USTrends - 第一生命保険株式会社

U.S.Trends
米国 4月のFOMCは
FOMCは景気に
景気に配慮し
配慮しハト派的
ハト派的に
FOMC予測 )
派的に( FOMC予測
~現在の
金融環境の
の安定を
しない見込
見込み
現在の金融環境
安定を重視し
重視し、6月の利上げは
利上げは示唆
げは示唆しない
示唆しない
見込み~
発表日:201
発表日:2016
2016年4月27日(水)
第一生命経済研究所 経済調査部
桂畑 誠治
0303-52215221-5001
○今回4月のFOMCで政策変更はないと予想される。また、6月の利上げを示唆するような文言を声明文に挿入
するとの見方も台頭しているが、経済成長が鈍化したなかで、成長率を押し上げるために現在の金融環境を維持
させる必要があり、6月の利上げ観測を高めるような文言は挿入されないと予想される。6月の利上げを否定も
肯定もしない形で、足元の経済成長を押し上げるためハト派的な声明文となろう。FRBは、景気の下振れリス
クが残存するなかで、金融環境の安定を維持することで、経済成長の加速を促す見込み。
○景気判断では前回の「緩やかな拡大」から、今回「一時的な要因によって減速したが、雇用者数が堅調なペース
で拡大した」と全体感を下方修正したうえで、過度に悲観的な見方が強まらないような判断を示すと予想される。
○今後、金融市場の安定の継続だけでなく、経済成長率の再加速が確認できる年後半まで、様子見を続けると予想
される。
政策金利は据え置
かれ、先行きの利上
げも示唆しない見
込み
4月26、27日のFOMCでは、追加利上げは予想されていない。ただし、世界的な株価上昇
やドル安を受け、今回のFOMCで次回6月のFOMCでの利上げを示唆するとの見方が台頭
している。今回のFOMCの注目点は、足元の経済・雇用情勢に対するFOMCの見方、1、
3月と声明文から削除したリスク判断や6月利上げを示唆する文言の挿入の有無である。
足下で金融市場は安定しているが、世界経済減速や過去の金融市場混乱の影響を受け、米国
経済の成長率が鈍化しているため、今回のFOMCでは政策金利の据え置きとリスク判断の停
止継続が予想される。
利上げ先送り観測等を背景に金融市場は安定しているものの、米経済成長の再加速の動きが
確認されていないうえ、世界経済の減速が継続しており、先行き不透明感が強いままである。
経済成長が鈍化するなかで、経済成長を押し上げるために、利上げ先送り観測によるドル安、
株高、金利低下、原油高の進展が期待されている。このようなもとで、金融環境が引き締まれ
ば景気後退に繋がるリスクがあるため、FRBは、現在の金融情勢を維持し、経済成長の再加
速を促すために、ハト派的なスタンスを強調すると予想される。6月のFOMCでの利上げ期
待を高めるような「リスクが概ね均衡した」などの文言は挿入されない公算が大きい。
景気判断では、3月のFOMC以降に公表された経済指標は、景気がまちまちではなく減速
したことを示しており、足元の景気判断は下方修正されよう。ただし、雇用は堅調さを維持し
ており、一時的な景気減速との見方を強調することで、金融市場で過度に悲観的な見方が台頭
しないように配慮すると予想される。
経済見通しでは、前回「世界経済・金融動向は引き続きリスクをもたらす」としていたが、
金融市場の安定を受け、「世界経済・金融動向は引き続きリスクをもたらすが、リスクは弱ま
った」との若干楽観的な見方を示すと考えられる。ただし、引き続き「世界経済・金融市場の
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断し
た情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ない
しはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
情勢、インフレ動向を注視していく」といった文言を挿入し、状況は改善しているが、FRB
は警戒を怠っていないことを強調すると予想される。
足もとで6、7月の利上げ期待は高まっていないが、前述のようなハト派的なトーンの声明
文となれば、金融市場でリスクオンの動きはより強まり、原油価格上昇、イールドカーブのス
ティープ化、BEIの上昇が見込まれる。一方で、可能性はかなり低いが「リスクが概ね均衡
している」との見方が示めされれば、株価急落などリスクオフの動きを強めよう。
今後の金融政策見通しに関しては、FRBは足元でリスクマネージメントを強化するなかで、
政策の非対称性を重視しており、金融市場の安定の継続だけでなく、経済成長率の再加速が確
認できるまで、様子見を続けると予想される。GDP成長率は、個人消費の鈍化などにより4
-6月期に小幅の加速にとどまる可能性が高く、明確な加速の確認ができるのは7-9月期に
なると予想され、FRBは9月まで利上げを先送りすると予想される。
(%)
(図表)FF金利先物イールドカーブ
1.3
2016/4/19
1.2
2016/4/20
1.1
2016/4/21
1.0
2016/4/22
0.9
2016/4/25
0.8
2016/4/26
0.7
0.6
0.5
0.4
翌日物
16年4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
17年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
18年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
19年1月
2月
3月
0.3
FOMCは現状判
断を下方修正する
公算
以下では、5つのパラグラフに分かれている声明文を、それぞれみていく。景気総括判断は、
実質GDP成長率が鈍化したと見込まれることを受け「入手したデータは、経済成長が一時的
な要因で減速したことを示唆している」と総括判断を下方修正するものの一時的との判断を示
すと見込まれる。同時に、非農業部門雇用者数が堅調な伸びを維持していることから、「その
ような減速でも、雇用者数は堅調なペースで増加した」との判断を示そう。
需要項目別では、今回「家計支出、住宅セクターは減速した」と前回の「家計支出は緩やか
なペースで増加し、住宅セクターはさらに改善した」から、家計部門の判断を下方修正すると
予想される。ただし、家計支出では、2月にかけて個人消費、3月にかけて小売売上高が勢い
を弱めているにもかかわらず、FOMC関係者は講演等で個人消費が堅調との見解を示し続け
ていたため、違和感が強いが判断を変更しない可能性もある。
企業部門は前回と同様に「企業の設備投資や純輸出は鈍化した」と、設備投資は弱いままで、
純輸出は軟調との評価が維持されると見込まれる。
雇用情勢については、今回は「失業率は上昇したが、依然低い水準であるうえ、労働参加率
が上昇した。また、雇用の増加ペースは堅調さを維持している。広範な労働市場の指標は一段
の改善を示した」と職探しを諦めた人々が労働市場に戻ってきており、全体としては、労働市
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断し
た情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ない
しはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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場の改善が続いているとの見方を示そう。前回は「強い雇用の増加を含む最近の広範な指標は、
労働市場の強さが増していることを示している」と評価していた。
インフレに関して、実際のインフレについて、今回は「インフレは、年初に加速したものの、
エネルギー価格の下落や非エネルギーの輸入価格下落を一部反映して委員会の中長期的な目
標を下回り続けた」と前回の「インフレは、ここ数カ月加速したものの、エネルギー価格の下
落や非エネルギーの輸入価格下落を一部反映して委員会の中長期的な目標を下回り続けた」か
ら、基調的な見方に変更はない見込み。一方、期待インフレでは今回「市場ベースの期待イン
フレを示す指標はやや上昇したが低いままであり、調査ベースの中長期のインフレ期待を示す
指標は最近数カ月総じて小幅の変化にとどまった」と前回の「市場ベースの期待インフレを示
す指標は低いままであり、調査ベースの中長期のインフレ期待を示す指標は最近数カ月総じて
小幅の変化にとどまった」から、依然低い水準にとどまっていると評価されよう。
第2パラグラフのFOMCの予想については、景気・労働市場について「現在緩やかな金融
政策スタンスの調整によって、経済活動は緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は、引き
続き力強さを増すと予想している」と変更されないが、前回の「しかしながら、世界の経済・
金融動向は引き続きリスクをもたらす」と続けていた箇所を、金融市場の安定を受け、今回「世
界の経済・金融動向は引き続きリスクをもたらすが、リスクは弱まっている」と引き続き世界
経済・金融動向がリスクとなるものの、前回FOMC時よりも弱まっているとの判断を示そう。
2回連続で削除されているFOMC予想のリスクに関しては、今回も挿入されないと見込ま
れる。仮に現在の景気認識を一時的な減速であり、世界経済・金融による下ぶれ圧力が後退し
たとの見方が示されたうえで、「全般的に国内外の動向を考慮すると、委員会は経済活動と労
働市場の両方の見通しのリスクは概ね均衡しているとみている」との文言が加えられると、F
OMC内で6月の利上げを予想する参加者が増えていることを示すが、可能性は低いだろう。
インフレ見通しについては前回と同様「インフレ率はエネルギー価格のこれまでの下落を一
部反映して短期的に低いままとなるが、労働市場が一段と強まり、エネルギー価格や輸入物価
の下落による一時的な影響がなくなるにつれ、中期的には2%に向けて徐々に上昇すると予想
している」との予想は変わらない。
パラグラフの最後の部分では、前回の「引き続きインフレの動向を注視する」から、今回「引
き続き世界経済・金融動向、インフレの動向を注視する」とリスクが弱まっていると判断して
いるが、引き続き世界経済・金融動向も注視していくスタンスを強調すると見込まれる。
第3パラグラフの今回の政策決定に関する説明箇所は、前回と同様の据え置きの説明。前回
と同様に、「金融市場や経済への影響を見極めるために、政策金利を据え置くことが適切と判
断した。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的なため労働市場の状況の一段の改善と2%のイ
ンフレへの回帰を支援する」との判断が示されると考えられる。
第4パラグラフの金融政策を決定する条件に関しては、変更されない見込み。前回と同様に
「FF金利の誘導目標レンジの将来の調整の時期と規模の決定には、委員会は目標の最大雇用
と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しで評価する。この評価は、労働市場の状
況を示す指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢に関するデータを含
む幅広い情報を考慮する。現在インフレ率が2%に達していないことを考慮し、委員会はイン
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断し
た情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ない
しはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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フレ目標達成に向けた進展の実績と予測を注視する。委員会は、経済状況がFF金利の緩やか
な引き上げに限って正当化する形で改善すると予測する。FF金利は当面、長期的に到達する
と見込まれる水準を下回って推移する可能性がある。ただし、FF金利の実際の道筋は、今後
入手するデータがもたらす経済見通し次第である」と政策金利の変更は引き続き様々なデータ
による経済見通し次第とのスタンスを示そう。
第5パラグラフのバランスシートの水準維持につながる再投資政策についても、前回から変
更はない見込み。「保有する政府機関債とMBSの償還元本をMBSに再投資し、米国債の償
還金を新発債に再投資する既存の政策を継続する」。「FF金利の水準が十分に正常化される
まで、そうすると想定している」とし、再投資を中期に亘り継続することを再確認するだろう。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断し
た情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ない
しはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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○16年3月15,16日のFOMC声明文(下線部は前回からの変更箇所。削除された箇所は表記していない)
15,16日のFOMC声明文(下線部は前回からの変更箇所。削除された箇所は表記していない)
1月の会合以降に入手した情報は、経済活動はここ数カ月の世界の経済・金融動向にもかかわらず、緩やかなペ
ースで拡大したことを示している。家計支出は緩やかなペースで増加し、住宅セクターはさらに改善した。しかし、
企業の設備投資や純輸出は鈍化した。強い雇用の増加を含む最近の広範な指標は、労働市場の強さが増しているこ
とを示している。インフレは、ここ数カ月加速したものの、エネルギー価格の下落や非エネルギーの輸入価格下落
を一部反映して委員会の中長期的な目標を下回り続けた。市場ベースの期待インフレを示す指標は低いままであり、
調査ベースの中長期のインフレ期待を示す指標は最近数カ月総じて小幅の変化にとどまった。
法律に定める責務に従って、委員会は最大限の雇用と物価安定の促進を目指す。委員会は、現在緩やかな金融政
策スタンスの調整によって、経済活動は緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は、引き続き力強さを増すと予
想している。しかしながら、世界の経済・金融動向は引き続きリスクをもたらす。インフレ率はエネルギー価格の
これまでの下落を一部反映して短期的に低いままとなるが、労働市場が一段と強まり、エネルギー価格や輸入物価
の下落による一時的な影響がなくなるにつれ、中期的には2%に向けて徐々に上昇すると予想している。委員会は
引き続きインフレの動向を注視する。
委員会は、このような状況によってFF金利目標の誘導レンジを0.25-0.50%に維持することを決定した。今回の
引き上げ後も金融政策のスタンスは引き続き緩和的で、それにより労働市場の状況の一段の改善と2%のインフレ
率への回帰を支えていく。
FF金利の誘導目標レンジの将来の調整の時期と規模の決定には、委員会は目標の最大雇用と2%のインフレと
の比較で経済状況の実績と見通しで評価する。この評価は、労働市場の状況を示す指標、インフレ圧力やインフレ
期待の指標、金融動向や国際情勢に関するデータを含む幅広い情報を考慮する。現在インフレ率が2%に達してい
ないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた進展の実績と予測を注視する。委員会は、経済状況がFF
金利の緩やかな引き上げに限って正当化する形で改善すると予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込
まれる水準を下回って推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経
済見通し次第である。
委員会は、保有するGSE債とMBSの償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還資金を入札で再投資する既
存の政策を継続する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会によ
る相当の水準で長期証券を保有する政策は、緩和的な金融環境を維持する支援となるだろう。
FOMCの金融政策行動に賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエ
ル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、スタンレー・フィッシャー、ロレッタ・メスター、ジェローム・パウ
エル、エリック・ローゼンバーグ、ダニエル・タルーロ。反対したのはエスター・ジョージ、今会合でFF誘導目
標のレンジを0.50~0.75%に引き上げることが好ましいとした。
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断し
た情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ない
しはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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