「園芸品目プラスワン」戦略着々

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「園芸品目プラスワン」戦略着々
細田勝二
富山県JAみな穂 代表理事組合長
米を基軸に「園芸品目プラスワン」戦略で農業振興を目
指すとともに、高校も加えた「農商校」連携による6 次
産業化の商品開発にも積極的に取り組んでいます。
◆
「農商校」連携で所得向上
プラスワン」戦略を打ち出し、可能なものに
――農家の所得向上に向けて、どのような取
は、何でも取り組むようにしています。白ネギ
り組みをしていますか。
やサトイモ、モモ、ネギ、バレイショ、ニラ、
日本海に面した富山県は、冬季は積雪が多
さらにブルーベリー、プチヴェール、ニンニ
く、米の単作地帯です。夏場は関西向けの野
クから、実バラ、薬用シャクヤク、ショウガ、
菜も作っていましたが、市場が遠いことが難
エゴマ、ウコンなどの多くの品目があります。
点でした。特産の「入善ジャンボ西瓜」は、生
そして付加価値をつける6 次産業化を「農
産者が高齢化しているものの、何とか生産量
商校」連携として進めています。
「校」は高校
を維持していきたいと考えています。同じく
のことです。地元の入善高校農業科の生徒が
特産のチューリップ球根はオランダ等の輸入
トウガラシ「げきから」の苗を作り、JAの
品に押され、栽培面積は減少傾向にあります。
青壮年部が耕作放棄地を利用して栽培し、
このような状況で農家の収入を増やすに
商工会青年部がご当地ラーメン「入善レッド
は、園芸作目の導入が必要と考え、
「園芸品目
ラーメン」として販売するという、4 者の連携
プロジェクトです。
このほかにも、さまざまな形で加工による
高付加価値化に挑戦しています。サトイモと
モモを「1億円産地づくり支援事業」の対象と
して推進しています。サトイモは栽培技術を
統一し、品質、収量を高めるとともに女性農
業者グループ「百笑一喜」が農産物直売所「あ
いさい広場」で里芋コロッケを作って周年販
JAみな穂本店
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月刊 JA
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売しています。これが好評で、規格外品の商
ほそだ・かつじ
昭和40年富山県下新川郡の飯野農
協入組、同44年合併で入善町農協
へ。平成15年JA入善町常務理事、
同18年JAみな穂常務理事、同21
年代表理事組合長、同26年全農富
山県本部運営委員会会長に就任し、
現在に至る。
撮影・JAみな穂総務企画部総務人事課 寺崎 泰
品化につながっています。さらに「幻の黒豆」
作として換算できるので、米作りの経験と機
と言われるダイズ「黒千石」を使った黒豆茶、
械や設備を持つ農家には、受け入れやすい品
「ベニアズマ」の焼酎「みな穂の雫」
、ウコン
目です。
「入善米」のブランドでシンガポール
の加工品、ラー油、ナタネ油などもあります。
やオーストラリア、EU など、主に現地の日本
思いついたら何でもやってみることが大事
人向けに約20か国に輸出しています。昨年の
で、営農指導員や青年部、女性グループに挑
輸出実績は380tで、今年は430tの計画です。
戦を呼びかけています。
――将来は、どのような経営体を中心にと、
◆米の規模拡大と低コスト化
お考えですか。
――早くから米輸出に取り組んでいますね。
農業の担い手は、集落の実情に応じて変わ
管内の水田は黒部川の扇状地にあり、ほぼ
ると思います。JAとして集落営農の組織化
ほ じょう
平坦で100%圃 場 整備が完了しています。加
を進めるとともに、経営感覚に優れ、情勢の
えて農家は米作りのプロです。この条件を生
変化に的確に対応できる担い手の育成を支援
かし、米とダイズ、麦、新規需要米などで土
していきます。その中で引き続き経営規模の
地利用型農業を基本にしていく方針です。
拡大とコスト削減等による、経営の安定化を
米の輸出は 8 年目になります。輸出米は転
目指します。またJAは土地持ち非農家が担
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JAトップインタビュー JAみな穂
15~25kgにまで育つ「入善ジャンボ西瓜」
入善高校農業科生徒のトウガラシ栽培
い手農業者を応援する形で両者を調整し、地
粉パンの日」があります。
域づくりにつなげていく方針です。
直売所「あいさい広場」は農産物の販売だ
農業には自然環境を守り、多面的機能を維
けでなく、JAの地域活動の拠点として、お
持する大事な役割があります。いま経営の大
盆市や歳の市、里芋祭等のイベントを開き、
小を問わず、40歳以下の若い農業者の離農が
地産地消の推進や安全・安心な食材の提供を
目につきます。山林の所有と同じで、後継ぎ
進めています。最近、特に子育て中の女性を
でありながら、自分の土地への関心が低くなっ
中心に食に対する安全・安心についての関心
ているのではないかと心配しています。
が高く、直売所の人気が高まっています。地
一方、JAと行政が連携して運営している
産地消の観点から直売所ではどのようなこと
農業公社では農地の集積を進め、いま71%に
があっても卸売市場からの品物は扱いません。
達しています。また、担い手の支援について
どうしても必要なものは協同組合間提携によっ
も今後、取り組みが必要だと考えています。
て他のJAから仕入れています。
100ha 規模の経営体も 3 つ、4 つ生まれて
牛肉も、地元で育った牛で月1回「肉の日」
いますが、担い手農業者が販売、購買でJA
を設け、豚肉も地元の「黒部名水ポーク」の
の事業を利用しなくなるということはありませ
みの扱いです。少々割高ですが、新鮮さが分
ん。これまでのJAの取り組みが評価され、
かるからでしょう、よく売れています。もちろ
信頼されているのだと自負していますが、だ
ん安全・安心のためのトレーサビリティーは
からこそJAは生産活動を通じて、そうした組
徹底して行っています。
合員とつながりを一層強めなければなりませ
このほか直売所ではJA青壮年部による
「そばの日」
、女性グループによる「カレーラ
ん。
イスの日」などのイベントがあり、毎週月曜日
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◆直売所を拠点に地産地消
の500円のカレーを楽しみにしているお客さん
――地産地消に、直売所はどのような役割を
も少なくありません。また買物弱者対応につ
果たしていますか。
いても直売所を拠点に「あいさい便」を運営
地産地消のひとつは学校給食です。県内で
し、食料品や日用品の注文配送を取り扱って
も先駆けて100%地元の米を使っています。
います。
また、月に1回、女性加工グループが作る「米
青壮年部や女性部は部員が減り、活動が低
月刊 JA
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女性グループの里芋コロッケ(あいさい広場)
下してきているので、加工やイベントで元気
――自己改革へは、どのように対応していけ
を取り戻せればと願い、JAでは加工の研究、
ばよいでしょうか。
新商品の開発のための機械・設備の整備など
JAが総合事業を営んでいるから地域の生
に可能な限り援助していくつもりです。
活インフラを守っていけるのです。生活の向
JAトップインタビュー JAみな穂
6 次産業化で開発した商品の数々
上は協同組合の本来の理念です。利益を目的
◆支店を統合し、出向く体制に
とする一般の株式会社との違いはそこです。
――職員や組合員向けには、どのような学習
また、JAの事業から信用・共済事業を切
活動を進めていますか。
り離すと生産指導や販売サービス、生活活動
協同組合運動の理念を徹底する必要がある
の支援ができなくなります。地域の人や准組
と思っています。職員も組合員も、生まれた
合員がJAを利用し、パートナーとして力を
ときには農協があり、われわれや先代たちが、
発揮しているから、地域の営農と生活が守れ
自分たちの営農と生活を守るためにつくった
るのです。国には、このことをしっかり認識
農協を企業と同じようにしか見ない人も少な
していただきたいと思います。
くないようです。研修の座学で知識を詰め込
(写真は全てJAみな穂提供)
むのもいいのですが、仕事を通じて職員教育
をすることが大事だと思っています。
「事業は人なり」です。JAみな穂は支店統合
で11支店を 4 支店に統合しました。その狙い
◎JAみな穂の概況
は、組合員が訪れるのを支店で待つのではな
平成18年、富山県下新川郡のJA入善町とJAあさひ野
が合併して誕生した。
く、情報が氾濫し、組合員は忙しく、積極的
富山県
にJAが組合員に提案することが必要と考え、
出向く体制を構築することにあります。渉外
担当には月に1回以上は組合員の自宅に伺い、
相談事はないかと聞くようにしています。
そうした姿勢で誠心誠意を持って対応する
こと、これが組合員とJAの絆を強めることに
つながると考えています。
JAみな穂
▽組合員数
9,596人
(うち正組合員5,662人)
▽貯金残高
904億6,100万円
▽長期共済保有契約高
2,997億6,600万円
▽購買品供給高
38億5,000万円
▽販売品販売高
39億2,800万円
▽職員数
197人
(平成27年度末)
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