計算工学講演会論文

計算工学講演会論文集
計算工学会
Vol.11 (2006年6月)
統一エネルギー原理に基づいた骨組構造解析
Framed Structural Analysis based on Unified Energy Principle
野村大次 1),翁長祥2),川井忠彦3)
Daiji Nomura , Sachi Onaga and Tadahiko Kawai
1) ものつくり大学
技能工芸学部
製造技能工芸学科
教授(〒361-0038
埼玉県行田市前谷333番地)
2) ものつくり大学大学院 ものつくり学研究科 ものつくり学専攻(〒361-0038
3) 工博
ものつくり大学
客員教授(〒361-0038
埼玉県行田市前谷333番地)
埼玉県行田市前谷333番地),東京大学名誉教授
Framed Structural Analysis was established by Slope-Deflection Method in the early 20th Century.
With the progress of Electric Computer, it was completed by the Displacement Method. But, Force
Method has more advantage in structural design. In this paper, a Framed Structural Analysis based on
the mixed Method is reported.
Key Words: Displacement Method, Force Method, Unified Energy Principle, Framed Structural
Analysis
1. はじめに
骨組構造解析は前世紀の始めに提案された撓角撓度法
(Slope-Deflection Method)により完成された.
(ⅰ)梁要素はその剛性ならびに撓性マトリックスが簡単
に解析解*の形で求められる.従って有限要素解析の立場
に立って考えると今梁の中点の節点変位及び節点力ベク
前世紀の半ばに科学技術計算専用の電子計算機が出現
トル(換言すれば要素状態ベクトル)をパラメータとする
し,骨組構造解析用のFRANが開発されて問題は一挙に解
特性マトリックス(剛性+撓性マトリックス)を構成する
決 さ れ た . 併 し そ の 解 法 は 所 謂 変 位 法 (Displacement
ことが可能である.これは川井が提案した統一エネルギ
Method)であって,不静定力を未知量にとる応力法(Force
ー原理2)で分類すれば第8番目の要素GM(Ⅱ)要素というこ
1)
Method) はそれにより影を潜める結果になった.
とができる. ( *解析解=一般解+特解: u
= ug + u p )
併しながら部材断面力を未知量にとる応力法は設計上
の観点からは有用であり,弾塑性解析の立場から考える
(ⅱ)この様にして求められた梁のGM(Ⅱ)要素を用いれば,
と変位法は,応力法に一歩譲らざるを得ない.
解析しようとする骨組構造が如何に複雑な空間構造であ
本小論は,変位関数のG.G.Stokes表現を用い部材の中点
っても,すべての節点での力の平衡条件式と変位の連続
を原点にとると,梁要素の場合その変位( u, v, w,θ ,φ , χ )と
条件式を求め,骨組全体の要素状態ベクトルに関するマ
断面力( Vx ,Vy , P, M x , M y , M z )を未知量にとった混合法
トリックス方程式を導き,厳密に解く事が出来る.
(mixed method)による厳密な解法が可能であることを示
したものである.(記号は図1を参照)
ここで梁の曲げ変形問題を例にとってその完全解
を考える.(図1参照)
2. 骨組構造の混合法による解析
骨組構造解析は前世紀半ばIBM社が電子計算機による
EI y u ′′ ′′( z ) = q ( z )
(1)
汎用骨組構造解析プログラム“FRAN”を発表し,つづい
てMITグループはICES”STRUDL”の開発に成功した.そし
ここでq(z)は分布荷重を与える関数である.その完全解
て1970年頃から科学技術計算の汎用プログラム実用化時
u(z)は次式のごとく与えられる.ここでupは特解である.
代に突入して行ったことは記憶に新しい.これらの汎用
骨組構造解析プログラムはいずれも変位法(DM)に基づい
u( z) = u g ( z) + u p ( z)
(2)
て完成の域に達したので,今更応力法(FM)のプログラム
の開発を考えるのは無意味のように思われる.それにも
拘らず著者らがここで改めて話題に取り上げる理由は二
u g ( z ) は u ′′′′( z ) = 0 の一般解で次式のごとく表わされる.
ここで添字の0は要素重心での値である.
つある.即ち
u g ( z) = u0 + φ0 z +
M y0
2 EI y
z2 −
V x0 3
z
6 EI y
(3)
従って,一本の梁の曲げ変形問題ならばその解は(1),(2)
ここに θ = − u ′ , φ = u ′である.
及び(3)式より
u( z) = u0 + φ0 z +
M y0
2 EI y
z2 −
V x0 3
z + u p ( z)
6 EI y
(4)
で与えられる.従ってこの梁の両端の境界条件,即ち固
定,単純支持及び自由の境界条件を導入することにより
未定係数( u0 , φ0 , M 0 ,V0 )に関する連立一次方程式を導いて
それを解けば問題は解けたことになる.
ところがそれが骨組構造となるとすべての梁及び柱部
図1
梁要素と関連する座標系の定義
材がその両端の節点(joints)における変位の連続条件式及
ない.これらの条件式はすべて節点力,節点変位を全体
これは丁度従来の有限要素法で定義される要素の剛性マ
トリックス f = ku 及び u = cf を加え合わせて構成され
座標系(あるいは基準座標系)に変換して変位の連続条件
るマトリックスで本解析法では新しく梁要素の特性マト
及び節点力の平衡条件式を立てなければならない.そう
リックス(characteristic matrix)と命名し,それを用いてマ
するとその全体の方程式は変位の連続条件式のグループ
トリックス解析法を構成しようとするのである.
び力の平衡条件式を満足する様に決定されなければなら
と各節点における節点力の平衡条件式の2種類のマトリ
さて骨組構造解析の場合各梁又は柱要素の状態ベクト
ックス方程式が得られる.
変位の連続条件式は各節点において異なる部材間につ
ル式は上記で定義した梁要素の特性マトリックスを用い
いてすべて漏れなく構成されなければならない.今n個の
て厳密解の形で与えられる(勿論その要素原点の状態ベク
部材がその節点で結合されている場合(n-1)個の条件式が
トル S は未知である).故に骨組構造解析とはそれを構成
立てられることになる.これに対し節点力の平衡条件式
する全ての梁要素の未知状態ベクトル( u, v, w,θ ,φ , χ ,Vx ,Vy ,
は各節点において6つ(3次元空間の場合)得られる.
P, M x , M y , M z )を骨組全体の節点(大部分が内部節点,一
以上は内部境界節点の場合であったが外部境界節点の
場合はその節点が固定,支持あるいは自由により次の様に
部が境界節点)で変位連続条件及び力平衡条件式を満足し,
外部境界条件を充たす解を求める事になる.
ところが外部境界節点を持つ要素について考えてみる
なる.例えば曲げ変形に対しては次の様になる.
と,境界で変位又は応力かのどちらかあるいは両方が規
(a) 固定: u = u , u ′ = u ′
定されているのであるから,これらの外部境界条件を導
( u 等は既知の値)
, M = EI y u ′′ = 0
M
=
EI
(c) 自由:
y u ′′ = 0 , V = EI y u ′′′ = 0
(b) 支持: u = 0
入すれば変位規定境界条件の方から一部境界節点力に関
する条件式として平衡方程式の方に追加されることにな
る.一方変位の連続条件式は変位 d と力 f の両方を含ん
軸変形wと捩り変形χの基礎方程式は簡単な2階の常微
だ式となっており,その境界点で d 又は f の一部が規定
分方程式で,境界条件としては次式で与えられる.
され若干その自由度が低くなる.
この様に問題に課せられた全ての外部境界条件を導入
(d) 変位境界条件: w = w , χ = χ
(e) 力境界条件: P = EAw′ , M z = GKχ ′
して骨組全体のマトリックス方程式を再編成すると結局
次の様なマトリックス方程式が必ず得られる.
梁要素のGM(Ⅱ)マトリックスは要素の中点を原点にと
り,任意点zでの状態ベクトルを S とすれば次式で与え
られる.

ST = dT , f T

C dd
 0

C df  d  Td 
 = 
C ff   f  Tf 
‖
‖
‖
C
S
T
(7)
(5)
式(7)から部材力解 f ,変位解 d が容易に求められる.
d , f は梁の原点における変位 d 0 ,部材力 f0 をパラメータ
として表わすことができる.(式(3))
d 0  =  u 0 , v 0 , w 0 , θ 0 , φ 0 , χ 0 
f 0  = V x 0 , V y 0 , P 0 , M x 0 , M y 0 , M z 0 
(6)
f = C ff−1 Tf
(8)
−1
d = C dd
(Td − C df C ff−1 Tf )
(9)
3. GM(Ⅱ)立体骨組要素と全体方程式
4. 計算例
図1の骨組要素を参照して,x,y軸回りの曲げ変形およ
びz軸方向変形,z軸回りの捩り変形に対応する変位と力
は要素座標系で次式で与えられる.
V
z 2 − x0 z 3 + u p ( z)
u( z) = u 0 + φ0 z +
2 EI y
6 EI y
V y0 3
M x0 2
z + u p ( z)
v( z ) = v 0 − θ 0 z −
z +
2 EI x
6 EI x
Fx
1
2
①
3
②
Z
図3 Z-X平面内における片持ち梁
P
w( z ) = w 0 + 0 z + w p ( z )
EA
V y0 2
M
z + u p0 ( z)
θ ( z ) = − v ′( z ) = θ 0 + x 0 z −
EI x
2 EI x
M y0
V
z − x0 z 2 + φ p0 ( z)
φ ( z ) = u ′( z ) = φ 0 +
EI y
2 EI y
M z0
z + χ p0 ( z)
GK
図3に示す2要素よりなる片持ち梁を考える.
X
M y0
χ (z) = χ 0 +
(1)自由端に集中荷重をうける片持ち梁
今,up=0である.要素①の節点1(固定端)ではZ=-l/2とお
いて,固定条件 u = 0 , u ′ = 0 から次式が導かれる.
(10)
V x ( z ) = − EI y u ′′′( z ) = −V x 0 − V xp 0
l3
l
l2
 l
Vx 0 = 0
M y0 +
u  −  = u0 − φ +
2
8 EI y
48 EI y
 2
(13)
l
l2
 l
M y0 −
φ  −  = φ0 −
Vx 0 = 0
2 EI y
8 EI y
 2
これから φ0 , u0 について解けば次式となる.
V y ( z ) = EI x v ′′′( z ) = V y 0 + V yp 0
φ0 =
l
l2
M y0 +
V x0
2 EI y
8 EI y
P ( z ) = EA w ′( z ) = P0 + P p 0
u0 =
l2
l3
M y0 +
V x0
8 EI y
24 EI y
M x ( z ) = − EI x v ′′( z ) = M x 0 − V y 0 z + M xp 0 ( z )
(14)
要素①については M y 0 , V x 0 が未知数で u0 , φ0 は従属
変数である.節点2においては u と φ の変位連続条件とし
M y ( z ) = EI y u ′′( z ) = M y 0 − V x 0 z + M yp 0 ( z )
て式(14)を考慮して式(15)が,力の平衡条件として式(16)
が必要である.ここで上添字は要素番号を表わす.
M z ( z ) = GK χ ′( z ) = M z 0 + M zp 0 ( z )
ここで下添字のpは特解に対するものである.
要素 (i)と (j)で共有される節点k ( 内部節点 ) では変位連
続式と力の平衡式として次式が成り立つ.
Ti d (ki ) − Ti d (ki ) = 0
l3
l2
Vx(01)
M y(10) +
12 EI y
2 EI y


l3
l
l2
V x(02)  = 0
M y( 20) +
−  u 0( 2) − φ 0( 2) +


2
8EI y
48 EI y


(15)
2


l
l
l
( 2) 
(1)  ( 2 )
( 2)
Vx 0 = 0
M y0 −
M y 0 − φ0 −


2 EI y
8 EI y
EI y


(11)
Ti f k( i )
+
Ti f k( i )
l
l
M y(10) + Vx(01) + M y( 20) + Vx(02) = 0
2
2
=0
変位又は外力の境界条件が与えられる要素(i)の節点k
V0(1)
+ V0( 2)
(16)
=0
での各対応する自由度では次式が成り立つ.
節点3では荷重端であるので次式が成り立つ.
変位境界:
Ti d (ki )
= dk
(12)
(i )
荷重境界: Ti f k
又は
= Fk
l
M y( 20) − V x(02) = 0
2
V x(02)
(17)
= Fx
ここで Ti は要素(i)の座標変換マトリックスである.
これらの式を全体方程式として組み立て,若干の変
数・式の並べ替えを施せば,式(7)の様に表わすことが出
来る.
式(15)∼(17)をマトリックス表示すれば式(18)となる.
式(18)を式(7)の様に変位,力の順に並べ直せば式(8)によ
って部材力が求められ,続いて式(9)により変位が求まる.
 l3

 12 EI y

 0


 1
 − l

2
 0

 0

l2
2 EI y
l
2
−1
l
EI y
0
0
−1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
−
l3
48 EI y
l2
8 EI y
1
l
2
1
l
−
2
l 2   Vx(10)   0 


8 EI y   (1)   
 M   0 
l   y0   
 
( 2)
2 EI y   u0   0 

=
   (18)
0 
 φ ( 2)   0 
1  0   
  ( 2)   
0   Vx 0   Fx 

1   M ( 2)   0 
  y0   
−
(2)門型ラーメン
図4に示す3要素よりなる門型ラーメンを考える.
節点1は固定端であるので,前記(1)と同様に要素①で
は未知数は部材力だけとなり,式(14)が成り立つ.ここで,
軸方向の剛性は曲げに対して大であるので,工学的考察
により省略する.
要素(1)の節点2では,式(14)と式(10)の対応する式を用
いて次式が成り立つ.
V2(1)
l3
l2
V x0 +
M (1)
12 EI y
2 EI y y 0
l
=
M (1)
EI y y 0
= V x(01)

,Vx(02) , M y( 20) ,Vx(03) , M (y30) の7DOFとなり,式(20),(22)を用いて
全体方程式は次式となる.
 l3
l2
l3
l 2   V (1)   0 
  x0   

−
0
0
0
EI
EI
EI
EI
12
2
12
2

y
y
y
y   (1)   
  M y0   0 

l
l2
l
 0
−1
0
0   ( 2)   
 φ

EI y
8 EI y 2 EI y
 F 
 0   x 

1
0
0
0
0
0
0
  ( 2)   

l
= 0
V
 − l
1 0
1
0
0   x 0    (24)


2
2
  M (y20)   0 

l2
l
l
  

 0
0 1 −
0

EI y   V (3)   0 
8 EI y 2 EI y
  x0   

0 0
0
0
1
0   (3)   
 1
l
l
M
 0
0 0 −
1
1   y 0   0 

2
2

上式は適当な変数・式の並べ替えによって式(7)の形式に
することができる.
Fx
u 2(1) =
φ 2(1)


(1)
(1) ( 2) ( 2)
( 2) (3)
以上の考察から,この場合には未知数は Vx 0 , M y 0 ,φ0 ,Vx 0 , M y 0 ,Vx 0 , M
xe
②
2
ze
(φ0( 2) ,Vx(02) , M y( 20) )
(19)
ze
(Vx(03) , M y(30) )
(1)
(1)
① (Vx 0 , M y 0 )
xe
= Fx
3
③
(20)
M 2(1)
l
= − V x(01) + M y(10)
2
要素 (2) の節点 2,3 では工学的考察から
ze
z
u2( 2)
=
u3( 2)
= 0と
1
l
M ( 2)
4 EI y y 0
図4 門型ラーメン
(21)
他の方程式については式(10)の対応する式から,次式が
φ 2( 2) = φ 0( 2) −
5. まとめ
その剛性マトリックス,撓性マトリックスが厳密に得ら
l2
l
( 2)
V ( 2) −
M yo
8EI y x 0
2 EI y
れる唯一の要素である.この点に着目すると,混合法を
用いれば任意の骨組構造解析を厳密に実行出来る事が分
= V x(02)
った.またこの方法によれば不静定力を導入することな
l
= V x(02) + M y( 20)
2
l2
l
( 2)
= φ 0( 2) −
V x(02) +
M yo
8EI y
2 EI y
すれば”GM(Ⅱ)要素”ということが出来る.これを2,3次元
V 2( 2)
く問題が解ける事が分った.
M 2( 2)
V3( 2)
数値計算例は発表時に報告する.
現在標準化されている有限要素法において,梁要素は
得られる.
φ 3( 2)
4
x
考えることが出来,これから次式が得られる.
u 0( 2) = −
xe
また本法は,川井の統一エネルギー原理によって分類
(22)
に拡張すれば,2,3次元連続体での厳密解要素GM(Ⅱ)の開
発が可能であるが、不静定力の導入が必要となる.2,3次
元GM(Ⅱ)要素の開発は今後の課題としたい.
= V x(02)
l
M 3( 2) = − V x(02) + M y( 20)
2
参考文献
1)例えばJ.S.シェムニスキー:マトリックス構造解析の基
要素(3)の節点3では完全固定なので節点1と同様の考察
により次式が成り立つ.
l2
l3
( 3)
M yo
V x(03) +
12 EI y
2 EI y
l
M (3)
=−
EI y y 0
Consistent Finite Element Method - Force Method forever -,
u 3(3) = −
φ3(3)
礎理論,培風館,pp.177−210,1971
2) Tadahiko Kawai, Development of a Nodeless and
5thWCCM, 2002
(23)