情 報 科 学 研 究 科の特 色 個性を重視した入試制度で門戸を広く開放 入学試験では筆記試験は実施しません。卒業年次や出身専攻分野にとらわれず、積極的に勉学と研究に取り組む意欲を、面接試験 と出願時に提出された小論文・成績証明書で判断。入学時期は、春学期(4月)と秋学期(10月)の年2回。文科系・理科系は不問で、 社会で活躍中の研究者や技術者も受験できるように、選抜は年3回実施。大学に3年以上在学する優秀な成績の学生のための飛び入 学制度もあり。 優秀な学生への豊富な支援プログラム 短期修了制度:優れた研究業績を修めた者は、前期課程は1年以上、後期課程は前期課程と併せて3年以上の在籍で修了可(平成28 年3月現在の実績:前期課程174名、後期課程267名)。 TA(ティーチングアシスタント)制度:前期課程2年次以上の学生を対象に、講義資料の収集・整理・作成補助、レポートの採点補助 など大学院教育の一部作業に参加させて経済的自立を支援。 RA(リサーチアシスタント)制度:優秀な後期課程学生を研究プロジェクトの研究補助者として雇用。 国際交流活動支援制度:広く海外の研究機関との間で学術交流協定を結び(実績:77校)、教員や学生の交流活動を支援。学生の国 際研究集会での発表も経費支援(平成26年度実績(延べ) :157名)。 オープンで活気に満ちた多彩な教授陣 大学や研究所において精力的に先端的研究の実績をあげた若手研究者を教員として積極的に採用し、その若さを基盤に活力ある研 究科を形成。なお、専任教授は半数以上が大学以外の研究所に在職経験をもち、ほとんどが海外の大学での研究教育に従事した経験 を保有。 情報科学に関する広範囲の分野を網羅した多様な研究室構成 本研究科は、平成23年度より専攻再編され、コンピュータ科学、メディア情報学、システム情報学の3領域20基幹研究室、3協力研 究室で構成。広範囲な研究領域をカバー。 配属研究室は学生が選択 学生の希望調査をもとにして所属する研究室を決定。受入人数は研究室によって均等にするのではなく、学生の希望を最優先して、 殆どの学生を第一希望の研究室に配属。 柔軟で充実したカリキュラムの集中履修 講義は1年を4期に分割し集中的な履修が可能。多様な分野からの入学者に対応できるように「基礎科目」 「基礎となる専門科目」 「先 端的な専門科目」 「学際科目」などの幅広い講義科目を準備し、広範な分野を体系化するため「コンピュータ科学」 「メディア情報学」 「シ ステム情報学」および「共通」に分類して選択の指針を提示。なお、これらのカリキュラムは、経済産業省の大学活動評価手法で最高ラ ンクのA+評価(全国288専攻中上位5%以内)で、社会のニーズに合致した教育であることが証明済。 目 次 研究科の概要 研究室及び教育研究分野 教育及び研究指導方針 1 GraduateSchoolofInformationScienceGuidebook2016 1 3 8 研究室での教育・研究の概要 <コンピュータ科学領域> コンピューティング・アーキテクチャ 13 ディペンダブルシステム学 14 ユビキタスコンピューティングシステム 15 モバイルコンピューティング 16 ソフトウェア工学 17 ソフトウェア設計学 18 インターネット工学 19 (協力)情報基盤システム学 20 <メディア情報学領域> 自然言語処理学 21 知能コミュニケーション 22 ネットワークシステム学 23 視覚情報メディア 24 インタラクティブメディア設計学 25 光メディアインタフェース 26 環境知能学 27 (協力)ソーシャル・コンピューティング 28 実践力重視の人材育成プログラムを複数提供 SecCap:セキュリティ分野における情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業 情報技術を活用して社会の具体的な課題を解決できる人材を育成するため、複数の大学と産業界による全国的なネットワー クを形成し、情報セキュリティにおける実際の課題に基づく課題解決型学習等の実践的な教育を実施・普及することを目的とし た人材育成事業。暗号理論からネットワークセキュリティ、リスクマネジメントなどを学び、その実践としていくつかの演習プログ ラムを提供。 IT-Triadic(IT3) :サイバーメディア社会におけるマルチスペシャリスト育成プログラム ソフトウェア、セキュリティ、ロボティクス、三分野のスペシャリストを育成すると同時に、これらの技術を複合的に修得した統 合型人材(マルチスペシャリスト)を育成。 □マルチスペシャリスト育成(Triadicコース) :複数の先端IT技 □高度ソフトウェア技術者育成(Spiralコース) :大阪大学で主 術を統合することによって成立する製品の企画・設計や開発プ 催されるクラウドコンピューティング分野における情報技術人材 ロジェクトを先導できる優れた人材を育成。先端複合演習と基 育成のための実践教育ネットワーク形成事業(Cloud Spiral) 礎および専門科目群によるカリキュラムを履修者に合わせて柔 と連携して、クラウドに強いマルチスペシャリストを育成。 軟に設計することで、上記三分野の技術を複合的に修得。 □情報セキュリティ技術者・管理者育成(Keysコース) :情報セ □次世代ロボティクス技術者育成(RTコース) :関西圏RT(ロ キュリティ分野の人材育成ネットワーク事業(SecCap)と連携 ボットテクノロジー)分野をリードする各機関・企業の英知を して、セキュリティに強いマルチスペシャリストを育成。 結集して開発された社会連携型のProject Based Learning (PBL)を主体とした実践的教育カリキュラムを提供。実践的な 開発力はもちろん、プロジェクトの提案力や評価力も身につけた 次世代のロボティクス研究・開発者を育成。 Geiot:IoT(モノのインターネット)分野におけるグローバルアントレプレナー育成プログラム 文部科学省グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)の一つとして、モノのインターネット分野を対象と したアントレプレナー(起業家)を育成。イノベーションにつながるアイデアの創出から、実際の起業に向けたビジネスプランの構 築までの一連のプロセスを実習形式で習得。海外でのビジネスチャレンジワークショップへの参加も発展課題として提供。 最先端の「曼陀羅」情報環境を完備 曼陀羅ネットワークと曼陀羅システム:本学における統合情報処理環境「曼陀羅」は、基幹ネットワークに40Gビット/秒のネットワーク スイッチを採用した高速かつ障害に強いネットワーク。国内外の学術研究ネットワークとの高速な接続の実現で、広域ネットワークにお けるさまざまなサービスが利用可能。1人1台の高性能ワークステーションと高機能サーバ群を配置。 電子図書館とディジタルアーカイブ:最新の「曼陀羅」と融合することにより、自分の席で24時間閲覧可能なディジタルアーカイブ環境 を実現。講演ビデオの動画情報も閲覧可。 <システム情報学領域> ロボティクス 知能システム制御 大規模システム管理 数理情報学 生体医用画像 計算システムズ生物学 (協力)ロボットビジョン 29 30 31 32 33 34 35 <教育連携研究室> コミュニケーション学 計算神経科学 ヒューマンウェア工学 シンビオティックシステム マルチメディア移動通信 光センシング 生体分子情報学 デジタルヒューマン学 36 37 38 39 40 41 42 43 放射線機器学 44 セキュアソフトウェアシステム 45 ネットワーク統合運用 46 超高信頼ソフトウェアシステム検証学 47 ヒューマン・インタフェース 48 研究設備 教員索引 49 60 GraduateSchoolofInformationScienceGuidebook2016 2 研究室及 び 教 育 研 究 分 野 コンピュータ科学領域 Computer Science コンピュータ本体及び情報ネットワークに関する技術領域についての研究・教育を行っています。 研究室及び教員 教育研究分野 コンピューティング・アーキテクチャ 超小型・低消費電力・高性能なコンピュータシステムを開発できる次世代技術者を育成する。アプリ ケーション、ライブラリ、コンパイラ、プロセッサ、アクセラレータ、FPGA、無線通信回路、アナログ回 路などの様々な階層・視点から、 次世代の高効率なコンピュータ実現に必要な基盤技術を追求する。 教 授 助 教 助 教 中 島 康 彦 高 前 田 伸 也 (山 崎) Tran Thi Hong ディペンダブルシステム学 教 授 准 教 授 助 教 助 教 井 大 米 大 上 美 智 下 福 田 友 和 勇 子 仁 和 太 ユビキタスコンピューティングシステム 基 教 授 准 教 授 助 教 助 教 安 荒 諏 藤 本 慶 川 訪 博 本 ま な 一 豊 彦 と 幹 モバイルコンピューティング 研 教 授 准 教 授 准 教 授 助 教 助 教 伊 藤 実 楫 勇 一 柴 田 直 樹 Juntao Gao 川 上 朋 也 ソフトウェア工学 究 教 授 助 教 助 教 松 本 健 一 伊 原 彰 紀 畑 秀 明 室 ソフトウェア設計学 教 授 准 教 授 ☆准 教 授 ☆准 教 授 助 教 助 教 飯 市 高 吉 渡 崔 田 川 井 田 場 昊 利 則 康 恩 元 平 憲 裕 弘 瀞 インターネット工学 教 授 准 教 授 特 任 准 教 授 特 任 准 教 授 助 教 助 教 山 口 英 門 林 雄 基 奥 田 剛 櫨 山 寛 章 樫 原 茂 Doudou Fall (協力)情報基盤システム学 教 授 ☆教 授 助 教 助 教 藤 猪 垣 油 川 俣 内 谷 和 敦 正 3 Graduate School of Information Science Guide book 2016 利 夫 年 曉 頁 [キーワード] IoT向け小型・低消費電力コンピュータアーキテクチャ、CGRA型計算アクセラレータ、Light-Field画 像処理アクセラレータ、機械学習アクセラレータ、超低消費電力802.11ah無線通信回路、FPGA、高 位合成コンパイラ、ハードウェア設計フレームワーク、メモリインテンシブコンピューティング、GPU/メ ニコアモデリング、新素材フィルムコンピュータ、アナログニューラルネットワークコンピュータ P.13 誰もが信頼して利用できるディペンダブルなシステムのために、 アルゴリズムに関する理論的研究から VLSIのディペンダビリティに関する実用的研究まで多角的にディペンダビリティの研究・教育を行う。 [キーワード] アルゴリズム:分散アルゴリズム、共有メモリ分散システム、自己安定アルゴリズム、モバイルエージェ ントアルゴリズム、マルチコア・GPGPU向け並列アルゴリズム システム・VLSI:高信頼デザイン、テスト容易化設計、テストスケジューリング、低電力テスト、高品質 テスト、組込自己テスト、劣化検知テストアーキテクチャ、データマイニングによるテスト最適化 P.14 あらゆる場所に情報技術が溶け込んだユビキタスコンピューティング社会の実現を目標に、様々 な要素技術に関する基礎研究から、それらを用いた実システムの構築に至るまで、理論と実践の 両面から教育・研究を行う。 [キーワード] スマートホーム(見守り・省エネ)、情報家電連携システム(HEMS)、コンテキストアウェアシステム(コ ンシェルジュ)、健康支援システム(e-helth・ウェアラブル)、ユーザ参加型センシング(行動変容・ゲー ミフィケーション)、サイバーフィジカルシステム(CPS)、高度交通システム(ITS、カーシェア)、災害 時通信システム(DTN)、社会情報システム(ソーシャルセンシング・ビッグデータ分析)、コンテキスト 推定(位置推定・行動認識)、モノのセンサ化(IoT)、分散処理システム 高度交通システム(ITS)、モバイル通信、ナビゲーション、分散システム、センサネットワークなど の分野において、問題の発見、対象問題のモデル化、問題解決のためのアルゴリズムの設計・評価 およびアプリケーションソフトウェアの設計・開発を目標とした研究・教育を行う。 [キーワード] 高度交通システム(ITS) 、モバイルコンピューティング、センサーネットワーク、プロトコルの統計的解 析、P2P型配信システム、地理情報システム、コンテキストアウェアサービス、分散並列コンピューティ ング、クラウドコンピューティング、暗号プロトコル、GPGPU向けアルゴリズム、通信路符号とその応用 P.15 P.16 ソフトウェアの開発・利用・管理・教育を支援する技術について、理論面での議論と共に技術の有 用性を確かめる実証実験の両面から研究・教育を行う。 [キーワード] ソフトウェア品質評価、ソフトウェアリポジトリマイニング、グローバルソフトウェア開発支援、協調ソフ トウェア開発支援、オープンソースソフトウェア、ソフトウェアレビュー・テスト支援、ソフトウェア電子 透かし・難読化、生体情報を用いた開発者の行動解析、マルチエージェントシミュレーション、ソフト ウェアアナリティクス、ソフトウェア可視化・実体化、ゲーム理論、ソフトウェア言語処理 P.17 大規模で複雑なソフトウェア・インフラストラクチャやソフトウェア・インテンシブ・システム、クラウド システムの設計・開発に必要とされる基盤技術や、設計法・開発管理手法について研究・教育を行う。 [キーワード] ソフトウェア・プロセス、ソフトウェア解析、コードクローン、リファクタリング、クラウド基盤システム、 仮想計算機、仮想ネットワーク、開発支援環境、プロジェクト管理、ソフトウェア開発の見える化、ソフ トウェア・ユーザビリティ、ソフトウェア教育、超上流分析、ソフトウェアの安全性・信頼性保証(アシュ アランス)、ソフトウェアリスク分析手法、オープンソースプロジェクトのソーシャルネットワーク解析 P.18 社会インフラの一翼を担うインターネットを高度化していくための基礎的な技術開発と、社会に対 する積極的な技術移転を目指す研究・教育を行う。 [キーワード] 次世代インターネット、ネットワークセキュリティ、サイバーセキュリティ、認証技術、デジタル著作権 管理、オペレーティングシステム、仮想マシン、クラウドコンピューティング、クラウドセキュリティ、ネッ トワークエミュレーション、オーバレイネットワーク、モバイルアドホックネットワーク、ワイヤレスネット ワーク、センサネットワーク、Delay Torelant Network、衛星ネットワーク、位置情報サービス P.19 インフラストラクチャとしてのインターネットを支える基盤技術や運用技術からインターネットを 利用したさまざまなサービス技術といった情報基盤に関連する研究・教育を行う。 [キーワード] コンピュータネットワーク運用管理、モバイルコンピューティング、P2Pネットワーク、Delay Torelant Network、センサネットワーク、クラウドコンピューティング、仮想化技術、暗号実装、ネットワークセ キュリティ、マルウェア解析、電子図書館システム技術、4K/8K映像ストリーミング、IPv6サイトマルチ ホーミング、ネットワーク設定自動化 P.20 注) ☆印:客員 メディア情報学領域 Media Informatics コンピュータと人間のインタラクション及びメディアに関する技術領域についての研究・教育を行っています。 研究室及び教員 教育研究分野 自然言語処理学 教 授 准 教 授 助 教 助 教 松 新 進 能 本 保 藤 地 裕 裕 治 仁 之 宏 知能コミュニケーション 教 授 ☆教 授 特 任 准 教 授 助 教 助 教 特 任 助 教 特 任 助 教 中 村 哲 戸 田 智 基 鈴 木 優 Sakriani Sakti Graham Neubig 吉 野 幸 一 郎 田 中 宏 季 基 ネットワークシステム学 幹 教 授 准 教 授 助 教 助 教 岡 田 実 東 野 武 史 侯 亜 飛 Duong Quang Thang 視覚情報メディア 研 教 授 准 教 授 助 教 助 教 横 佐 河 中 矢 藤 合 島 直 智 紀 悠 和 和 彦 太 究 インタラクティブメディア設計学 室 教 授 准 教 授 助 教 加 藤 博 一 Christian Sandor 武 富 貴 史 光メディアインタフェース 教 授 准 教 授 助 教 向 川 康 博 舩 冨 卓 哉 久 保 尋 之 環境知能学 ☆教 授 萩 准 教 授 浮 准 教 授 神 田 田 原 紀 宗 誠 博 伯 之 (協力) ソーシャル・コンピューティング 特 任 准 教 授 荒 牧 英 治 人間の知能の本質である自然言語の計算機による解析と理解を中心的なテーマとし、言語の 構造の解明と定式化、また、その応用及び関連の研究・教育を行う。 [キーワード] 言語解析、言語知識獲得、機械学習、テキストマイニング、言語の意味解析、言語資源データベース、 リンク解析、探索、文書からの情報抽出/知識獲得、機械翻訳、言語学習・言語教育支援、多言語情 報処理 P.21 多言語コミュニケーション、対話システム、コミュニケーションQoL技術などの人間のコミュニ ケーション・知識を支援する知能コミュニケーション基盤技術に関する研究・教育を行う。ま た、2014年度から全学多元ビッグデータ解析プロジェクトを統括。 [キーワード] 多言語音声翻訳、同時音声翻訳、言語コミュニケーション支援、対話システム、音声言語認識・理解、 話し言葉自然言語処理、音声変換・生成、人間の音声言語個人性モデリング、脳信号解析(Affective Computing)、概念学習、QoL(Quality of Life)、及び、音メディア全般に関する情報処理システム に関する研究・教育を行う。2014年度から情報、バイオ、物質情報に関するデータサイエンス、Web 複合メディア自動分析、マルチメディアデータマイニング、および、産業界のデータ分析を行う多元ビッ グデータアナリティクスプロジェクトを統括 センシング、ワイヤレス通信、ワイヤレス電力伝送、電波エージェントといったワイヤレスネット ワークの基盤技術の実現と、これらの基礎となる信号処理理論や通信理論に関する研究・教 育を行う。 [キーワード] 信号処理、変復調方式、無線通信、移動通信、デジタル放送、衛星通信、光ファイバ無線通信、無線 電力伝送、高信頼制御通信、電力線通信、モバイルマルチメディア、多元接続技術、OFDM、センサネッ トワーク、無線LAN、MIMO、ディジタル回路設計、ソフトウェア無線 P.22 P.23 コンピュータやロボットが外界を視る技術とコンピュータ内部の多様な情報を人間に効果的に 見せる技術を中心に、視覚情報処理全般についての研究・教育を行う。 [キーワード] コンピュータビジョン、ロボットビジョン、画像処理、画像計測、仮想現実、複合/拡張現実、隠消現実、 全方位視覚、動画像処理、カメラ位置推定、三次元モデリング、自由視点画像生成、画像修復、形状 修復、動画像修復、映像中の重要領域推定、映像要約、ディープラーニング 普段の生活の中で誰もがその恩恵に預かることができる未来のインタラクティブメディアのあ り方を考え、それを実現するために必要となる、メディア処理、ヒューマンインタフェースに関す る研究・教育を行う。 [キーワード] ヒューマンインタフェース、拡張現実感、三次元ユーザインタフェース、バーチャルリアリティ、画像計 測、コンピュータビジョン、コンピュータグラフィックス、パターン認識 物理モデルに基づいて光学現象を解析することでシーンを正しく理解し、光を媒体とする人と 計算機のインタフェースに関する研究・教育を行う。 [キーワード] コンピュータビジョン、光学解析、センシングシステム設計、コンピュテーショナルフォトグラフィ、質感 表現、コンピュータグラフィックス、光計測 ロボットや人工物の「個体知能」と人、モノ、コトの環境情報を計測・認識して、数値・言語情報 で構造化した「環境知能」を融合するネットワークヒューマンインタフェースに関する研究・教 育を行う。 [キーワード] ネットワークロボット、環境情報構造化、ユビキタスコンピューティング、パターン認識、画像認識、拡 張/複合現実感、IoT、クラウドネットワークロボティクス、ヒューマンロボットインタラクション (HRI)、 位置計測、行動・意図の認識・理解、快適知能、対話センシング、対話ロボット ウェブ工学、ソーシャルメディア解析を中心とした情報技術を用いたアプローチで、医療を始め とした実社会への応用を目指し、実用性の高い応用成果と科学指向の両面を併せ持つ新しい タイプの情報学の研究・教育を行う。 [キーワード] ソーシャルメディア、ウェブサイエンス、自然言語処理、医療情報 頁 P.24 P.25 P.26 P.27 P.28 注) ☆印:客員 Graduate School of Information Science Guide book 2016 4 システム情報学領域 Applied Informatics 生命現象や生命機能などを解き明かすバイオ情報処理や環境共生に関するシステム解析などの技術領域に関する研究・教育を行っています。 研究室及び教員 教育研究分野 ロボティクス 教 授 准 教 授 助 教 小 笠 原 司 高 松 淳 丁 明 知能システム制御 教 授 准 教 授 助 教 杉 本 謙 二 松 原 崇 充 南 裕 樹 基 大規模システム管理 幹 教 授 准 教 授 助 教 笠 原 正 治 笹 部 昌 弘 川 原 純 研 数理情報学 究 教 授 准 教 授 特 任 准 教 授 助 教 助 教 池 吉 久 爲 佐 田 和 本 潤 一 保 孝 井 智 々木 博 司 郎 富 也 昭 生体医用画像 室 教 授 准 教 授 助 教 佐 藤 嘉 伸 大 竹 義 人 横 田 太 計算システムズ生物学 教 授 ☆教 授 准 教 授 助 教 助 教 特 任 助 教 金 谷 重 彦 杉 浦 忠 男 Md.ALTAF-UL-AMIN 小 野 直 亮 佐 藤 哲 大 黄 銘 (協力)ロボットビジョン ☆教 授 特 任 助 教 金 出 武 雄 伍 洋 5 Graduate School of Information Science Guide book 2016 頁 視覚情報・触覚情報などのリアルタイムセンシングに基づいて知的システムを構成するために 必要な技術に関して研究・教育を行う。 [キーワード] ロボットシステム、生活ロボティクス、 リアルタイムシステム、人間機械協調、 ヒューマンインタフェース、 移動ロボット、 マニピュレーション、 ロボットハンド、 ヒューマンモデリング、 トレーニングシステム、 介護・ リハビリテーション、バイオメカニクス、ロボットビジョン、触覚情報処理、技能・感性評価、機械学習、 認知・心理 P.29 コンピュータ制御やその知能化・システム最適化などの先端的な情報科学技術に対して、数理 的な手法を駆使し、 実験による検証やロボット・メカトロニクスへの応用などの研究・教育を行う。 [キーワード] システム制御理論、機械学習、強化学習、ロボット制御、ヒューマンロボットインターフェース、運動ス キル学習、ロバスト制御、メカトロ制御、超解像制御、分散協調制御、最適化、知能化システム、マル チエージェントシステム、むだ時間システム、歩行、適応信号処理、電力ネットワーク、照明環境、制御 応用、数理科学 P.30 情報システムに代表される大規模複雑システムの設計・制御・構成法に向けた数理的手法と情 報処理技術を開発し、現実システムに応用する研究・教育を行う。 [キーワード] システム・アナリティクス、サービス・サイエンス、人間行動知覚型ネットワーク、ネットワーク・デザイ ン、被災状況推定・避難誘導、分散型仮想通貨、マルコフ解析、待ち行列理論、オンライン・アルゴリ ズム、ゲーム理論、クラウド・コンピューティング、大規模データ処理アルゴリズム、ビッグデータ解析 P.31 数理モデルにもとづいた問題解決、特に機械学習アルゴリズムの開発と解析、生体信号の解析 とモデル化、 ヒューマン・マシン・システムの開発に関する研究・教育を行う。 [キーワード] 数理情報学、機械学習、データマイニング、逆問題、脳情報科学、生体情報処理、システム生物学、 ヒューマンモデリング、適応ロボティクス、計算論的神経科学 医用画像の解析を中心として、統計的学習や生体シミュレーションを統合して、人体の構造・機 能の数理モデル化、および医療診断・治療の高度知能化を目指す“計算医学”に関する研究・教 育を行う。 [キーワード] 医用画像解析、コンピュータ外科、仮想人体、計算解剖学、計算医学、統計的人体モデル、医療意思 決定支援システム、診断・治療支援システム、手術ナビゲーション、手術シミュレーション、生体シミュ レーション、ネットワーク医療、医療ビッグデータ、画像処理・拡張現実感・機械学習の医療応用 P.32 P.33 生命現象を情報科学により解明する。ナノからマクロに至る様々な生命機能に対する計測手法 と、それによる生命機能解明のための情報処理技術に関する研究・教育を行う。 [キーワード] バイオデータベース、バイオネットワーク、バイオインフォマティクス、メタボロミクス、システムズバイ オロジー、データサイエンス、医療情報学、生命機能計測、生体医工学、バイオイメージング、インシリ コバイオロジー、医用画像工学、無拘束生体計測、ヘルスケアインフォマティクス、深部体温計 海外の研究者とも密接に連携しながら、 コンピュータビジョンの技術を通して、ロボットの性能を 強化したり生活の質を向上するような研究・教育を行う。 [キーワード] コンピュータビジョン、深層学習、ウェアラブルカメラ、First Person Vision、画像処理、映像処理、 パターン認識、ロボティクス、映像監視、モバイルコンピューティング、機械学習 P.34 P.35 注) ☆印:客員 教育連携研究室 研究室及び教員 コミュニケーション学 ☆教 授 ☆准 教 授 山 田 武 士 澤 田 宏 計算神経科学 ☆教 授 ☆准 教 授 川 人 光 男 森 本 淳 教 ヒューマンウェア工学 ☆教 授 ☆准 教 授 小 澤 順 井 上 剛 育 シンビオティックシステム 連 ☆教 授 田 谷 紀 彦 教育研究分野 頁 インターネット上の大量のテキスト情報やSNS情報などとセンサーデータなどの実世界の情報 とを結び付け、人間の社会的・経済的活動をモデル化、分析、予測し、コミュニケーションの本 質に迫る研究・教育を行う。 [キーワード] 機械学習、データマイニング、トピックモデル、センサ情報処理 (連携機関名:日本電信電話(株)NTTコミュニケーション科学基礎研究所) 脳機能の情報処理の観点からの解明と、それに基づく新たな人工知能の実現を目指し、ブレイ ン・デコーディング、ブレイン・マシン・インタフェース、ニューロフィードバック、ロボット学習な どの方法論をもとに最新の機械学習手法を駆使した計算理論的神経科学の研究・教育を行う。 [キーワード] 計算神経科学、人工知能、脳活動計測、動的モデル、脳活動デコーディング、脳機能結合解析、ブレイ ンマシンインタフェース、強化学習、ロボティクス (連携機関名: (株)国際電気通信基礎技術研究所) 携 ☆教 授 ☆准 教 授 奥 村 幸 彦 浅 井 孝 浩 研 光センシング 究 ☆教 授 ☆准 教 授 諏 訪 正 樹 井 尻 善 久 室 生体分子情報学 ☆教 授 ☆教 授 上 野 豊 福 井 一 彦 [キーワード] ヒューマンウェア、ユーザインタフェース、筋電位、運動解析、脳機能、ロボット、マニュピレータ、非接 触生体センシング (連携機関名:パナソニック(株)先端研究本部) 人、社会、環境の共生・調和を実現するために、環境適応力や省エネ性に優れ、使う人にや さしく、次世代のIoTインフラを支える新たなコンピューティングシステム(Brain-Inspired Computing System)の研究・教育を行う。 ☆教 授 ☆准 教 授 多 田 充 徳 村 井 昭 彦 [キーワード] 移動通信、ブロードバンド、ダイバーシチ、適応アレー信号処理、アンテナ・電波伝搬、無線回路、回線 設計、移動無線アクセス、可変ビットレート伝送、無線中継、MIMO (連携機関名: (株)NTTドコモ) P.39 P.40 新しいイメージング技術の創出や、画像処理によるパターンや立体物の認識、あるいは人間の行 動や動作の認識などを中心に、人間の視覚機能に迫るビジョンセンシングの研究・教育を行う。 [キーワード] ビジョンセンシング、画像意味理解、3次元画像計測・認識、Time of Flight Sensor、画像処理、FA 画像処理、ひとの動作理解 (連携機関名:オムロン(株)技術本部・知財本部) タンパク質など生体分子の機能とそのメカニズムを探るための、バイオインフォマティクスの手 法を研究する。大規模計算機を活用したデータベースからの網羅的な探索、さらに実験的デー タにおける情報の欠損を補う分子シミュレーションなど、情報工学的な手法により生命科学に おける知識発見を目指す研究・教育を行う。 ヒトの運動生成・制御の解明を目指し、形体や解剖学に基づいた標準・個人デジタルヒューマ ン生成のためのモデル化技術、ヒトの体性感覚情報推定・動作解析のための運動・動力学計 算技術、及び運動計測からフィードバックを行うためのデバイス・システム開発技術について、 研究・教育を行う。 [キーワード] デジタルヒューマンモデリング、コンピュータグラフィクス、運動・動力学計算、体性感覚情報推定、光 学式モーションキャプチャ、視覚・触覚フィードバック (連携機関名:国立研究開発法人産業技術総合研究所) P.38 超広帯域なマルチメディア情報が伝達できる次世代移動通信方式の無線回線設計、アンテナ・ 電波伝搬、無線回路、MIMO技術、移動無線アクセス、端末技術についての教育・研究を行う。 [キーワード] バイオインフォマティクス、タンパク質、分子間相互作用、分子シミュレーション、単粒子解析、スクリ プト言語 (連携機関名:独立行政法人産業技術総合研究所) デジタルヒューマン学 P.37 ネットワーク社会における人間中心の情報処理をめざすヒューマンウェアを、 脳機能統合センシン グ、生体信号を用いたアクチュエータ制御・非接触生体センシングで実現する研究・教育を行う。 [キーワード] IoT、環境適応、脳、生物、可塑性、学習、制御、システム、ネットワーク、プログラマビリティ、インタラ クティブ性、ヒューマンファクター、ユーザビリティ (連携機関名:日本電気(株)) マルチメディア移動通信 P.36 P.41 P.42 P.43 注) ☆印:客員 Graduate School of Information Science Guide book 2016 6 教育連携研究室 放射線機器学 ☆教 授 ☆准 教 授 飯 田 秀 博 越 野 一 博 セキュアソフトウェアシステム ☆教 授 ☆准 教 授 ☆准 教 授 大 岩 寛 Cyrille Artho Affeldt Reynald 新しい画像診断技術や撮像法の開発、および最先端の画像診断機器(PET、SPECT、MRI装 置など)を利用した組織、細胞、生体分子の機能を正確に観察するために情報工学的な新規 技術の開発を行い、さらに臨床応用分野での評価にかかる研究・教育を行う。 [キーワード] 医用放射線機器、放射線画像処理、PET、SPECT、MRI、診断支援システム (連携機関名:国立循環器病研究センター研究所) IoT時代のインフラやシステムに要求される信頼性・安全性の高まりを踏まえ、システムおよび ソフトウェアの安全性の担保に必要な技術や、安全性を「目に見える」形で提示し説明する技 術、またそれらをソフトウェア開発の各段階や安全性の第3者認証の工程などに具体的に適用 するために必要な手法を研究開発し、産業としての安全なソフトウェア構築手段の体系化を目 指します。 P.45 教 [キーワード] セキュリティ、ディペンダビリティ、ソフトウェア解析、仕様記述、形式検証 (連携機関名:独立行政法人産業技術総合研究所) 育 連 ネットワーク統合運用 携 ☆教 授 ☆准 教 授 小 林 和 真 河 合 栄 治 研 究 室 超高信頼ソフトウェア システム検証学 ☆教 授 ☆准 教 授 ☆准 教 授 片 平 真 史 石 濱 直 樹 川 口 真 司 ヒューマン・インタフェース ☆教 授 早 川 昭 二 未来のインターネットを実現するための、ネットワーク基盤・アーキテクチャ・サービス技術な らびにその検証・展開・普及に関する研究・教育を行う。 [キーワード] 通信インフラ技術(光、無線、アクセスなど)、大規模ネットワーク基盤技術、次世代インターネット技 術、新技術の実展開に関わる統合、移行技術 (連携機関名:独立行政法人情報通信研究機構) 極限環境で正しい動作が求められるソフトウェアの超高信頼性・安全性を実現するためのソ フトウェア検証方法論を研究する。特に、複雑分散ソフトウェアシステムの検証 網羅性保証 (End-to-End評価)に必要な以下の方法論を研究・教育する。 [キーワード] 高信頼性・安全性検証手法(ロバスト性検証及、検証自動化のアルゴリズム・方法論) 、高信頼性・安全 性評価手法(ソフトウェアシステム全体の欠陥モードの体系化及びそのシステムへの影響度評価手法) (連携機関名:研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 研究開発部門) 人中心のICTや社会を実現するための基礎研究として、人対人のコミュニケーションの円滑さ などの「質」の評価手法や評価システム、及び「質」を制御するための当事者への働き掛け方に ついての研究・教育を行う。 [キーワード] ヒューマン・インタフェース、言語/非言語コミュニケーション、音声情報処理、生体情報計測、対話分 析、脳科学、心理学 (連携機関名:富士通研究所) 7 P.44 Graduate School of Information Science Guide book 2016 P.46 P.47 P.48 注) ☆印:客員 情報科学研究科の教育及び研究指導方針 現在の社会において、有効な情報の創出とその安全な利用の重要性は増す一方です。このような社会の 進展に応えて、情報科学研究科では、情報科学に係る高度な基礎研究を推進するとともに、感覚と判断を 支援する情報処理技術、大規模な情報システムを構成する技術、安心できる情報ネットワークの構築と運 用の技術、情報科学と生命科学が関わる広汎な融合研究など、情報科学に関する広範囲な領域をカバー した体系的な教育プログラムを実施して、将来の研究開発を担う研究者や高度な専門性をもった技術者 を養成します。特に、ソフトウェア開発、情報セキュリティ管理、次世代ロボティクス開発の三分野を複合 的に修得した統合型人材を育成する 「サイバーメディア社会におけるマルチスペシャリスト育成プログラム」 や、情報セキュリティにおける課題解決型学習の実践的教育を目的とした「セキュリティ分野における情 報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業」、IoT分野でのグローバル起業家育成を目指す 「『モノのインターネット』分野でのグローバルアントレプレナー育成プログラム」等の人材育成プログラム を実施するなど、演習や実習を重視したカリキュラムに基づいた教育を行っています。 博士前期課程 教育目標 情報科学は、人間の思考や学習を基盤にして、社会活動に大き な影響を与えます。そのため、情報分野の学部を卒業した人だけ でなく、さまざまな分野の多様な経歴を持った人を大学院生とし て受け入れます。周到に準備されたカリキュラムによる学習と、多 様な経歴を持った人々の中での研究活動により、広い視野と着実 な技術を備えた修士(工学または理学)を育成します。 進路としては、博士後期課程に進んで研究を深めること、企業 において産業活動や社会活動に携わること、あるいは、自ら起業 して新しい息吹を直接社会に活かすことなど、いろいろの可能性 を選択できるようにしています。いずれの方向であっても、情報科 学に関連する幅広い知識と関心がある専門分野の先端の知識を 修得すること、プレゼンテーションやコミュニケーションの能力を 修めること、国際的に活躍するために英語の能力を高めること、 適正な倫理感をもつことなどが不可欠です。これらの能力を備え て、社会の変化に柔軟に対応して活躍できる人の育成を目指して います。 指導計画と方針 1.多 様な経歴と志望分野にあわせた授業の選択に 応えるカリキュラム 情報科学は社会のあらゆる分野において基盤となり、その 技術はいたるところで利用されています。先端の技術は競争 が激しく、変化が早く、社会に及ぼす影響も甚大です。 そのため、カリキュラムとして、長期にわたって基盤となる科 目、専門的な科目、先端的・学際的な科目を体系的に揃えて います。科目が対象とする分野を、 「コンピュータ科学」 「メディ ア情報学」 「システム情報学」および「共通」に分けて、選択の 指針としています。なお、本章の冒頭で紹介した種々のプログ ラムに関連する科目は一般の学生も受講可能な場合がありま すが、詳細についてはそれぞれの注意点を別途、説明します。 情報科学以外の分野の経歴をもつ人が、この分野で学習と 研究を進め易いように、計算機科学と数学の基礎科目を履修 して、論理的な思考能力を向上できるように準備しています。 平成25年度から、数学系、計算機科学系の基礎科目を大幅 に拡充しています。 先端領域の科目には、教育連携研究室の教員や企業での 開発経験者、学際領域の科目には、他大学や法律事務所の方 に、授業担当をお願いしています。現実社会の問題や技術的 な課題に対する認識を一層深めることをねらっています。 2.研究室配属 多くの学生が高い問題意識と研究分野の志望を持って入 学してきます。そのため、入学式の前後に、教育連携研究室を 含めて各研究室の紹介をして、見学の期間を設け、学生の希 望調査をもとにして、入学後2週間余りで所属する研究室を 決定します。受入人数は研究室によって均等にするのではな く、学生の希望を最優先して、殆どの学生を第一希望の研究 室に配属しています。 いったん配属が決まってから、自分の希望が変わったり、研 究室の内容が希望に合わなかったことが判ったりしたときに は、状況が許す限り研究室の変更を認めています。関心をもっ て自主的に修士の研究を進めていける状態を作ることが重要 です。 3.ゼミナールにおける討論と発表 ゼミナール(Ⅰ・Ⅱ)では、情報科学の見識を広め、問題点を 探るとともに、 コミュニケーション能力とプレゼンテーション能 力を涵養します。ゼミナールⅠは国内外の一流の研究者や技 術者から先端研究の紹介や技術の動向を伺い、質問や意見 を積極的に述べる訓練をします。ゼミナールⅡでは、各自の修 士論文の研究計画や研究経過を報告して、指導教員や学生の コメントを受けます。これは、学友の発表に対して質問や意見 を述べて、互いに切磋琢磨する機会になります。それが、修士 論文の完成度を上げる手がかりとなり、最終審査に臨む練習 となります。また、学会などでの研究発表に対する自信をもた らします。 4.プロジェクト実習 プロジェクト実習では、授業では扱えなかった問題や課題 について、実習や実験を行います。それによって、実際の開発 における問題点を考察し、実用化における設計能力を養いま す。また、インターンシップとして、他研究機関や企業で、与え Graduate School of Information Science Guide book 2016 8 られたテーマの研究や開発に携わって、現場での問題解決を 体験します。これらの実験や実習を通じて、授業で修得した知 識の活用を学ぶとともに、新たに何を修得する必要があるか を知ります。実習の結果を報告書にまとめることにより、成果 と課題を明らかにすることの重要性を認識します。 5.修士論文研究 大学院の教育は、授業を通じて多くを学ぶことと、自ら研究 することが2つの柱です。後者を修士論文研究と呼ぶことにし ます。修士論文研究では、 「研究論文」または「課題研究」のい ずれかを選択します。 「研究論文」では、未知の問題について 研究を進め、創意を発揮して問題解決することを目指し、その 成果を論文の形に総括します。解決方法における創造性、有 用性、あるいは、実用性が評価されます。 「課題研究」では、特 6.英語教育の充実 研究者を目指すか、企業での技術者を目指すかに関わらず、 情報科学分野で国際的に活動するためには、英語能力が不可 欠です。科学英語を学ぶための授業科目には、聞くことと話す ことにコミュニケーション能力を養う「英語プレゼンテーショ ン法入門」および「英語コミュニケーション法I, II」 、英語によ る論文執筆や研究発表法を学ぶ「英語ライティング法」およ び「英語プレゼンテーション法」があります。さらに、 「英語プ ロジェクトマネジメント法」、 「英語論文検索法」、 「英語デジタ ルメディア活用法」のより進んだ内容の科目もあります。また、 年2回、TOEIC英語試験を受験できる機会を設けています。 いずれも各人の選択に任せていますが、英語能力の重要性を 認識して積極的な履修と受験を勧めます。各自の英語能力を 把握して、英語科目を受講し、能力の向上に努めることが大切 定の課題あるいは研究分野の概観、技術動向の調査、製品の です。さらに、ネットワークを介した「英語学習システム(ALC 体系化、将来に向けての見通しなどが評価されます。 図ることができます。ゼミナールⅠでは、外国人研究者の講演 開発などを行い、報告書の形にまとめます。課題や解決法の 修士論文研究では、主指導教員の指導に加えて、副指導教 NetAcademy 2)」を利用して、実践的な英語能力の向上を をできるだけ多くして、生きた英語に接する機会を作るように 員など複数の教員が協力して指導に当たります。研究の任意 しています。平成23年度から専門科目の一部に英語コースを ナールⅡにおける中間発表では、研究の進行と問題点につい きるようにカリキュラムを変更しました。 の時点でアドバイスを求めることができますが、とくに、ゼミ て意見とアドバイスを受けます。 設け、英語のみの講義によって前期課程の必要単位を修得で 博士後期課程 教育目標 博士後期課程では、長期的な広い視野と、専門とする分野の 深い知識を持って、独立して研究を進めることができる研究者を TAは前期課程の授業の補助や研究指導の補助を担当しま す。それによって、授業や研究の中から新しい課題を発見する 育成します。それには、学術面あるいは社会において解決または ことができ、将来の教育者として必要な素養が身に付きます。 の研究計画を立案し、解決の方法や改良の方法を考え出す能力 て、関連した課題に取り組むことにより、視野と考察の範囲を ることが求められます。修了後は、大学や企業等の研究機関にお の貴重な経験になります。 改良が求められている問題を見つけ出して、それを遂行するため が必要です。さらには、提案した方法によって解を実現し、評価す いて、未知の問題に取り組む研究者や高度な技術者、あるいは、 後進を指導できる教育者としての活躍が期待されています。 情報科学に関連する分野は、進歩が激しく変化が絶えません RAは指導教員の研究補助を担当します。 自分の研究と並行し 広げることができます。いずれも、研究者として独立する場合 4.英語教育 前期課程の科目の中で、特に、 「英語ライティング法」 および が、それに依らない普遍的な方法(普遍性)、あるいは、それに対 「英語プレゼンテーション法」の履修を推奨しています。研究 れを保証する尺度が求められます。これらの能力を備えて、国際 力を一層向上させます。また、ネットワークを介したオンライ 応できる柔軟な方法(柔軟性)、信頼できる方法(信頼性)と、そ 的に活躍する人材の育成を目指しています。 指導計画と方針 1.博士論文研究 博士後期課程では博士論文の研究を進めることが課題の 中心です。問題を見つけ出して、研究計画を立て、創意を持っ た研究を遂行して解法を提案し、さらには、開発あるいは実 装します。関連研究を調査すること、自分の提案を客観的に 評価すること、残された課題を明らかにすることも欠かせませ ん。これらの過程で、教員が適切な指導と助言をして、研究を 支援します。得られた成果を学術論文あるいは国際会議に公 表します。 2.中間発表 課程の中間で博士論文研究の経過と結果、および、その後 の計画を発表します。複数の指導教員が、それに対して質問 をし、意見やアドバイスを述べ、研究の有効な推進を支援しま す。質問に適切に応答することは、自分の研究を見直す良い 機会になります。 9 3.TAあるいはRAの担当 Graduate School of Information Science Guide book 2016 の成果を英語で発表して、国際的に活動するために必要な能 ンの「英語学習システム(ALC NetAcademy 2)」や、オフラ インの英語教材(CD-ROM)を利用して、常に英語能力の向 上に努めること、年2回のTOEIC英語試験を受験して、自己の 英語能力を把握することなどの環境を整えています。ゼミナー ルIでの外国人研究者の講演、研究科を訪問された外国人研 究者との討論の機会を活用することを勧めています。ゼミナー ルIでの外国人研究者の講演、研究科を訪問された外国人研 究者との討論の機会を活用することを勧めています。 5.授業科目の履修 博士論文研究を進めるに際して、必要があれば、博士前期 課程の授業を自由に履修することができます。研究の背景を 学び直すことにより、問題の位置付けが明らかになることがあ ります。一方、博士後期課程への入学の条件によって、授業 を履修して学力や知識の向上を求めることがあります。それに よって、研究についての輪講や討論の意義を深めることができ ます。 情 報 科 学 研 究 科の教 育プロセス アドバンストプロジェクト ・CICP制度は研究プロジェクトを公募し一定数を選抜。 短期修了制度 ・修了時期は年4回(3月、6月、9月、12月)。図では、3月修了を想定した流れを示している。 ・前期課程は1年以上の在籍で修了可能。 ・後期課程は前期課程後期課程の合計が3年以上の在籍で修了可能。 人材養成目的 M2 対能 応力 能・ 力英 の語 養力 ・ 成変 化 へ の D1 D2 D3 ( 蓄専研 積 究 門の 、 国的深 際知化 感識と 覚・ 成 の方果 養法発 成論表 )の 能研独 力究立 養者し 成とた し て の ( 研 究 一般科目 (数学・情報倫理・IP・MOT) 基礎科目 (他分野学生のキャッチアップ教育) 国 際 化 活 動 ) 専門科目 オンデマンド授業 アーカイヴによる 学習 修士論文研究: 基幹研究室または 教育連携研究室への長期派遣にて 視探 野求 の( 養広 成い ) アドバンストプロジェクト CICP M1 先幅情 端広報 知い科 識基学 の礎に 修知関 得識す とる コアカリキュラム ゼミナール発表 (10月~12月 修士論文 テーマ提案) 」 ↓ 海 外 派 遣 ゼミナール発表 (9~10月: 修士論文 中間報告、 副指導教員 との討論) 国際化教育Ⅰ (アドバンスト英語ライティング法・ プレゼンテーション法) 先進学際領域特論 先進情報科学特別講義 先進情報科学考究 先進ゼミナール (博士論文中間報告: 副指導教員との討論) 制 度 異法 文入 化門 コ・ ミ 修士論文提出・ 修士論文 発表会 (2月) 短期修了制度 (これまでに174名 平成28年3月現在) アドバンストプロジェクト アカデミックボランティア教育 国際化教育Ⅱ → 海外派遣等 英文デスクサービスの利用 博士論文 公聴会 (12月) 博士論文提出・ 最終審査 (2月) 短期修了制度 (これまでに267名 平成28年3月現在) 研究科Webサイト(http://is-education.naist.jp/)でシラバスを公開しています。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 10 コンピュータ科学領域 研究室での教育・研究の概要 コンピューティング・アーキテクチャ研究室 URL:http://arch.naist.jp/~shinya/arch-web/index.html https://www.facebook.com/NAIST.ARCH (写真左から) 教授:中島 康彦 [email protected] 助教:高前田 (山崎)伸也 [email protected] 助教:Tran Thi Hong [email protected] 研究室概要 コンピューティング・アーキテクチャ研究室では、超小型低電力高性能 コンピュータシステムを開発できる次世代技術者を育成しています。具体 的には、アプリケーション、ライブラリ、プロセッサ、アクセラレータ、高位 合成、FPGA、超低電力無線回路、アナログ回路などの様々な階層・視点 から、次世代コンピュータ開発に必要な基盤技術を追求しています。最近 のテーマは、IoT向け小型・低電力・高性能コンピュータアーキテクチャ、 CGRA型 計 算アクセラレータ、802.11ah超 低 電力無 線 回 路、Light- Field画像処理アクセラレータ、機械学習アクセラレータ、FPGA活用フ 利用できるようにするために、Pythonなどの既存の扱いやすいプロ グラミング言語で高性能なハードウェアを設計するための高位合成 コンパイラの研究に取り組んでいます。他にも、メモリ性能を最大限 活用する高性能ハードウェア設計フレームワーク、ハードウェア記述 の解析・改変ツールなど、ハードウェアをより良くするソフトウェアの 研究に取り組んでおります。データを動かさずにメモリの傍で計算を 行うことで低消費電力化を達成する、 ニアデータ処理アーキテクチャ などのハードウェアの研究にもFPGAを用いて取り組んでいます。 レームワーク、高位合成ハードソフト協調設計環境、メモリインテンシブコ ンピューティング、GPU/メニコアモデリング、新素材フィルムコンピュー タ、アナログニューラルネットコンピュータです。 主な研究分野 1)IoT向け小型・低電力・高性能コンピュータアーキテク チャ IoT向けコンピュータではメモリコストの削減が重要です。メモリ バンド幅あたり性能においてGPGPUを凌駕する新しいコンピュー タの研究を進めています。CGRA型アクセラレータ研究には国内外 から連携の打診が来ています。 4)超低消費電力802.11ah無線通信回路 IoTセンサ向け低コスト超低消費電力無線回路について研究し ています。従 来の802.11n/ac規 格のPHY層が 数 百Mbps 〜 数 Gbpsに対応し、回路規模と消費電力が大きいのに対し、IoT向け 802.11ah規格のPHY層は、数百Kbpsの通信速度に対応し、小型 化や数月間〜数年間程度の超低消費電力化を可能とします。最適 なパラメータ、新しい演算アルゴリズム、回路アーキテクチャを探索 し、超小型コンピュータと組み合わせて低電力・高機能IoTデバイス の実現に貢献します。 2)Light-Field画像処理、機械学習アクセラレーション 特殊なレンズを通して撮影した画像を使用すると、撮影後に フォーカスを変更したり、奥行き画像を生成したり、臨場感あふれる 静止画再生を行うことが可能となります。ただし、携帯機器において 滑らかに再生するためには、膨大な計算を効率よく実行する斬新な 計算機構が必要です。プログラム可能な計算機としての最適な機構 を研究しています。IoT向け小型機器での機械学習アクセラレーショ ンにも取り組んでいます。 5)アナログニューラルネットと新素材LSI 新素材デバイスとアナログ回路の組み合わせによる、超低電力な 機械学習の仕組みを試作しています。 3)FPGAとハードウェア設計フレームワーク 利用者が自由に回路の構成を変更することができる柔らかいハー ドウェアのFPGA(Field Programmable Gate Array)が注目さ れています。アプリケーションに特化した回路を搭載し、専用回路で 計算を行うことで、CPUやGPUなどよりも高い性能や電力効率を達 成することができます。誰でもFPGAを使い高効率なコンピュータを 13 Graduate School of Information Science Guide book 2016 共同研究・社会活動など 富士通、ソシオネクスト、HUAWEI、名工大、龍谷大、中国清華大、 電子情報通信学会コンピュータシステム研究会幹事団 (写真左から) 教授:井上 美智子 准教授:大下 福仁 助教:米田 友和 助教:大和 勇太 コンピュータ科学領域 :http://dslab.naist.jp/ja/ ディペンダブルシステム学研究室 URL メールアドレス:[email protected] 4)並列アルゴリズム 研究室概要 今日の情報社会は、アプリケーション、システム、コンピュータ、VLSIな ど様々なレベルの高度な技術に支えられています。ディペンダブルシステ ム学研究室では、多数のコンピュータで構成される分散システム、多数の 並列システムのためのアルゴリズム ・GPGPU、マルチコアプロセッサのための並列アルゴリズム ・LSI CADのための並列アルゴリズム プロセッサコアで構成されるマルチコアコンピュータ、多数のトランジスタ で構成されるVLSIなど、あらゆるレベルでユーザが安心して使えるシステ ムのための研究を行います。“ディペンダブル”とは、日本語では“頼りがい のある”ことを意味し、ユーザがシステムを信頼し安心して使えるという、 ユーザ視点の概念です。ディペンダブルシステムを実現するには、きちんと 検査して不良品を出荷しない、多少の故障があっても動作する、経年劣化 によるシステム障害を避ける、悪意のある利用者に対処するなど、設計者 視点で考えることは多岐に渡ります。本研究室では、システムのディペン ダビリティ向上に繋がる様々な手法の研究・開発に取り組みます。また、 研究を通じて、論理的に物事を考える力、アルゴリズムの設計・解析、Cや JAVAなどの通常プログラミング、GPGPUやマルチコアプロセッサを用い た並列プログラミングやハードウェア記述言語(VHDL、Verilog)を用い たVLSI設計フローなどを学びます。 分散アルゴリズム 主な研究分野 VLSIの大規模化、微細化、高性能化、省電力化に起因する設計 自動化やテスト設計への新たな課題を克服 ・VLSIテスト容易化設計 ・3次元LSIのテスト設計 ・高品質テスト技術(タイミング故障、低電力、低発熱etc.) ・VLSIの故障検出・故障診断 ・データマイニングを用いたテスト最適化 ハードウェア ・SunBlade X6270 ・Sun SPARC Enerprise 5000 ・SunFire X4270 M2 with 640GB SSD ・SunStorage F5100 ・Apple iMac 27 インチ ・Altera Stratix IV E FPGA Development Kit 2)コンピュータの高信頼化/耐故障設計 信頼できる、ディペンダブルなシステムの提案 ・劣化検知のためのテストアーキテクチャ ・フィールド高信頼化のためのテスト機構 3)分散アルゴリズム 研究設備 並列コンピューティングやVLSIの設計・シミュレーション評価の ために、高速サーバ、ワークステーション、大容量SSD、高解像度 ディスプレイ、 最新のEDA (Electronic Design Automation) ツー ル、テストツールを用意し、快適な環境で研究をサポートします。 1)VLSIの設計とテスト VLSIの設計とテスト 並列アルゴリズム VLSI高信頼化設計 複数のプロセスが自律分散して動作する分散システムのためのア ルゴリズム ・フォールトトレラント分散システム ・無待機(wait-free)分散アルゴリズム ・自己安定分散アルゴリズム ソフトウェア ・Synopsys University Program(CADツール一式) DesignCompiler、PrimeTime、VCS、HSPICE など ・テスト設計ツール SIGNOFF、HiDFT-STAR(DeFacTo) ・テスト生成ツール Encounter Test(Cadence) 、TetraMAX ATPG (Synopsys) ・熱解析ツール FloTHERM(MentorGraphics) 共同研究・社会活動など ・JST CREST(科学技術振興機構戦略的創造推進事業) :SoC/ NoCのフィールド高信頼化テスト手法 科学研究費補助金、ライフ サイクル全般の信頼性向上のための組込み自己テストに関する研究 ・企業との共同研究:日立製作所、ルネサスエレクトロニクス Graduate School of Information Science Guide book 2016 14 コンピュータ科学領域 研究室での教育・研究の概要 ユビキタスコンピューティングシステム研究室 URL:http://ubi-lab.naist.jp/ (写真左から) 教授:安本 慶一 [email protected] 准教授:荒川 豊 [email protected] 助教:諏訪 博彦 [email protected] 助教:藤本 まなと [email protected] 研究室概要 本研究室では、様々なセンサから取り込まれる実世界データを処理・集 約・解析することで、高度なサービスを効率良くユーザに提供するシステ ム〜ユビキタスコンピューティングシステム〜の実現に向け、図1に示すよ うな様々な研究に取り組んでいます。 3)スマートハウス 最新鋭のセンシング機器を備えたスマートハウスを活用し、下記 に示すような研究を行っています。 ・快適度を考慮した省エネ設定の設計・可視化システム ・重 量センサを用いた安価 なスマート冷蔵庫 ・家電操作ログを用いた見 守りシステム ・Twitterと連 携した 家 電 操作ミドルウェア ・かざした方向の家電が操 作可能なユニバーサルリ モコン 図4 学内に建設したスマートハウスの内部 4)モバイルセンシング・センサーネットワーク 図1 ユビキタスコンピューティングシステムの研究領域 主な研究分野 1)行動・生活支援・e-Health スマートフォンを用いてコンテキストアウェネスの高い行動支援 や生活支援に関する研究を行っています。また、健康増進のための e-Healthシステムに関する研究にも取り組んでいます。 ・スマートフォンだけで運動時の心拍数を推定するシステム ・スマートフォンだけで空腹度を推定するシステム ・SNSのログに基づく運動量推定システム ・スマートフォンのタッチ操作分析によるユーザプロファイリング スマートフォンを用いたセンシングから通信方式の適応的な切り 替え、災害時通信システムの研究を行っています。 ・DTNを利用した災害時通信方式 ・ウェアラブル屋内フロアマップ生成システム ・WiFiと3G/4Gを効率よく使い分けるモバイル通信方式 ・農業用地の環境情報収集のためのセンサネットワーク 図5 DTNネットワーク 5)モビリティ社会システム実験装置 図2 スマートフォンを用いたe-Health 2)参加型センシング・ソーシャル実世界センシング ソーシャルネットワーク上での人間活動をセンシングと捉え、実世 界の情報を認識する研究を行っています。 ・ジオタグ付きデータを用いた実世界イベント検出 ・写真サイトやチェックインの分析による観光スポット発掘 ・ユーザ地図の共有、評価、ナビゲーションシステム ・ゲーミフィケーションを利用した参加型センシング ・交通情報の収集と配信のための参加型センシング基盤 電気自動車3台から構成さ れるモビリティ社会システム 実験装置を舞台として、情報 と社会システム、情報と人の 行動変容などの研究を行って います。 ・人に対する情報配信の適切 図6 モビリティ社会システム実験用車両 なタイミングに関する研究 ・行動変容に基づいた社会システムの実証的研究 図3 ソーシャル実世界センシング 15 Graduate School of Information Science Guide book 2016 研究設備 ・スマートハウス(高精度位置測位システム、様々な環境センシング システム)、スマートフォン、情報家電、各種センサ ・システムのモデリング・シミュレーションツールScenargie 共同研究・社会活動など ・大阪大学、九州大学、AUS、 (株)デンソーとの共同研究開発 ・科学研究費補助金基盤研究(B)、挑戦的萌芽研究、若手(B)、総 務省SCOPE等の競争的資金によるプロジェクト URL:http://ito-lab.naist.jp/mediawiki/index.php/Main_Page/ja (写真左から) 教授:伊藤 実 [email protected] 准教授:楫 勇一 [email protected] 准教授:柴田 直樹 [email protected] 助教:Juntao Gao [email protected] 助教:川上 朋也 [email protected](写真なし) 研究室概要 本研究室では、高度交通システム(ITS)、センサネットワーク、アドホッ クネットワーク等の研究分野において、対象問題の定式化・アルゴリズム の考案・実機及びシミュレータでの評価を通して研究教育を行っていま す。また、それらの研究を支える基礎となる情報理論や、セキュリティ要素 技術に関する研究にも取り組んでいます。 主な研究分野 1)高度交通システム(ITS) (1)G reenSwirl:車両走行効率向上を目指した信号制御および経路案内方式 交通渋滞を引き起こす原因の一つは合理的でない交通信号サイ クルである。GreenWaveは法定速度で走行する車両が連続する交 差点を青信号で通過できるようにする技術であるが、対向車線と横 断道路の妨害や入口と出口における渋滞等の問題が明らかになっ ている。これを解決するための信号制御および経路案内方式を提案 する。複数のGreenWaveを渦巻き状に配置し、最短時間経路をナ ビ等で案内することで、10 〜 60%程度走行時間を短縮できる。 ・DICOMO2014シンポジウム 優秀論文賞受賞 ・自動車技術会 2014年度大学院研究奨励賞受賞 (2)駐車場における混雑緩和のための多数車両同時ナビゲーションシステム 混雑時の大型駐車場において駐車スペースを見つける時間を短 縮するために、車車間通信技術を用いた駐車場ナビゲーションを 提案する。駐車場の統計情報と、車両入出庫検知に基づいて各駐 車ゾーンにおける駐車待ち時間を予測することで、車両が駐車場に 入ってから駐車を完了するまでの時間と駐車場所から店舗に入るま での歩行時間の合計が最小となるように案内する。駐車場の統計情 報により、各駐車ゾーンにおける駐車待ち時間を予測し、最新の車 両の入出庫情報に基づいて、予測時間を更新する。 ・マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSWS2013)最 優秀論文賞受賞 2)モバイルコンピューティング (1)停 電した地下街向けのスマートフォンの光を用いた避難誘導方式 地下街や大規模建造物の被災時に停電が起きた場合に、わかり やすい避難誘導と光量の確保を実現する避難誘導システムを提案す る。スマートフォンに搭載されている発光機器を用い、避難者の周囲 を照らす。避難口に遠いスマートフォンから順に強く点滅させ、避難方 向に光が床の上を流れるかのように見せることで、スマートフォン所 持者だけでなくその周囲の人にもわかりやすい避難誘導を実現する。 ・DICOMO2014シンポジウム 最優秀プレゼンテーション賞受賞 ・DICOMO2014シンポジウム 優秀論文賞受賞 ・マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSWS2014)優 秀ポスター賞受賞 (2)保証契約に基づく被災地向けモバイルペイメント 被災地においては、被災者が日用品や食料、衣料品、医薬品など を購入するための代わりの決済方法が必要である。既存の電子的 な決済方法は、サーバとの通信を前提にしているものがほとんどで あり、通信設備が使用できない被災地では使用できない。本研究で は、通信設備インフラに依存しない、モバイルアドホックネットワー クで使用可能な、セキュアな決済システムが必要である。Bitcoinに コンピュータ科学領域 モバイルコンピューティング研究室 似た方法で取引の正当性を相互監視することにより、実現する。 (3)DTNのモデリングと経路制御 アプリケーションによって定められた通信遅延の上限を満足する 経路制御プロトコルの開発を目指し、遅延の理論的モデルを構築す る。またモビリティやフェーディング、電波の干渉、MAC層、キュー の長さといってパラメタによって遅延がどの程度影響を受けるのか を調べている。また、遅延に関する条件を満たすための経路制御プ ロトコルの構築に取り組んでいる。 3)並列計算、可視化、クラウドコンピューティング (1)マルチコアプロセッサの停止故障を考慮したスケジューリング 各計算ノードがマルチコアプロセッサであるような並列処理シス テムにおいて、ネットワークの輻輳を考慮しつつ、プロセッサの単一 停止故障時の回復時間を最小化するタスクスケジューリングアルゴ リズムを提案する。ひとつのノードで互いに依存した計算を長時間 行うと、そのプロセッサが故障したときに、最近保存したチェックポ イントが失われるため、かなり前のタスクから計算をやり直す必要 が生じる。提案手法ではこのようなケースが生じないようなタスクス ケジュールを生成する。 ・国際会議CCGrid2012に採録 4)情報理論 誤り訂正やデータ圧縮等、情報理論は多くの分野で活用されてい ます。本研究室では、情報理論のオーソドックスな課題に加え、新し い分野への応用等にも積極的に取り組んでいます。 (1)ネットワーク符号化の達成問題性問題 (2)フラッシュメモリ記録用符号の開発 (3)次 世代誤り訂正符号を用いた超高 密度2次元コード 5)セキュリティ基礎技術 技術の革新は、新しいサービスの創出だけでなく、新しい脅威を 生み出すこともあります。本研究室では、暗号の基礎技術を活用して 新しいセキュア計算の仕組みを開発し、民間企業の研究者とも連携 して、その実用化研究にも取組んでいます。 (1)省電力性機器向けセキュリティ技術 の開発 (2)ビットコインを信頼基盤とする属性 認証方式 (3)サイドチャネル攻撃からの漏洩情報量評価 研究設備 ・各 種携帯無線端末、LEGO MINDSTORMSによるMANETテス トベッド、PlanetLab等 ・QualNetなどの各種シミュレータの開発ライセンス、UbiREAL、 P-Tour、MobiREAL、電子トリアージ等の本研究室と共同研究機 関で開発したシステム 共同研究・社会活動など 大阪大学、滋賀大学、大阪府立大学、静岡大学、岐阜大学、北陸先 端大学、日本電気(株)、 (株)沖電気との共同研究 Graduate School of Information Science Guide book 2016 16 コンピュータ科学領域 研究室での教育・研究の概要 ソフトウェア工学研究室 URL:http://se-naist.jp/ (写真左から) 教授:松本 健一 [email protected] 助教:伊原 彰紀 [email protected] 助教:畑 秀明 [email protected] 研究室概要 ソフトウェア工学研究室では、ソフトウェアが持つ脆弱性の克服とソフ トウェア開発・利用における新たな基盤技術の確立をめざし、ソフトウェ ア製品・サービスに関わる理論、方法論、モデル、環境・ツール、ベンチマー キング、技術移転などの研究開発を行うとともに、それらの有効性を確か める実証実験にも力を入れて取り組んでいます。ソフトウェアの開発・利用 形態が多様化する現状では、ソフトウェアに関する基本的な理論や技術 を踏まえつつ、学生の好奇心や柔軟な思考をうまく組み合わせていくこと が、既存技術にとらわれない先端的で実用的な研究につながると考えて います。研究成果の発表形態についても、学術論文としての発表だけでな く、ソフトウェアの公開(オープンソース化)、特許出願、連携企業での技 ソフトウェア開発タスク計測システムTaskPit 術適用などへ広げています。 主な研究分野 1)ソフトウェアデータマイニング ・ソフトウェア品質評価、コスト見積もり ・ソフトウェアデータを対象とした自然言語処理技術 ・ソフトウェア開発データの計測・可視化・操作・実体化 ・データに基づくプロジェクトマネージメント支援 ・開発者の脳活動データの計測・分析 ・TaskPit:ソフトウェア開発タスク計測システム ・ソフトウェアエコシステムへのメカニズムデザイン 2)オープンソースソフトウェア(OSS)工学 ・ 「OSS利用診断カルテ」の開発 ・ 「欠陥部品の自動特定システム」の開発 ・ 「OSS進化理解に向けたマルチエージェントシステム」の開発 ・コミッター選出のための開発者活動分析 ・OSS開発におけるコミュニケーション分析 ・グローバルソフトウェア開発支援 3Dモーションによる開発データの操作・インタラクション 3)ソフトウェアセキュリティ ・ソフトウェアの難読化 ・ソフトウェア電子透かし、バースマーク ・耐タンパーソフトウェア、アンチクラック、秘密分散 連携先企業・組織(略称・順不同) 日立製作所、東芝、NTT西日本、NTTデータ、有人宇宙システム、 JAXA、シャープ、アクセス、経済調査会、IPAソフトウェア・エンジニ アリング・センター、香港城市大学、香港科技大学、ハワイ大学、フ ラウンホーファ実験的ソフトウェア工学研究所(アメリカ)、クイーン ズ大学(カナダ)、オウル大学(フィンランド)、カセサート大学、和歌 山大学、静岡大学など。 研究設備 卒業生の主な進路及び就職状況(過去3年) ・民間企業:デンソー、富士通、日立製作所、NECシステムテクノロ ジー、野村総合研究所、NTTデータ、NTT西日本、沖 電気工業、パナソニック、リクルートなど。 ・教育機関:神 戸大学、奈良先端科学技術大学院大学、Queens University、九州大学、福岡工業大学など。 17 OSS開発における欠陥混入ファイルの自動特定システム Graduate School of Information Science Guide book 2016 脳血流センサによりソ フトウェア開発者・ユー ザの脳活動を分析して います。 6面ハイビジョンモニタ により大規模データを 可視化・分析していま す。 3Dプリンタによりデー タの可視化・実体化に 取り組んでいます。 (写真左から) 教授:飯田 元 准教授:市川 昊平 客員准教授:高井 利憲 客員准教授:吉田 則裕 助教:渡場 康弘 助教:崔 恩瀞 研究室概要 ソフトウェア設計学研究室では、ソフトウェアやクラウドコンピューティ ングシステムの開発・設計を支援する技術について研究を行っています。 特に、ソフトウェアの開発工程、すなわちソフトウェアプロセスの分析や改 善を主題に据えています。ソフトウェア技術は、家電製品や携帯電話など の各種組み込み機器の開発や、クラウドコンピューティングに代表される 近年の社会基盤システム構築など、我々の生活に広く浸透しています。ソ フトウェアプロセス技術は良質なソフトウェアを安定して生産し続けるた めの鍵であり、幅広い分野において欠かせないものとなってきています。 コンピュータ科学領域 :http://sdlab.naist.jp/ ソフトウェア設計学研究室 URL メールアドレス:[email protected] 関連プロジェクト、共同研究企業等 ・IT-Triadic(サイバーメディア社会におけるマルチスペシャリスト育 成プログラム) ・情報処理推進機構 ・ (株)日立製作所 ・産業技術総合研究所 ・宇宙航空研究開発機構(JAXA) ・情報科学国際交流財団(産学戦略的研究フォーラム) ・大阪大学、University of California San Diego、Kasetsart University、香港理工大學 他 主な研究分野 1)ソフトウェア開発プロセスのモデル化と管理/改善 ・プロセスモデリング・分析・改善 ・プロジェクト情報の可視化と管理支援 ・オープンソースプロジェクトのソーシャルネットワーク解析 ・プロジェクトの仮想的再現 2)開発リポジトリのマイニング ・コード履歴分析(コードクローン・デザインパターン) ・ソフトウェア保守の細粒度プロセス分析 ・開発者間メーリングリストでの話題抽出 3)ソフトウェアの設計と検証 ・超上流分析 ・デザインパターン検索・リファクタリング支援 ・ソフトウェアの安全性・信頼性保証(アシュアランス) ・ソフトウェアリスク分析手法 開発履歴可視化ツール 4)クラウド基盤システムの設計法 ・仮想計算機基盤の構築 ・Software-Defined Network(SDN)環境の構築 ・広域分散システムの実証実験 ・ハイパフォーマンス・コンピューティング支援 コードクローン分析ツール OSSのソーシャルネットワーク解析ツール OpenFlowによる国際間仮想ネットワークの実証実験環境 Graduate School of Information Science Guide book 2016 18 コンピュータ科学領域 研究室での教育・研究の概要 インターネット工学研究室 URL:http://iplab.naist.jp/ (写真左から) 教授:山口 英 [email protected] 准教授:門林 雄基 [email protected] 特任准教授:奥田 剛 [email protected] 特任准教授:櫨山 寛章 [email protected] 助教:樫原 茂 [email protected] 助教:Doudou Fall [email protected] 研究室概要 インターネットは我々の日常生活の基盤となり、様々な要求を持つサー ビスやアプリケーションが提供可能なインフラストラクチャとして、イン ターネットの高性能化・高機能化・高信頼化が求められている。本研究室 はインターネットの持続的発展を可能とし、我々の日常生活をより豊かに するための新しいインターネットアーキテクチャの創出と体系化に関する 教育・研究を行なっています。また、技術的探求だけでなく、構築したシス テムの人間社会への影響についても考慮しつつ、理論、シミュレーション、 実装を含む様々な側面からのアプローチを行っています。 主な研究分野 1)信頼できるインフラストラクチャとしてのインターネット に関する研究 現在のインターネットは様々な問題を抱えています。インターネッ トが信頼される社会基盤としての役割を果たすために、サイバー攻 撃やウィルスへの対策、モバイルネットワーク上での安定した通信、 アプリケーションやサービスに対する管理、自然災害に対する堅牢 なネットワークの構築・サービス提供、通信特性の分析等の研究に 取り組んでいます。 2)新たなインターネットアーキテクチャへ向けての研究 インターネットは未だ見ぬ様々なアプリケーションやサービスを 提供できる可能性を秘めています。新しいアプリケーションやサービ スを構築できる環境を提供するためには、現在のインターネットにと らわれない新しいアーキテクチャが必要となります。現在、有線ネッ トワークと無線ネットワークの融合化、スマートデバイスのモビリ ティのサポート、信頼性を高めるためのネットワーク構築と管理、実 験場としてのテストベッドの設計と実装等の研究に取り組んでいま す。 3)人間社会とインターネットの関わりを考慮した研究 インターネットの発展により、日常生活におけるユーザの利便性 が高まってきています。インターネットが真に人間社会と融合したシ ステムとして、ユーザの日常生活を豊かにするために、インターネッ ト技術の側面だけの提供ではなく、人間が求めるサービスや品質を 提供可能なネットワークやアプリケーションに関する研究に取り組 んでいます。 ネットワークエミュレーションを用いた演習の様子 研究設備 ・インターネットエミュレーション設備 ・対外ネットワーク(AIII、JGN、NSPIXP-3、WIDE) ・10Gbps実験ネットワーク設備 ・モバイルインターネット実験設備 ・ネットワークセキュリティ実験設備 ・次世代ネットワーク実験実習装置 共同研究・社会活動など 本研究室は情報通信研究機構、三菱総合研究所、NEC、ブロー ドバンドセキュリティ、アラクサラネットワークス、シスコシステムズ、 慶應義塾大学、東京大学、東京工業大学、九州工業大学、カリフォ ルニア大学ロサンゼルス校、南カリフォルニア大学等と共に研究開 発に取り組んでいます。また、WIDEプロジェクト、AIII、CKP、IETF 等のネットワーク研究コンソーシアムに積極的に参加し、組織運営 やネットワーク運用の主導的立場にもあります。数多くの産学官連 携フォーラムを通じ、社会との豊富な接点を有しています。 19 Graduate School of Information Science Guide book 2016 (写真左から) 教授:藤川 和利 客員教授:猪俣 敦夫 助教:垣内 正年 助教:油谷 曉 研究室概要 情報基盤システム学研究室のスタッフは、全学に対する情報処理サー ビス提供機関である総合情報基盤センター(ITC)のスタッフとしての役 割も兼ねており、その経験や知見を活かし最先端のネットワーク技術やコ ンピュータネットワークに関する研究を基盤技術・応用技術の両方の側 面から行っています。 また、本学附属図書館の電子図書館サービスの構 築に携わり、新たなメディア管理技術に関する研究も行っています。 主な研究分野 1)モバイルコンピューティング・ITS 移動型端末装置や公 衆端末装置をインター ネットに融合し、状況に 応じた情報提供や利用 者 間でのコミュニケー ションを支援する環境 の実現に取り組んでい ま す。 特 に、VANETや IPv6ネットワークに関す る以下の研究を行っています。 ・位置情報に基づいたモバイルノード間での情報共有技術 ・セキュアなITSインフラ技術 2)センサネットワーク・DTN 日本および世界に配 置された各種センサの 情報を収集・配信する 基盤システムの構築に 取り組んでいます。セン サ情報は誰もが利用可 能であり、様々な分野で 環境情報の利用促進が 期待できます。具体的に は、以下の項目について 研究を進めています。 ・大 規模分散処理を実 現 す るPub/Subシ ス テム ・空中浮遊型メッセージフェリーを用いた情報収集システム 3)データセンター /ネットワーク運用技術 クラウドコンピュー ティングの普及に伴い 高性能化・高密度化が 進むデータセンターの 運用技術に取り組んで います。特に、負荷に応 じた仮想マシンのマイグ レーション、通信トラフィックの経路制御に関する以下の研究を行っ ています。 コンピュータ科学領域 :http://inet-lab.naist.jp/ 情報基盤システム学研究室 URL メールアドレス:[email protected] ・省電力・負荷分散のための仮想マシン配置、ライブマイグレーショ ン、トラフィック制御技術 ・地理位置を考慮した広域分散クラウド ・安全で効率のよいトラフィック転送を行う次世代トラフィックエン ジニアリング(IPv6サイトマルチホーミング、ネットワーク設定自動 化) ・IPv4-IPv6移行技術、IPv6デプロイメント 4)セキュリティ 情報漏洩は物理盗難とは異 なり一度流出すると元に戻す ことは不可能です。ハッカーが 日々新しい攻撃を見つけ出すだ けでなく計算機進化によって暗 号が解読されるなどの問題が 起き、情報保護はこれからの社 会に対して重要な課題です。 ・ペアリング暗号、超楕円曲線暗号に関する理論研究(GPGPU実 装等) ・マルウェア解析(x86アセンブラ) ・CTFチャレンジ等 5)次世代マルチメディアストリーミング 高速IPネットワーク上で超高精細4K映像および8K映像を伝送 するための技術的課題の洗い出しを進めています。特に、インタラク ティブかつ視聴者の没入感の得られるリアルタイムな非圧縮・低遅 延な映像伝送システム と経路制御に関する研 究開発を行っています。 ・通 信のインタラクティ ブ 性 を 考 慮 し たL2/ L3技術 研究設備 ・次世代型クラウドコンピューティングサービス研究基盤システム ・インタラクティブ超高精細映像研究システム ・小規模計算サーバ 共同研究・社会活動など ・フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA) ・WIDEプロジェクト ・Live E!プロジェクト ・PlanetLabプロジェクト ・朝日放送(ABC) ・NTT未来ねっと研究所、KDDI研究所 ・ (独)情報通信研究機構、 (独)情報処理推進機構 ・慶應義塾大学、大阪大学、東京大学、神奈川工科大学 Graduate School of Information Science Guide book 2016 20 メディア情報学領域 研究室での教育・研究の概要 自然言語処理学研究室 URL:http://cl.naist.jp/ (写真左から) 教授:松本 裕治 [email protected] 准教授:新保 仁 [email protected] 助教:進藤 裕之 [email protected] 助教:能地 宏(写真なし) 研究室概要 人間の知能の本質である言語の計算機による解析と理解を中心的な テーマとし、言語解析の基礎研究およびその応用研究を行っています。 共同研究・社会活動など(平成25年度) 文部科学省科研費:基盤研究(A)、基盤研究(B)、スタート支援研 究、特別研究員奨励費×3 メンバー(平成26年3月現在) :上記スタッフ以外に、研究員4名、博士 後期課程学生15名、博士前期課程学生25名(内、留学生8名、社会人2 名)。 主な研究分野 1)自然言語の解析技術と解析環境の共有化 自然言語の解析に必要な辞書や文法などの基礎的なデータの蓄 積、言語解析ツールと使用環境の構築と共有のための研究活動を 行っています。 公開中のシステム例 ・日本語形態素解析システム「茶筌」 (図1) ・日本語係り受け解析システム「南瓜」 ・日本語述語項構造解析システム「新茶」 (図2) 2)Webデータのマイニングとリンク構造に関する研究 図1 日本語形態素解析システム「茶筌」 :日本語文を形態素(単語)に 分割し、品詞を推定します。 Webページ、文献参照情報、単語の類似性など様々なデータ間 のリンク構造の性質の解析、リンクトデータにおける重要度や関連 度の抽出に関する研究を行っています。 3)言語表現の意味関係に関する研究 単語や句の意味表現に関する研究、文章中で事象を表わす動詞 と名詞の間の意味関係など、様々な意味に関する研究を行なってい ます。これらの意味関係解析は、質問応答や情報抽出、複数文書要 約など、幅広い応用に共通する基本問題です。意味関係の自動獲得 手法の研究、および、それに必要な言語資源の構築を進めています。 4)機械翻訳・多言語処理に関する研究 統計的な手法を用いた機械翻訳の研究、および、語彙・文法知識 等を用いた手法との融合に関する研究を行なっています。また、多 言語データの自動対応や、翻訳知識の自動獲得に関する研究を行 なっています。 図2 日本語述語項構造解析システム「新茶」 :省略を補完し、文章中 の各述語の主語や目的語を同定します。 5)自然言語処理を用いた言語学習支援に関する研究 自然言語処理の応用研究の一つとして、言語学習者支援がありま す。大規模なウェブデータを用いた日本語の誤り検出や、統計的機 械翻訳を応用した言語学習者の作文添削手法の研究を行っています (図3)。 研究設備 大規模文書処理システムCPU(クアッドコア×24)4台、主記憶 512Gバイト/台、ファイルサーバ112テラバイト、他にUnixマシンや PCを多数保有しており、大規模テキストデータの解析に利用してい ます。 図3 Chantokun:日本語学習者の作文の誤り検出・訂正インタフェー ス。格助詞の使用誤りを検出し、訂正候補を示します。 21 Graduate School of Information Science Guide book 2016 (写真左から) 教授:中村 哲 [email protected] 客員教授:戸田 智基 [email protected] 特任准教授:鈴木 優 [email protected] 助教:Sakriani Sakti [email protected] 助教:Graham Neubig [email protected] 特任助教:吉野 幸一郎 [email protected] 特任助教:田中 宏季 研究室概要 本研究室では、人と人、人とコンピュータのコミュニケーションを支援する 多様な技術の教育・研究を進めます (右図参照) 。研究においては、理論的 な側面だけではなく、技術の実現性を重視しており、 プロトタイプシステム、 ネットワーク型のサービスシステムなどへの実装を行い、評価まで行います。 主な研究分野 1)音声翻訳(音声通訳) 異なる言語を話す人々のコミュニケー ションにおける言語の壁は我々の永遠の テーマでした。 短い簡単な文章のテキスト翻 訳、 音声通訳は最近技術的進化を遂げ、 利 用可能なものがでてきています。 本研究室 では、 さらに高度な、 ニュースや講演などの 複雑な発話の同時通訳や多言語多人数の 参加する会議の通訳支援技術、 マルチモー ダルな通訳技術などの研究を行います。 2)多元ビッグデータ情報分析 現在、WEBには多様なメディアの情報 が膨大な量で蓄積されています。このよ うな、マルチメディア、多言語の情報を分 析し、利用可能な情報を抽出する技術の 研究を行います。 3)多言語コミュニケーション学習支援 異なる言語でコミュニケーションする場合には、状況、文脈で表 現が異なります。このような状況に応じた発話・表現を提示すること により多言語コミュニケーションにおける発話の学習、コミュニケー ション支援を行う研究を行います。 4)言語・非言語、ロボット対話技術 人とコンピュータのコミュニ ケーションにおいては、利用者の レベルにより使いやすさ、コミュ ニケーション効率が大きく異な ります。利用者や利用者の興味 をモデリングし、最適なコミュニケーションができるように支援する 方法の研究を行います。また、言語的特徴とイントネーション・感情 などの情報、あるいは顔画像などの情報を利用しながら支援するマ ルチモーダルなコミュニケーション支援技術を研究します。更に、上 記技術の実証実験を可能とするため、駅や公共施設等の実環境に おける音声対話システム構築の研究も行います。 ロボットとの自然なコミュニ ケーションを実現するためには、 実環境にて遠隔発話された音 声を高精度かつ高速に認識・理 解する必要があります。 これを達 成するため、音声認識デコーダ と統合された発話区間検出、ブ ラインド音源分離処理などを開発し、雑音に対してロバストなハンズ フリーロボット対話システムの構築を行っています。また、ロボットの メディア情報学領域 知能コミュニケーション研究室 URL:http://ahclab.naist.jp/ 目(画像情報)を生かした高速追従処理なども研究しています。更に、 統計的な方法や機械学習に基づく音韻モデル・言語モデル・音声対 話データベースの学習アルゴリズム等の研究にも取り組んでいます。 5)言語・非言語コミュニケーション脳活動計測 コミュニケーションの正確さ、快適さを リアルタイムで計測することは、 コミュケー ション支援の研究にとって不可欠です。こ の測定をリアルタイムで客観的に行うた め、言語・非言語コミュニケーション時の 時系列刺激と脳活動を脳波計等などによ り測定し、分析、モデル化を行います。 6)QoL向上技術 生活の質(Quality of Life)を高める ことは、我々人類にとって重要なテーマで す。老若男女、健常者・障害者を問わず、 誰もが心の豊かな生活を送れる社会を 目指し、情報技術を駆使し、様々な側面 からコミュニケーションを支援します。よ りユニバーサルなコミュニケーションの実現に向け研究を行います。 7)サイレント通話技術 公共の場において携帯機器で通話する際に、他人に迷惑をかけた り、秘匿性の高い内容を話しづらいなど、声を発すること自体を躊躇 うような状況にしばしば直面します。この問題を解決するために、周 囲に声を漏らさずに発声を行うサイレント通話技術を研究します。 特殊な体表密着型マイクロフォンを用いて、周りに聞こえないぐらい 小さな声を体内伝導音声として採取し、より自然な音声へとリアル タイムで変換する技術の研究を行い、DSPへのリアルタイム実装も 行っています。 8)個人性モデリング コミュニケーションにおいては利用者の多様な個人性モデリング が必要になりますが、さらにそれらを進め、人の声、顔、表現、対話 様式などをモデリングする研究を行います。また、多くの人の個人性 を分析することでお互いの個性を尊重し、大いに活かすことのでき るコミュニケーション支援技術を研究します。 9)概念学習 コミュニケーションを支援するには、言葉などに加えて、コン ピュータがその場所にあるモノ、さらには、動作の意味、言葉との関 連性を理解する必要があります。音声、言語、画像、動作などを連携 させ、コンピュータに概念を学習させる研究を行います。 研究設備 PCクラスター(24 CPU、144コア)、ファイルサーバー(15TB、 48TB)、生体計測装置(EEG、NIRS)など。 産官学連携・社会活動など NICT委託研究、文科省科研費基盤(A)、文科省科研費基盤(B)、 文科省若手研究(B)、文科省科研費挑戦的萌芽、民間企業との共 同研究など多数。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 22 メディア情報学領域 研究室での教育・研究の概要 ネットワークシステム学研究室 URL:http://agano.naist.jp/hp/index.html (写真左から) 教授:岡田 実 [email protected] 准教授:東野 武史 [email protected] 助教:侯 亜飛 [email protected] 助教:Duong Quang Thang(写真なし) 研究室概要 本研究室では、電波を使ったセンシング、ブロードバンドワイヤレス伝 送、エネルギー伝送に関する研究を行っています。これらの技術は、将来 のユビキタスネットワークを支える基盤技術であり、電磁理論と信号処理 産学官連携・社会貢献など 本研究室は様々な組織と共同研究等を行っています。特に、実装 面に関しては大学発ベンチャ企業の草分け的存在である(株)シン セシスと協力して研究を進めています。 の手法を用いて実装と評価を行っています。研究においては、理論的な側 面やシミュレーションによる評価だけではなく、技術の実現性を重視して おり、実際に実験装置を試作して動作実験を行い、性能評価を行っていま す。 主な研究分野 1)無線電力伝送技術 ノートPCやタブレット、スマートホンなどの携帯機器、移動ロボッ トでは、電源の制約が大きな問題です。移動しつつこれらの携帯端 末や移動ロボットへ電力を供給することができれば、その利便性は 大幅に向上します。しかし、従来の無線電力伝送システムでは、端末 を送信アンテナの近くに置く必要があり、移動する端末に電力を供 給することは困難でした。本研究室では、送信アンテナ形状を最適 化することで、移動体に対する無線電力伝送を可能にする研究を進 めています。 プラレールを使った無線電力伝送実験 2)高信頼低消費電力無線通信システム 携帯電話や無線LANに代表されるデジタル無線通信システムは、 近年、その伝送速度が大幅に向上していますが、セキュリティやロ ボットの制御といった非常に高い信頼性が要求される用途では、そ の性能は十分ではありません。本研究室では、OFDM、CDMA、ア ンテナダイバーシチ技術、マルチホップネットワーク、誤り制御技術 といった各要素技術の研究を通じて、超高信頼性システムの実現を 目指しています。また、8K超高精細地上デジタル放送や、携帯向け マルチメディア放送に向けた、移動受信アンテナや復調アルゴリズム といったデジタル放送受信機の性能改善に向けた研究、開発を行っ ています。 3)分散アンテナシステムに関する研究 光ファイバ無線(RoF:Radio-on-Fiber)を用いた分散アンテナ システムの研究を行なっています。無線基地局の集中管理を可能と する光ファイバ無線リンクとMIMOに代表される空間分割多重の技 術を融合して周波数利用効率の高い無線通信システムの構築を目 指しています。 4)センシングに関する研究 漏洩同軸ケーブルを用いた侵入者検知やRFIDを用いた低侵襲外 科手術支援システムの研究を行なっています。これらは電磁波を使 用して、対象物からの受信信号からその位置を推定しています。 5)無線信号処理回路の実装に関する研究 無線通信や電力線搬送システムで用いられるデジタル信号処理 は、非常に演算量が多く、かつ、並列化が単純にはできないため、そ の実装には、様々な工夫が必要となります。本研究室では、演算規 模の小さい信号処理アルゴリズムや並列化に関する研究を行なって います。 23 Graduate School of Information Science Guide book 2016 研究室保有の無線信号測定機器 (ネットワークアナライザ、スペクトルアナライザ) (写真左から) 教授:横矢 直和 [email protected] 准教授:佐藤 智和 [email protected] 助教:河合 紀彦 [email protected] 助教:中島 悠太 [email protected] メディア情報学領域 視覚情報メディア研究室 URL:http://yokoya.naist.jp/ 研究室概要 本研究室では、コンピュータやロボットが外界を「視る」ための技術とコ ンピュータ内部の多様な情報を人間に「魅せる」ための技術を中心に、コ ンピュータビジョン(CV)、複合現実感(MR)、仮想現実感(VR)の分野 とそれらの複合領域において視覚メディアの研究を行っています(図1)。 主な研究分野 1)コンピュータビジョン(Computer Vision) 画像を手掛かりに現実環境の三次元情報などの様々な情報を自 動的に獲得する手法について研究しています。 ・空撮画像を外部指標として用いるカメラ位置・姿勢推定 ・動画像からの三次元復元、センサフュージョン(図2) ・RGBDカメラを用いた非剛体物体の三次元復元 ・類似度に基づく画像/三次元形状モデルの欠損修復(図3) ・ディープラーニングによる画像修復失敗領域の自動検出 ・撮影者の意図に基づく映像の重要領域の推定 ・テキストを用いてユーザ意図を反映する映像要約(図4) 2)複合現実感(Mixed Reality) 仮想世界と実世界の情報を映像上で融合することで実現できる 様々な可能性について研究しています。 ・画像修復技術を用いた隠消現実感/物体の消去(図5) ・事前撮影画像を用いたモバイル拡張現実感(図6) ・拡張現実による人物動作再現システム(図7) ・拡張自由視点画像による遠隔ロボット操縦インタフェース(図8) 3)仮想現実感(Virtual Reality) 図1 視覚情報メディア研究室の研究分野 図2 動画像からの三次元復元 図3 画像/形状の欠損修復 図4 映像要約システム 図5 隠消現実感 図6 事前生成型拡張現実感 図7 人物動作のAR再現 図8 自由視点ロボット操縦 図9 運転支援システムの評価 主に実写画像を用いることで現実に限りなく近い映像を仮想空 間内に再現する画像提示手法について研究しています。 ・広域屋外環境の全方位立体映像の生成 ・視点に依存した幾何形状の利用による自由視点画像生成 ・自由視点映像生成による運転支援アルゴリズムの評価(図9) 研究設備 ・全方位三次元情報計測車両(図10) ・画像処理サーバ (SGI UV2000、CPU128Core、Memory1TB) (図10) ・没入型ディスプレイ(傾斜型、球面型) (図10) ・全方位マルチカメラシステム、三次元測量機器(図10) 外部資金・共同研究など(平成27年度) ・文部科学省・科研費(基盤C、萌芽、若手B×2) ・共同研究(豊田中央研究所、日産自動車) ・マイクロソフトCORE連携研究プロジェクト ・総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE) ・文部科学省・頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プ ログラム(CMU、INRIA、オウル大学) ・日本学生支援機構・留学生交流支援制度(オウル大学、湖南大学) 画像処理サーバ 没入型ディスプレイ レーザレンジファインダ 全方位マルチカメラ 三次元測量機器 全方位三次元計測車両 図10 研究設備の一部 Graduate School of Information Science Guide book 2016 24 メディア情報学領域 研究室での教育・研究の概要 インタラクティブメディア設計学研究室 URL:http://imd.naist.jp/ (写真左から) 教授:加藤 博一 [email protected] 准教授:Christian Sandor [email protected] 助教:武富 貴史 [email protected] 研究室概要 人と人、人とシステムを結ぶ情報メディアは、計算機システムやメディア 技術の発展とともに、インタラクティブなものに変化してきました。本研究 室では、未来のインタラクティブメディアのあり方を考え、それを実現する ために必要となる、メディア工学、ヒューマンインタフェース工学、データ 工学に関する研究を行っています(図1)。特に、コンピュータビジョンや コンピュータグラフィックスの研究、それらを融合して構築する拡張現実 感システムに関する研究(図2)、膨大な情報を効率良く取り扱うための XMLデータベースに関する研究(図5)、大量のデータから意味のある情 報を自動的に見つけたり、状況やユーザの好みにあった情報を提供する 次世代情報検索技術の研究に力を注いでいます。 Christian Sandor先生を准教授に迎え、また、オウル大学(フィンラン ド)、南オーストラリア大学(オーストラリア)、HitLab NZ(ニュージーラ ンド)などとの共同研究を通じ、多くの留学生と一緒にグローバルな研究 活動を展開しています。 現在の具体的研究テーマ ・ユビキタスディスプレイ環境におけるインタフェース設計 ・拡張現実感技術の開発と評価(図3) ・拡張現実感の教育への応用 ・CTとX線画像による腰椎疾患の診断支援システム ・高齢者のための生活支援システム ・プロジェクタカメラシステムの開発と応用(図4) ・CGにおける物理シミュレーション(図5) ・柔軟物体への歪みのないテクスチャ投影(図6) ・消費電力を考慮した高性能データベースシステム ・ユーザの能力を引き出す情報支援システム 図2 ARとトラッキング技術を利用し た仮想立体絵本 図3 プロジェクタカメラフィードバッ ク系による視覚強調 図4 リアルタイム乱流シミュレーション 図5 柔軟物体への歪みのないテクス チャ投影 研究設備 ・ユビキタスディスプレイ実験室(図6) ・3次元画像計測装置 ・高フレームレートデジタルカメラ ・ムービングプロジェクタシステム ・ユーザ位置計測センサ ・その他、拡張現実感実験システムなど 図1 研究領域 共同研究・社会活動など ・拡張現実感、バーチャルリアリティ等に関する国際会議の運営委 員会や実行委員会の委員 ・富士通研究所などと共同研究の実施 ・拡張現実感構築用ソフトウェアARToolKitの開発と配布 図6 ユビキタスディスプレイ実験室 25 Graduate School of Information Science Guide book 2016 (写真左から) 教授:向川 康博 [email protected] 准教授:舩冨 卓哉 [email protected] 助教:久保 尋之 [email protected] 研究室概要 本研究室では、カメラで撮影された情報をもとにシーンを理解するコン ピュータビジョンの中でも、特に光学解析を中心に取り扱っています。光 伝播を計測・解析する基礎研究を土台に、人間と機械が光を媒体として シーンに関する情報を共有できる新しいインタフェースを実現することを メディア情報学領域 光メディアインタフェース研究室 URL:http://omilab.naist.jp/index-jp.html 2)センシングシステム設計 光線にはシーンに関する様々な情報が含まれていますが、カメラ で撮影して2次元画像にしてしまうと、解析が難しくなります。そこ で、反射鏡や特殊なレンズを組み合わせて、様々な方法で光線を計 測する装置を設計します。 目指して2014年2月に新設された研究室です。 主な研究分野 光源から出た光は、シーン中で反射・屈折・散乱等の光学現象を 繰り返し、カメラや我々の眼に届きます。我々人間は眼で見ただけ で、物体表面の状態がツルツルしているのかザラザラしているのか といった表面の荒さだけではなく、重いのか軽いのかといった質量 や、金属なのかプラスチックなのかといった材質に関する物理情報、 さらには安っぽいのか高級感があるのかといった感性に関わる情報 も感じ取っています。つまり、光線はシーンに関する貴重な情報を運 ぶ媒体と考えることができます。この光の伝播からシーンを理解する 能力をコンピュータ上で実現することで、光を媒体として人間とコン ピュータがシーンの情報を共有できる「光メディアインタフェース」 を実現することを目指しています。 3)コンピュテーショナルフォトグラフィ カメラで計測した光線情報をもとに、コンピュータの演算によって 画像を作り出す手法を開発します。カメラの物理的な性能限界を超 える画像を“撮影”できることから、近年注目を集めている技術です。 これにより、通常のカメラでは撮影できない視覚情報を人間に提示 することができます。 1)光学解析 光は物体表面上でどのように反射するのか、また、内部に到達し てどのように散乱するのかを、物理モデルに従って解析します。この ような解析技術は、シーン中の物体の材質や3次元形状を推定する ための基礎技術となります。 4)質感表現 人間が光線から感じ取っている質感 などの高度な視覚情報をコンピュータ 上で表現する方法を明らかにすること で、質感を正しく人間に伝えるインタ フェース技術を開発します。 研究設備 暗室、冷却CCDカメラや光線空間カメラなどの特殊センサ 共同研究・社会活動など 大阪大学産業科学研究所、マイクロソフト・リサーチアジア Graduate School of Information Science Guide book 2016 26 メディア情報学領域 研究室での教育・研究の概要 環境知能学研究室 URL:http://ambient.naist.jp/ (写真左から) 客員教授:萩田 紀博 [email protected] 准教授:浮田 宗伯 [email protected] 准教授:神原 誠之 [email protected] 研究室概要 物理的な身体を持つ対話ロボットやバーチャル/AR(拡張現実感)エー ジェントなどのロボットメディアは、自分自身で「見る、聞く、話す、考える」 などの「個体知能」を持っています。これらが家庭や街に役立つコミュニ ケーションメディアになるには、個体知能だけでなく、人(々)や周りの環 境を的確に捉える新たな知能である「環境知能」が必要になります。 「環 境知能」は、周囲の人、モノ、コトをセンシング・構造化し、個体知能と環 境知能が連携することによって、超高齢社会でも、安全・安心・楽しく・快 適に生活できる社会システムの実現を目指します。 主な研究分野 安全・安心・楽しく・快適な社会環境の実現のために「実世界セン シング」 ・ 「環境情報構造化」 ・ 「マルチモーダル対話」の要素技術と それらを統合した環境知能基盤を構築します。 1)実世界センシング 環境知能構築な必要な情報を、実環境に存在する様々なセンサ を利用して計測します。中でも、人を中心とした環境知能システムを 構築する上で、人の情報は最も重要な役割を担います。人の情報は、 機械化されたシステム情報(ロボットや家電の状態など)と異なり、 外部センサによる状態推定が必須となるため、本研究室では、多種 多様なセンサの計測結果の統合的な解析によって、環境知能に必 要な実時間センシング機能を実現します。 2)環境情報構造化 環境知能をどのようにして創るかを研究します。ボットが初めての 場所に行っても、その場所に合ったロボットサービスを提供できれ ば、ロボットメディアの利用が今まで以上に促進されます。そのため には環境の情報(人の位置や行動、モノの位置、環境の騒音など) を予め環境側に持つ必要があります。そこで、人のニックネーム、氏 名、その空間や人の行動・状況の統計的特性などを、それぞれ空間 プリミティブ、行動プリミティブという形で言語化する研究、数値・ 27 Graduate School of Information Science Guide book 2016 言語情報を階層的に構造化する研究、ユビキタスコンピューティン グの研究、パターン認識、意図理解などの研究を含みます。 3)マルチモーダル対話 安全・安心・楽しい・快適な支援を行うために、環境知能を利用し て、視覚・触覚・ジェスチャなどによるマルチモーダルな対話を行い ます。物理的な身体をもったロボットに限らずAR(拡張現実感)ロ ボット・バーチャルロボットを含むロボットメディアを利用した様々な ヒューマンロボットインタラクション技術を研究します。また、グルー プに対する集団提示法、場の空気を読んだ発話提示法、高齢者・障 がい者に安心感を与える情報提示法なども研究します。さらに、そ のインタラクションによる人間の反応をセンシングすることで新たな 環境知能の構築に役立てます。 共同研究・社会活動など ATR知能ロボティクス研究所と連携することで、より実践的な研究 を進めます。 メディア情報学領域 ソーシャル・コンピューティング研究室 URL:http://sociocom.jp/ 特任准教授:荒牧 英治 [email protected] 研究室概要 本研究室は、自然言語処理を中心とした情報技術を用いることで、医療 を始めとした実社会の変革を出口とした研究課題に取り組んでいます。 実社会フィールドを扱う応用成果と、科学指向の両面を併せ持つ新し いタイプの情報学を開拓しています(図1)。 メンバーは、主宰である荒牧以外に、博士研究員が1名着任予定です。 少人数ですが、新しい学問を立ち上げる喜びを共有できればと思っていま す。 図1 本研究室の研究俯瞰 主な研究分野 1)集合知で病気を予防する 感染症の流行は、毎年、百万人を越える患者を出しており、常に 重要な国家的課題となっています。特に、インフルエンザは、新型/ 亜種を早期に発見することにより、危機を避けることが可能なため、 感 染 状 態の把 握は各 国にお ける重要なミッションとなって います。本研究では、代表的 なソーシャルメディアである Twitterを材料に、インフルエ ンザなどの感染症や危機事象 の流行把握を実現しています 図2 Twitterを用いたインフルエンザの 流行把握 (図2)。 を短縮することも重要です。 本研究室では、早期に症状を発見するため、記述した文章や発話 内容から認知症を予期する試みを行っています。 3)日本語カルテの言語処理コンテスト 近年、電子カルテの普及につれ、医療分野での言語処理の重要 性が増しています。欧米では、技術を効率よく、かつ、再現性をもっ て開発するために、研究者が共有可能な標準データの整備、及び、 標準データを用いたコンペティション形式のワークショップが開催 され、リソースが集積されつつあります。 しかし、非英語、特に日本語において、このようなデータはなく、 医療文書の解析技術の開発に興味はあるがデータを持っていない 研究者や、解析技術を適用する場を持っている企業の新規参入の 障壁となってきました。 以上のような背景から、本研究室では、研究利用が可能な日本語 のアノテーション済み医療文書を構築し、これを用いた解析タスク と共に研究コミュニティに提供しています。本データを用いたワーク ショップには、2011年には国内12グループ(27システム)、2013 年にも12グループ(45システム)が参加しました。 海外(7グループ)や企業(7グループ)からもの参加も多く、本邦 における医療言語処理における基盤を提供しています。 4)産学にまたがる実社会フィールド 他にも未来の街歩きプロジェクト 「100人マップ」 (図3) 、不動産検 索 (株式会社ネクスト共同研究) 、 闘病ソーシャルサイトのデザイン (株 式会社メディエイド共同研究) 、食品表現の解析(甲南大学、和歌山 大学共同研究) 、医用人工知能構築に関する研究(東京大学医学部 附属病院共同研究)など産学に渡って多くの研究を行っています。 2)言葉を測り 認知症の兆候を捉える 世界に類をみない超高齢化社会を迎える本邦にとって、高齢者へ の医療対策は重要な課題です。 とりわけ、認知症は、その予備軍(MCI)も含めると4人に1人の 割合となり、その医療 費は10兆円規 模と算 定されます(平成22年 厚生労働省)。 認知症の対策には、 治療法の確立もさるこ とながら、一方で早急 に症状を発見し、その 図3 医学会総会「未来医エキスポ2015」に出 進行を遅らせることで、 品した認知症予防のための言語能力測定ブース [Aramaki+, 2011]Twitter catches the 健康な期間を延長し、 flu: detecting influenza epidemics using 介護が必要となる期間 Twitter, EMNLP2011 図4 街歩きワークショップの様子 研究設備 ・個室型<語り>測定環境「スマート茶室」 (平成28年度完成予定) ・Twitterデ ータクローリング 及び 可 視 化 環 境「NAIST-AR(All Range surveillance)」 (平成28年度完成予定) 共同研究 ・東京大学医学部附属病院、京都大学医学部附属病院、株式会社 ネクスト、ニフティ株式会社など ・挑戦的萌芽研究、JSTさきがけ、AMED等の競争的資金によるプ ロジェクト、及び、マイクロソフト・リサーチ・アジア、富士ゼロック スなどを始めとした企業からの研究への賛同(奨学寄付金) Graduate School of Information Science Guide book 2016 28 システム情報学領域 研究室での教育・研究の概要 ロボティクス研究室 URL:http://robotics.naist.jp/ (写真左から) 教授:小笠原 司 [email protected] 准教授:高松 淳 [email protected] 助教:丁 明 [email protected] 研究室概要 ロボットは、実世界の環境や人間との相互作用(インタラクション、コ ミュニケーション)に基づき機能する知的システムです。このような知的シ ステムでは、実時間での認識機能(リアルタイムセンシング)が重要となり ます。本研究室では、視覚情報・触覚情報をはじめとしたリアルタイムセン シング技術や、それに基づいて知的システムを構成する技術に関して研究 をしています。 主な研究分野 1)ビジュアルインタフェース 人間とロボットや人間とコンピュータで、高度なインタラクション を実現するためには、環境認識や動作生成が必要になります。そこ で、日常生活をありのままに計測できるセンシング技術を研究し、人 やロボットの行動をサポートするシステムを開発しています。 ・時空間、人・環境モデリング (A-1) ・サービスロボットとインターフェース (A-2) ・ヒューマンロボットインタラクション (A-3) ・ヒューマノイドの制御・動作生成・強化学習 (A-4) 図1 ロボティクス研究室の研究概要 2)ヒューマンモデリング 人間の行動および動作戦略やその仕組みを理解するために、人 間の運動を計測、解析、モデル化し、応用する研究(人間型多指ロ ボットハンド、人の把持戦略解析、パワーアシスト、ハプティックデバ イス開発、筋骨格モデルを用いた動作評価など)を行っています。 ・筋骨格モデリングとスポーツ・医療応用 (B-1) ・触覚情報処理モデルとハプティックデバイス (B-2) ・電動義手と上肢機能支援デバイスの開発 (B-3) ・装飾義手と同様の外観を持つ電動義手 (B-4) 図2 研究分野A. ビジュアルインタフェース 3)応用ロボットシステム 実世界において役に立つロボットの実現を目指して、ビジュアルイ ンタフェースやヒューマンモデリングの研究成果から得られた要素 技術をさまざまなロボットに搭載することで、知的な応用ロボットシ ステムを開発しています。 ・ヒューマノイドロボット HRP-4 (C-1) ・双腕知能作業ロボット HIRO (C-2) ・人体型ロボット アクトロイド (C-3) ・車椅子ロボット Pioneer 3DX (C-4) 共同研究・社会活動など 産業技術総合研究所、ジョージア工科大学、カーネギーメロン大、 カールスルーエ工科大学、奈良県立医大、東京理科大、鹿屋体育 大、ATR、大阪市都市型産業振興センター、日本ロボット学会など。 図3 研究分野B. ヒューマンモデリング 図4 研究分野C. 応用ロボットシステム 29 Graduate School of Information Science Guide book 2016 (写真左から) 教授:杉本 謙二 [email protected] 准教授:松原 崇充 [email protected] 助教:南 裕樹 [email protected] システム情報学領域 知能システム制御研究室 URL:http://genesis.naist.jp/ 研究室概要 ユビキタス社会の実現によりコンピュータ制御とその知能化が至る所 で可能になりました。当研究室ではシステム制御と機械学習、信号処理、 センシングやそれらの融合研究に取り組んでいます。 主な研究分野 図1 フィードバック誤差学習制御 1)Advanced Control Systems ・ロバスト制御・適応学習制御(図1、図2) ロバスト制御など先端的な制御理論とその応用に取り組んでいま す。現在は特に生体の運動学習モデルとして著名なフィードバック 誤差学習(FEL)を制御工学的に研究しています。 ・超解像制御(図3) ON/OFFといった少ない情報で高精度な制御を実現するための 制御理論の構築(量子化器の最適設計)に取り組んでいます。 ・分散協調制御(図4) 電力システムや照明システムをはじめとした大規模なシステムに 対する分散協調制御を研究しています。 ・確率推論による最適制御・強化学習 確率最適制御・強化学習問題に対して機械学習分野における確 率推論の近似計算を用いたスケーラブルな解法を研究しています。 図2 柔軟アームの振動制御 図3 量子化器の最適設計 2)Sensing & Signal Processing ・独立成分分析に基づくシステムのブラインド同定 統計的な独立性を基にした信号分離技術(ICA)を制御工学に 導入することで、入力が未知(ブラインド)でもシステム同定が可能 となり、外乱分離や変化検出に応用します。 ・多様体学習を用いた高次元入出力システム同定(図5) 非線形次元削減法である多様体学習を用いて、動画や音声など の高次元時系列データに有効なシステム同定を研究しています。 図4 大規模システムの分散協調制御 3)Learning & Control for Robotics ・ヒューマノイドロボットの運動スキル学習(図6) ヒトのような高度な運動学習機能を実現するための強化学習、最 適制御について研究しています。過去2足歩行、けん玉、投球、着衣 支援、アクティブタッチなどの学習に成功しました。 ・外骨格ロボットによる歩行アシスト(図6) 結合位相振動子に基づく同期メカニズムと潜在変数モデルや確 率推論に基づく歩行アシスト技術の研究を行っています(ATR脳情 報研究所にて実施)。 ・情報理論的基準によるロボットの能動的行動計画 相互情報量などの情報理論的基準に基づくロボットの能動的な 行動設計原理および計算アルゴリズムの研究を行っています。 図5 多様体学習によるシステム同定 共同研究・社会活動など 企業との共同研究や、学生による提案型研究など多様な活動に 取り組んでいます。 図6 強化学習による運動スキル学習 Graduate School of Information Science Guide book 2016 30 システム情報学領域 研究室での教育・研究の概要 大規模システム管理研究室 URL:http://www-lsm.naist.jp/index.php/Home (写真左から) 教授:笠原 正治 [email protected] 准教授:笹部 昌弘 [email protected] 助教:川原 純 [email protected] 研究室概要 情報システムに代表される大規模複雑システムの設計・制御・構成法に 向けた数理的手法と情報処理技術を開発し、現実システムへ応用する研 究教育に取り組みます。情報科学からサービス・サイエンスに至る知見を 駆使して、大規模データセンターやネットワークシステムの高速性、高信 頼性、高い省エネルギー特性を実現する要素技術・システム構成法・シス テム制御法、さらにはシステム上で提供されるサービスの高度化や、シス テムを用いたビッグデータ処理技術に関する研究を幅広く行い、産業に密 接した研究成果の発信を行っていきます。 分散型仮想通貨エコシステム コールセンター・マネジメント モバイルデバイスを使用した避難誘 導システム ヘテロジニアス・ネットワーク 大規模グラフ処理アルゴリズム 100ノードクラスタサーバと避難誘 導システム実験 主な研究分野 1)システム・アナリティクス 応用確率論や理論アルゴリズム、ゲーム理論やメカニズム・デザイ ンといった情報科学の知見を駆使して、ビッグデータを高度に活用 する超大規模なデータセンターやネットワークシステムのデザイン、 さらにはシステム上で提供されるサービスの設計や、ビットコインに 代表される分散型仮想通貨エコシステムに関する研究を行います。 2)サービス・サイエンス サービス・サイエンスは、従来経験則に依っていたサービス構成 法やサービス提供法に対し、科学的アプローチによりサービスの生 産性と質の向上をはかり、さらにはサービス自体のイノベーションを 起こすことを目指す新しい学問体系です。ここではサービスの経済 的側面やサービス品質の社会科学的分析、サービスプロバイダ・マ ネージメントなど、より現場に踏み込んだ実践的な研究を行います。 3)人間行動知覚型ネットワーク 人間行動知覚型ネットワークの例としては、災害時の避難誘導シ ステムが挙げられます。避難者の所有するモバイル端末は、通常の ナビシステムと同様に避難経路を提示します。一方、避難者は経路 上に通行不能箇所を発見した場合、自律的に迂回を試みます。この ような経路の提示と避難行動との相互作用を利用することで、通行 不能箇所の自動的な発見やそれに基づく適切な避難誘導の実現を 目指した研究を行います。 4)ネットワーク・デザイン 無線アクセス技術の発展により、ヘテロジニアスなネットワーク環 境下で莫大な数の通信ノードを収容するネットワーク技術、さらに はクラウド・コンピューティングを連携させたモバイル・アプリケー ション開発が注目されています。ここではネットワーク科学やゲーム 理論のアプローチを駆使して次世代ネットワーク技術、環境学習型 コグニティブ無線技術、さらには莫大な数のセンサノードから得られ る環境データを基にした人間指向型モバイル・クラウドサービスに 関する研究を行います。 5)大規模データ処理アルゴリズム 全国規模の道路網や物流ネットワーク、 Twitter等の巨大ソーシャ ルネットワークの解析には膨大な計算が必要です。本研究室では、 組合せ最適化の技術を用いたデータ処理アルゴリズム設計、巨大な データを圧縮状態のまま処理するデータ構造の開発、Hadoop等 による数百台規模の並列分散環境でのデータ処理技法等の研究開 発を行います。理論だけではなく、当研究室専用の100台規模のク ラスタサーバを用いた実験による性能評価も行います。 31 Graduate School of Information Science Guide book 2016 実験設備 クラウド・コンピューティング実験設備(HP Moonshot System) 外部資金 科研費:基盤研究(B) ・基盤研究(C)、SCAT研究助成 共同研究など NTT、京都大学、大阪大学、北海道大学他と共同研究 (写真左から) 教授:池田 和司 [email protected] 准教授:吉本 潤一郎 [email protected] 特任准教授:久保 孝富 [email protected] 助教:爲井 智也 [email protected] 助教:佐々木 博昭 [email protected] 研究室概要 本研究室では、細胞から社会心理学あるいは運転行動まで、ヒトを中心 とした生体をシステムとしてとらえ、数理モデルを通してその基本原理を 解明し応用する研究をしています。これは、計算学(機械学習)、理学(生 命数理)、工学(信号処理)を広くカバーする境界領域研究です。 システム情報学領域 数理情報学研究室 URL:http://hawaii.naist.jp/modules/menu/ 3)信号処理:数理モデルを工学に応用する ・自動車運転行動の数理モデル ・構音障害者支援のための音声認識 ・適応支援ロボティクス ・適応信号処理アルゴリズムの開発・解析 ・強化学習の理論と応用 主な研究分野 1)機械学習:大量のデータから情報を取り出す ・ベイズ理論による統計的信号処理 ・知識発見およびデータマイニング ・統計的学習理論 ・因子解析とスパースモデルによるデータ解析 ・情報幾何学・情報理論の応用 2)生命数理:生命現象を数理で解き明かす 研究設備 眼球運動計測装置/脳波・筋電計測装置/モーションキャプチャ 装置など。 ・細胞の数理モデル構築 ・病態脳の特性解析および治療支援 ・共感性の神経回路基盤 ・認知的インタラクションデザイン学 ・価値基準の共有の数理モデル 共同研究・社会活動など NAISTバイオサイエンス研究科、ATR、Cinet、熊本大学、山口大学 医学部、麻布大学獣医学部、東京大学社会心理学教室、九州工業 大学、奈良県立医科大学、国立循環器病研究センター、奈良医療セ ンター、 (株) デンソー、マツダ (株)、ユニテック工科大学(ニュージー ランド)、マヒドン大学(タイ)など。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 32 システム情報学領域 研究室での教育・研究の概要 生体医用画像研究室 URL:http://icb-lab.naist.jp/index.html (写真左から) 教授:佐藤 嘉伸 [email protected] 准教授:大竹 義人 [email protected] 助教:横田 太 [email protected] 研究室概要 当研究室では、情報科学と医学の融合により高度に知能化された医用 画像計測・処理システムを研究しています。そのため、生体医用画像デー タベースからの統計学習や生体シミュレーションに基づく 「計算医学」の 研究を行っています(図1)。 効果とリスクを最適にバランスさせる治療計画を計算機により立案 するシステムを開発し、従来の「経験に基づく医学」を「科学的機序 とデータ科学に基づく計算医学」 に転換することを目指します。 (図3) 3)治療支援システム(手術ナビゲーション) 拡張現実感の技術を用いて実世界の人体と計算機内の仮想人体 とを正確に位置合わせして融合します。肉眼では見えない人体内部 の三次元構造を仮想人体で把握・予測しながら手術を行えるように する技術を研究しています(図4)。 図1 当研究室で行っている「計算医学」研究の全体像 主な研究分野 1)計算解剖学に基づく仮想人体の構築 医用画像工学が発展し、生きたままの人体内部の臓器・組織の構 造やそれらの機能を高精細3次元医用画像として計測することが可 能になっています。私たちはこの画像をもとに、多次元画像解析、形 状解析、変形解析、統計的モデリング、機械学習、ベイズ推定などの 手法・理論を駆使して、計算機内に「仮想人体」を構築する研究をし ています(図2)。 図4 手術ナビゲーションを中心とする治療支援システム 4)治療効果の評価システム 手術が計画通りに行われたかどうか、 また術後の合併症がおこる可 能性がないかといった治療効果の評価は、 リハビリテーションの計画 や次回の手術計画にフィードバックするために重要となります。私たち はこのような医療における品質管理を実現するため、治療効果を定量 的に評価するための人体動作解析システムを研究しています (図5) 。 図2 計算解剖学に基づく仮想人体の構築 2)診断・治療計画における意思決定支援システム 計算機内の仮想人体を使って、過去の患者の手術前の画像やシ ミュレーションによる予測結果、実際に行った手術記録などをデータ ベース化し、統計的なモデリングを行っています。これに基づき、治療 図5 治療効果の評価を目的とした人体動作解析システム PCクラスタ(24CPU、108コア)、ファイルサーバ(90TB)、3次 元医用画像システム(Synapse Vincent, Fujifilm Corp.)、光学 式/磁気式モーションキャプチャ装置(Polaris Spectra, Polaris Vicra, Aurora, Northern Digital Inc.)、超音波画像診断装置 (Aloka)など 図3 診断・治療計画支援システム 33 Graduate School of Information Science Guide book 2016 研究設備 外部資金・共同研究など ・文部科学省・科研費(新学術領域、基盤A、挑戦的萌芽) ・大阪大学・医学系研究科、米国・ジョンズホプキンス大学、スイス・ ベルン大学、イラン・テヘラン大学、米国・南カリフォルニア大学、 インド統計大学などと共同研究 (写真左から) 教授:金谷 重彦 [email protected] 客員教授:杉浦 忠男 [email protected] 准教授:Md. Altaf-Ul-Amin [email protected] 助教:小野 直亮 [email protected] 助教:佐藤 哲大 [email protected] 特任助教:黄 銘 システム情報学領域 計算システムズ生物学研究室 URL:http://csblab.naist.jp/kanayalab_ j/ 研究室概要 ゲノム解析に続く技術の進歩に伴い、種々のポストゲノム実験により得ら れるようになった多様かつ膨大なデータ(インタラクトーム、トランスクリ プトーム、メタボローム等)を統合し、生命システムとしての普遍性および 多様性の理解を目指すバイオインフォマティクス研究を行っています。ま た、ナノからマクロにいたる様々な生命機能の計測とその情報処理技術、 例えば、顕微バイオイメージング、光ピンセット、医用画像処理など、次世 代の科学を拓く生命科学と医療分野の計測システムに関する研究教育に 取り組みます。 図1 バイオインフォマティクス技術の開発。 (左) DPClusによるタンパク質相互作用に基づいた機能単位予測。 (右)自己組織 化法(SOM)による遺伝子発現情報の時系列パターン解析。 主な研究分野 1)バイオインフォマティクス 生物の構成要素(代謝物質、タンパク質、遺伝子等)の相互作用 の体系的な把握を目指し、DPClus(図1左)、BL-SOM(図1右)な どの情報処理アルゴリズムを開発しています。 バイオ情報データベースの構築を行っています。KNApSAcK Familyデータベースはメタボロミクス研究の分野で世界から高い評 価を受けている二次代謝物データベースです。また、漢方薬やインド ネシア生薬(Jamu)、などにおけるさまざまな植物の利用のされ方 なども蓄積しています。 次世代シーケンサー(NGS)による遺伝子の発現解析を用い、植 物が様々な代謝産物を生産する仕組みについて研究しています。 細胞内の代謝系や遺伝子発現系の振る舞いを計算機シミュレー ションによって再現し、モデル化するための研究を行っています。 2)バイオイメージング 図2 KNApSAcK DB ホームページ。 http://kanaya.naist.jp/KNApSAcK_Family/ 生物学分野のみならず医学分野においても重要さを増している細 胞レベル〜生体分子レベルでのイメージング法(顕微鏡技術)の開 発や画像処理技術の開発を行っています。 ミクロン〜ナノメートルの大きさの対象物を自由に操作できる光 ピンセット技術や細胞や染色体を顕微鏡下で手術する技術を研究 開発しています。 ピコニュートン〜ナノニュートンというレベルの極微小な力を計測 することで細胞内の生体分子が発生する力の強さや細胞の力学特 性を計測する技術を開発しています。 3)医用画像処理・生理信号計測 磁気共鳴画像法(MRI)や陽電子断層撮影法(PET)などの医用 画像計測機器で得られる画像データから、心臓の冠動脈撮像を自 動的に支援する、脳の変成を統計的に解析するといった、診断の支 援となる医用画像の処理手法を開発しています。 非侵襲、連続的に体温、心拍、呼吸など生命徴候を計測するセン サー及びそれらを利用したウェアラブル機器を開発しています。更 に、連続的な生理信号を利用した概日リズム、縮日リズム等の時間 生物学的分析も行っています。 図3 バイオセンシング、バイオイメージング、医用画像処理などの応用例。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 34 システム情報学領域 研究室での教育・研究の概要 ロボットビジョン研究室 URL:http://rvlab.naist.jp/index-jp.html (写真左から) 客員教授:金出 武雄 特任助教:伍 洋 [email protected] 研究室概要 本研究室は、研究推進機構の戦略的国際共同研究ネットワーク形成プ ログラム国際共同研究室整備プロジェクトにより設置された国際共同研 究室の協力研究室です。コンピュータビジョンの技術を通して、ロボットの 性能を強化したり生活の質を向上するような研究をしています。 主な研究分野 1)障害者・高齢者のための支援技術 ロボットやウェアラブルカメラなどにコンピュータビジョンを応用 し、障害者や高齢者を支援します。安全面だけでなく、社会との関わ りや生活の質を向上する技術を目指しています。現在は、ウェアラブ ルカメラを用いて視覚障害者が話し相手の態度や表情を「見る」こ とを可能にする研究をしています。将来的には他の障害を持った方 のニーズにも対応していく予定です。 3)大量のデータを処理できるスケーラブルな視覚認識 今、時代はビッグデータ。膨大な量のデータを共有・アクセスでき、 無数のセンサやデバイスを接続できるようになりました。コンピュー タビジョンの世界でも、画像認識の軸足は小規模の限定的なデータ から実世界の問題へと移り変わりつつあります。その代表的な課題 として、実際の大規模監視システムに役立つような、複数カメラ間で の大規模人物照合に取り組みます。同時に画像分類や物体認識と いった一般的な課題の研究も行い、大規模視覚認識モデルの構築 につなげていきます。また、こうした研究はFirst-Person Visionの 研究にも役立つことになるでしょう。 研究設備 ・ウェアラブルカメラや他のウェアラブルデバイスなど 2)ウェアラブルカメラとモバイルコンピューティングを用い たFirst-Person Vision First-Person Visionとは、人が見ているものと同じものをコン ピュータ(ロボット)に見せるというものです。正確には、人と同じ視 点から映像を撮影することで、人の視界・興味・意志・行動をよりよ く理解しようという試みです。データ収集・処理にはウェアラブルカ メラとスマートフォンなどの小型デバイスを使用し、外部のリソース と通信する方法を用います。この研究によって、物体のセグメンテー ション(領域分割)や追跡、検出、認識といった問題に対して従来よ り優れた能力を発揮することが期待され、また他にも様々な応用が 考えられます。 35 Graduate School of Information Science Guide book 2016 共同研究・学会活動 ・カーネギーメロン大学(米)、京都大学、ペンシルベニア大学(米)、 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン (イギリス)、西安交通大学(中 国)、厦門大学(中国)、東南大学(中国)など 教育連携研究室 コミュニケーション学研究室 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所) URL:http://www.kecl.ntt.co.jp/rps/index.html (写真左から) 教授:山田 武士 [email protected] 准教授:澤田 宏 [email protected] 研究室概要 本研究室では、インターネット上にある、あるいは実世界からセンサを 通じて得られる多種多様のデータから、有益な情報を知識として抽出する 技術に関する基礎研究を行っています。 4.ソーシャルネットワーク上の情報伝播解析 ニュースや噂、評判情報はソーシャルネットワークを介して伝播し ます。この現象を確率モデルで表現し、将来のトレンド予測や潜在的 な影響関係の推定の研究を行っています。 主な研究分野 1)機械学習とデータマイニング 今日我々が入手できるデータの量は非常に膨大で、人間が一通り 目を通して内容を理解し解釈する、という限界をはるかに超えてい ます。従って、そのような膨大なデータを自動的に解析・解釈する方 法が必要とされています。 1.潜在トピック抽出技術 多様な大規模データに内在する隠れた構造(トピック)を抽出す るための手法であるトピックモデルとその拡張の研究を行っていま す。トピックモデルは文書が生成される過程を表現した確率モデル です。トピックモデルを拡張し、可視化や推薦システム、購買ログ解 析などへの適用を進めています。 2.時間変化する関係データの解析・クラスタリング技術 ソーシャルネットワーク上の友人関係や企業間の取引関係など、 時間とともに変化する「関係」の情報を対象として、関係ネットワー クに潜むコミュニティクラスタの発見や関係の時間変化を追跡する 技術を研究しています。 2)センサを用いた実世界マイニング 加速度センサ、照度センサ、GPS、カメラ、マイクロホンなど様々な センシングデバイスを用いて実世界の状況を観測し解釈して、人間 にとって分かりやすい形式で提示するなどのセンサ情報処理に関す る研究を行っています。 1.相関性を利用した効率的なデータ収集 複数のセンサをネットワークとして配置し、実世界の状況を計測 して収集するデータには、同じようなパターンが繰り返し現れる、そ ばにあるセンサではよく似た値が観測される、などといった特徴があ ります。このようなセンサデータの特徴を活かし、各センサノードで 観測されるデータ系列間に内在する相関性を利用することで、デー タを圧縮して収集する手法を提案しています。フィールド実験によ り、実際に、無線センサノードのバッテリーの消費を抑えることを確 認しました。 3.高速類似探索 文書・画像・音声音響信号・記号列等の多様なデータを対象とし、 種々の類似尺度を利用できる、近傍グラフを索引構造とする高速類 似探索法の研究をしています。近傍グラフの利用は、探索高速化と 多様なデータ・類似尺度を利用可能とすることだけでなく、探索結 果を容易に可視化することを可能にしています。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 36 教育連携研究室 教育連携研究室 計算神経科学研究室 (国際電気通信基礎技術研究所) URL:http://www.cns.atr.jp/cns-naist/ (写真左から) 教授:川人 光男 [email protected] 准教授:森本 淳 [email protected] 研究室概要 本研究室では、脳機能の情報処 理の観点からの解明と、それに基づ く新たな機械知能(人工知能)の実 現を目指し、ブレイン・デコーディン グ、ブレイン・マシン・インタフェー ス、ニューロフィードバック、ロボット学習などの方法論をもとに最新の機 械学習手法を駆使した計算理論的神経科学の研究・教育を行う。 主な研究分野 感覚、運動、コミュニケーション、情動、言語など多岐にわたる脳 機能を理解するために、神経生理学、心理学、脳活動非侵襲計測、 ロボティックスなど実験的な手法を、計算理論的な枠組みで有機的 に統合する。現在、特に下記の研究プロジェクトに参加する学生を 募集している。 1)機械知能のロボット応用 人間がどのように行動決定し、自らの身 体を制御しているのかという問題は、 いずれ も目的指向の意思決定問題として捉えるこ とができる。ヒューマノイドロボットの動作 学習を応用例として、意思決定問題に対し てデータ駆動でその解を導く強化学習理論 を背景とした機械知能の研究開発を行う。 2)ブレイン・デコーディング 脳の信号は、心の状態を表現する「コー ド」と見なすことができる。機械学習等の情 報科学の手法を利用して、脳と心の状態を 対応づけるマッピングを同定し、脳が情報をどのようにコード化し、 処理しているかを理解する。また、脳信号から心の状態を解読(デ コード)することにより、脳でロボットやコンピュータを制御するブレ イン−マシン・インタフェースや身体を介さないコミュニケーション技 術を開発する。 3)実環境ブレイン・マシン・ インタフェース 日常的な環境下の脳活動を計測して、ス トレスや共感などの情動状態を推測する手 法を開発します。これにより自然な状態での 認知機能の神経基盤に迫ると共に、人材育 成などへの脳科学の応用を目指します。 4)脳のダイナミクスモデル 脳情報処理メカニズム解明のためには、 複雑な脳計測データを精度よく計測し、正 しく解釈し、適切に情報を集約する必要が あります。本研究室では、数理・物理を融合 して、脳計測データの精度向上・情報抽出・ モデル化のための手法の研究を行っていま す。開発された手法は、他研究室のプロジェ クト進展にも大きく貢献しています。 37 Graduate School of Information Science Guide book 2016 5)脳活動フィードバック 数理統計技術でfMRI信号の空 間パターンを解析し、被験者に実 時間でフィードバックすることによ り、目標の活動パターンを誘導す る方法を用いて、疾患のメカニズム の解明および治療方法の開発を目 指します。 6)意思決定の数理モデル 人間の意思決定のメカニズムを 解明するために、脳の計算論に基 づいた実験手法や解析手法の研 究・開発を行っています。また研究 で得られた知見を、精神医学分野 や社会経済分野など広く社会へ応 用していくことを目指します。 7)BMI外骨格ロボット 運動アシストや産業用途などに おいて、今ロボットが人間と物理 的に近いところで協働することが 期待されている。そのためには、ヒ トとロボットが相互にかつ適応的 に協調する共制御の枠組みが必 要となる。ブレイン・マシン・インタ フェース(BMI)を用いる外骨格ロ ボットへの応用にむけた、共適応 制御の枠組みの研究開発を行う。 研究設備 ・脳活動計測環境 ・fMRI装置、 MEG装置、 脳波計 (EEG) 、 近赤外線分光装置 (NIRS) ・ロボット実験環境 ・ヒューマノイドロボット、上肢外骨格ロボット、下肢外骨格ロボット ・大型実験設備 ・BMIハウス 共同研究・学会活動 ・川人:科学技術振興機構「脳情報の解読と制御」領域統括、日本 神経科学会理事 ・森本:IEEE Robotics and Automation Society、日本神科学 学会 各会員 卒業後の進路 ・国内外大学、国立研究開発法人(産業技術総合研究所など)、総 務省、企業(IBM、日立製作所、日本電気、サイバーエージェント、 バンダイナムコ、島津製作所、パナソニックなど) 教育連携研究室 ヒューマンウェア工学研究室 (パナソニック株式会社) URL:http://isw3.naist.jp/Contents/Research-ja/32_lab-ja.html (写真左から) 教授:小澤 順 [email protected] 准教授:井上 剛 [email protected] 研究室概要 本研究室は、パナソニック株式会社・先端研究本部との産学連携で運 営される教育連携研究室です。本研究室での研究を希望する方は、親元 研究室との連携の下、京阪奈学研都市の光台地区にあるパナソニック株 式会社の研究所において研究活動を行うことになります。 ヒューマンウエア(Humanware) とは、人間的な知能情報処理、メディ ア情報処理、柔軟なロボティクス/メカトロニクスを目指すという思いを こめた造語で、 「情報の受容・発信の本質は人にある」という考えを基本に しています。従来の情報通信技術は、数学を基礎に、コンピュータ機器・ 通信機器を研究開発の対象としてきました。しかし、本来、これらの機器 を使用する人間を含めた全体的なシステムや仕組みの研究開発が必要 腕の筋電位を用いたリモコンとアクチュエータ制御 した新しい情報処理技術の研究に取り組んでいます。 3)非接触生体センシング技術 で、本研究室では、人間の認知、運動特性解析、生理現象解析などと融合 主な研究分野 主な研究分野としては以下のようなものがありますが、これ以外 にも人間とのインタラクション、柔軟なロボティクス/メカトロニク スについての研究を行っております。 人間のバイタル情報(心拍、呼吸等)を、日常生活のなかで、より 自然な形(低侵襲・非接触) でセンシングする技術を開発しています。 特に、非接触なセンサとしてマイクロ波や、可視光カメラ、さらには 広帯域のスペクトルカメラなどを用い、非接触に伴う環境ノイズの中 から微弱な人間のバイタル情報を検知・抽出する信号処理技術の研 究開発を行っています[4]。 1)脳機能統合センシング技術 人間の脳の活動を、脳電位・脳血流・視線センサを用いて分析し ます。これにより、ユーザの外観からは検出が困難であった感情等の 内部状態を推定する技術を開発します。例えば、ユーザのコンテン ツに対する興味[1、2]、ユーザインタフェースの利便性の評価、認 知状態等を定量化することを目指します。 非接触センサでユーザのヘルスケアチェック 脳機能統合センシング 2)筋電位を用いた動作認識、アクチュエータ制御技術 筋電位を用いて手の状態を認識する技術を開発しております。こ の技術により、ユーザがリストバンド型の小型筋電位計測装置を装 着するだけで、離れた位置にある家電機器を操作したり、ユーザの 行う手の詳細な動作を、アクチュエータで実現する技術を開発して います[3]。 ・ [1]Yoshioka, M., Inoue, T., and Ozawa, J., : “Brain Signal Pattern of Engrossed Subjects using Near Infrared Spectroscopy( NIRS ) and its Application to TV Commercial Evaluation,” IEEE World Congress on Computational Intelligence,(IJCNN2012), pp.27772782,(2012). ・[2]井上, 吉岡, 小澤:脳血流の変化と視線の停留領域によるCM コンテンツ評価手法, ヒューマンインタフェースシンポジウム 2011. ・[3]Motoyama, H., Inoue, T., and Ozawa, J., : “Electrode Layout of Wristband EMG Measuring Device for Hand Gesture Recognition,” Proc. of the 2015 IEEE Int. Conf. on Consumer Electronics(ICCE2015), pp. 159-160(2015). ・[4]Murakami, K., Yoshioka, M., and Ozawa, J., : “Non-contact Pulse Transit Time Measurement using Imaging Camera, and its Relation to Blood Pressure,” The 14th IAPR Int. Conf. on Machine Vision Applications,(MVA2015). Graduate School of Information Science Guide book 2016 38 教育連携研究室 教育連携研究室 シンビオティックシステム研究室 (日本電気株式会社) URL:http://jpn.nec.com/rd/ (写真なし) 教授:田谷 紀彦 研究室概要 本教育連携研究室は、2016年度より大阪府吹田市のNECブレインイ ンスパイヤードコンピューティング協働研究所に設置します。本研究室 は、人と共生する情報システムの特性を検討し、人の意図など知的活動を 理解する技術、さらにその知的活動を支援する技術に関し、教育と研究を 行うことを趣旨に開設されました。これまで、本研究室ではWeb2.0、クラ ウドソーシングやSNSなどを超える新たなコミュニケーション・メディアや 創造活動の支援という将来有望な実用システム開発し、人と人との共生、 人と社会との共生(シンビオシス)の実現を目指す研究や教育に取り組ん 主な研究分野 1)プログラミングモデル 2)計算機アーキテクチャ 3)生物行動モデル 4)計算アルゴリズム 5)ヒューマンファクター 6)インタラクティブな協調・共創モデル で来ました。 たに、人・社会・環境の共生・調和を実現するために、環境適応力や省エ 1)マルチセンサ人間行動計測 2016年度からは、引き続き「シンビオシスの実現」という理念の下、新 ネ性に優れ、使う人にやさしく、次世代のIoTインフラを支える新たなコン ピューティングシステム(Brain-Inspired Computing System)の実現 を目指す研究をスタートさせます。 Brain-Inspiredとは、 「脳に学ぶ」 「脳に倣う」という意味です。近年、 人工知能やビッグデータ処理技術は急速な進化を遂げています。しかし、 研究テーマの例 オープンラボでの全ての知的活動や屋外での活動を記録。創造活 動を促進した人、モノ、情報との接触を抽出することで、創造に関わ る因果関係を分析する。また、ひらめきを含む知的活動を支援シス テムや新たなコミュニケーション・システムを探索する。 人間も含めた生物は、柔軟性、臨機応変な環境適応性、学習、類推、連 想という能力面で、いまのコンピューティング技術を凌駕する部分が多々 あります。また、人間の場合、脳は通常20Wh前後の電力しか消費しませ ん。このように、コンピューティング研究が脳に学ぶべき点は、能力やエネ ルギー消費という面だけ見ても多くあり、脳に学ぶことで全く新しいコン ピューティングを生み出すチャンスがあると私たちは考えています。 また、人と共生するコンピューティングには、人にやさしく、人をサポー トし、人が扱いやすいことが求められます。システムとして考えれば、人の 状態や行動特性を勘案したデザインも重要なポイントです。こうした観点 から、本研究室では、脳科学ほか様々な関連研究領域と融合した新しい コンピューティング技術の研究に取り組んでいます。 2)知的行動分析技術 大量に蓄積された知的行動情報から、行動の癖やノウハウなどの 暗黙知を自動抽出する。また、健康状態などの本人も気がつかない 異常を検出する。 39 Graduate School of Information Science Guide book 2016 教育連携研究室 マルチメディア移動通信研究室 (株式会社NTTドコモ) URL:http://isw3.naist.jp/Contents/Reseach/cl-05-ja.html (写真左から) 教授:奥村 幸彦 准教授:浅井 孝浩 研究室概要 現在、第3世代移動通信(3G)が広く普及しておりますが、本格的なマ ルチメディアアプリケーションの登場に向けて、移動通信も、移動環境で 100Mbps、準静止環境(歩行速度以下)で1Gbpsの無線伝送能力が要 求されています。このような大容量マルチメディア移動通信を実現するた めには、より広帯域な無線周波数が必要となりますが、無線周波数は有 限な資源であるため、さらなる効率的な使用が必要となります。本研究室 ではこれらのサービスを実現するための基礎となるマルチバンド・マルチ アンテナシステム、電波伝搬、エリア設計とその評価技術などの研究をし ています。 主な研究分野 1)MIMOアンテナ構成法と評価法(屋外アンテナシステム) 上記を実現する技術のひとつとしてMIMO技術が有力視されてい ます。ここでは、アンテナ・電波伝搬・エリア設計の観点よりMIMO アンテナ構成法と評価法の検討を行います。屋外での電波環境測 定、電波暗室でのMIMO電波環境模擬装置による評価、アンテナ試 作、システムシミュレーションなどを総合的に取扱い最適なアンテナ システム設計の研究を行います。 2)レピータ干渉低減技術(屋内アンテナシステム) 次世代移動通信システムにおいては、これまで以上に屋内での サービスの重要性が増してきます。これを実現するためには経済的 で効率的な屋内アンテナシステムの構築が必要です。 現在はレピータ (中継装置)などが多く用いられていますが、親局アンテナと子局ア ンテナの干渉を広帯域にわたって低減する技術の確立が求められて います。これらの課題を信号処理、電波伝搬、アンテナ技術の観点よ り研究します。 研究設備 アンテナ・電波伝搬・エリア設計の基本研究に必要なシミュレー ション計算機、RF送受信機、電波環境測定装置、電波環境模擬装 置、各種アンテナ、アンテナ工作機器および電波暗室(電波無響室) などが利用できます。 移動通信システムにおいてアンテナは必要不可欠なキーデバイス のひとつです。都市部、郊外、山間部などに応じて如何に「圏外」を 減らすかは、電波伝搬の把握と最適なアンテナの設計にかかってい るといえます。これまでのアンテナはサービスエリアに対して電波を 忠実に照らすことが重要でしたが、これからのマルチメディア移動通 信においては、マルチアンテナによる信号処理を用いて電波を適応 的に制御することが求められています。 アンテナ・電波伝搬・エリア設計の研究では、計算機シミュレー ションによる解析・設計が広く用いられます。シミュレーションには 電磁界理論に基づき様々な手法があり、研究の対象に応じて適宜 利用されています。一方で、これらの設計結果の実証には電波実験 が欠かせません。特にアンテナ実験の際は周囲環境に左右されずア ンテナ固有の性質を的確に評価する必要があります。そのためには 理想的な空間が必要となり、これを実現する設備が電波暗室(電波 無響室)です。外からの電波を遮断したり中の電波を外に漏らさな いために「暗室」、あるいは電波を中で反射させないために「無響室」 と呼ばれています。本研究室では、計算機シミュレーションから電波 実験までを一貫して実施し、MIMOアンテナ構成法や屋内アンテナ システムの研究を進めていきます。 次世代移動通信のためのマルチバンド・マルチアンテナ マルチバンド・マルチアンテナ技術 MIMOアンテナ構成法 電波暗室(電波無響室) Graduate School of Information Science Guide book 2016 40 教育連携研究室 教育連携研究室 光センシング研究室 (オムロン株式会社) URL:http://www.omron.co.jp/r_d/vision/index.html (写真左から) 教授:諏訪 正樹 [email protected] 准教授:井尻 善久 [email protected] 研究室概要 本研究室ではユビキタスネットワークの入力装置として重要度が高まっ ているセンシングの研究をおこなう。特に画像データから得られるパター ンや立体の認識および光の波動性や偏光を応用した物の質的な認識を 中心に、生物の視覚機能にせまるセンシングの研究を幅広くおこなう。こ れはビジョンセンシングと呼ばれる研究分野であり、なかでもファクトリー オートメーション(FA)やセキュリティ分野へ活用できるビジョンセンシン グの研究に注力していく。 顔画像センシングにおける顔検出例 主な研究分野 1)3Dビジョンセンシング 画像から対象の3D情報をセンシングする3DビジョンセンサをFA やセキュリティなど様々な分野で実用化するためのカメラキャリブ レーション、計測アルゴリズム等の基盤技術について研究・開発す る。 2)文字・一般物体認識(Pattern Vision) 「人間に学ぶ」全く新しい概念で文字・物体(多くが生産現場にお ける部品等)を捉え劇的なコンパクト化を実現する文字・一般物体 認識のための基盤技術を研究・開発する。 3)顔画像センシング(OKAO VISION) 人間の多様な状況を視覚によって捉えることにより、人間重視の ソーシャルニーズを満たす画像意味理解技術を提供することを目的 とし、そのための技術として人物個人同定、人物動作推定等の基盤 技術について研究・開発する。 文字・一般物体認識のFAでの適用例 研究設備 ・独自のネットワーク環境および計算機群 ・画像データ収集設備(暗室、各種照明装置など) ・大量画像データベース ・距離計測評価装置 ・3D画像処理装置 ・カメラ評価装置 共同研究・社会活動など 中国の清華大学、上海交通大学などと共同研究を実施 3Dビジョンセンシングによるひとの動線検出例 4)その他のビジョンセンシング 1)-3)以外にも画像意味理解技術や対象の「いろ・つや」を計測 する技術などに関する新たな研究テーマ設定も予定している。 41 Graduate School of Information Science Guide book 2016 教育連携研究室 生体分子情報学研究室 (独立行政法人産業技術総合研究所) (写真左から) 教授:上野 豊 [email protected] 教授:福井 一彦 [email protected] 研究室概要 タンパク質など生体分子の機能とそのメカニズムを探るための、バイオ インフォマティクスの手法開発を進めています。大規模計算機を活用した 網羅的な探索、さらに実験的データにある情報の欠損を補う解析法の開 発など、情報工学的な手法で生命科学における知識発見を目指します。 実験的に機能が解析された分子の立体構造から仕組みを理解するた めに、分子力場によるシミュレーションが必要です。標的分子の機能を探 るため、各種分子生物学的データベースにある関連情報を活用します。情 報科学によって実験データにある情報をより深く捕らえる手法を研究しま す。 主な研究分野 1)タンパク質の相互作用シミュレーション タンパク質同士または核酸や低分子との複合体における分子認 識メカニズムを探るため、複合体の分子動力学および量子化学計算 から相互作用を解析します。PDB立体構造データベースに見られる 相互作用を網羅的に探索した相互作用の統計をもとに、標的分子と のドッキング予測を試みます。 図 タンパク質-タンパク質のドッキング予測計算の例 2)情報統合基盤の開発 実測されたデータをより効率的に解析するため、解析要素技術 を柔軟に組み合わせ可能とするプラットフォームを用いたワークフ ロー解析基盤を構築します。また既存のデータベースと連携し動作 可能とするためセマンティツク技術を用いたデータ連携に取り組ん でいます。 3)電子顕微鏡単粒子画像からの構造解析 タンパク質複合体の電子顕微鏡画像を解析するため、加算平均 でノイズ除去する粒子像をクラスタリングするアルゴリズムを改良し て解析の信頼性を上げたり、不完全な実験データからの解析を試み ます。 4)分子構造モデリングスクリプトの開発 動作しているタンパク質の構造情報を捉えた各種実験データに 合う立体構造のモデルを構築し、動作メカニズムを検証します。捉 えた構造変化は、タンパク質分子アニメーションで可視化します。こ れらを効率的に表現できるスクリプト言語の開発と実用化を進めま す。 研究環境 本研究室は、平成12年より継続する独立行政法人産業技術総合 研究所・生命情報科学研究センター(CBRC)との連携活動を中心 に展開してきました。東京大学、早稲田大学の連携研究室も併設さ れ、 国内外の研究者によるセミナーや生命情報工学の人材養成コー スの講義など、センター内外の研究者との交流の場面があります。 また、関西地区にある産業技術総合研究所の研究施設に週1日訪 問して研究を進めるテーマも可能です。 (研究設備の例) ・PCクラスタ(1024CPU) ・BlueGene(22TFlops) ・AISTスーパークラスタ ・触覚付6自由度入力装置 図 筋収縮を制御するトロポニン・トロポミオシンの相互作用 Graduate School of Information Science Guide book 2016 42 教育連携研究室 教育連携研究室 デジタルヒューマン学研究室 (独立行政法人産業技術総合研究所) URL:http://www.dh.aist.go.jp/jp/research/assist/naist/ 教授:多田 充徳 准教授:村井 昭彦(写真なし) 研究室概要 当研究連携講座は、東京お台場にある産業技術総合研究所(産総研) に設置された、人間情報研究部門デジタルヒューマン研究グループ内にあ ります。当センターでは2001年の設立以来、ヒトの機能の計算モデルを 構築することを目指して、国内外の他分野の研究者と学生、総勢30名程 度のグループで研究を進めています。当講座では、内部構造までも含めた ヒトの形体とその機能的な神経筋骨格構造について、モデル化技術、計 算技術、計測・提示技術の3つの観点にから研究しています。未来の情報 化社会において、システムがヒトと人間環境を理解しサポートすることは、 もっとも実現されていない、そしてもっとも重要な機能だと考えられます。 2)デジタルヒューマンモデルに基づく運動生成・制御の理 解(図2) 光学式モーションキャプチャやフォースプレートを用いてヒトの運 動を計測し、運動学や動力学により関節角やトルクを計算し、ロボ ティクスや統計学の手法によりその背後にある運動生成・制御のメ カニズムの解明を研究します。本年は、現在構築しているボリューメ トリックデジタルヒューマンモデルを用いて日常動作やアスリートパ フォーマンスの計測・解析を行い、運動データの統計学的解析や特 徴・変容の抽出について研究します。 デジタルヒューマン技術を用いることで、ヒトの関わるシステムが個人に適 合して安全で使いやすくなり、状況に応じて適切なサポートができるよう になることを目指しています。 主な研究分野 教育連携講座を担当する多田はデジタルヒューマン技術の専門 家として、前述のテーマのうちデータベース及び統計学に基づいた 標準・個人デジタルヒューマン生成のためのモデル化と運動計測・ 解析デバイス・システム開発の研究を行っています。また、デジタル ヒューマン研究グループにはヒトの神経筋骨格構造のモデル化と、 それを用いたヒトの運動生成・制御メカニズムの解明の研究を行っ ている研究者もいます。 今年度、本講座で募集する主な研究テーマは以下の2項目です。 これらは現在進行形の研究プロジェクトの一部であり、他にも関連 する多くの研究テーマが考えられます。テーマ選択の際には、本人 の希望を優先します。 1)解 剖学及び計測に基づくボリューメトリックデジタル ヒューマンモデルの構築(図1) 骨格や筋、臓器等の形状や機能に関する解剖学的知見や医用画 像に基づき、ヒトの形体や機能をコンピュータ上に再現するための モデル化技術を研究します。本年は、現在構築しているボリューメト リックデジタルヒューマンモデルに基づき、手足部の詳細化や体幹・ 腹腔等のモデル化について研究します。 図2 デジタルヒューマンモデルに基づく運動生成・制御の理解 研究設備 ・3次元形状スキャナ(足部用、全身用) ・モーションキャプチャ(VICON、Optitrack) ・ワイヤレス表面筋電計 ・力センサ、床反力計 ・トレッドミル ・3Dプリンタ ・テレビ会議システム 学生生活 当研究室には2004年から毎年1 ~ 2名の学生が在籍し、他大学 から受け入れている10 ~ 15名の学生と共に研究をしています。外 国人研究者や在外研究研究者が多く、国際会議での発表や留学な ど、国際交流が盛んです。 図1 解剖学及び計測に基づくボリューメトリックデジタルヒューマンモデルの構築 43 Graduate School of Information Science Guide book 2016 その他のイベント ・研究進捗ミーティング ・デジタルヒューマンシンポジウム ・DhaibaWorks技術協議会 ・新年会、忘年会、歓送迎会、反省会など(適宜) 教育連携研究室 放射線機器学研究室 (国立循環器病センター研究所) URL:http://www.ncvc.go.jp/res/divisions/radiology/ 教授:飯田 秀博 准教授:越野 一博(写真なし) 研究室概要 なっています。本研究室では、将来の医療に貢献できる、情報工学出身の 若い研究者と技術者の育成を目指しています。 本研究室は、国立循環器病研究センター研究所・画像診断医学部との 本研究室では、将来の医療に貢献できる、情報工学出身の若い研究者と 教育連携研究室で、画像診断法の開発と応用研究を行っています。 技術者の育成を目指しています。 PET、SPECT、MRIなどの最先端の画像診断技術は、日常の診療で重 要な役割を担っていますが、疾患の本質を理解することや、新しい病態の 発見にかかる臨床研究にも貢献しています。また、新しい治療法や治療薬 の開発においても利用されるに至っています。私たちの研究室は、情報工 学に基づく新しい画像処理法と撮像技術の開発を行いながら、診断指標 を医療の中で提案し、実証することを目指しています。 高解像度ピンホールSPECT装置を独自に開発し、マウスの機能イメージ ングに成功しました 新しい画像処理法と撮像技術の開発を行う一方、これらの方法の動物 実験評価と臨床応用を行っています。循環器疾患の分野では、多くの治療 薬の開発や、再生医療の研究開発がおこなわれていますが、この中で画像 診断の技術は、これらの治療技術の有効性を限りなく無侵襲に、繰り返し 観察することができるので、重要な役割を担います。中でも微量の放射性 同位元素を利用するPETやSPECTなどの核医学手法や、高感度MRI撮 像法は、臨床研究や動物実験においても、病態の変化や治療に基づく改 善を高感度で観察することができます。私たちは、このための新しい画像 撮像法や画像解析手法の開発を行っています。 また、私たちの研究領域は多くの分野にまたがっており、これにかかる 医用工学研究者を中心に、医学、生物学、薬学、化学分野の一線の研究 者や技術者、医療関係者、各界の企業人が協力しています。ユニークな研 究環境であると同時に、多分野研究者・技術者の間の情報交換の拠点と 主な研究分野 脳や心筋領域の画像診断技術の開発研究を行っています。情報 工学的手法に基づき、新しい画像診断技術の開発や、既存の技術 の改良、臨床研究を支える標準化に向けたプログラムの開発が主な 分野です。今までに開発された成果の一部は、国内外の臨床診断や 多施設臨床研究に貢献しています。 研究設備 研究用のPET装置、SPECT装置、3テスラMRI装置、血管造影装 置、さらにポジトロン放出核種を生成する小型サイクロトロン、有機 薬剤合成設備を有しており、最先端の画像診断機器および画像処 理プログラムの開発環境が整っています。 共同研究 フィンランド国立PETセンター、東芝(株)、シーメンス・ジャパン (株)、GEヘルスケア・ジャパン(株)、日本メジフィジックス(株)、 (株)モレキュラーイメージングラボ、 (株)ABX-CRO(独国)など 卒業生、研究員の進路及び就職状況 国立循環器病研究センター研究所、秋田県立脳血管研究センター、 カロリンスカ研究所、大阪大学(准教授)、香川大学医学部(准教 授)、フィンランドPETセンター、大阪府立成人病センター、GEヘル スケア・ジャパン(株) 、 (株)島津製作所、 (株)モレキュラーイメー ジングラボ、 (株)テルモなど Graduate School of Information Science Guide book 2016 44 教育連携研究室 教育連携研究室 セキュアソフトウェアシステム研究室 (独立行政法人産業技術総合研究所) (写真左から) 教授:大岩 寛 准教授:Cyrille Artho 准教授:Affeldt Reynald(写真なし) 研究室概要 計算機ソフトウェアがいわゆる汎用コンピュータだけでなく、自動車、航 空機、家電製品、医療機器、工場設備、基盤インフラ設備など我々の生活 や生命の安全性に直結する機器に組み込まれて使われるようになってき た現代において、ソフトウェアの信頼性を確保することは、きわめて重要な 産業上の要請になってきています。また、ソフトウェアの規模が拡大し、利 用者がソフトウェアを「見て」安全性を直接確認することが出来ない以上、 工学的な手法でシステマチックに安全なソフトウェアを構築し、さらにそ の安全性を他人にきちんと説明する根拠立てを作ることが、重要になって きています。本研究室では、ソフトウェアの安全性の担保に必要な技術や、 それらをソフトウェア開発の各段階に具体的に適用するために必要な手 法を研究開発し、産業としての安全なソフトウェア構築手段の体系化を目 指します。 主な研究分野 1)プログラムの安全性を担保するための要素技術 ・プログラム意味論、安全性の担保 ・プログラミング言語の理論と実装 (特に型安全性など、安全性やセキュリティに直結する分野を中心 に扱います) ・プログラムの安全性を検証する手法 ・モデル検査 ・形式検証技術 ・プログラムの安全性を検査する技術 ・形式的手法に基づくプログラムテスト ・プログラムの解析技術 ・プログラムの仕様記述法、数理的技法、形式技法、仕様記述論 2)プログラムの安全性を開発プロセスで保証するための 技術・安全性を説明するための技術 ・プログラムの仕様記述手法 ・テストの自動化や網羅性向上に関する技術 ・プログラム開発工程の追跡技術 ・安全性認証に関する技法(認証工学) 3)情報システムのセキュリティ確保に関する技術 ・セキュリティ侵入に対するソフトウェア防護技術 ・不正ソフトウェアのシステム侵入を防ぐ技術 ・ソフトウェアプロトコルに関する技術 45 Graduate School of Information Science Guide book 2016 研究の進め方 まず、それぞれの志向する研究テーマに応じて、必要な情報科学 の基礎知識を身につけていただきます。たとえば安全性担保技術に ついては、プログラミング言語理論や形式手法に必要な数学的素養 などがそれに当たります。また、計算機アーキテクチャや数理論理学 等も、分野によっては知識が必要になります。また、可能な限り企業 等との共同研究などに参画していただき、具体的な実例を元にした 研究が出来るようアレンジする予定です。左に挙げたようなテーマの 他にも、ソフトウェアの信頼性・安全性の向上につながるような内容 であれば、可能な限り学生の自主的な取り組みを重視します。修士 論文や博士論文のテーマ決定に際しては、相談にはのりますが、最 終的には自ら決めていただきます。 産官学連携、国際連携など 本研究室は教育連携研究室ですので、産業技術総合研究所(セ キュアシステム研究部門)で研究指導を行います。関西センター尼 崎支所(兵庫県尼崎市)での活動を基本としますが、研究テーマに よってはつくばセンター(茨城県つくば市)に在籍する研究者も含め て、その分野のエキスパートの支援を受け、より高度な研究を実現 することを目指します。研究所で進めている産官学連携活動に参加 し、企業との共同研究を体験する機会もあります。また、ソフトウェ アの安全性の説明力向上に関する研究については、ISOやOMGの 国際標準活動やIPAの技術普及活動を通じて産業の第一線で活躍 する技術者と交流することができます。 (国立研究開発法人情報通信研究機構) 教育連携研究室 ネットワーク統合運用研究室 メールアドレス:[email protected] (写真左から) 教授:小林 和真 准教授:河合 栄治 研究室概要 ネットワーク統合運用研究室は、情報通信研究機構・テストベッド研究 開発推進センターとの教育連携研究室です。本研究室では、これからの インターネットの進化を実現するために必要となる新しいネットワーク・ サービス技術について研究活動を行います。特に、日本が誇る世界最大 級の広域テストベッドネットワークJGN-Xを活用し、基盤技術の研究開発 3)オーケストレーション技術 ネットワーク仮想化技術や次世代・新世代ネットワーク技術を基 礎とする新しいネットワークインフラでは、様々なリソースをサービ ス要求に応じて動的に結合する仕組みが必要となります。オーケス トレーション技術とは、そうした目的のためにインフラリソースを協 調動作させ、最適化するための技術です(図2)。 から、ベンダーやキャリアなどの産業界も交えて共同で行う大規模実証実 験、さらにはそうした新技術の世界展開を実現するための活動を進めてい きます。 ・情報通信研究機構 http://www.nict.go.jp/ ・JGN-X http://www.jgn.nict.go.jp/ 主な研究分野 1)ネットワーク仮想化技術 インターネットは、通信回線を仮想化することでその利用効率を 劇的に向上し、世界中に普及しました。この仮想化の概念をさらに 推し進め、ネットワークインフラの高度化を実現することが求められ ています。例えば、ネットワークインフラを仮想化することで、その一 部分(スライスと呼ばれる)を他から隔離した形でユーザに提供する ことが可能になります。私たちはこれらのネットワーク仮想化技術お よびその運用技術の研究開発を進めています(図1)。 図2 オーケストレーション技術 研究設備 ・超高速広域ネットワークインフラ(JGN-X) ・国内回線、国際回線、基幹ルータ・スイッチ、クラウドインフラ(仮 想ホスト、仮想ストレージ) 図1 ネットワークインフラ仮想化のモデル 2)次世代・新世代ネットワーク技術 現在のインターネットは、改良を重ねて通信基盤としての現在の 地位を確立しました。一方で、今のインターネットの仕組みでは解 決が困難な課題がいくつか残されたままであり、これからの進化の 大きな障害となることが予想されています。そこで近年、従来のイン ターネット技術を大きく変えることでこうした課題の根底からの解 決を目指す研究開発が世界中で盛んになってきています。そうした 全く新しい技術を広域インフラで実導入し、様々な実証実験を実現 するための技術(新世代ネットワークテストベッド技術)について研 究開発を行っています。 共同研究・社会活動など 連携先である情報通信研究機構はもちろんのこと、様々な大学、 企業、組織がJGN-Xを活用して研究活動を進めています。本研究室 ではこうした研究活動との連携も行う予定です。 ・SDN/OpenFlow技術(日本電気) ・オーバレイ通信技術(大阪大学) ・クラウド連携技術(WIDEプロジェクト) Graduate School of Information Science Guide book 2016 46 教育連携研究室 教育連携研究室 超高信頼ソフトウェアシステム検証学研究室 (独立行政法人宇宙航空研究開発機構) URL:http://stage.tksc.jaxa.jp/jedi/index.html (写真左から) 教授:片平 真史 [email protected] 准教授:石濱 直樹 准教授:川口 真司(写真なし) 研究室概要 今日、組み込みシステムや社会インフラシステムは、国家や人命の安全 を支える根幹として位置づけられており、それらの超高信頼性を確保する ことは社会全体の安全性を高める上での最重要課題の一つです。超高信 頼ソフトウェアシステム検証学研究室では、宇宙航空研究開発機構 研 2)高信頼性・安全性評価手法 ・検証網羅性評価技術 複数のソフトウェアシステムから構成される多種の検証情報に 基づきソフトウェアシステム全体のEnd-to-Endの検証網羅性を 評価する技術を研究します。 究開発部門 第三研究ユニットの持つ、宇宙システムにおける超高信頼 性や安全性に関する研究および実践における高い実績にもとづいて、極 限環境で正しい動作が求められるソフトウェアの超高信頼性・安全性を 実現するためのソフトウェア検証方法論を研究します。特に、現在の重要 課題である、複雑分散ソフトウェアシステムの検証 網羅性保証(End-toEnd評価)に必要な以下の方法論を研究・教育します。これらの研究成果 は、宇宙システムに限らない、社会基盤システム全般の超高信頼化への応 用が期待されています。 主な研究分野 1)高信頼性・安全性検証手法 ・ロバスト性検証技術 仕様外要求を含めたロバスト性検証の要素技術、検証環境の 自動生成アルゴリズムや方法論を研究・開発します。 ・検証自動化技術 システム構成、運用条件、不具合パターンモデルなどを用いた 検証ケース自動生成及び自動合否判定のためのアルゴリズムや 方法論を研究・開発します。 アシュアランスケースを用いた検証網羅性評価 ・欠陥伝搬評価技術 ソフトウェアシステム全体の欠陥モードの体系化及びそのシス テムへの影響度評価手法を研究・実証します。 研究の進め方 前半は大学の基幹研究室を中心に研究指導し、後半は、JAXAに おける特定の題材をもとに、修士論文のテーマを決定します。まず、 基幹研究室においてソフトウェアやソフトウェアを中心とした複合的 システムの開発や品質保証技術等の基礎的な知識と技術を身につ けていただきます。次に専門演習やJAXAにおけるインターンシップ 等を通じて、システムの超高信頼性や安全性を実現するための技術 (独立検証妥当性確認(IV&V)、モデルベース検証、システムアシュ アランス等)を学びます。 ロバスト性検証技術・自動検証技術の概念図 47 Graduate School of Information Science Guide book 2016 産官学連携、国際連携など 本研究室で身につける知識・技能は宇宙システムだけではなく幅 広い分野の組織に求められるものです。人材育成プログラムや産官 学連携活動への参加を積極的に支援します。JAXA筑波宇宙セン ターでのインターンシップ等も企画します。また、テーマによっては、 海外宇宙機関との国際共同研究も行います。 教育連携研究室 ヒューマン・インタフェース研究室 (株式会社 富士通研究所) URL:http://jp.fujitsu.com/group/labs/ 教授:早川 昭二 [email protected] 研究室概要 本教育連携研究室は、川崎市中原区の富士通研究所内のメディア処 理システム研究所にあります。メディア処理システム研究所では人間中心 の知的社会を実現するため、人間とICTの接点である「画像・音声・自然 言語技術」を活用した、新しいサービス・世界の実現を目指して研究開発 を行っています。その中で当研究室では、特に音響・音声情報処理技術に より、人対人の円滑なコミュニケーションを可能とするヒューマン・インタ フェース技術の研究開発を行っています。また、企業の研究室であること から、適用製品を意識した出口指向の研究開発である点に特色がありま す。 主な研究分野 私たちは日常的に会話をしていますが、会話のあと「楽しかった」 とか「嫌な感じがした」など様々な気持ちを抱くことが多いと思いま す。このように会話に対して抱く主観的な印象である「会話の質」を 定量化して評価する方法の研究を行っています。例えば、会話の目 的達成率や達成時間といった値を「会話の質」の評価に用います。 さらに、評価した「会話の質」を制御するための、話者への働きかけ の研究を行っています。これにより人と人/ ICTを高度に結びつける 新たなヒューマン・インタフェースに展開していきます。具体的な研 究の進め方の一例として、本研究で扱うコミュニケーションを電話 や対面での会話と想定し、次のように考えています。まず初めに、脳 科学や心理学も考慮しながら言語/非言語コミュニケーション技術 などを用いて「会話の質」を分析します。次に、 「会話の質」の向上を 目指した話者への働きかけ方や、その自動化の研究を進めます。 図1に本研究室が目指している会話支援システムとその利用シー ンを示します。旅行代理店での接客時や市役所電話窓口などで行 われる会話音声を取り込み、 「会話の質」を定量評価します。ここで は一例として「話し方」 「ストレス」 「言葉遣い」を用いて「会話の質」 の評価値を算出します。その評価値に基づき相手の意図や気持ちを 分析し、 「会話の質」を高めるための支援方法を、過去の事例データ ベースから検索し、話者に働きかけます。そして、このループを何度 も回します。これにより、相手の意図や気持ちを汲み取った、質の高 い会話の実現を支援します。本システム実現のため、当研究室で研 究している要素技術の例を以下に紹介します。 1)ストレス状態らしさの推測技術 会話中に相手から好ましくないことを言われたり、不安を抱かせ る事実を知らせられたりすると、ストレスが掛かります。これを「会話 の質」の定量評価に使う研究を行っています。人間はストレスを受け た場合、声の高さや強さといった声の調子が変わることが知られて います。ここで、トラブルを模擬した通話時のストレス状態における 音声の高さと強さの関係を図2に示します。ストレス状態では、声帯 の振動によって生じる強さの山谷が音声の高い成分まで伸びておら ず、声帯の挙動が小さくなることがわかります。このような特徴を捉 えることでストレス状態らしさを算出します。また、本技術はスマート フォン上に実装し評価を進めています。 2)言葉遣い・話し方の評価技術 会話における言葉遣いや話し方も、 「会話の質」を定量評価する ための重要な特徴となります。当研究室では、ワードスポッティング 技術により、自然な会話からリアルタイムで特定の単語を検出するこ とで、言葉遣いを評価する研究を進めています。また、ワードスポッ ティング技術を利用して単位時間当たりの音素数を算出し、これを 用いて話し方の特徴の一つである 「話す速さ」 を評価する研究も行っ ています。 左:音声の高さと強さの関係(「あ」と発声している区間)右:ストレス状態ら しさを評価するアプリ画面 実現を目指す会話支援システムと利用シーン Graduate School of Information Science Guide book 2016 48 情報科学研究科研究設備 空気圧人工筋駆動7自由度マニピュレータ 16本の空気圧人工筋により、7自由度を制御可能なマニピュレータ です。その柔らかさを生かして、人間に直接接触しながら力学的にアシ ストを行う研究などに利用できます。 マルチ首振りカメラシステム 人間などの撮影対象を取り囲むように、首振りカメラが多数設置さ れたシステムです。それぞれのカメラを制御する計算機は高速ネット ワークで接続されており、カメラの向きを制御させながらの同期撮影 が可能となっています。人間の動きを正確に測定する非光学式モー ションキャプチャシステムも別途備えており、これらを組み合わせるこ とで人間や衣服の形状・動きを計測する技術の研究開発に利用してい ます。 高機能双腕冗長ロボットアーム・ハンドシステム 人と同じ自由度を持つワイヤー駆動式双腕冗長ロボットアームと3 指ロボットハンドによって構成されたシステムです。ロボットアームはギ ヤを用いないワイヤー駆動方式により、人のように滑らかで高速な運 動を実現します。また、トルク制御モードでは人との安全なインタラク ションを行うことが可能です。一方、ロボットハンドは2本指がリンクし て移動する機構により、多種形状ワークのハンドリングを容易に実現 します。このシステムにより、人の巧みな運動スキルや物体把持動作に 関する技術の研究開発に取り組んでいます。 広域屋外三次元情報計測車両 広域屋外環境で三次元情報を計測するための実験車両です。本車 両には、全方位型マルチカメラシステム、ラインレンジスキャナ、RTKGPS、慣性航法センサ等が搭載されており、走行経路周辺の三次元情 報と全周囲映像を収集することができます。得られた三次元点群は、 GPS、慣性航法センサ、車速センサ等の情報から統合的に推定される 車両位置情報に基づいて自動で位置合わせされるため、比較的容易 に広域環境の三次元情報を収集することができます。 49 Graduate School of Information Science Guide book 2016 遠隔地間相互臨場感伝送装置 衛星通信装置や無線通信装置を用いて、遠隔地にされたグラフィッ クワークステーションを相互接続し、VRおよびビデオコンファレンス による遠隔医療診断などを可能とする通信システムおよび画像処理シ ステムの研究開発に用いられています。MPEG-2によるビデオ画像の エンコーダ/デコーダ装置、VR画像の生成に必要な画像処理ワーク ステーション、高速通信システム、移動体通信システムによって構成さ れています。 歩行装置つき没入型3面ディスプレイ 現実環境の画像に基づいて仮想環境内に生成された仮想化現実環 境を体験するための設備です。大型の三面傾斜スクリーン、ステレオ 提示高解像度プロジェクタ、全方向に歩行可能な歩行装置、歩行計 測装置から構成されており、ユーザの歩行動作によって仮想化現実環 境内を歩行することができます。ロボットの遠隔操縦や、高解像テレプ レゼンスシステムに関する研究に利用しています。 没入型大型球面ディスプレイ 広視野角・高解像度の画像をユーザに提示するための設備です。本 設備は、直径約4mの大型球面ディスプレイ、高解像広角プロジェクタ から構成されています。高解像全方位カメラによって撮影された全方 位動画像の再生や屋外三次元モデルを用いたウォークスルーによっ て、遠隔地の情景の体験や仮想化現実環境をユーザに提示する研究 に用いています。 双腕作業ロボットシステム 日常生活での作業・物体操作を研究するための双腕ロボットシス テムです。頭部に装着された2眼カメラシステムをパン・チルトさせ て環境の情報を取得することができ、腕部に6自由度、手先に4自由 度を有する手腕により器用な動作を実現することができます。また OpenRTMと呼ばれるロボット向けミドルウエアを使用することで、シ ステム構成も柔軟に変更することができます。今後、このロボットシス テムを用いて、人の作業知能の解明に取り組んでいきます。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 50 行動メディアシステム ロボットのような自律機械と人間が同じ空間内に共存する環境で は、人間と機械間の相互作用の新たな手法の実現が課題となってい ます。人間・ロボットの行動を多種類のセンサを用いて実時間で認識 するとともに認識した行動情報に基づき行動を生成・提示しインタラ クションをおこなうため身長158cm、31自由度をもつアクトロイド、 そして複数台カメラ、モーションキャプチャシステムからなるシステム です。 生命機能計測装置 ナノバイオロジーのための研究装置で、倒立型光学顕微鏡をベース にして構成され、顕微鏡下の試料に対してレーザー光を入射し、生体 分子から発生する蛍光やラマン散乱光などの分光スペクトルを計測し て、イメージングできる装置です。 エバネッセント顕微鏡装置 生体分子の一分子計測のための研究装置で、レーザービームの全 反射時に生じるエバネッセント場を用いて基板から200nm程度の距 離内にある蛍光分子を励起し、高感度冷却CCDカメラで検出すること で一分子イメージングすることができます。また光ピンセットと組み合 わせることでフェムトニュートンオーダーの微弱な一分子間の相互作 用力を計測することもできます。 極短パルスレーザ顕微鏡分光装置 細胞内の生体分子について調べるための研究装置で、レーザー光 のエネルギーを10兆分の1秒の時間に凝集して発光させて、さらに顕 微鏡に入射して集光することで、1TW/cm2以上の高エネルギー密度 を持つ光の場を作り出し、生体分子や蛍光分子に同時に多数のフォト ンを吸収させて発光現象を起して分光計測したり、細胞膜を切断した りできる装置です。 51 Graduate School of Information Science Guide book 2016 インタラクティブ超高精細映像研究システム ハイビジョン映像の4倍の解像度をもつ4K映像の送受信が可能な システムであり、臨場感のある映像を表示することができます。このシ ステムを学内外の超高速ネットワークを利用して、遠隔地とのやりとり をその距離を意識することなく行うことができるよう、画像処理技術と ネットワーク技術を融合した新世代のマルチメディアシステムの研究 開発を行っています。 小規模計算機サーバ 大規模な画像処理やデータマイニング、シミュレーションなどの高 度な計算能力を必要とする科学・技術研究を遂行するために利用する システムで、学内どこからでも利用できます。構成は以下の通りです。 - 大容量共有メモリノード(6ノード) CPU:Intel Xeon 2.4GHz 80コア、メモリ:2TiB - クラスタノード(120ノード) CPU:Intel Xeon 3.0GHz 20コア、メモリ:64GiB - 超並列演算ノード(2ノード) GPGPU:NVIDIA Tesla K20X 4モ ジ ュ ー ル、CPU:Intel Xeon 2.6GHz 16コア、メモリ 128GiB - 大容量データ処理(Hadoop)ノード(18ノード) CPU:Intel Xeon 2.2GHz 16コア、 メモリ:64GiB、 二次記憶装置:36TB - 広帯域分散ファイル(GlusterFS)サーバ 二次記憶装置:450 TiB、スループット:17GB/s以上 また、ジョブ管理システムや並列計算ライブラリ、各種コンパイラ、各 種ソフトウェア開発環境等のさまざまなソフトウェアを備えています。 大規模実験クラウド基盤システム 大規模なクラウド環境をエミュレートすることができるシステムで、 135の物理ノード、4式の仮想ノード、1つのネットワーク負荷トラ フィック生成ノード、1つのネットワークトラフィック解析ノードから構 成されています。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 52 光学式モーションキャプチャシステム・筋骨格シミュレータ 反射マーカの3次元位置情報を最大サンプリング周波数1kHzで 精度良く計測することができる、リアルタイム光学式モーションキャプ チャシステムです。バイオメカニクスやヒューマン・ロボットインタラク ションなどの研究に幅広く活用しています。また、筋骨格シミュレータ を用いることで、モーションキャプチャシステムで計測したデータから、 全身の筋肉の張力や関節モーメントなどの内部状態を推定することが できます。 実世界行動生成装置 人と同じ空間を共有するロボットには、人と同じ環境を行動する能 力が求められます。人と似た構造を持つヒューマノイドロボットは、そ のような研究をおこなうプラットフォームとして最適です。このヒュー マノイドロボットは、実現できる作業の自由度を考慮して、腕部に7 自由度、脚部6自由度、全体として計34自由度を持ちながら、身長 151cm、体重38kgと小型・スリムなため運用性・適用性に優れてい ます。今後、このヒューマノイドを用いて、知的な全身動作の実現に取 り組んでいきます。 眼球運動計測装置 両眼の運動を500Hzで精度良く記録できる装置です。眼球運動を 題材とした計算神経科学や、生体医工学、ユーザーインタフェースな どの研究に用いることができます。 IoTアクセラレーション実験設備 ARMとFPGA/GPUが1チップ化されたSoCボード群です。ARM上 で動作するLinuxから、FPGA/GPU/独自開発LSIなどを直接制御し て、IoTアクセラレーションに関する実験を行っています。 53 Graduate School of Information Science Guide book 2016 大規模FPGA実験設備 デスクトップPCのPCIスロットに接続する大規模FPGAボード群で す。Intel上で動作するLinuxから、大規模FPGAを制御して、大規模ア プリケーションの高速化実験を行うことができます。また、新素材デバ イスにより試作した、アナログニューラルネットチップをFPGAに接続 する実験も行っています。 大規模シミュレーション基盤 XEON E7-8890-v2を8基(120コア240スレッド)搭載する計算 サーバ上でMATLAB+Simulinkを利用しています。回路・アーキテク チャシミュレーション、アプリケーションの並列高速化実験などに使用 しています。他に、XEON 40コア、32コア、Xeon Phi搭載サーバ、各 種GPU搭載サーバを運用しています。 大規模データリアルタイム処理システム 512GBのメモリを備えた24CPUコアXeon [email protected] の大 規 模 計 算サーバ1台と、256GBのメモリを備えた8CPUコア Xeon [email protected]の計算サーバ4台と、実効容量合計44TB のRAID10大規模ファイルサーバからなるシステムで、言語情報を中 心とした大規模データから知識を獲得し、リアルタイムで処理する研 究設備です。言語情報に基づいて、高速かつ柔軟にテキストを検索し たり、多言語を解析・翻訳したりする研究開発に役立っています。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 54 ユビキタスディスプレイ実験室 ユビキタスディスプレイシステムは、SXGA+プロジェクタ5台、50 インチハイビジョンプラズマ3台、42インチ縦型タッチパネルプラズマ 2台、ムービングプロジェクタ1台、世界最大級270インチタッチイン タフェース&UMU SCREENからなら様々な種類のパネルを組み合 わせたシステムです。異なる種類のパネルを組み合わせることで、ミー ティングやコミュニケーションを高度化する研究を行っています。 ソフトウェアデータ蓄積システム 実効容量25TBのRAID6HDD+キャッシュ用に1TB超のSSDを備 えた超高速高信頼ネットワークストレージと、合計72CPUコアを有す るブレードサーバ群を仮想化プラットフォームvSphereにより統合し たデータ収集用プライベートクラウドシステムにより構成される。 インテンシブ解析サーバシステム ハードウェアとして合計32コア/64スレッドの超高速CPUと主記憶 256GB、スクラッチデータ保存用超高速SSD480GBを備え、7種の 代表的なソフトウェア解析アプリケーションを搭載した解析専用計算 機。 55 Graduate School of Information Science Guide book 2016 ウェアラブル脳活動状態計測装置 頭部に装着した光トポグラフィ方式の脳血流センサによる測定結果 を腰に装着した送信装置からWiFi方式の無線LANを通じて記録でき る、ウェアラブル(装着可能な)測定装置。 解析結果表示装置 膨大なハイビジョンモニタ6面で構成され、一つの大きな画面、ある いは2x2サイズ1面+独立2面といった具合に表示方式を柔軟に変更 できる超大画面モニタ装置。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 56 知能コミュニケーション処理システム 概念辞書獲得、情報信頼性分析、機械翻訳、音声・言語処理、言語 外情報分析等の知能コミュニケーション処理の研究に必要不可欠な 大規模Webコーパスを構築し、効率的に共有利用するためのPCクラ スタシステムです。高速な演算能力を持つPCクラスタおよび大規模容 量を持つファイルサーバから構成されます。 研究用高速ストレージサーバ 音声翻訳などの知能コミュニケーションの研究におけるモデル構築 に用いる高速ストレージ装置です。複数台の計算アクセスに高速に対 応するため、ファイルシステムのスループットが最大で24Gb/secであ り、バッチ処理とインタラクティブ処理に対応が可能で、クライアント 数に応じてスケールアウト可能する48TBの高速ストレージサーバで、 大量のデータを用いるモデル構築に役立っています。 知能コミュニケーション研究用生体計測装置 脳を始めとする生体の計測を行う装置です。32chの記録、バッテ リー駆動ができる脳波計測解析装置で、人間のコミュニケーションに おける脳活動、生体反応を計測する知能コミュニケーションの研究に 役立っています。 57 Graduate School of Information Science Guide book 2016 超技巧ロボットハンド 人工筋肉と触覚センサを備えたロボットハンドです。平均的な成人 男性の手の大きさに合わせてつくられています。ロボット制御用オペ— レーティングシステムROS(Robot Operating System)により統 合されており、高いコンプライアンスや高感度センシングを必要とする 様々な応用用途に利用できます。 大容量高速サーバー 合計592コア、メモリ2.6TBを備えた26ノードクラスタと、110TBのデータを収容できる高速分散ファイルシステムにより、あ らゆるコミュニケーションでの大容量データのリアルタイム獲得・処理が可能になります。クラスタは、テキスト・音声データへの 高速かつ柔軟なアクセス、多言語テキスト解析・翻訳などの研究に利用されています。 NIRS(Near-infrared spectroscopy) 近赤外光により脳の活動状態をリアルタイムに計測して脳の機能局 在を解析する16チャネルNIRS技術。血液成分のヘモグロビンは光を 散乱させますが、そこに酸素がくっついていると、その吸収・散乱の度 合いが変化します。NIRSはその度合いを測定し、酸素化ヘモグロビン の濃度変化を計測します。 Graduate School of Information Science Guide book 2016 58 衛星インターネットカー 衛星回線を利用してアドホックにインターネット通信環境を提供す ることができる車両です。このシステムは、災害時などに臨時的に通信 インフラを提供することが可能です。 スマートホーム ユビキタスコンピューティングシステム研究室では、2013年4月よ り大学内に建設された実験用住宅設備スマートホームを用いて研究 を行っています。本設備は、リビング・ダイニング、キッチン、洋室、洗面 室、浴室、トイレ、廊下、玄関からなる居住空間で、居住者の活動をセ ンシングする、ドアの開閉検知、使用電力の計測、温度・湿度の計測、 照度の計測、位置の測位などを行うための多数のセンサを備えていま す。本設備を用いて、新しいセンサの研究、それらをつなぐセンサネッ トワークの研究、つながったセンサや家電の連携に関する研究、セン サによる行動認識の研究、行動認識に基づいた住環境の快適化に関 する研究など、基礎から応用に至るまで、さまざまな研究を行っていま す。 59 Graduate School of Information Science Guide book 2016 教員索引 教 員 名 ページ番号 Affeldt Reynald 45 Cyrille Artho 45 Christian Sandor Doudou Fall Duong Quang Thang Graham Neubig Juntao Gao 25 19 23 22 16 Md. Altaf-Ul-Amin 34 Tran Thi Hong 13 Sakriani Sakti 浅井 孝浩 荒川 豊 荒牧 英治 飯田 元 飯田 秀博 池田 和司 石濱 直樹 井尻 善久 市川 昊平 伊藤 実 井上 美智子 井上 剛 猪俣 敦夫 伊原 彰紀 22 40 15 28 18 44 32 47 41 18 16 14 38 20 17 上野 豊 42 大岩 寛 45 浮田 宗伯 大下 福仁 大竹 義人 小笠原 司 岡田 実 奥田 剛 奥村 幸彦 小澤 順 小野 直亮 垣内 正年 笠原 正治 楫 勇一 樫原 茂 27 14 33 29 38 34 20 31 16 19 19 河合 栄治 河合 紀彦 川上 朋也 31 25 35 34 46 24 16 藤本 まなと ページ番号 15 26 27 松本 健一 17 26 南 裕樹 23 村井 昭彦 43 越野 一博 44 安本 慶一 15 佐々木 博昭 32 山田 武士 36 神原 誠之 久保 孝富 久保 尋之 伍 洋 侯 亜飛 黄 銘 小林 和真 笹部 昌弘 37 教 員 名 舩冨 卓哉 32 35 34 46 31 松原 崇充 松本 裕治 向川 康博 森本 淳 山口 英 30 21 30 26 37 19 大和 勇太 14 横田 太 33 佐藤 哲大 34 佐藤 嘉伸 33 横矢 直和 24 16 吉野 幸一郎 22 米田 友和 14 佐藤 智和 澤田 宏 柴田 直樹 進藤 裕之 新保 仁 24 36 21 21 杉浦 忠男 34 鈴木 優 22 杉本 謙二 諏訪 博彦 30 41 高前田 (山崎) 伸也 13 高井 利憲 高松 淳 武富 貴史 32 中島 康彦 39 18 29 22 13 24 能地 宏 21 萩田 紀博 櫨山 寛章 畑 秀明 22 27 19 17 早川 昭二 48 福井 一彦 42 東野 武史 藤川 和利 18 22 中島 悠太 中村 哲 渡場 康弘 32 25 爲井 智也 戸田 智基 吉本 潤一郎 18 29 43 丁 明 吉田 則裕 20 18 多田 充徳 崔 恩瀞 油谷 曉 15 諏訪 正樹 田谷 紀彦 門林 雄基 金谷 重彦 川原 純 川人 光男 40 47 金出 武雄 47 田中 宏季 19 ページ番号 川口 真司 23 片平 真史 加藤 博一 教 員 名 23 20 Graduate School of Information Science Guide book 2016 60
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