今回の熊本地震により被災されたすべての皆様に対して、学会として心より御見舞いを 申し上げます。天候の不順が続いておりますがくれぐれもお大事になさってください。私 たちとしても、微力ながらこれからの復興のためにできるだけの努力をしていきたいと思 っております。 震災の現実を目の前にしている方々にとっては、もしかしたらこのような御見舞いの言 葉も空疎で白々しく響くかもしれません。しかし私たちは、そこから出発するほかはない と思います。自分の言葉の空疎さやに耐えながら、その言葉に少しでも実質や実体を与え ていくことが、私たちが歩くべき道筋ではないでしょうか。私たちひとりひとりができる ことは限られています。いろいろな制約のもと、被災された皆様のもとに私たちの全員が 駆けつけられるわけではありません。ただ思い続け、祈り続けることしかできない場合も あります。しかし、思いを絶やさずつながりを探り続けるとき、その持続のなかで、今後 の支援や復興に何らかの貢献ができるときが来るし、そのための道も拓けてくると信じて います。 質的研究は、研究であるとともに社会的な実践にも深く関わる学問領域です。結論を急 がず、じっくり考えながら、人と人を「むすび」、将来への視点を「ひらき」、新たなやり 方を「うみだす」ことを私たちはめざしています。これからの復興に向けた道のりのなか で必要になるのがそうした「むすぶ」「ひらく」「うみだす」ことであるとしたら、私たち 日本質的心理学会にできることも少なくはないはずです。私たちは、ともに同じ世界を生 きている者として、被災された皆様の思いを見つめ、繰り返し共有していきたいと思いま す。その思いを言葉にして伝えたり、どうすれば思いが形になるのかともに考えたりする 存在でありたいと、私たちは願っています。 被災された皆様ができるだけ早く、落ち着きのある生活をとり戻し、健康で豊かな今日 と明日を生きられるようになることを願ってやみません。末筆ながら、いっそうの御自愛 のほどお祈りいたします。 2016 年 5 月 1 日 日本質的心理学会理事長 能智正博
© Copyright 2024 ExpyDoc