費用(信託報酬) … 上限 年3.348%(税込)
※一部のファンドについては、運用実績に応じて成功報酬をご負担いただく場合があります。
■その他の費用・手数料
上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、目論見書
補完書面等でご確認ください。
※その他の費用・手数料については、運用状況等により変動するものであり、事前に金額もしくはその上限
額またはこれらの計算方法を表示することができません。
お客さまにご負担いただく費用の合計額もしくはその上限額またはこれらの計算方法は、購入金額や保有期間
等に応じて異なりますので、表示することができません。
《ご注意》
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につ
きましては、三菱UFJ国際投信が運用するすべての公募投資信託のうち、ご負担いただくそれぞれの費用にお
ける最高の料率を記載しております。投資信託に係るリスクや費用は、それぞれの投資信託により異なりますの
で、ご投資をされる際には、事前によく投資信託説明書(交付目論見書)、目論見書補完書面等をご覧ください。
◎カントリーリスク
新興国への投資は、先進国への投資を行う場合に比べ、投資対象国におけるクーデターや重大な政治体制の変
更、資産凍結を含む重大な規制の導入、政府のデフォルト等の発生による影響を受けることにより、市場・信
用・流動性の各リスクが大きくなる可能性があります。この場合、有価証券等の価格の下落により損失を被り、
投資元金を割り込む可能性が高まることがあります。
本資料に関してご留意頂きたい事項
■本資料は、投資環境等に関する情報提供のために三菱UFJ国際投信が作成した資料であり、金融商品取引法に
基づく開示資料ではありません。本資料は投資勧誘を目的とするものではありません。
■投資信託は、預金等や保険契約とは異なり、預金保険機構、保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
銀行等の登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の補償の対象ではありません。
■投資信託は、販売会社がお申込みの取扱いを行い委託会社が運用を行います。
■本資料の内容は作成時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
(作成基準日:2016年5月2日)
■本資料は信頼できると判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性等を保証するもので
はありません。
■各ページのグラフ・データ等は、過去の実績・状況であり、また、見通しないし分析は作成時点での見解を示
したものです。したがって、将来の市場環境の変動や運用状・成果を示唆・保証するものではありません。
また税金・手数料等は考慮しておりません。
■本資料に示す意見等は、特に断りのない限り本資料作成日現在の三菱UFJ国際投信経済調査部の見解です。
また、三菱UFJ国際投信が設定・運用する各ファンドにおける投資判断がこれらの見解に基づくものとは限りま
せん。
■投資信託をご購入の場合は、販売会社よりお渡しする最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご
確認のうえ、ご自身でご判断ください。
■クローズド期間のある投資信託は、クローズド期間中は換金の請求を受け付けることができませんのでご留意
ください。
各資産のリスク
◎株式の投資に係る価格変動リスク
株式への投資には価格変動リスクを伴います。一般に、株式の価格は個々の企業の活動や業績、市場・経済の
状況等を反映して変動するため、株式の価格の下落により損失を被り、投資元金を割り込むことがあります。
◎公社債の投資に係る価格変動リスク
公社債への投資には価格変動リスクを伴います。一般に、公社債の価格は市場金利の変動等を受けて変動する
ため、公社債の価格の下落により損失を被り、投資元金を割り込むことがあります。
◎信用リスク
信用リスクとは、有価証券等の発行者や取引先等の経営・財務状況が悪化した場合またはそれが予想された場
合もしくはこれらに関する外部評価の悪化があった場合等に、当該有価証券等の価格が下落することやその価値
がなくなること、または利払いや償還金の支払いが滞る等の債務が不履行となること等をいいます。この場合、
有価証券等の価格の下落により損失を被り、投資元金を割り込むことがあります。
◎流動性リスク
有価証券等を売却あるいは取得しようとする際に、市場に十分な需要や供給がない場合や取引規制等により十
分な流動性の下での取引を行えない場合または取引が不可能となる場合、市場実勢から期待される価格より不利
な価格での取引となる可能性があります。この場合、有価証券等の価格の下落により損失を被り、投資元金を割
り込むことがあります。
国内株式・国内債券への投資は上記のリスクを伴います。海外株式・海外債券への投資は上記リスクに加えて以
下の為替変動リスクを伴います。
巻末の留意事項等を必ずご覧ください。
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