大阪市自動車運送事業経営健全化計画から

2016年4月19日
大阪市バス事業について
大阪市自動車運送事業経営健全化計画から
「市バス事業廃止即ち民営化に関する条例案は、平成26年11月及び平成27年2
月の市議会に於いて否決され、平成27年9月市議会では民営化の手続きを明確にすべ
きとの意見があり「大阪市自動車運送事業の引継に関する基本方針の策定を地方自治法
の規定に基づき議会の議決すべき条例案」を上程して同年10月に可決された。
『大阪市条例第105号:自動車運送事業を廃止する時は、大阪シティ―バス(株)
に事業を引き継ぐこと、引継をする為の基本方針を策定すること、基本方針は議会の議
決を得ること。
』
尚、経営健全化計画は自動車運送事業の経営が悪化した要因の分析結果を踏まえて資
金不足比率を経営健全化基準未満とすることを目標に作成するもの。
」
市バス事業は昭和2年に開業、これまで市営交通ネットワークのなかで地下鉄・ニュ
ートラムを補完する役割を担ってきたが、事業の取り巻く経営環境は、景気の低迷、少
子高齢化等社会情勢の変化や地下鉄の整備などにより、乗車人員は平成26年度ではピ
ーク時(昭和39年)に比べ5分の1以下に落ち込み、営業収益の運輸収益は平成17
年度から平成26年度までの10年間で209億円から116億円と、約40%の減収
となった。
バス走行キロ当たり単価は平成23年度1,019円、平成24年度938円、平成
25年度741円、平成26年度696円と、平成23年度比で約3割削減に達したが、
平成25年度の民間の京阪神のバス走行キロ平均単価は481円で、一人当たり人件費
も民間バス運転者の年収は541万円であるのに対し大阪市バス運転者は885万円
と344万円も高額となっている。
又、路線の見直しを行ったが、平成26年度現在で87系統中58系統の約68%が
不採算系統となっている。
敬老優待乗車掌制度を、平成25年7月から利用者負担年3,000円の徴収、更に
平成26年度8月から利用者1回につき一律50円負担に変更したことが理由からか、
乗車人員は(年間)平成24年度約1、699万人、平成25年度約1、568万人、
平成26年度約1、312万人と減少した。
平成17~26年度の経営健全化の取組みとして、赤バス廃止、民間委託による人員
削減、給与の見直し、早期退職者勧奨、営業所の統廃合、土地売却(阿倍野北操車場・
上六操車場・守口営業所・住吉営業所・中津営業所など)に取組んだが、平成26年度
末に係争中であった土地信託事業の和解金の支払いにより約165億円の資金不足が
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発生して、資金不足比率が140.9%と経営健全化基準(20%)を大幅に超える事
となり、直近5年間に於いても資金不足が生じている状況で、公営企業のままではサー
ビスの持続性は困難ということから、安定的サービスの確保を目的として民営化に向け
て検討を進めてきた。
経営健全化の基本方針として、バス事業の乗車人員は人口が減少していく状況から経
営環境はますます厳しくなると考えられる。今後バス事業を継続していくには、バス車
両や料金収納機の更新等、施設整備・改修などにより、平成28年度から10年間で1
22億円もの多額の資金が必要となる状況にある。
平成17年度と平成26年度の比較では営業キロは636㎞から445㎞と▲3
0%に、車両数は892両から530両へと▲41%にするなど効率化を諮ってきたが、
これ以上の見直しを行う事は市民生活に大きな影響を及ぼすことになる。又市の厳しい
財政状況の中で一般会計からのバス事業への繰出し金を増加することは困難な状況で、
加えて土地信託事業の和解金の支払い負担も発生している。
市バス事業の公営企業として経営の継続は、人口減少による運輸収入の減少や設備投
資など、累積欠損金や資金不足比率が解消する見込みが無く、経営悪化は歯止めが掛ら
ない状態となることからも、民営化は市民・利用者のバスサービスの維持を担保すると
共に、地下鉄とのネットワークの一体性や連携を確保していくといった観点から、交通
局の外郭団体である大阪シティ―バス(株)へ一括譲渡することにより、将来に亘り、
持続的・安定的に市民・利用者に必要不可欠なバスサービスとして必要な路線の維持と
より良いサービス提供を目指して継続して取組んでいく。
等々、経営健全化計画提案に民営化への理由が説明されている。
平成23年度に前市長橋下氏が就任し、外部から局長を招き大阪市営交通の改革に取
組み、民営化が提案されてきた。確かに大阪市財政は数々の公共工事の失敗により、起
債償還に追われて市の財政は逼迫しており、一般会計からバス事業への補填支出は困難
であること、公営での運営はバス運転者の給与額から見ても民間並みの運営が難しいこ
とが推し量れる。しかし市バスは市民の足である、バス事業は市の外郭団体であるシテ
ィ―バス(株)への一括譲渡、即ち民営化しか道が無いのか?嘗て国鉄が民営化された
が、営利に走り運賃が高額となったまま現在に至る運営を考えると、民営化で市バス事
業が本当に市民の側に立った運営がされるのかに疑問が残る。
大阪市は個人市民税額が市税総額の21%と横浜市の40%と比較しても低いこと
から、得者の低い市民が多いことが推測される。市議会は市民の代表として市民の足と
なるバス事業について、将来に渡り、市民のメリットを担保しながら持続可能な運営方
法について、あらゆる観点から慎重に検討、議論にされることを切に望みたい。
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