九州運輸局 News Release 国土交通省 平成28年4月18日 九州商船(株)へ輸送の安全確保を命令 ~昨年11月の火災沈没事故に対して特別監査を実施~ 九州運輸局では、昨年 11 月 15 日長崎県西海市沖にて旅客船「ビッグ波羅門キング」 の火災沈没事故を起こした九州商船株式会社(本社:長崎市)に対して特別監査を実施し ました。その結果、火災を発生させたことに加え、海上保安部への迅速な通報や乗組員 に対する安全教育など安全管理規程が遵守されていない事実が判明したことから、本日 (4 月 18 日)同社に対し海上運送法第 19 条第 2 項に基づく「輸送の安全確保命令」を交 付し、安全管理規程の遵守と事故対策改善措置を講ずるよう命令しました。 平成27年11月15日、長崎県西海市江ノ島沖において旅客船「ビッグ波羅門キ ング」の機関室から火災が発生し、乗員乗客全員が避難する事態となり船は全焼のう え沈没しました。結果的には、様々な幸運に恵まれ乗員乗客の全員が無事に救助され ました。この重大な事故を受けて九州運輸局は、直ちに本船を運航していた九州商船 (株)(本社:長崎市)に対して特別監査を実施しました。 その結果、海上運送法に規定する安全管理規程の違反が判明しました。このため今 後再発防止を図る観点から、本日、長崎運輸支局において事業者に対し、海上運送法 第19条第2項に基づき、厳しい処分である「輸送の安全確保命令」を交付しました。 本命令では、同社に対し航路再開予定日の30日前までに、①安全管理規程遵守の ための措置(海上保安部署への迅速な通報及び事故発生時の船長のとるべき措置等の 教育の徹底、乗組員等に対する安全教育の実施・火災、事故時の訓練の実施)、②事故 対策改善のための措置(火災事故の具体的な再発防止策、脱出時の安全確保のための 措置)を、文書により報告するよう求めています。 ※海上運送法第19条第2項 「国土交通大臣は、一般旅客定期航路事業者の事業について輸送の安全を阻害している事実があると 認めるときは、当該一般旅客定期航路事業者に対し、輸送施設の改善、事業計画の変更、安全管理規 程の遵守その他の輸送の安全を確保するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。」 ●事業者の概要 ・事 業 者 :九州商船株式会社 代表取締役社長 美 根 晴 幸 ・住 所 :長崎県長崎市元船町16番12号 ・事故対象船舶:「ビッグ波羅門キング」(19トン) 就航航路:長崎~有川 運輸と観光で九州の元気を創ります <お問い合わせ先> 九州運輸局 海上安全環境部 運航労務監理官 担当:深江、小山 電話 092-472-3181 FAX 092-472-3305 (写) 九 運 海 航 第 9 号 平成28年4月18日 九州商船株式会社 代表取締役社長 美 根 晴 幸 様 九 州 運 輸 局 長 輸送の安全確保等に関する命令 輸送の安全確保については、その重要性について機会あるごとに注意喚起したとこ ろである。平成27年11月15日に貴社が一般旅客定期航路(長崎~有川航路)にお いて使用する旅客船「ビッグ波羅門キング」が西海市江ノ島沖にて火災事故を起こし たため、海上運送法に基づく特別監査を実施したところ、重大な火災事故を発生させた のみならず、海上保安部への迅速な通報、乗組員に対する安全教育、船長が実施する操練 について安全管理規程が遵守されていないという事実が確認された他、救命胴衣を着用さ せずに旅客を脱出させるなど安全を阻害する要因も確認されている。 貴社に対しては、平成27年1月13日に「フェリーなるしお」が電源喪失により運航 不能事故を起こした際にも、海上保安部署への連絡が遅れたことから、安全管理規程の遵 守及び事故処理に関する訓練実施を是正措置として講ずるよう「安全確保に関する指導文 書」を平成27年3月10日付けで発出したが、適切な是正措置が講じられず同様な事案 を発生させたことは極めて遺憾である。 かかる状況を改善し、輸送の安全確保を図るため、下記に掲げる措置を速やかにとるよ う海上運送法第19条第2項の規定に基づき命令する。 ついては、下記事項について早急に措置をした上で、航路再開予定日の30日前ま でにその具体的な対応状況を文書により報告されたい。 記 (1)安全管理規程遵守のための措置 ① 安全管理規程第3条に基づき、事故処理基準第4条に定める海上保安部署へ の迅速な通報及び事故発生時の船長のとるべき措置等について教育を徹底す ること。 ② 安全管理規程第51条に基づき、安全統括管理者及び運航管理者は、船員法 や安全管理規程を役職員及び各船乗組員に対して遵守させるため、安全教育の 実施計画を作成し、その実施を図ること。 ③ 安全管理規程第18条第1項第1号、第52条に基づき、法令に定める防火 ・防水・非常操舵操練及び事故処理訓練計画を作成し、実施を図ること。 (2)事故対策改善のための措置 安全管理規程第50条に基づき、経営トップは社内に事故調査委員会を設置し、 次の事項について具体的な対策を検討すること。 ① 火災事故の具体的な再発防止策 ・発航前点検において火災を発生させないための実践的な機関部にかかる点検 の手順書を作成のうえ、それに基づき船長及び機関長は点検を実施し、その 確認を運航管理者が行うこと。 ・火災発生時の対応手順書(機関停止、ファンの停止、燃料遮断等の手順を示 したもの)を作成すること。 ・その他再発防止に向けて有効な対策を講じること。 ② 脱出時の安全確保のための措置 ・安全管理規程第52条に避難誘導を明記すること。 ・事故処理基準第6条(船長の執るべき措置)に、退船時には、確実に救命胴 衣を着用させることを明記すること。 ※ この処分に不服があるときは、処分があったことを知った日の翌日から起算して 3ヶ月以内に国土交通大臣に対して審査請求をすることができる。ただし、正当 な理由があるときを除き、処分があった日の翌日から起算して一年を経過したと きは、審査請求をすることができない。
© Copyright 2024 ExpyDoc