サポイン事業化成功事例 企業名 東北マイクロテ ック株式会社 企業情報 住所 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-40T-Biz203 Tel/Fax Tel:022-398-6264 HP http://www.t-microtec.com 資本金 5.5 百万円 代表者 代表取締役社長 元吉 真 Fax:022-398-6265 【事業内容】 積層型三次元LSIを製造販売している。その中でシンクロトロン等に用いる素粒子及び 電磁波の検出用イメージセンサは欧米の研究所などに供給している。 微細積層型三次元技術を実現する装置とノウハウを基に、試作や受託生産を請け負っている。 【主要取引先】 国内大手半導体企業(2 社)、国内外国立研究機関(4 機関)、国内センサ企業(2 社)、 海外装置メーカー(1 社)、他 【採択プロジェクト名】 平成 18 年度中小機構採択 「5 μm ピッチ以下の貫通配線を使った積層 LSI デバイス実装技術」 【事業化成功製品及び特徴】 (1)事業化成功製品(下図写真) 積層型三次元 LSI、Si インターポーザ (2)製品の特長、顧客(市場、用途) ・イメージセンサに応用した場合には、原理的に表面全体をセンサに使用できることか ら高感度のものを得られる。また、5 μm という微細な間隔でセンサと回路を接続でき るので高解像度とすることが可能となる。一方、積層した素子間の配線長が短縮でき 浮遊容量を減らせることから高速度演算に適した LSI 回路が可能となる。 ・この特徴を生かしたイメージセンサは高エネルギー物理学(素粒子物理学)においてシン クロトロンなどの加速器のX線や素粒子の検出に用いられている。また、LSI 素子本来 の高速性を損なうことなく三次元方向に集積 できることから、電子機器を扱う企業で画像 処理、計算処理や制御に用いる多機能高性能 素子の試作や受託生産に適している。 売上額推移(含む開発成功品) H20 年 14.3 百万円 H22 年 14.4 百万円 H24 年 6.0 百万円 H26 年 180.9 百万円 【事業化までの経緯】 (1)当初の想定顧客(市場)と製品及びその理由(市場ニーズ) ・初めは DRAM(コンピュータ用記憶素子)市場を狙い、薄微細貫通配線の開発を目指し た。DRAM は生産規模が大きく、集積度向上の市場要求が大きく、一方で微細化に頼 るだけの大容量化は二次元のままでは構造上で限界が近いと考えていた。 ・事業化成功技術又は製品 開発技術を応用したセンサや SoC(System on Chip : 多機能をまとめた素子)のような 異なるチップを積層する三次元 LSI を事業化した。 言い換えれば DRAM のような単純構造の素子でなく開発技術の微細貫通配線及びマイ クロバンプを使った積層型三次元技術に依らないと製作困難な素子に転換した。 (2)事業化達成の障壁と具体的な打開方法 ①事業化達成の障壁となったもの ・当初ターゲットと考えた DRAM の積層への適用は 1. 露光装置及び周辺技術の進歩により集積度の限界が遠ざかった。 2. 一般に三次元化よりも高集積化の方が安価な製造が可能である。 3. 技術が装置依存になった結果、先行技術開発の有利性が薄れ、DRAM ウェハの大 手製造メーカが生産の主体となった。 等の理由により参入ができなかった。 ・開発技術を必要とする用途が明確でない一方、利用者側も明確な要望を出すところ まで達していなかったので、技術開発を行うと同時に、如何に有望な市場を見い出 して、開拓していくかが課題だった。 ②事業化の為、顧客をどの様に開拓したのか ・先ずは、三次元化することに対する要求の強い素粒子検出器の高性能化を目指す高 エネルギー物理学関係の研究者・研究機関にターゲットを決め、学会やワークショ ップで技術説明をして販路を開拓していった。 ③事業化時の課題と対応(コスト、品質、機能、生産性等) ・まだ機能優先でコスト及び品質に対しての要求は強くないが、この改善は今後の課 題である。 ・積層型三次元 LSI は従来の二次元 LSI に積層プロセス分が付加されるため、ウェハ 状態で積層できるメモリ以外は生産性も悪くコスト的にも問題があるので、安く作 る生産技術を確立することが課題である。 ④事業化に成功した要因 ・高機能の要求があり、かつ伸びている市場として各国で競って進めている高エネル ギー物理の研究施設に参入出来たことが挙げられる。この市場は大手半導体企業が 進出するほどの規模ではないことも幸いした。 ・世界最先端研究への対応が有効と考え、数多くの展示会や学会に出展し、電機業界 の出版物に寄稿して技術を紹介した。これが利用者側の目に留まり他社に先駆けて の受注に結び付いた。 効果が出るまでの数年間は売上への寄与は薄かったが、性能で評判をとってからは 桁違いに伸び、他社を寄せ付けないほどになった。 ⑤採択 10 年目の現在 ・大学内のインキュベーション施設を借用して研究開 発から少量生産まで進めてきた。H27 に公的支援を 受けて大学内施設の外に新工場を建設した ・新工場内に 8 inch(20 cm)/12 inch(30 cm)の製造ラ インを構築した。これは大学と共同で運営している。 【社長のことば】 積層三次元 LSI は日本から生まれた技術であり、これをもって日本の半導体技術が再度 盛り上れるような起爆剤の一部になれればと願っている。 ①サポイン事業が企業経営に果たした効果 サポインの委託費は、設立間もなく資金も潤沢でないスタートアップカンパニーにと って、非常に助かった。特に弊社は IT ハードであり、かつ単一の技術でなく集積化技術 の開発が中心になった。一件当たりの設備費、試作費が高額なため、サポインの様にあ る程度まとまった資金が得られて開発を進めることができた。 基本研究開発と事業化の間に“死の谷”があり、この期間をクリアできるような施策 があると更にありがたい。 ②今後への希望及び展開 この業界は、技術革新が速い。弊社の強みのマイクロバンプ接合 技術を軸にしてより高付加価値の積層型センサの製品化を加速さ せるともに三次元 LSI の低コスト製造技術の実用化を進め、常に先 端を走れるように研究開発は続けていく。更なる技術開発を行い、 新たなテーマでサポイン事業を提案したい。 【参考】 研究開発の成果の概要は以下の HP で公表されている。 「5μmピッチ以下の貫通配線を使った積層 LSI デバイス実装技術」 http://www.smrj.go.jp/keiei/dbps_data/_material_/common/chushou/b_keiei/keieitech/ pdf/miyagi.pdf
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