十 八 銀 行 を 経 営 統 合 へ 動 か し た 「 人 口 減 少 」と 県 経 済 の「 多

営統合を決断するに至ったのは合理的な判断」と総じて歓迎の声
手は打てていない。同行が「財務が健全なうちにライバルとの経
はあらゆる対策で人口減少を緩和しようと懸命だが、効果的な一
構造と人口減少の二つが色濃く影響している。自治体や経済団体
十八銀行(長崎市)がふくおかフィナンシャルグループ(FFG、
福岡市)の傘下入りを決断した背景には、県内経済の多極分散
「これ らの銀
る。その た め
も 導 入してい
(キーマン)
」
Key Man
「共同利用型
でこのように話し、FFG傘下の
森拓二郎頭取(写真右端)は会見
とがいいと判断した」
。十八銀行の
「長崎のことを考えると親和銀
行としっかりした銀行をつくるこ
の懇 親 会「つばさ会 」を形 成 す
後 銀 行( 熊 本 市 )と幹 部クラス
また、十八銀は九州フィナンシ
ャルグループ傘下の鹿児島銀、肥
参加している。
鹿児 島 銀行(鹿児島 市)も後に
維持してきた。このシステムには
システムを共同化、友好な関係を
ンクビジョン)
」という広域勘定系
シスの「Bank Vision(バ
行(福岡県久留米市)と日本ユニ
連 携したとこ
や鹿児島銀と
賀銀、筑邦銀
ったの は、 佐
和銀との合併
機関である親
しかし、同
じ県 内の金融
みられていた。
元経済人)と
性が高い」
(地
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県内の
〝一体感醸成〟
と
〝地方創生〟
の進展に期待
は多い。
「県の一体感醸成、地方創生モデルのきっかけになれば」
行 グループと
親和銀以外に他行との連携は考え
るなど、以 前から浅からぬ関 係
ろで、親 和 銀
の再 編の可 能
なかったことを明らかにした。
があった。鹿児島銀の融資・営業
判断に踏み切
だが、十八銀はコスト削減を目
的に佐賀銀行(佐賀市)
、筑邦銀
消耗戦避け生き残りの道
競争相手との統合効果的
との期待にもつながっている。
支 援システム
十八銀行を経営統合へ動かした
「人口減少」
と県経済の
「多極分散」
AREA FOCUS
長崎
十八銀行はF F Gの
傘下入りで生き残り
を図る
(統合の会見)
う」という判断があった。森頭取
との「消耗戦は延々と続いてしま
との統合を事前に知らせていたよ
た。ちなみに関係各行にはFFG
断の権限を与えた役員を配置。臨
長崎営業部(長崎市)に与信判
都・長崎市の人口も 万4122
離島や半 島 部にとどまらず、県
銀との統合の組み合わせが一番い
のことを知り尽くしている。親和
ているし、親和銀はお互いの地域
は「
(親和銀以外は)地域が離れ
黙の了解があったものの、親和銀
北は親和、県南は十八〟という暗
かつては互いのテリトリーに関
して、県中央部の大村を境に〝県
うだ。
そのころから将来に向けての意見
のが、親和銀の吉澤俊介現頭取で、 市、佐世保市も5453人減って
から長崎代表として常駐していた
を積み上げていった。2012年
機応変な対応で貸金のボリューム
となった。ま た、県 内 第 二の 都
に次いで全国の市 町 村で2番 目
人 減 少 し、 減 少 数 は 北 九 州 市
万5648人に。 市と 町で
い」とした。勘定系システムの共
1
据えた判断だった」ことを強調し
込めないため、
「地域の将 来を見
たものの今以上のコスト削減は見
同化では、コスト削減効果はあっ
銀は苦戦するケースが散見された。 激しかった分、一緒になったときの
親和銀の南進が顕著になり、十八
況は一変した。営業態勢を整えた
がFFGの傘下入りしてからは状
シナジー効果も大きい。競争のエ
に驚かれたと思う。だが、競争が
民の皆さんはライバル同士の統合
交換がなされていた。森頭取は
「県
なさだ。長崎県には大きな河川が
人口減少の要因はいくつかある
が、最も大きいのは就労の場の少
減少に拍車が掛かっている。
人口が減るなど、県内全体で人口
味で、三菱 重工長 崎 造 船 所(長
崎市)の採用人員も年々少なくな
っている。多くの雇用を創出する
と期待された大型クルーズ船の連
少ないエリアでこれをや
の動きを説 明。
「 企業の
断だが、最大のインパクトは長崎
考えられる十八銀の経営統合判
親和銀の攻勢や日銀のマイナス
金利政策など、いくつかの要因が
経営不振で名村造船所(大阪市)
る。佐世保重工業(佐世保市)も
失を計上。厳しい状況になってい
船の2隻で1866億円の特別損
深刻な県内の人口減少
財務健全なうちに判断
は中国や韓国に押されて衰退気
ないため、大規模な工場が進出し
政 府 系 金融 機 関の関
係 者 は「 親 和 銀の 南 進
低 金利 を武 器に経 営 状
態のいい建設会社や医療
法人などの案件を一本釣
り して、融 資 を 肩 代 わ
りするケースがたびたび
られるとかなりのダメー
が長年悩まされ、今後も懸念され
の子会社になっている。
続建造に関しても、1番船、 番
ジになる」と話す。十八
る「人口減少問題」だろう。
起こっていた」と親和銀
てきた結果だったことを強調した。
ネルギーを長崎のために全力で使
6
にくい。かつて盛んだった造船業
12
の勢いはすさまじかった。 いたい」と地域のために積み上げ
25
銀 も 佐 世 保に 役 員 を 常
日現在の長崎県内の総
勢調査の速報値を発 表した。昨
月
親和銀の勢いの前には焼
15
年
26
け石に水だった。
2
10
1
受け皿としては現状では不十分だ。
波が大きく、多くの就労希望者の
観 光業は好調なものの、景 気
に敏感な業種であるため好不調の
2
そのため、就労の場を求めて首都
人口は137万7780人で、戦
一方、親和銀は与信判
断をより迅速にするため、 後初めて140万人を割り込んだ。 圏や福岡などに若年層が出て行っ
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駐させるなど地域との連
くしくも統合の発表がなされ
携強化を図ろうとしたが、 た 月 日、長崎県は 年の国
長崎県にとって人口流出が最大の懸案事項だ
人口減少が続く中、両行とも
競争を続けながら離島や過疎地
い状況にある。
てしまう構造に歯止めがかからな
ってしまう。
には時間がかか
市へのアクセス
ら 県 都・ 長 崎
く、 各 地 域 か
市民が福岡の情報をほしがってい
のマスコミ関係者は「この結果は
ている(
1万8069部の3位にとどまっ
の2万1157部で、長崎新聞は
年ABC部数)
。長崎
での支 店 維 持が困難 なのは明ら
ることの表れ」と話し、佐世保の
かである。地域のインフラとして
った場合の所要
る。一般道を使
く状況では店舗運営がままならな
増加局面ならまだしも、減ってい
離島や半島の多さはコスト面で
銀行経営に重くのしかかる。人口
福岡志向の強さを説明する。
時間はおよそ1
くなっていくからだ。しかし、前
ばならないため
面に出 なけれ
賀 県の 武 雄 方
もいったん、佐
速道路を使って
まれてしまうのである。そこでは
少ないという非効率なケースが生
を得ず、店舗数の割にはもうけが
の少ない地域にも店舗を出さざる
ては〝事業インフラ〟として人口
述したように長崎県の両地銀とし
市から福岡市への所要時間は1時
度かかってしまう。一方、佐世保
ょ銀行との戦いも待っているから
ーサルサービスを提供するゆうち
他行との競争はもちろん、ユニバ
たのもまた事実だろう。
るエネルギーやコストを費やさせ
理由は県内の地理的要因による
ところが大きい。長崎は離島や半
興を図ろうとしている。
いのである。
い」という思いが佐世保圏には強
模の大きな福岡との関係を深めた
とほぼ同じ。それならば「経済規
これらは、福 岡 銀と十八銀の
預 貸 金と 支 店 数 から も 読 み 解
厳しさはなおさらだ。
くことができる。福 岡 銀の預 金
島が多い上に山がちである。その
南地域が最大の経済圏ではあるが、 ざるを得ない。最短ルートに道路
する「多極分散型」の構造だ。県
島などがそれぞれの経済圏を形成
や大村市の県央、島原や西彼半
費用を抑えるには山や谷をう回せ
世保地区でも最多となってしかる
もインフラ費用がかさんでしまう。 常なら県紙である長崎新聞が佐
備を要する場合が増え、どうして
べきだが、トップは西日本新聞の
末)
。一方、県 内の店舗数は福岡
1兆4472億円(同
銀のそれは2兆3888億 円と
県全域が長崎の方を向いているわ
2万4593部。 位は読売新聞
が8兆8317億 円、貸 出 金が
7兆7633億円(いずれも 年
県の経済圏は、長崎市を中心
にした県南と佐世保市などで構成
間
分程 度で、長 崎市に行くの
1時 間
分程
時間
分。 高
佐 世 保 圏で あ
その 動 き を
象 徴 す るの が
存 在 意義はあるものの明らかな
過剰店舗で、ニーズに対するコス
トがかかりす ぎて収 支が合わな
くなってしまう。現状に鑑みると、
財務が健全なうちに生き残りへの
有効な一手を打ちたい─。森頭取
の表情からはそんな思いがみてと
れた。
多極分散型の県の構造
離島・半島のコスト重く
けではない。佐世保や壱岐、対馬
十八銀が親和銀との競争にエネ
ルギーを使ったのは間違いないが、 は福岡との関わりを強めようとし
13
ため道路整備にトンネルや橋の整
ているし、五島や島原は独自の振
40
20
する県北の 極を中心に、諫早市
長崎県独特の地域構造がさらな
統合することになった十八銀行(左)
と親和銀行本店
福岡志向の強い市民の思いは新
聞の発行部数にも表れている。通
40
を整備するのが難しいケースも多
2
2
15
月
月 末 )であるのに対し、十 八
年
15
9
3
50
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銀が152店で十八銀は 店であ
る。単 純 計 算で福岡銀の1店 舗
今回、十八銀と親和銀の統合
を心底喜んでいるのは長崎県だろ
りにも関心が集まっている。金融
機関には手形交換の簡便性など
を図るため、店舗を一定地域に集
れている。現状では発生が見込ま
十八銀は
〝経済団体の柱〟
今後も一層の関与深化
長崎サミットや長崎商工会議
所、長崎経済同友会、県観光連
れる数百人規模の余剰人員は削
う。長崎は経済や人口規模の割に
の長崎銀行(長崎市)の3行が本
盟など、十八銀がサポートする団
減はせず、営業強化要員や新規
あたりの預金は約581億円、貸
店を置いている。かつてはこれに
体は少なくない。地域経済活動へ
事業担当として活用し、経済団
中させる傾向があり、両行の間で
163億円である。
九州銀行(佐世保市、親和銀と
の関与の度合いが気になるところ
体のサポートにまわる行員も増え
地銀の数が多く、現在でも十八銀、
両県の経済規模などの違いはあ
るにしても、これほどの差が出て
統合)があって、激しい競争を繰
だが、十八銀の森甲成常務は「地
る見込みとされているのだが…。
出金は約511億円であるのに対
しまうのは十八銀の店舗数が多い
り広げてきた。金融機関同士の競
域のことを考 えての経 営 統 合で
ただ、前途は決して平たんでは
ない。地元からは「長年のライバ
というわけだ。
が、スムーズにコトを運びやすい
機関と二人三脚で政策を進める方
ず、県としては一つの強力な金融
今後の地方創生の障害になりかね
戦い〟を続けてしまう。これらは
企業の経営強化に
や産業振興、中小
わせ、地 域おこし
は「両行が力を合
長 崎 商工会 議
所の上田惠三会頭
いるようだ。
FFGも了 承して
っていく 」と強 調。
「地方創生」に活路を見いだそう
ある。また、両行の統合で県内の
戦略」の推進に協力していく方針。 夫だろうか」と不安視する向きも
に期待を寄せた。
興につながること
その効果が地域振
としている。十八銀も長崎県と地
具 体的には「地方版 総 合戦略の
貸出金のシェアは県内の 割程度
内企業の育 成支援」など8項目
否を公正取引委員会がどのように
に高まってしまう。経営統合の可
地元では店舗の
統廃合で発生する
もこれらの店舗の統廃合が検討さ
ため。言い換えれば非効率な店舗
争は、経済が成長する過程にあれ
あり、当行は地域
親和銀のほか、規模は小さいもの
が多いということだ。十八銀と親
ば良い方向に作用する面が大きい
し、十 八銀は約268億 円と約
店程度の統廃合
振興のために今以
方創生に関する連携協定を締結。 ルが本当に融和できるのか」とい
寄 与してほしい」
を検 討しており、今 後、非 効 率
和銀は2行で
が、経済が縮小均衡する局面では
上に積極的に関わ
!?
店舗の絞り込みに入ることになる。 互いの足を引っ張りあう〝不毛な
う声も聞かれるし、行員の中にも
と経営統合を歓迎。
両行の合併に地元は歓迎
地方創生政策やりやすく
県とこれまで以上に連携し、
「長
「企業風土が全く異なるのに大丈
人口減少に伴う経済の衰退が
危惧される中、全国の金融機関は
崎県まち・ひと・しごと創生総合
推進」や「移住・定住促進」
「県
の連携・推進を掲げており、地域
余剰人員の割り振
7
判断するのかも注目される。
Zaikai Kyushu / MAY.2016
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89
経済の振興につなげたい考えだ。
長崎サミットなど十八銀行がバックアップする団体は数多い
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