2016年4月号(PDF/709KB)

み
みず
ずほ
ほ米国経
経済
済情
情報
20016年4月号
号
◆ トピ
ピック
長期停
停滞リスクの下で
で重要性
性を増す為替相場
場の行方
方
推計に
によると米国の実
実質均衡金
金利は実質
質政策金
金利よりも
も
低く、
、米国は長
長期停滞 の淵にあ
ある。そうした中、米国当局
局
はドル
ル高是正を狙い、 日本に矛
矛先を向け
けているよ
ようだ。
◆ 景気
気判断
足元で
では持ち直し。内
内外の下
下振れリスクは残
残存
1~3月
月期は踊り場とな
なった。足元
元では持ち直しの
の動きがみ
み
られる
るが、国内
内では信用
用状況の
の引き締ま
まり、海外
外では新興
興
国経済
済の弱さ等、下振
振れリスク
クは残存し
している。
。
1.トピック:長期停滞リスクの下で重要性を増す為替相場の行方
米国の実質均衡金利は
世界経済が緩慢な成長にとどまる中、経済成長をどのように促進するのか、
サマーズ氏の懸念通り
その具体的な処方箋への関心は極めて高い。欧州中央銀行に続き日本銀行も
に悪化している可能性
マイナス金利政策という新たな領域に踏み込んだが、もし、その経済がサマ
ーズ元米財務長官の指摘する長期停滞に陥っているとすれば、追加緩和その
ものに成長促進の役割を期待するのは難しい。サマーズ氏によれば、
「伝統的
な金融政策では達成できないほど実質均衡金利が低い場合に、経済は長期停
滞に陥る」
(米外交専門誌 Foreign Affairs、2016 年 2 月号)
。政策金利の下
限をx%、インフレ期待をp%とおくと、実質均衡金利が実質政策金利の下
限x-p%よりも低ければ、
「望ましい貯蓄水準が望ましい投資水準を超過す
ることになり、需要不足と低成長を招く」
(同上)ことになる。
新たな推計によれば、2015 年 10~12 月期時点における米国の実質均衡金利
はマイナス 2%に達する(図表 1)
。米国経済は今年 5 月で景気拡張期間が 83
か月になるが、推計結果に従えば「長期停滞の淵をさまよいながらの景気拡
大」と表現することができるだろう。
新たな景気対策には期
実質均衡金利の低下は、ネガティブな需要ショックによって引き起こされ
待できず、長期停滞の処
ており、金融政策に依存しない需要創出が急務であることを示唆している。
方箋は投資促進的な規
これまでサマーズ氏が指摘してきた需要創出策は大きく3 つの分野がある。
制変更や輸出促進に傾
拡張的財政政策、投資促進的な規制変更、そして輸出促進である。財政政策
斜せざるを得ず
はすでに緩やかに拡張していく方向にあるが、景気後退が差し迫るようなこ
とがない限り、新たな景気対策が打ち出される可能性は低いだろう。
規制に関しては、大統領経済諮問委員会(CEA)が企業間競争が低下してい
ることを示唆する報告書を発表し(4 月 14 日)
、競争を通じた成長促進の重要
性を訴えている。クルーグマン・プリンストン大名誉教授も、高水準の企業
収益と低迷する投資活動の併存を説明しうる要因として、競争の欠如(独占
や寡占)を指摘した(4 月 18 日)
。
残る輸出についてみれば、この 1 年、ドル高と資源安によって米国の輸出
は悪化の一途を辿ってきた。当初ドル高と資源安は米国の消費者にとって大
きな恩恵であり、輸出悪化の影響を緩和して余りあると期待されたが、1~3
月期の低成長はその期待が裏切られたことを示している。
こうした中、長らく「強いドル」を標榜してきた米政権が、
「ドル高は許容
できない」という姿勢に転じるとしても無理はない。今月ワシントン DC で開
催された 20 か国財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)は、声明文で「為替市
場に関して緊密に協議する」ことを確認した(図表 2)
。緊密な協議は 2 月の
上海G20 における合意を引き継いだものであり、
ルー財務長官の寄稿
(Foreign
Affairs、2016 年 5・6 月号)からは、中国の為替政策をけん制することが当
初の狙いだったことがうかがえる。
矛先は日本へ
一方、足元ではけん制の矛先が日本に向かっているようだ。ルー財務長官
は、日本の当局が最近の円高進行に懸念を持っていることを知りながら、為
替市場の動向に対する全く異なる見解を表明した(図表 3)
。
1
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
貿易円滑化・貿易執行
米財務省は現在、半期為替報告書の準備を進めている。今回からは、2 月
法により強化される半
24 日に成立した貿易円滑化・貿易執行法( Trade Facilitation and Trade
期為替報告書
Enforcement Act of 2015)によって報告が強化されることになった。具体的
には、為替操作国の認定基準がこれまで以上に詳細になるようだ。
同法によって為替操作国の認定が著しく容易になるとは思えないが、半期
為替報告書への市場の関心はこれまで以上に強まり、そのこと自身が為替相
場を動かし得る点に注意が必要である。
図表 1 米国の実質均衡金利( ∗ )とその変動要因( 及び )
(%)
8
6
4
2
0
∗
▲2
▲4
▲6
1960
70
80
90
∗
2000
10
20
∗
(注)実質均衡金利 は定数 、潜在成長率 と需要ショック を用いて次のように定義:
。
推計モデル・手法、データはほぼ次の論文に準じたが、インフレ率の説明変数の一つとしてインフレ期待を導入した点が異なる。
Laubach ,Thomas and John C. Williams(2003) "Measuring the Natural rate of Interest," Review of Economics and
Statistics, November.
(資料)小野亮(2016)
「米実質均衡金利はマイナス2%」みずほインサイト、4 月 4 日より引用
図表 2 G20 声明文
(為替に関する部分の抜粋)
図表 3 ルー財務長官の記者会見での発言
(日本に関する部分の抜粋)
我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動き
は、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えう
ることを再確認する。我々は、為替市場に関して
緊密に協議する。我々は、通貨の競争的な切り下
げを回避することや競争力のために為替レートを
目標とはしないことを含む、我々の以前の為替相
場のコミットメントを再確認する。
G20 の議論では、日本はすべての政策手段を使って景気
回復を強めることを約束し、金融政策だけでは均衡の
とれた成長が達成できないことに合意してきた。世界
経済が弱い中では、日本は外需よりも内需に目を向け
る必要がある。重要な点は、財政政策が全般的に景気
回復を支えるものであることと、野心的な構造改革が
短期的な成長押し上げを優先することである。為替市
場は秩序を保っており、G7 及び G20 における為替政策
に関するコミットメントに、すべての国が従うことが
重要である。
(注)ルー財務長官は、Foreign Affairs2016 年 5・6 月号への寄稿
「America and the Global Economy」の中で、緊密な協議に
ついて「国際的な金融市場の安定性を脅かすサプライズを避
けるための初めての」コミットメントであると評している。
(資料)財務省資料より引用
(注)この記者会見の前日、日米財務大臣による会談が行われている。
Bloomberg(4 月 15 日)によれば、日本側からは「為替市場におけ
る過度な変動や無秩序な動きは悪影響を与えるものであり、最近の
一方的に偏った動きに強い懸念を有している」ことが伝えられた。
(資料)米財務省資料(2016 年 4 月 15 日)より引用(みずほ総合研究所に
よる仮訳)
2
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
2.概況:踊り場から拡大基調に復する見込みも、下向きリスクは残存
1~3 月期は踊り場。今
米国経済は 1~3 月期に踊り場(ゼロ成長)となった可能性が高い。
後は緩やかな拡大基調
1~3 月期の実質GDP成長率(4/28 公表予定)は、10~12 月期(前期比年
に復する見込みだが、
率+1.4%)から大きく減速したとみられる。理由は 3 つある。年初の株価急
内外の下振れリスクが
落による逆資産効果等を背景とする個人消費の勢い鈍化、幅広い分野におけ
残存
る設備投資の低迷、外需の悪化である。
4~6 月期以降については、緩やかな景気の拡大基調が続くという、これま
でのシナリオに変更はない。急速なドル高や原油安の進行に歯止めがかかる
とともに、輸出産業やエネルギー産業への下押し圧力は緩和していくだろう。
4 月の地区連銀経済報告(ベージュブック)では、前回 3 月に比べてドル高に
関する言及が減少しており、企業のドル高懸念が和らいできた可能性が高い。
また、家計部門では、雇用所得の拡大やマインドの安定が個人消費を支える
とみている。
しかし、内外に下振れリスクがある。国内では米銀の貸出態度の厳格化が
懸念材料である。企業の財務健全性悪化を背景に、企業向け貸出基準は 2015
年 10~12 月期以降、2 四半期連続で厳格化されている。海外では新興国リス
クがある。このほか、英のEU離脱を問う国民投票(6/23)を控えて、金融
市場が不安定化する恐れもある。
製造業は減産
生産活動をみると、エネルギー部門、非エネルギー部門とも減産が続いた。
エネルギー部門の 3 月の生産指数は 2 カ月連続で低下した。原油価格は足
元で底入れしているが、石油・ガスの掘削活動は 7 カ月連続で減少した。ま
た、例年に比べて気温が高く、暖房需要が減少したことも、エネルギー部門
の生産押し下げにつながった。
エネルギーを除く鉱工業生産指数は 2 カ月連続の低下となった(図表 5)
。
IT関連の増産が続く一方、自動車や建設財が全体を押し上げた。
製造業の業況は緩慢な
一方、製造業の業況は改善に向かっている。3 月の製造業ISM指数は 51.8
ペースで改善、非製造
と、6 カ月ぶりに 50 の水準を上回った(図表 6)
。在庫調整が和らぐなか、新
業の業況は持ち直し
規受注と生産に持ち直しの動きがみられる。また、補助項目である輸出受注
指数は 52.0 と、3 カ月ぶりに 50 を上回った。企業のコメントをみると、
「資
本財の売上が安定している」
(金属加工)
、
「新規設備に向けた受注が強い」
(一
般機械)等の報告があった。
しかし、4 月の地区連銀製造業業況指数はまちまちの内容で、ニューヨーク
が一段と上昇する一方、フィラデルフィアはマイナス圏に転じた(後掲図表
18)
。製造業の業況はまだら模様であり、今後の行方に慎重であるべきことを
示唆している。
3 月の非製造業ISM指数は 54.5 と 5 カ月ぶりに上昇した(図表 7)
。事業
活動、新規受注、雇用がそろって改善した。業種別では、2 月に業況悪化を報
告していた小売業が改善に転じた。また、原油価格の持ち直しを背景に、鉱
業が 2014 年 11 月以来の業況改善に転化した。
3
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
図表 4
実質GDP成長率
図表 5
(前期比年率、%)
純輸出
政府支出
在庫投資
8
設備投資
住宅投資
個人消費
3.8
4.6
4.3
3.9
2.1
2.0
0.6
1.4
2
0
▲2
▲4
15/3
▲0.9
3
4
1
79.0
78.0
77.0
76.0
75.0
74.0
73.0
72.0
107
106
105
104
103
102
101
100
GDP
3.0
(%)
(2007=100)
6
4
2
2013
3
4
2014
1
2
3
15/9
4
設備稼働率(総合、右目盛)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
60
58
(資料)連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
製造業ISM指数
新規受注
入荷遅延
生産
図表 7
雇用
在庫
16/3
(年/月)
鉱工業生産(除くエネルギー)
2015
(年/四半期)
図表 6
鉱工業生産と稼働率
総合指数
非製造業ISM指数
64
新規受注
事業活動
62
入荷遅延
総合指数
雇用
60
56
58
54
56
52
54
50
52
48
50
46
48
15/3
15/6
15/9
15/12
15/3
16/3
15/6
15/9
15/12
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
図表 8
景気の全体感を示す主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
成長率
2016/2
2016/3
2016/4
3.9
2.0
1.4
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比年率、%
3.7
2.9
1.7
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
純輸出
寄与度、%Pt
0.2
▲ 0.3
▲ 0.1
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
在庫投資
寄与度、%Pt
0.0
▲ 0.7
▲ 0.2
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比、%
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
0.1
0.2
0.1
▲ 0.2
n.a.
n.a.
製造業ISM指数
DI
52.6
51.0
48.6
49.8
48.4
48.0
48.2
49.5
51.8
n.a.
非製造業ISM指数
DI
56.5
58.2
56.9
53.8
56.6
55.8
53.5
53.4
54.5
n.a.
前期比、%
▲ 0.7
0.4
▲ 0.8
▲ 0.6
▲ 0.6
▲ 0.4
0.5
▲ 0.6
▲ 0.6
n.a.
非エネルギー部門
前期比、%
0.1
0.4
▲ 0.1
0.1
▲ 0.2
▲ 0.1
0.4
▲ 0.2
▲ 0.3
n.a.
鉱工業 設備稼働率
%
76.6
76.6
75.8
75.3
75.7
75.4
75.8
75.3
74.8
n.a.
%
75.5
75.7
75.4
75.3
75.3
75.3
75.5
75.4
75.1
n.a.
月次実質GDP成長率
生産活動
2015/11 2015/12 2016/1
前期比年率、%
実質GDP成長率
国内最終需要
企業業況
16/3
(年/月)
(年/月)
鉱工業生産指数
製造業
(資料)米国商務省、マクロエコノミック・アドバイザーズ、ISM、連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
4
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
3.家計部門:個人消費の拡大ペースが鈍化。住宅は横ばい圏の動き
労働市場が一段と改善する一方、個人消費の勢いは鈍化した。住宅市場は
横ばい圏の動きとなっている。
雇用は堅調
雇用は堅調である。3 月の非農業部門雇用者数が前月差+21.5 万人(2 月同
+24.5 万人)と、2 カ月連続で雇用の着実な回復を示す 20 万人を上回る増加
となった(図表 9)
。業種別にみると、鉱業、製造業の不振が続く一方、建設
業の増加ペースが拡大した。サービス業は底堅い伸びを維持した。
労働需給は改善
労働需給は改善している。失業率(5.0%)
、代替的失業率(9.8%)ともに
前月から 0.1%ポイント上昇した。しかし、労働参加率、就業率ともに上昇し
ており、労働市場が改善方向にあることが示されている。
労働参加率については、2000 年以降、高齢化や若年層における在学期間の
長期化等を背景に一貫して低下傾向が続いてきた。労働参加率は歴史的な低
水準が続いているものの、2015 年 9 月以降をみると、上向きの動きとなって
いる。求人数の増加や緩やかな賃金上昇を受けて、これまで働く意思がなか
った人が労働市場に戻ってきている。
賃金は緩やかに上昇
3 月の時間当たり賃金上昇率(農業を除く民間部門)は前月比+0.3%
(2 月同▲0.1%)とプラスに転化し(図表 10)
、前年比では+2.3%と前月か
ら変わらず、緩やかに上昇した。
小売売上高の勢いは鈍
化
小売売上高の勢いは鈍化した(図表 11)
。3 月の自動車販売台数(Autodata
Corporation)は年率 1,657 万台と減少した。自動車販売台数は高水準ながら
も、昨年末頃にピークアウトしている。また、コア小売売上高(自動車・ガ
ソリン・建材・外食を除く)も小幅な増加にとどまった。ヘルスケアや総合
小売が増加する一方で、衣料品や無店舗販売の減少が足を引っ張った。
消費者マインドは安定
も、慎重さが加わる
消費者マインドは安定しているが、いくらか慎重さが加わった。4 月のミシ
ガン大学消費者信頼感指数(速報値)は高水準が続いているものの、4 カ月連
続で低下した。消費者の景気全般に対する見方がやや慎重化しているようだ。
住宅着工は頭打ち傾向
3 月の住宅着工件数は前月比▲8.8%の年率 108.9 万件と減少した
(図表 12)
。
3 カ月移動平均でみると、着工件数は頭打ち傾向が続いている。戸建て住宅と
集合住宅に分けてみると、戸建て住宅は緩やかな増加基調が続いているが、
昨年好調だった集合住宅は勢いが弱まっている。先行指標である住宅着工許
可件数は同▲7.7%の年率 108.6 万件と減少した。建築業者の景況感を表す住
宅市場指数は高水準だが、伸び悩んでいる。
住宅需要は底堅いが、
3 月の新築住宅販売件数は前月比▲1.5%の年率 51.1 万件となった。地域別
値頃感のある住宅の不
にみると、2 月に大幅に増加していた西部の急減が全体の押し下げに寄与した。
足が抑制要因
一方、3 月の中古住宅販売件数は同+5.1%の年率 533 万件と、大幅に減少し
ていた 2 月から持ち直した。4 月に入っても住宅ローン申請件数が高い水準で
推移していることから、家計の住宅需要は底堅いとみられる。しかし、住宅
価格上昇に伴い値頃感のある住宅が不足していることが、購入の抑制要因と
なっている。
5
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
図表 9
(前月差、万人)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
15/3
雇用統計
図表 10
(%)
7.0
(前月比、%)
6.5
0.4
6.0
0.2
5.5
0.0
5.0
▲ 0.2
0.6
▲ 0.4
4.5
15/9
非農業部門雇用者数
15/3
16/3
(年/月)
15/9
16/3
(年/月)
後方3か月移動平均
失業率(右目盛)
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
図表 11
時間当たり賃金
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
小売売上高
図表 12
住宅着工件数と住宅市場指数
(年率、万件)
130
(前月比、%)
2.0
70
1.5
60
1.0
50
115
0.5
40
0.0
30
▲ 0.5
100
▲ 1.0
15/3
15/9
コア
20
15/4
16/3
(年/月)
(資料)米国商務省、NAHB より、みずほ総合研究所作成
図表 13
家計部門の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
2016/2
2016/3
2016/4
218
223
240
226
280
271
168
245
215
%
5.4
5.2
5.0
4.9
5.0
5.0
4.9
4.9
5.0
n.a.
時間
34.5
34.6
34.5
34.5
34.5
34.5
34.6
34.4
34.4
n.a.
時間当たり賃金
前期比、%
0.6
0.6
0.6
0.6
0.2
0.0
0.5
-0.1
0.3
n.a.
小売売上高
前期比、%
1.5
1.1
0.3
▲ 0.1
0.3
0.3
▲ 0.4
0.0
▲ 0.3
n.a.
前期比、%
0.9
1.1
0.4
0.5
0.5
▲ 0.2
0.3
0.1
0.1
n.a.
台数、百万台
17.1
17.8
17.9
17.2
18.2
17.3
17.6
17.5
16.6
n.a.
1966年Q1=100
94.2
90.7
91.3
91.6
91.3
92.6
92.0
91.7
91.0
89.7
週当たり労働時間
コア小売
新車自動車販売台数
ミシガン大消費者信頼感
n.a.
1985年=100
96.2
98.3
96.0
96.0
92.6
96.3
97.8
94.0
96.2
n.a.
住宅着工件数
年率、千戸
1,158
1,158
1,135
1,133
1,176
1,159
1,117
1,194
1,089
n.a.
住宅着工許可件数
年率、千戸
1,242
1,132
1,216
1,156
1,282
1,204
1,204
1,177
1,086
n.a.
新築住宅販売件数
年率、千戸
497
488
509
n.a.
511
537
521
519
511
n.a.
中古住宅販売件数
年率、千戸
5,280
5,403
5,200
5,290
4,860
5,450
5,470
5,070
5,330
n.a.
DI
57
61
62
59
62
60
61
58
58
58
カンファレンスボード消費者信頼感
住宅市場
2015/11 2015/12 2016/1
前期差、千人
非農業部門雇用者数
失業率
個人消費
16/4
(年/月)
住宅着工件数
住宅市場指数(右目盛)
自動車・建材・ガソリン・外食
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
雇用環境
15/10
NAHB住宅市場指数
(資料)米国労働省、米国商務省、Autodata、ミシガン大、カンファレンスボード、NAR、NAHB よりみずほ総合研究所作成
6
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
4.企業・対外・政府部門:設備投資、輸出は低調
設備投資については、建設投資が概ね横ばいとなり、機械関連投資は低迷
している。
建設投資は概ね横ばい
建設投資(除く住宅)は横ばい圏で推移している。工場建設や電力施設の
建設減少を主因に、2 月は 2 カ月ぶりに減少した(図表 14)
。
機械関連投資は低迷
機械関連投資は低迷している。機械関連の設備投資動向を示す資本財(国
防・航空機を除く資本財)
の 2 月の出荷額は 2 カ月連続で減少した
(図表 15)
。
先行きをみる上で重要な受注額は 2 カ月ぶりに減少し、企業の投資活動が依
然弱いことを示す結果であった。2 月の受注額の減少は、鉱業・石油・ガス機
械と発電機・他のパワートランスミッション機械の減少等が寄与した。他方、
3 月のISM調査では、一般機械産業が新規受注の改善を報告している。3 月
以降、コア資本財受注が持ち直すか注目される。
企業の投資マインドは
安定
企業の設備投資マインドは安定している。4 月の地区連銀・製造業調査によ
る 6 カ月先の設備投資判断DIをみると、ニューヨークは一段と上昇した。
フィラデルフィアは高い水準で推移した。
輸入、輸出ともに増加
2 月の実質輸出入はともに増加したが、輸入の増加幅が輸出を上回った(図
表 16)
。2 月の実質輸入は、資本財が減少する一方、食料品や消費財の増加が
全体を押し上げた。実質輸出については、自動車を除き、幅広い品目が増加
した。3 月の輸出受注指数(製造業ISM指数の補助項目)をみると、3 カ月
ぶりに 50 の水準を超えた。ドル高による輸出への下押し圧力は徐々に和らい
でいくだろう。
連邦財政赤字は前年度
を上回る規模
2016 会計年度上期(2015 年 10~2016 年 3 月)の赤字額は 4,610 億ドルと
なり、
前年度の赤字額
(4,395 億ドル)
を 4.9%上回る規模となった
(図表 17)
。
歳入額は前年比 3.8%増加し、法人税収が減少する一方で、個人所得税収が増
加した。歳出額は前年比 4.2%増加し、社会保障関連支出や利払い費の増加が
目立った。なお、米議会予算局(CBO)によれば、2016 年度の赤字額
(5,340 億ドル)は前年比約 22%増加する見通しとなっている。
7
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
図表 14 非住宅建設投資
図表 15 資本財出荷・新規受注
(年率、億ドル)
(年率、億ドル)
710
4200
4000
690
3800
670
3600
3400
650
15/2
3200
15/2
15/8
15/8
16/2
(年/月)
16/2
(年/月)
非国防資本財新規受注
非国防資本財出荷
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
図表 16 実質財輸出・輸入
(2013年平均=100)
114
112
110
108
106
104
102
100
98
15/2
図表 17 累積連邦財政収支
(億ドル)
0
▲1,000
▲2,000
▲3,000
▲4,000
▲5,000
▲6,000
10
15/8
16/2
(年/月)
輸出
2
4
6
8
(月)
2015年度
輸入
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
12
2016年度
(資料)米国財務省より、みずほ総合研究所作成
図表 18 企業・対外・政府部門の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
企業業況
設備投資
輸出入
ニューヨーク(NY)連銀 現状判断
0.2
▲ 8.2
フィラデルフィア(PHL)連銀 現状判断
9.0
0.2
▲ 7.3
2.0
2015/11 2015/12 2016/1
▲ 10.1
2016/2
▲ 6.2 ▲ 19.4 ▲ 16.6
▲ 5.7 ▲ 10.2
▲ 3.5
▲ 2.8
2016/3
2016/4
0.6
9.6
12.4
▲ 1.6
コア資本財 受注金額
前期比、%
▲ 1.4
1.9
▲ 1.4
n.a.
▲ 0.9
▲ 3.5
3.3
▲ 2.5
n.a.
n.a.
コア資本財 出荷金額
前期比、%
0.1
0.6
▲ 1.3
n.a.
▲ 1.2
0.6
▲ 1.4
▲ 1.7
n.a.
n.a.
非住宅建設支出
前期比、%
9.3
0.5
▲ 0.1
n.a.
▲ 0.9
▲ 1.9
2.7
▲ 1.3
n.a.
n.a.
NY連銀 6か月先設備投資判断
17.2
16.6
13.7
14.6
12.7
16.2
15.0
12.9
15.8
22.1
PHL連銀 6か月先設備投資判断
14.1
17.5
14.0
8.4
24.6
10.7
9.4
2.5
13.3
12.7
貿易収支
10億ドル
n.a.
▲ 44
▲ 45
▲ 46
▲ 47
n.a.
n.a.
輸出
10億ドル
562
555
544
n.a.
181
180
176
178
n.a.
n.a.
▲ 133 ▲ 139 ▲ 134
10億ドル
695
694
678
n.a.
224
225
222
225
n.a.
n.a.
実質財輸出
2013年=100
103
104
102
n.a.
102
102
100
102
n.a.
n.a.
実質財輸入
2013年=100
109
110
109
n.a.
108
109
108
111
n.a.
n.a.
123 ▲ 123 ▲ 216 ▲ 245
▲ 65
▲ 14
輸入
財政
▲ 9.2 ▲ 11.8
55 ▲ 193 ▲ 108
n.a.
財政収支
10億ドル
歳入
10億ドル
1,027
802
766
711
205
350
314
169
228
n.a.
歳出
10億ドル
904
925
981
956
270
364
258
362
336
n.a.
(資料)ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、米国商務省、米国財務省よりみずほ総合研究所作成
8
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
5.物価動向:コアPCEデフレーターは上昇傾向が継続
輸入物価は下落率が縮
小
3 月の輸入物価指数は前年比▲6.2%(2 月同▲6.5%)と、下落率が小幅に
縮小した(図表 19)
。急速なドル高や原油安の進行に歯止めがかかり、前年比
ベースでみた輸入物価に対する低下圧力が弱まった。最終財(自動車、消費
財、資本財)の下落率は前月から変わらなかった。
国内企業部門の物価は
ゼロ近傍
3 月の最終需要・生産者物価指数(PPI)は前年比▲0.1%(2 月同
0.0%)と、小幅に低下した(図表 20)
。エネルギーを含む財物価の上昇率は
マイナス幅が小幅に縮小する一方で(2 月同▲2.7%→3 月同▲2.6%)
、サー
ビス物価の上昇率は、毎月の変動が大きい卸売業者や小売業者等のマージン
(利鞘)が低下したことを主因に減速した(2 月同+1.5%→3 月同+1.2%)
。
PCEデフレーターは
リテール部門では、昨年後半からのインフレ率の上昇傾向が続いている。
上昇傾向が継続
2 月の個人消費支出(PCE)デフレーター上昇率は前年比+1.0%(前月
同+1.2%)と減速する一方、コアPCEデフレーター(食品・エネルギーを
除く)上昇率は同+1.7%と前月から変わらなかった(図表 21)
。財物価の上
昇率は家具や娯楽用耐久財を主因にマイナス幅が拡大したが、サービス物価
の上昇率は前月と同率であった。コアの 3 カ月前比年率上昇率をみると、2
月は同+2.0%と、昨年秋頃を底に加速している。基調的な物価上昇率も高ま
っている。過去 1 年を振り返ると、ダラス連銀刈込平均PCEデフレーター
上昇率は同+1.6%から同+1.7%の狭いレンジで推移していた。3 月は同
+1.8%と 2 月から鈍化したが、過去のレンジを上抜けする形となっている。
3 月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比+0.9%(2 月同+1.0%)
、
コアCPI上昇率は同+2.2%(1 月同+2.3%)といずれも鈍化した。衣料品
の値下がり等が下押し要因となった。コアCPIの 3 カ月前比年率上昇率を
みると、+2.6%と前月(+3.0%)から勢いを弱めた。クリーブランド連銀
の刈込平均CPI上昇率は前年比+2.0%と前月から変わらなかった。
市場ベースのインフレ
期待は持ち直し
市場取引ベースのインフレ期待は低い状態にあるが、3 月に続き、4 月も持
ち直した(図表 22)
。サーベイ調査に基づくインフレ期待は再び低下した。
以上
9
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
図表 19
輸入物価
(前年比、%)
5
図表 20
(前年比、%)
0.5
(前年比、%)
0.0
2.0
▲ 0.5
1.0
▲ 1.0
0.0
▲ 1.5
▲1.0
▲ 2.0
16/3
(年/月)
▲2.0
0
3.0
▲5
▲ 10
▲ 15
15/3
15/9
輸入物価
図表 21
15/3
15/9
16/3
(年/月)
総合
うち最終財(右目盛)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
最終需要PPI
コア
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
PCEデフレーター
図表 22
(前年比、%)
2.0
期待インフレ率
(%)
2.8
1.5
2.3
1.0
1.8
0.5
1.3
0.0
15/3
15/9
総合
15/4
16/3
(年/月)
15/10
ミシガン大 期待インフレ率(5~10年先) (年/月)
BEI(5年先5年)
コア
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
(資料)ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
図表 23
物価の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
輸入物価
輸入物価指数
最終財
生産者物価
消費者物価
▲ 10.0 ▲ 11.2
2015/11 2015/12 2016/1
2016/2
2016/3
2016/4
▲ 9.5
n.a.
▲ 9.5
▲ 8.3
▲ 6.5
▲ 6.5
▲ 6.2
n.a.
n.a.
▲ 1.6
▲ 1.7
▲ 1.3
▲ 1.1
▲ 1.1
n.a.
前年比、%
▲ 1.4
▲ 1.6
▲ 1.6
最終需要 生産者物価指数
前年比、%
▲ 0.8
▲ 0.9
▲ 1.2
n.a.
▲ 1.3
▲ 1.0
▲ 0.2
0.0
▲ 0.1
n.a.
コア生産者物価指数
前年比、%
1.0
0.7
0.2
n.a.
0.3
0.3
0.6
1.2
1.0
n.a.
消費者物価指数
前年比、%
▲ 0.0
0.1
0.5
n.a.
0.5
0.7
1.4
1.0
0.9
n.a.
コア消費者物価指数
前年比、%
1.8
1.8
2.0
n.a.
2.0
2.1
2.2
2.3
2.2
n.a.
PCEデフレーター
前年比、%
0.3
0.3
0.5
n.a.
0.5
0.7
1.2
1.0
n.a.
n.a.
前期比、%
0.5
0.3
0.1
n.a.
0.1
▲ 0.1
0.1
▲ 0.1
n.a.
n.a.
前年比、%
1.3
1.3
1.4
n.a.
1.4
1.4
1.7
1.7
n.a.
n.a.
前期比、%
0.5
0.3
0.3
n.a.
0.1
0.1
0.3
0.1
n.a.
n.a.
前年比、%
1.7
1.7
1.7
n.a.
1.7
1.7
1.9
1.8
n.a.
n.a.
%
2.7
2.7
2.6
2.6
2.6
2.6
2.7
2.5
2.7
2.5
期末値、%
2.0
1.9
1.8
1.5
1.8
1.7
1.6
1.4
1.6
1.6
コアPCEデフレーター
刈込平均 PCEデフレーター
インフレ期待
前年比、%
16/4
ミシガン大 期待インフレ率
BEI(5年先5年)
(資料)米国商務省、米国労働省、ダラス連銀、ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
10
みずほ米国経済情報(2016 年 4 月号)
2016年 4月 2 6 日
発行
欧米調査部主席エコノミスト 小野 亮
03-3591-1219 makoto. ono@mizuh o-ri.co.j p
欧米調査部主任エコノミスト 風間 春香
03-3591-1418 haruka. kazama@mi zuho-ri.c o.jp
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