Slater の規則による遮蔽定数・有効核電荷の求め方 1. 原子の電子構造

Slater の規則による遮蔽定数・有効核電荷の求め方
1. 原子の電子構造を書き、原子軌道をグループ分けする:
(1s )(2s , 2p )(3s , 3p )(3d )(4s , 4p )(4d )(4f )(5s , 5p )(5d ) …
2. 着目している電子より右側のグループの電子は遮蔽に寄与しない
3. 𝑛s、𝑛p 電子の遮蔽定数 𝜎
3a. 同じグループに属している他の電子は 1 個あたり 𝜎 に 0.35 だけ寄与する
例外: 1s 軌道の場合は寄与は 0.3
3b. 主量子数 𝑛 − 1 の電子は 1 個あたり 𝜎 に 0.85 だけ寄与する
3c. 主量子数 𝑛 − 2 以下の電子は 1 個あたり 𝜎 に 1.00 の寄与をする
4. 𝑛d、𝑛f 電子の遮蔽定数 𝜎
4a. 同じグループに属している他の電子は 𝜎 に 0.35 だけ寄与する
4b. 左側のグループの電子はすべて 𝜎 に 1.00 の寄与をする
Nickel
(1s 2 )(2s2 , 2p6 )(3s2 , 3p6 )(3d8 )(4s2 )
𝑍 = 28,
4 s 電子について:
3a: (4s2 ) グループに含まれるもう 1 つの電子が 𝜎 に 0.35 だけ寄与する
3b: (3s2 , 3p6 )(3d8 ) グループの電子 1 個あたり 𝜎 に 0.85 だけ寄与する
3c: (1s2 )(2s 2 , 2p6 ) グループの電子 1 個あたり 𝜎 に 1.00 の寄与をする
σ = 0.35 + 16 × 0.85 + 10 × 1.00 = 23.95 𝑍eff = 𝑍 − 𝜎 = 4.05
3d 電子について:
2: (4s2 ) グループに含まれる電子は 𝜎 に寄与しない
4a: (3d8 ) グループに含まれる他の電子が 1 個あたり 𝜎 に 0.35 だけ寄与する
4b: (1s2 )(2s 2 , 2p6 )(3s2 , 3p6 ) グループの電子 1 個あたり 𝜎 に 1.00 の寄与をする
𝜎 = 7 × 0.35 + 18 × 1.00 = 20.45 𝑍eff = 𝑍 − 𝜎 = 7.55
Scandium 𝑍 = 21,
(1s 2 )(2s 2 , 2p6 )(3s2 , 3p6 )(3d1 )(4s2 )
4 s 電子について:
3a: (4s2 ) グループに含まれるもう 1 つの電子が 𝜎 に 0.35 だけ寄与する
3b: (3s2 , 3p6 )(3d1 ) グループの電子 1 個あたり 𝜎 に 0.85 だけ寄与する
3c: (1s2 )(2s 2 , 2p6 ) グループの電子 1 個あたり 𝜎 に 1.00 の寄与をする
σ = 0.35 + 9 × 0.85 + 10 × 1.00 = 18.00 𝑍eff = 𝑍 − 𝜎 = 3.00
3d 電子について:
2: (4s2 ) グループに含まれる電子は 𝜎 に寄与しない
4a: (3d1 ) グループには他に電子は存在しない
4b: (1s2 )(2s 2 , 2p6 )(3s2 , 3p6 ) グループの電子 1 個あたり 𝜎 に 1.00 の寄与をする
𝜎 = 18 × 1.00 = 18.00 𝑍eff = 𝑍 − 𝜎 = 3.00
参考文献 (この文書の説明は文献 1 によるものです)
1. Miessler, Fischer, Tarr, Inorganic Chemistry, 5th Edition, Pearson
Chapter 2.2.4, Example 2.5 (Ni), Question 2.30 (Sc)
2. 三吉、はじめて学ぶ大学の無機化学、化学同人、
Chapter 1.3.1
( “主量数” は “主量子数” の誤り)
3. J.C. Slater. Phys. Rev. , 1930 , 36 , 57. (Slater の原論文)