2016年4月号(PDF/569KB)

み
みず
ずほ
ほ欧
欧州経
経済
済情
情報
20016年4月号
号
◆ トピ
ピック
伊勢志
志摩サミットで日
日本はド
ドイツを説得でき
きるか?
?
伊勢志
志摩サミットでは
は、財政出動
動での国際合意構
構築が議論
論
される
る模様である。ドイ
イツの反対を如何
何に抑える
るかが鍵を
を
握るが
が、同国は選挙を
を控えて均
均衡財政の
の堅持は譲
譲れない。
。
◆ 景気
気判断
ユーロ
ロ圏景気の回復テ
テンポは
は緩慢
企業サ
サーベイは、4月以
以降も景気
気回復テンポが緩
緩やかであ
あ
ること
とを示唆している
る。主要輸出先である英景気
気の下振れ
れ
リスク
ク増大など、新た
たな懸念材
材料に注意
意が必要だ
だ。
1.トピック:伊勢志摩サミットで日本はドイツを説得できるか?
伊勢志摩サミットでは財
5 月 26~27 日に開催される主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、日
政出動での国際合意が議
本が議長国を務める。報道によれば、政府内では財政出動での国際合意を構
題の一つに
築しようという動きがあるようだ。金融政策の限界が近付く中、財政出動で
の国際合意を実現出来れば、サミットの大きな成果になろう。その実現に向
けてハードルとなるのは、財政規律を重視するドイツの反応である。2 月に
上海で開催された 20 カ国財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)で、ドイツ
のショイブレ財務大臣は「更なる財政刺激策を論じることは、真に行うべき
こと(構造改革)から目をそらさせるだけで、
・・
(中略)
・・我々は、G20
での財政刺激パッケージには同意しない」と述べている。
ドイツは 2020 年まで均衡
財政を続ける予定
ドイツ政府は財政規律を重視しているが、歳出を減らしているわけでは無
い。実際、2016 年は前年比 5.9%の歳出増が見込まれている(図表 1)
。しか
し、歳入も同時に増加し、2016 年は 2014・15 年に続き均衡財政を達成する
見込みである。同国の財政均衡は 1969 年以来のことだ。景気回復に伴う税
収増や、国債利回りの低下による利払い費の減少などが、財政均衡化の背景
にある。2015 年は難民対策費の増加にも関わらず、結果的に連邦政府レベル
で約 130 億ユーロの財政黒字を達成し、黒字分は 2016・17 年の難民対策費
用として各年の予算に半分ずつ配分される予定となっている。2017 年以降に
目を転じても、ドイツ政府は歳出拡大を続けながら、2020 年まで均衡財政を
堅持し、新規借り入れは行わない予定である。
ドイツ政府が均衡財政
ドイツ政府が財政均衡を重視する背景には、いくつかの理由がある。
を重視する背景には、将
国内経済面では、ドイツは、日本と同様に高齢化が進む中で、将来的には
来への備え
社会保障費の拡大等が予想される。また、現在は低金利下で利払い負担は低
下しているものの、将来的に再び金利が上昇する可能性もある。更に、足元
の国内経済は内需を中心として比較的底固く、追加的な財政緩和策は必要な
い。ドイツ政府が中期財政見通しにおいて示す 2016~18 年の実質GDP成
長率見通しは、各 1.7%、1.5%、1.6%と、政府の示す潜在成長率(各 1.6%、
1.7%、1.6%)と大きな差はない。金融政策がドイツにとっては非常に緩和
的な状態が近年続いていることと併せて考えた時に、財政拡張による景気刺
激の必要性は乏しい。
均衡財政は、2013 年議会
国内政治面では、均衡財政は 2013 年の連邦議会選挙における、キリスト
選挙における与党CD
教民主同盟(CDU)の主要な公約であった。CDUの均衡財政に固執する
Uの主要な公約
姿勢は、ドイツ国内では同党のイメージカラーである「黒」をとって、
「ブ
ラック・ゼロ」と呼ばれることもある。ドイツは 2017 年秋に連邦議会選挙
を控えており、CDUは難民問題の影響などから支持率を落としている。選
挙戦が本格化するにつれ、前回の選挙公約を達成したと宣伝したいと考える
のは自然で、敢えて財政規律を緩める必要は無い。
欧州という側面から見た場合、ドイツは財政規律に関するユーロ圏の「ロ
ール・モデル」になろうとしているという見方がある。実際、ドイツ政府は、
2009 年の基本法改正により連邦政府並びに州政府に対して財政収支の均衡
を他国に先立って義務付けている(債務ブレーキ)
。連邦政府の構造的財政
収支については、例外的に名目GDP比 0.35%までの赤字が認められている
が、それにしてもEUの安定成長協定において認められている構造財政収支
の同 1.0%の赤字よりも厳しい基準である。均衡財政を国内法制化させると
いう仕組みは、財政協定という形で、2013 年にEUレベルでも導入されてお
り(但し、英国とチェコを除く)
、これはドイツの制度をモデルにしたもの
だ。
2017 年議会選挙を控え
上記の経済・政治面の影響を考えたとき、ドイツが一層の歳出増を容認す
て、「ブラック・ゼロ」
る可能性は低く、その説得は容易ではない。ドイツにとり「ブラック・ゼロ」
、
は譲れない一線、歳出増
すなわち均衡財政の堅持は譲れない一線だ。国際社会は短期的な財政赤字さ
の説得は容易ではない
え許容しないドイツの姿勢に対して反発しようが、ドイツはすでに難民対策
等を含めた歳出増が行われていることを主張して反論しよう。
もっとも、国際比較でも資本支出のシェアは、G7 各国の中でドイツは低
く、国内の一部エコノミストやIMF、EU各国からはインフラ投資や研究
開発費など国内投資を更に増やすべきという意見は多い。ショイブレ財務相
は、2016 年予算におけるインフラ投資は「大きく増加する見込み」と述べて
いるが、ドイツの投資支出の伸びは 2018 年以降には減速する。成長につな
がる投資支出のシェアを増やすことは、議論の余地があるかもしれない。
図表1 独連邦政府の中期歳出見通し
投資支出
(10億ユーロ)
400
経常支出
(%)
14
合計
(予算・見込み)
図表2 一般政府(G7)の資本支出のシェア
350
12
300
10
250
8
200
6
150
4
100
2
50
0
2014
2015
2016
2017
(資料)独政府より、みずほ総合研究所作成
2018
2019
2020
(年)
0
ドイツ
イタリア
英国
フランス
米国
カナダ
日本
(注)総支出に占める資本支出の比率。日本と米国は2013年、その他は
2014年。
(資料)OECDより、みずほ総合研究所作成
2.ユーロ圏経済の概況:4~6 月期入り後の景気回復テンポは緩慢
市場予想から上振れる
経済指標の市場予想と実績値との上振れ・下振れを指数化したドイツの
ドイツ経済指標。1~3 月
「サプライズ指数」は、4 月中旬にかけてプラス圏に浮上し、ドイツ経済指
期の成長率は加速した
標が総じて市場予想を上回ったことを示している(図表 3 の①)。また、現時
見込み
点で利用可能な統計を踏まえると、1~3 月期のドイツGDP成長率は 10~
12 月期から加速した可能性が高い。ドイツ連銀も 4 月月報の中で同様の判断
を示している。
経済規模が圏内で最大のドイツの成長率が加速したとみられる結果、ユー
ロ圏全体でも 1~3 月期の成長率は加速した公算が大きい。なお、ユーロ圏
GDPの速報値は今回から発表が前倒しとなり、4/29 には成長率が判明する。
ドイツ連銀は、1~3 月期
一方、ドイツ連銀は、4 月以降、ドイツの景気回復テンポが鈍化すると指
の成長率加速が一時的
摘している。連銀は、1~3 月期の成長率は暖冬や休日要因によって嵩上げさ
であり、4 月以降に景気
れただけであり、4~6 月期にはそうした要因が剥落すると予想しているのだ。
回復テンポは鈍化する
暖冬は 1・2 月の建設業生産の大幅な増加に繋がっている(図表 4)。休日要因
と指摘
は 1 月の鉱工業生産の急増をもたらした。昨年 12 月は、クリスマス休暇を
例年より長めにとって工場稼働を停止した企業が多く、1 月にはその反動が
生じたとみられる。
4 月の合成PMIが低下
4 月下旬に公表された 4 月のドイツ合成PMI(53.8)は、景気判断の節目
しており、4~6 月期入り
である 50 を上回るも、3 月(54.0)から低下した(図表 5)。4~6 月期入り後、
後、ユーロ圏・ドイツの
一時的要因が剥落する中、ドイツ景気の回復は緩慢なテンポにとどまってい
景気回復テンポは緩慢
る模様である。サプライズ指数も 4 月下旬に急低下し、市場予想対比でみた
とみられる
経済指標の上振れが落ち着いてきていることを示している(図表 3 の②)。
ユーロ圏全体でみても、4 月の合成PMI(53.0)は伸び悩んだ。ドイツと
同様、景気回復は続いているものの、そのテンポが引き続き緩やかであるこ
とが示唆される。発表元の Markit 社によると、製造業・サービス業とも、
受注は引き続き低調であるという。
足元では、ユーロ圏の雇用改善テンポに鈍化の兆候がみられたり、主要輸
出先である英国の景気下振れリスクが強まったりと、今後のユーロ圏景気に
関する新たな不安材料が生じている。このように景気の下振れリスクが高い
中、ユーロ圏各国は景気の下支えを図るべく、緩和的な財政政策を志向する
可能性がある。ユーロ圏全体でみれば、昨年末の時点で、2016 年・2017 年
は小幅な財政拡大が計画されている(図表 6)。財政は一段と緩和的となるの
か、4 月末に出揃うであろう各国の新たな中期予算計画が注目される。
3
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
図表 3
ドイツ「サプライズ指数」
(DI%pt、「上振れ」―「下振れ」)
4月上・中旬:
40
DIはプラス圏
30
→上振れ気味
20
図表 4
106
①
(2015=100)
ユーロ圏
105
②
ユーロ圏・ドイツの建設業生産
ドイツ
ドイツ1・2月平均
104
10
103
0
102
4月下旬:
DIは急低下
▲ 10
▲ 20
101
100
▲ 30
2016/1
16/2
16/3
16/4 (年/月)
99
(注)Bloomberg が市場予想を集計する経済指標について実績
が市場予想より良好な指標の比率と不良な指標の割合
からDIを 1 日毎に計算。日次DIの 30 日移動平均を
サプライズ指数とした。
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
図表 5
2015/2
15/5
15/8
15/11
16/2
(年/月)
(資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成
ユーロ圏・主要国の合成PMI
(Pt)
58
ドイツ10~12月平均
98
図表 6
ユーロ圏の構造的財政収支
(構造的財政赤字のGDP比、%)
4.0
3.6
3.5
ユーロ圏、ドイツとも
4月のPMIは低下
56
3.0
←
拡 54
張
52
2.5
構造赤字は小幅に拡大
⇒緩和気味の財政
2.1
2.0
景
気 50
1.4
1.5
→
1.0
1.0
48
縮
小 46
1.1
1.3
1.4
15
16
17
(年)
0.5
2014/4
ユーロ圏
フランス
15/4
0.0
16/4
(年/月)
ドイツ
イタリア・スペイン
2011
13
14
(注) 赤字幅の縮小(拡大)=財政緊縮(緩和)を表す。
(資料) 欧州委員会よりみずほ総合研究所作成
(資料)Markit よりみずほ総合研究所作成
図表 7
12
ユーロ圏景気の全体館を示す主要統計
Q3 2015
Q4 2015
Q1 2016 Q2 2016
2015/11 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04
ユーロ圏(19カ国)
前期比、%
0.3
0.3
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
-
ドイツ
前期比、%
0.3
0.3
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
-
フランス
前期比、%
0.4
0.3
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
-
イタリア
前期比、%
0.2
0.1
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
-
スペイン
前期比、%
0.8
0.8
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
-
ユーロ圏合成PMI
Pt
53.9
54.1
53.2
53.0
54.2
54.3
53.6
53.0
53.1
53.0
ユーロ圏製造業PMI
ユーロ圏サービス業PMI
Pt
Pt
52.2
54.0
52.8
54.2
51.7
53.3
51.5
53.2
52.8
54.2
53.2
54.2
52.3
53.6
51.2
53.3
51.6
53.1
51.5
53.2
長期平均=100
104.4
106.2
104.0
n.a.
105.9
106.6
105.0
103.9
103.0
n.a.
1.4
1.5
1.7
1.5
-
-
-
-
-
-
末値、%
0.05
0.05
0.00
n.a.
0.05
0.05
0.05
0.05
0.00
n.a.
末値、%
0.59
0.64
0.16
n.a.
0.48
0.64
0.27
0.11
0.16
n.a.
末値、€/$
1.12
1.09
1.14
n.a.
1.06
1.09
1.08
1.09
1.14
n.a.
ユーロ圏ESI
専門家調査(当年のユーロ圏GDP成長率、%)
ECB主要政策金利
ドイツ10年国債利回り
ユーロ/ドル
(資料)Eurostat、欧州委員会経済金融総局、ECB、Markit、Datastream よりみずほ総合研究所作成
4
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
3.ユーロ圏内外需動向:輸出・生産は減少。雇用改善テンポに鈍化の兆候
ユーロ圏輸出は 4 カ月連
ユーロ圏の輸出は減少している。2 月のユーロ圏域外輸出(国際収支統計の
続で減少。いずれの仕向
財・サービス輸出金額)は、前月比▲2.2%と 4 カ月連続で減少した。貿易統
地向けも減少基調また
計より仕向地毎の財輸出の動向をみると、米国向けや南米・アフリカ向けが
は停滞気味
減少基調にあり、NIEs・ASENA 向けは昨夏からの持ち直しの動きが停滞して
いる(図表 8)。中国向けは増加を続けているが、現地の景気が減速気味の中、
持続性は楽観できない。
年初のユーロ圏輸出の減少は、新興国景気の弱さに加え、米景気失速の影
響を受けたと考えられる。今後、ドル高や原油安による下押し圧力が和らぐ
のに伴い、米景気の持ち直しが見込まれる点を踏まえれば、ユーロ圏輸出は
徐々に復調するだろう。しかし、新興国景気に弱さが残るとみられるため、
ユーロ圏輸出の回復は緩慢なテンポにとどまる見通しだ。主要輸出先である
英国の下振れリスクが増している点も気懸りである。更に、ユーロ相場の行
方にも留意する必要がある。米利上げ観測の後退などを背景にユーロ高が続
けば、輸出回復の重石となる。
ユーロ圏鉱工業生産は
2 月のユーロ圏鉱工業生産は前月比▲0.8%と減少した(図表 9)。1 月のユ
減少。生産の基調の弱さ
ーロ圏生産の増加が休日要因によるドイツの大幅増産などに影響されたも
を示す結果
ので、特殊事情を除くと生産の基調が強くないことを確認する結果だった。
主要国の 2 月の結果をみると、ドイツ以外でも全般に減産となった。
ユーロ圏建設業生産は
2 月のユーロ圏建設業生産は前月比▲1.5%と減少したが、1・2 月を均す
増加傾向。ドイツの暖冬
ると 10~12 月期を約 2%上回っており、建設投資の拡大を示している(4 頁
が主因
図表 4)。
ドイツでは、
建設業生産が 2 月も同+1.3%(1 月同+4.5%)と増加、
1・2 月の水準は 10~12 月期を約 5%上回り、暖冬の影響が顕著である。
ユーロ圏消費は改善テ
ンポが鈍化
ユーロ圏の個人消費は改善テンポが鈍化している。2 月の小売数量は前月比
+0.2%と増加したが、伸び率は低下を続けた。3 月の新車登録台数は同▲
2.4%と 2 カ月連続で減少している。また、企業サーベイからみて、サービス消費
の改善テンポは 3 月にかけて減速を続けている模様である。
ユーロ圏の雇用は改善。
ユーロ圏の雇用は改善しており、2 月のユーロ圏失業者数は前月差▲39 千
ただし、今後の改善テン
人と減少した。今後については、3 月もユーロ圏企業の雇用見通しDIがプ
ポが減速する兆候も
ラス圏を維持しているため、雇用改善が続くと見込まれる(図表 11)。ただし、
DIの水準は 2 カ月連続で低下しており、雇用改善テンポの減速を示唆して
いる。気懸りなのは、製造業に加えてサービス業でもDIが低下しているこ
とだ。輸出減などの影響がサービス業に波及してきた可能性があり、4 月以
降の動向を見極める必要がある。
5
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
図表 8
ユーロ圏仕向地別輸出金額
図表 9
ユーロ圏・主要国の鉱工業生産
(2014/8=100)
125
(2014/8=100)
105
120
104
115
103
110
102
105
100
101
95
100
90
EU向け
NIEs・ASEAN向け
中国向け
85
80
2014/8 14/11
15/2
米国向け
南米・アフリカ向け
15/5
15/8
15/11
99
98
2014/8 14/11 15/2
15/5
15/8
ユーロ圏
ドイツ
フランス
イタリア
(資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成
16/2
(年/月)
(資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成
図表 10
ユーロ圏の財消費関連指標
(2010年=100)
図表 11
900
103
850
102
800
101
100
2015/3
15/6
15/9
新車登録台数(右目盛)
15/12
小売数量
750
16/3
(年/月)
Q3 2015
企業
外需
雇用
15/3
15/9
16/3
(年/月)
ユーロ圏内外需関連統計
Q4 2015
Q1 2016 Q2 2016
2015/11 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04
鉱工業生産
ユーロ圏(19カ国)
前期比、%
0.2
0.4
1.1
n.a.
▲ 0.1
▲ 0.5
1.9
▲ 0.8
n.a.
n.a.
ドイツ
前期比、%
▲ 0.2
▲ 0.6
1.7
n.a.
▲ 0.1
▲ 0.1
2.1
▲ 0.7
n.a.
n.a.
フランス
前期比、%
0.3
0.7
▲ 0.2
n.a.
▲ 0.6
▲ 0.7
1.0
▲ 1.1
n.a.
n.a.
イタリア
前期比、%
0.4
0.0
0.9
n.a.
▲ 0.5
▲ 0.5
1.7
▲ 0.6
n.a.
n.a.
スペイン
前期比、%
0.5
0.5
▲ 0.2
n.a.
0.1
▲ 0.0
▲ 0.1
▲ 0.2
n.a.
n.a.
%
81.1
81.5
81.9
n.a.
-
-
-
-
-
-
前期比、%
▲ 2.1
1.5
▲ 1.0
n.a.
0.7
0.1
▲ 1.3
n.a.
n.a.
n.a.
億ユーロ
27.4
28.1
23.3
n.a.
29.5
26.9
27.5
19.0
n.a.
n.a.
ユーロ圏財・サービス輸出 前期比、%
▲ 1.6
0.9
▲ 1.5
n.a.
▲ 0.1
▲ 0.6
▲ 0.0
▲ 2.2
n.a.
n.a.
ユーロ圏財・サービス輸入 前期比、%
▲ 1.3
0.5
▲ 1.8
n.a.
▲ 0.7
▲ 0.5
▲ 0.6
▲ 1.2
n.a.
n.a.
ユーロ圏実質雇用者報酬 前期比、%
0.7
0.7
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
-
%
10.7
10.5
10.4
n.a.
10.5
10.4
10.4
10.3
n.a.
n.a.
ユーロ圏小売数量
前期比、%
0.7
0.2
0.8
n.a.
0.1
0.6
0.3
0.2
n.a.
n.a.
ユーロ圏新車登録台数
前期比、%
2.5
2.7
4.0
n.a.
2.5
4.8
1.4
▲ 0.9
▲ 2.4
n.a.
ユーロ圏設備稼働率
ユーロ圏製造業受注
(大型輸送機器除く)
ユーロ圏経常収支
ユーロ圏失業率
家計
サービス業を含め
雇用見通しDIは
2カ月連続で低下
(注)ユーロ圏企業に今後 3 カ月間の見通しを尋ね、「増加」
の回答割合から「減少」の割合を差し引いたもの。
(資料)欧州委員会よりみずほ総合研究所作成
(資料)Eurostat、ECBよりみずほ総合研究所作成
図表 12
15/11 16/2
スペイン
(年/月)
ユーロ圏企業の雇用見通し
(DI、%pt)
12
製造業
10
サービス業
8
全産業
6
4
2
0
▲2
▲4
▲6
▲8
2014/3
14/9
(千台)
小売は改善傾向。
新車は単月では減少
104
2月は
全般に減産
(資料)Eurostat、欧州委員会経済金融総局、ECBよりみずほ総合研究所作成
6
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
4.ユーロ圏物価動向:インフレ率はマイナス幅を縮小。ECBは現状維持
3 月のユーロ圏インフレ
3 月のユーロ圏インフレ率(消費者物価)は前年比▲0.0%となり、マイナス
率はマイナス幅が縮小。
幅が前月より縮小した(図表 13)。エネルギー物価の下落幅が拡大したが、コ
コア・インフレ率の上昇
ア・インフレ率(エネルギー・食品等を除く)が同+1.0%に上昇した。コア・
は季節要因が理由
インフレ率に関しては、イースター休暇時期のずれ(2015 年は 4 月→2016 年
は 3 月)によってパック旅行や航空運賃が値上がりしたという季節要因が上
昇の主因であり、インフレ圧力が高まっているわけではないと判断される。
ユーロ圏消費関連業種の値上げ見通しDIは伸び悩んでおり、値上げに対す
る企業の慎重姿勢に変化の兆しはうかがわれない(図表 14)。
ECBは現状維持。声明
4 月のECB政策理事会では、金融政策の現状維持が決定された。ECB
文では、追加緩和を辞さ
は 3 月に決めた追加緩和の効果を見極める段階にあり、預金ファシリティ金
ない方針を強調
利などの政策金利や、月額 800 億ユーロの資産購入枠は据え置きとなった。
声明文には、
「3 月の緩和策導入後、ユーロ圏の金融環境は全般に改善して
いる。銀行システムを通じ、金融政策のパススルーは強まっている」との前
向きな文言が加えられた。他方、
「必要ならば責務の範囲内で利用可能な全
ての措置を講じる」との文言も加わった。前回 3 月の理事会直後、ドラギ総
裁が追加利下げの可能性を否定したとの見方が強まってユーロが増価した。
今後も全ての政策手段を用いる方針を強調することで、意図せざる引締めを
避ける狙いがあるとみられる。
ドラギ総裁は、金融緩和
物価に関して、ドラギ総裁は記者会見の中で、一連の金融緩和は、現時点
により低インフレの 2 次
で、低インフレが企業の価格・賃金設定行動に影響を及ぼすという 2 次的波
的波及効果の顕在化は
及の顕在化を避ける効果があったと指摘した。また、金融市場が織り込む期
避けられたと指摘
待インフレ率が低位にとどまっていることに関しては(図表 15)、これまでよ
うな警戒トーンの強い発言をせず、
「(上昇を)待つ必要がある。今年後半に
はインフレ率が上向き、期待インフレ率もそれに続こう」と述べた。ただし、
先行きの物価動向については引き続き慎重な見方をしている模様であり、声
明文には、
「(2 次的波及効果による)低インフレの長期化を確実に回避するこ
とが重要」との文言が残された。
理事会後には、6 月より開始される社債購入プログラムの詳細が公表され
た(図表 16)。同じタイミングで始まる、貸出促進を狙った資金供給オペ
(TLTRO2)と共に、購入規模がどのくらいになるかが注目される。
7
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
図表 13 ユーロ圏インフレ率
(前年比、%)
1.2
図表 14 ユーロ圏企業の値上げ見通し
コアの上昇は (前年比、%)
0.0
イースター要因か
▲ 0.5
0.9
20
15
▲ 1.0
0.6
値
上
げ
▲ 1.5
0.3
←
▲ 2.0
▲ 2.5
0.0
→
▲ 3.5
▲ 0.6
10
5
▲5
値 ▲ 10
下 20 09/3
げ
▲ 4.0
2015/3
15/6
15/9
15/12
ユーロ圏インフレ率
コア・インフレ率
エネルギー・食品・アルコール・煙草(右目盛)
DIは低下傾向。
値上げに対する
企業の慎重姿勢を示唆
0
▲ 3.0
▲ 0.3
(DI、%pt)
16/3
(年/月)
10/3
11/3
12/3
13/3
14/3
15/3 16/3
(年/月)
(注)消費関連業種の今後 3 カ月の値上げ見通し。このDIは、
エネルギーを除くインフレ率に 3~6 カ月先行する傾向がある。
(資料)欧州委員会よりみずほ総合研究所作成
(資料) Eurostat よりみずほ総合研究所作成
図表 15 金融市場の期待インフレ率
図表 16 社債購入プログラムの詳細
(%)
2.0
購入相手
ECBの通常オペに参加可能な金融機関
中期ゾーンが低下
通常オペにおける適格担保要件を満たす
1.6
購入社債
1.2
ユーロ圏所在の企業がユーロ建で発行
する債券。銀行を除き、生保を含む
0.8
0.4
2015/4
購入時の残存期間が6カ月~30年
15/7
15/10
16/1
5年後から5年
1年後から1年
2年後から1年
4年後から1年
16/4
(年/月)
(注)インフレスワップレートから算出した期待インフレ率。
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
購入市場
発行・流通市場
購入上限
銘柄毎の購入上限は残存金額の70%
情報開示
購入額は毎週公表。発行・流通市場の内訳
は毎月公表
(資料)ECBよりみずほ総合研究所作成
図表 17 ユーロ圏物価関連統計
Q3 2015
物価
商品
ユーロ圏インフレ率
コア(エネルギー・
食品等除く)
エネルギー
Q4 2015
Q1 2016 Q2 2016
2015/11 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04
0.1
0.2
0.0
n.a.
0.1
0.2
0.3
▲ 0.2
▲ 0.0
n.a.
前年比、%
0.9
1.0
1.0
n.a.
0.9
0.9
1.0
0.8
1.0
n.a.
前年比、%
▲ 7.2
▲ 7.2
▲ 7.4
n.a.
▲ 7.3
▲ 5.8
▲ 5.4
▲ 8.1
▲ 8.7
n.a.
食品・アルコール・タバコ 前年比、%
1.2
1.4
0.8
n.a.
1.5
1.2
1.0
0.6
0.8
n.a.
非エネルギー工業品
前年比、%
0.4
0.5
0.6
n.a.
0.6
0.5
0.7
0.7
0.5
n.a.
サービス
前年比、%
1.2
1.2
1.1
n.a.
1.2
1.1
1.2
0.9
1.4
n.a.
ドイツ・インフレ率
前年比、%
0.0
0.3
0.1
n.a.
0.3
0.2
0.4
▲ 0.3
0.2
n.a.
フランス・インフレ率
前年比、%
0.1
0.2
0.0
n.a.
0.1
0.3
0.3
▲ 0.1
▲ 0.1
n.a.
イタリア・インフレ率
前年比、%
0.3
0.2
▲ 0.0
n.a.
0.2
0.1
0.4
▲ 0.3
▲ 0.3
n.a.
スペイン・インフレ率
前年比、%
▲ 0.6
▲ 0.5
▲ 0.8
n.a.
▲ 0.4
▲ 0.1
▲ 0.4
▲ 1.0
▲ 1.0
n.a.
生産者物価(消費財)
前年比、%
▲ 0.6
▲ 0.2
n.a.
n.a.
▲ 0.2
▲ 0.3
▲ 0.2
▲ 0.4
n.a.
n.a.
輸出物価
前年比、%
2.8
2.3
n.a.
n.a.
2.2
2.9
1.5
n.a.
n.a.
n.a.
前年比、%
輸入物価
ブレント原油(ユーロ建て) 前年比、%
▲ 2.1
▲ 2.7
n.a.
n.a.
▲ 2.8
▲ 1.6
▲ 2.2
n.a.
n.a.
n.a.
▲ 41.0
▲ 34.5
▲ 34.3
n.a.
▲ 33.7
▲ 30.9
▲ 31.1
▲ 40.4
▲ 32.5
n.a.
(資料) Eurostat、Datastream よりみずほ総合研究所作成
8
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
5.英国経済の概況:景気回復が続くも下振れリスクが増大
1~3 月期の英景気の回
復テンポは減速
1~3 月期の英GDPは前期比+0.4%となり、
10~12 月期(同+0.6%)から
減速した(図表 16)。産業別にみると、建設業や鉱工業が成長率を押し下げた
ほか、金融ビジネス業の寄与度が縮小した。商業は堅調さを維持した。
需要項目別の内訳は未詳だが(5/26 に公表予定)、建設・鉱工業や金融ビジ
ネス業の冴えない結果からみて、企業の設備投資が停滞したと思われる。一
方、商業の堅調さや月次の消費関連統計の良好さを踏まえると、個人消費は
拡大し、景気回復をけん引したとみられる。小売数量は 3 月単月では減少し
たが、1~3 月期に均すと前期比+0.8%の大幅増となった(図表 19)。新車登
録台数は 1~3 月期(同+4.6%)も増加し、新車販売も好調であるようだ。
4 月以降も景気回復の動
4 月以降に関しても景気回復が続いているとみられる。しかし、EU離脱
きが継続。しかし、EU
の是非を問う国民投票(以下、国民投票)を 6 月に控え、景気の下振れリスク
離脱に関する国民投票
は増している。
を控え、企業の慎重姿勢
イングランド銀行(BOE)は、政策の現状維持を決定した 4 月の金融政策
の強まりが景気の下振
委員会(MPC)の議事録の中で、国民投票が英景気に及ぼす影響を細かく説
れリスクに
明している。まず、国民投票までの期間においては、設備投資の実施や新規
採用などに関する企業の決定が先送りされ、景気回復テンポが減速する可能
性があると指摘されている。次に、国民投票でEU離脱が決定された場合、
輸出などに関する不透明感が長期に亘って残存するという。更に、財・労働
市場の規制の変化、貿易・資本取引に係る制度の変化など、経済の供給サイ
ドに係る不透明感も高まると想定されている。
企業は投資計画を下方
修正。国民投票を前に不
透明感が高まっている
議事録では、既に、国民投票に係る不透明感が経済活動を下押しする兆候
がみられるとの指摘がある。
確かに、企業サーベイでは投資計画の修正などが確認される。米 Deloitte
社が英国所在の大企業のCFO(最高財務責任者)を対象に 3 月に実施した調
査では、今後 12 カ月の設備投資を減らすとの回答が増やすとの回答を上回
った(図表 20)。他方、自社の事業が不透明感に直面しているとの回答が全体
の 8 割を超えたほか(図表 21)、事業のリスクとして国民投票を挙げた回答割
合は 3 カ月前から増加し、過半を超えた。同調査によると、英企業CFOの
多くが輸出や投資などの面でEU加盟が英国経済にプラスと考えており、E
U離脱を重大な事業リスクと認識していることが示されている。Deloitte 社
以外の調査でも、概して投資意欲の減退が確認される。
就業者は 9 カ月ぶりに減
投資計画に加え、雇用計画にも国民投票を前にした企業の慎重姿勢が影響
少。雇用見通しは弱含ん
している可能性がある。
2 月の就業者数(3 カ月移動平均)は前月差▲9 千人と、
だまま
9 カ月ぶりに減少した。企業の雇用見通しは弱含んでおり、3 月以降も就業
者数の減少が続くリスクがある。
以上
9
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
図表 18
1.0
英GDP
図表 19
(前期比、%)
114
0.8
(2010=100)
(千台)
240
小売数量
113
0.6
英消費関連統計
235
新車登録台数(右目盛)
(破線は四半期平均)
112
230
0.4
111
0.2
225
110
0.0
220
109
▲ 0.2
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
2013
その他
金融ビジネス
鉱工業
14
15
商業
建設業
実質GDP
107
(年/四半期)
2015/3
(資料)英統計局よりみずほ総合研究所作成
図表 20
英企業の設備投資計画
12
図表 21
英企業が直面する不透明感
80
70
60
50
40
13
14
15
16
(年/四半期)
2011
12
13
14
15
16
(年/四半期)
(注)事業が直面する不透明感の程度が「極めて高い」、
「高い」、
「通常を上回る」と回答したCFOの割合。
(資料)Deloitte よりみずほ総合研究所作成
英景気の全体感を示す主要統計
Q3 2015
景況感
210
16/3
(年/月)
15/12
90
図表 22
実質GDP
15/9
(%)
100
(注)今後 12 カ月の設備投資計画をCFOに尋ね、増加
計画との回答割合から減少計画との回答割合を
差し引いたもの。
(資料)Deloitte よりみずほ総合研究所作成
成長率
15/6
(資料)英統計直、ECBよりみずほ総合研究所作成
(DI%pt、「増加」-「減少」)
100
80
60
40
20
0
▲ 20
▲ 40
▲ 60
▲ 80
2011
215
108
16
Q4 2015
Q1 2016 Q2 2016
2015/11 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04
前期比、%
0.4
0.6
0.4
n.a.
-
-
-
-
-
-
合成PMI
Pt
55.1
55.5
54.2
0.0
55.7
55.3
56.2
52.7
53.6
n.a.
製造業PMI
Pt
51.8
53.2
51.6
0.0
52.5
51.8
53.0
50.8
51.0
n.a.
サービス業PMI
Pt
55.4
55.4
54.0
0.0
55.9
55.5
55.6
52.7
53.7
n.a.
企業
鉱工業生産
前期比、%
0.2
▲ 0.4
▲ 1.0
n.a.
▲ 0.8
▲ 1.1
0.1
▲ 0.3
n.a.
n.a.
外需
財輸出
前期比、%
▲ 5.6
▲ 1.2
▲ 0.3
n.a.
▲ 2.0
▲ 0.5
0.1
1.3
n.a.
n.a.
財輸入
前期比、%
0.9
0.6
2.6
n.a.
▲ 0.4
▲ 3.6
5.2
0.3
n.a.
n.a.
%
5.4
5.1
5.1
n.a.
5.1
5.1
5.1
5.1
n.a.
n.a.
前期比、%
0.4
0.4
0.8
n.a.
0.1
0.3
0.3
0.4
n.a.
n.a.
前期比、%
0.9
1.1
0.8
n.a.
1.2
▲ 1.2
2.0
▲ 0.4
▲ 1.3
n.a.
Nationwide住宅価格指数 前年比、%
3.5
4.0
5.0
n.a.
3.7
4.4
4.4
4.8
5.7
n.a.
雇用
家計
失業率
民間賃金(賞与除く、
3カ月平均)
小売数量
物価
消費者物価指数
金融
主要政策金利
英10年国債利回り
ポンドドル
前年比、%
0.0
0.1
0.3
n.a.
0.1
0.2
0.3
0.3
0.5
n.a.
末値、%
0.50
0.50
0.50
n.a.
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
n.a.
末値、%
2.11
2.29
1.84
n.a.
2.17
2.29
1.93
1.79
1.84
n.a.
末値、£/$
1.51
1.47
1.44
n.a.
1.51
1.47
1.42
1.39
1.44
n.a.
(資料)英統計局、Nationwide、Markit、Datastream よりみずほ総合研究所作成
10
みずほ欧州経済情報(2016 年 4 月号)
2016年 4月 2 8 日
発行
欧米調査部上席主任エコノミスト 吉田健一郎
03-3591-1265 kenichi ro.yoshid a@mizuho- ri.co.jp
欧米調査部主任エコノミスト 松本 惇
03-3591-1199 atsushi .matsumot o@mizuho- ri.co.jp
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