社会的地位向上をめざし介護の専門性をアピール(概論)

特集
May Vol.27 No.2
概論
社会的地位向上をめざし
介護の専門性をアピール
介護職ポジティブキャンペーン 第 2 弾
介護の仕事の専門性を突き詰めていくことで、介
護職の社会的地位向上、ひいては人材確保につな
がればとの狙いである。
介護の魅力を抽象論ではなく
科学的根拠をもとに語れるように
そう、やはり行き着くところは、何をおいても
「人材確保」なのである。
厚生労働省の推計によると、団塊の世代が 75
ローチ次第では、彼らと介護の仕事はマッチする
歳以上の後期高齢者となる 2025 年度に必要とさ
のでは」と提案した。
れる介護職員は全国で 253 万人。今後予想され
実際、すでに一部では“マイルドヤンキー待望
る介護人材の増員数と比較すると、約 38 万人が
本特集は、平成 27 年 10 月号の特集記事「介護
論”なるものもささやかれ、消費や労働力の面で
不足するといわれている。2025 年とは遠い未来
職ポジティブキャンペーン ~介護職のイメージ
脚光を浴びつつある。
のことではなく、わずか 9 年後だ。もはやカウン
アップに向けて~」の第 2 弾である。
同じ特集内でインタビューをした全老健の本間
トダウンは始まっているといえるだろう。特に、
第 1 弾では、介護業界の外にいる方々 ― 原
達也副会長も、それらの若者層に介護の人材不足
現在、訪問介護職員の 3 割は 60 歳以上ともいわ
田曜平氏(株式会社博報堂ブランド・イノベー
解消の一役を担ってもらう案については、
「外国
れ、今後はもっと若年層を積極的に介護業界へ取
ションデザイン局上席研究員)
、永田隆太氏(株
人労働者を受け入れるよりも現実的」と、支持し
り込んでいくことが急務である。
式 会 社 リ ク ル ー ト キ ャ リ ア HELPMAN
ていた。
全老健の人材対策担当副会長としても、この人
JAPAN プロデューサー) ― にインタビュー
一方、永田氏は、漫画『ヘルプマン!』
(くさ
材確保問題に熱心に取り組む本間副会長は、
「あ
した。世間に蔓延している「 3 K」に代表される
か里樹著・講談社刊)とコラボレーションしたプ
らゆる角度からハイブリッドに攻めていかないと、
介護のマイナスイメージについて、これからの介
ロジェクト「HELPMAN JAPAN」の活動にお
間に合わない」と危機感を露わにしている。
護を支える若者たちにどうしたらもっと介護の仕
いて、クールでユニークな介護業界で働く“人”
昨年、全老健でも、ポジティブキャンペーンと
事に注目してもらえるか、介護業界を活性化する
をフィーチャーし紹介するなど、まさに介護業界
称し、さまざまな取り組みを実施した。
「人材マ
ためにはどうしたらよいか、といったテーマで話
のイメージアップの一助を担っている。
ネジメント塾」の開催や、ホームページ上や
を聞き、それぞれの立場からのアイデア、ヒント
永田氏は「介護職を普通の 4 年制大学新卒者の
YouTube 等で視聴できる「老健施設の介護のや
となる意見を語っていただいた。
就職先としてとらえてもらうには、業界自体のブ
りがいと魅力」を伝える動画配信(右上写真)
護の可視化・科学化に長年取り組んでこられた兵
原田氏は、
「いったんついてしまったマイナス
ランディングが重要」とし、
「介護職員自身も自
などが、その一環である。どちらも狙いは介護業
庫県立大学の筒井孝子教授と、全老健の髙椋清理
イメージを払拭するのは容易ではないが、努力や
らの仕事の社会的価値づけを意識し、仕事の魅力
界の内側から介護の仕事の魅力を発信していこう
事に介護の専門性について語っていただく。
工夫によりイメージアップは不可能ではない」と
を外に向けて発信していく必要がある」と指摘。
というものだ。
後半のレポートでは、介護の仕事のうちの専門
述べた。試合観戦の集客数が低迷していた野球業
また、
「いま、働き口として介護業界は本当に狙
そうした試みも継続しつつ、一方では、単に
性の低い業務を地域の元気な高齢者に手伝っても
界に“カープ女子”なる女性人気のムーブメント
い目。視野を広げれば、将来的には日本の介護技
「介護は魅力的」と抽象的な感情論でのみアピー
らい、正規職員を専門性の高い業務に専念させよ
が起こった例をあげ、
「あの裏では、関係者の涙
術を海外へ輸出するという可能性も見えてくる」
ルするのではなく、科学的根拠に基づいた介護の
うとする「介護助手」の試みを実施した「いこい
ぐましい努力があった。やれることはすべてやる。
と述べ、明るい未来図も描いてみせた。
専門性を社会に対して堂々と表明していくことも、
の森」
(三重県津市)と、介護職員の意欲と社会
そのくらいの危機感をもった意識も大事」と話し
そうした第 1 弾の内容を受け、この第 2 弾では、
イメージアップには必要なのではないかと考えた
的地位向上に向けて、法人内で独自のキャリア
た。また、原田氏独自の造語である“マイルドヤ
再び介護業界に戻り、その内側から介護職のイ
のが、今回の特集である。
アップシステムを構築し、実践している「西寿」
ンキー”と呼ばれる若者層を取り上げ、
「アプ
メージアップにつながる情報を発信するつもりだ。
前半のインタビューでは、定義のあいまいな介
マイナスイメージ払拭のために
介護業界の外からの意見
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第 26 回神奈川大会でも上映した動画
「介護助手」モデル事業で配布したチラシ
(福岡県福岡市)の 2 施設を取り上げる。
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2016/04/14
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