職発0420第6号 平成28年4月20日 各都道府県労働局長 殿 厚生労働省職業安定局長 (公 印 省 略) 地域再生法に基づく委託募集の特例等に関する業務の取扱いについて 地域再生法の一部を改正する法律(平成28年法律第30号。以下「改正法」という。) については、本年4月20日から施行されるところであるが、改正法による改正後の地 域再生法(平成17年法律第24号)(以下「法」という。)の内容のうち、法第17条 の18及び第17条の19等に規定される委託募集の特例等に係る業務の取り扱いにつ いては下記によることとするので、これに十分留意の上、その円滑な施行について遺漏 のないよう特段のご配慮をお願いする。 記 1 基本的考え方 生涯活躍のまち(日本版CCRC(Continuing Care Retirement Community))構想は、東 京圏をはじめとする地域の中高年齢者が、希望に応じ地方やまちなかに移り住み、多 世代の地域住民と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・ 介護を受けることができるような地域づくりを目指すものである。地方において人口 減少傾向にある中、元気なシニアが希望に応じて地方に移住し、そこで役割や生きが いを持って、健康寿命を延伸し、できる限り長く活躍できるコミュニティを実現する ことにより、地方における人口減少問題の改善、地域の消費需要の喚起や雇用の維持・ 創出、多世代との協働を通じた地域の活性化などが図られることが期待されている。 この生涯活躍のまち構想の推進のため、今般、法に生涯活躍のまちの制度化のため の措置が盛り込まれ、生涯活躍のまち形成事業に関する地域再生計画を作成し、内閣 総理大臣の認定を受けた市町村(以下「認定市町村」という。)が、事業の実施内容 を具体化した生涯活躍のまち形成事業計画を作成すること、委託募集に関する職業安 定法の特例等が盛り込まれたところである。 生涯活躍のまちのコンセプトの一つは、50代以上を中心とした中高年齢者が健康 な段階から移り住み、地域の仕事などの社会的活動に積極的に参加して、地域社会に 溶け込み、地元住民や子ども・若者などの多世代と交流・協働することであり、この ような健康でアクティブな生活を送るための支援を行うこととされている。 このため、今般の改正では、法第17条の14第3項第1号において、生涯活躍の まち形成事業計画に、中高年齢者の就業の機会を確保するための就業に関する相談そ の他の援助などの中高年齢者の社会的活動への参加を推進するために認定市町村が講 ずる施策を盛り込むとともに法第17条の20において、認定市町村、都道府県、公 共職業安定所及びシルバー人材センター等が相互に連携を図りながら協力しなければ ならないこととされたところである。 また、今般の改正では、生涯活躍のまち形成事業として、中高年齢者の就業、生涯 にわたる学習活動への参加その他の社会的活動への参加の推進、高年齢者に適した生 活環境の整備、移住を希望する中高年齢者の来訪及び滞在の促進その他の地域住民が 生涯にわたり活躍できる魅力ある地域社会の形成を図るために行う事業を行うことと されており、例えば介護サービスの提供や高年齢者向けの住宅の整備といった事業を 実施するための人材を確保することが必要となるが、事業に参加する中小事業主にと ってこうした人材を適時適切に募集することは負担が大きいと考えられる。 このため、法第17条の14第4項第1号、同条第5項及び法第17条の18に基 づき、その構成員である中小事業主から委託を受けて、生涯活躍のまち形成事業とし て行われる事業の実施に関し必要な労働者の募集を行う事業協同組合等について、職 業安定法第36条第1項及び第3項の手続を緩和し、事業協同組合等が厚生労働大臣 に届出をすることによってその委託募集ができるようにしたものである。 2 認定市町村との連携・協力 法第17条の20において、生涯活躍のまち形成事業計画に記載された中高年齢者 の就業の機会の確保に関する施策が円滑かつ効果的に実施されるよう、認定市町村、 都道府県、公共職業安定所、シルバー人材センター連合、シルバー人材センターは相 互に連携を図りながら協力しなければならないこととされたところであり、認定市町 村からの求めに応じて、例えば、施策の情報提供や地域で行うイベント・セミナー等 の情報提供、生涯活躍のまち形成事業計画を作成する際の地域再生協議会への参加な どにより、積極的に相互に連携し協力すること。 3 委託募集の特例の前提 今般、法に盛り込まれた委託募集の特例は、市町村による生涯活躍のまちに関する 地域再生計画及び生涯活躍のまち形成事業計画の作成が行われ、当該事業計画に記載 された事業協同組合等が特例の対象となること、当該事業組合は市町村と連携して地 域再生協議会に参画すること、特例の対象となる募集は、生涯活躍のまち形成事業計 画に記載された事業の実施に関する人材の募集であることが前提となっている。 そのため、生涯活躍のまち形成事業の一環として行われる事業を実施する中小事業 主が構成員となっている事業協同組合等がともに地域再生協議会に参加して、生涯活 躍のまち形成事業計画の作成に関与し、当該事業計画に記載された事業の実施にあた って必要となる人材の確保に関する相談及び援助を行うことから、適切に中小事業主 に対する支援を行うことができるものとの前提で、手続を緩和したものである。 4 事業協同組合等の範囲 事業協同組合等の範囲は以下のとおりである(厚生労働省関係地域再生法施行規則 (平成28年厚生労働省令第94号。以下「則」という。)第2条)。 ア 事業協同組合及び事業協同小組合並びに協同組合連合会(中小企業等協同組合 法(昭和24年法律第181号)) イ 水産加工業協同組合及び水産加工業協同組合連合会(水産業協同組合法(昭和 23年法律第242号)) ウ 商工組合及び商工組合連合会(中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年 法律第185号)) エ 商店街振興組合及び商店街振興組合連合会(商店街振興組合法(昭和37年法 律第141号)) オ 農業協同組合及び農業協同組合中央会(農業協同組合法(昭和22年法律第1 32号)) カ 生活衛生同業組合(生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭 和32年法律第164号))であって、その構成員の3分の2以上が中小事業主 であるもの キ 酒造組合及び酒造組合連合会(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭 和28年法律第7号))であって、その直接又は間接の構成員たる酒類製造業者 の3分の2以上が中小事業主であるもの ク その直接又は間接の構成員の3分の2以上が中小事業主である一般社団法人 (民法(明治29年法律第89号)) 5 手続(法第17条の14第4項第1号、同条第5項) (1)法第17条の14第4項第1号及び同条第5項の規定により委託募集の特例を 受けて労働者の募集を行おうとする事業協同組合等は、地域再生協議会の構成員 となり、生涯活躍のまち形成事業計画を作成する際の協議(法第17条の14第 1項)に参画する。 (2)認定市町村は、生涯活躍のまち形成事業計画に当該事業協同組合等に関する事 項を記載し、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局長を経て、厚 生労働大臣に提出する。 (3)厚生労働大臣の同意 ア 厚生労働大臣は、認定市町村から生涯活躍のまち形成事業計画の提出を受けた ときは、遅滞なく当該生涯活躍のまち形成事業計画に記載されている事業協同組 合等が法令及びウの同意基準に照らして適当であるか否か審査し、適当であると 判断されるものについて同意する。 イ 厚生労働大臣は、同意をしたときは、遅滞なく、同意通知書(様式第1号)に より、所轄の都道府県労働局長を経て、当該同意に係る認定市町村に対して通知 する。 ウ 同意基準 同意の基準として、次のいずれにも該当する必要がある。 (ア) 協議会を構成する団体であること。 (イ) 生涯活躍のまち形成地域において生涯活躍のまち形成事業として行われ る事業を実施するための人材確保に関する相談及び援助を行うものであるこ と。 (ウ) (イ)の相談及び援助を適切に実施するために必要な体制が整備されてい ること。 (エ) その構成員である中小事業主の委託を受けて労働者の募集を行うに当た り、当該募集に係る労働条件その他の募集の内容が適切であり、かつ、当該労 働者の利益に反しないことが見込まれること。 (4)厚生労働大臣は、同意を受けた事業協同組合等(以下「同意事業協同組合等」 という。)が上記の基準に照らして適当でなくなったと認めるときは、当該同意 事業協同組合等に関する事項に関して、生涯活躍のまち形成事業計画に対する同 意を取り消すことがあり得る。「適当でなくなった」場合としては、当該同意事 業協同組合等が法令及び同意基準を満たさなくなったと認められる場合がある。 同意の取消を行った場合における当該取消しの日後には、当該取消を受けた事業 協同組合等は届出による委託募集を行うことはできない。 6 委託募集の届出(法第17条の18第2項) (1)同意事業協同組合等が、その構成員たる中小事業主の委託を受けて労働者の募 集を行う際には、同意事業協同組合等は、その主たる事務所の所在地を管轄する 都道府県労働局長に対して、委託募集の届出を行うものとされている。ただし、 同意事業協同組合等の主たる事務所の所在する都道府県の区域以外の地域(以下 「自県外地域」という。)を募集地域とする委託募集であって、一中小事業主が 自県外地域において募集しようとする労働者の数の合計が100人以上である委 託募集又は自県外地域のうち一の都道府県の区域において募集しようとする労働 者の数の合計が30人以上である委託募集については、厚生労働大臣に対して、 委託募集の届出を行う(則第21条、第22条)。 (2)委託募集の届出の有効期間は6か月以内とする。 (3)同意事業協同組合等は、生涯活躍のまち形成事業として行われる事業の実施に 関し必要な労働者の募集を行わせようとする中小事業主についてのみ、委託募集 の届出を行うものである。 (4)同意事業協同組合等は、委託募集届出書(様式第2号)を、都道府県労働局長 への届出にあっては正本1通、副本2通を作成し、委託募集を開始する日の7日 前までに、厚生労働大臣への届出にあっては正本1通、副本3通を作成し、委託 募集を開始する日の14日前までに、それぞれその主たる事務所の所在地を管轄 する公共職業安定所長(以下「所在地公共職業安定所長」という。)に対して提 出する。 7 委託募集の届出の受理(法第17条の18第2項) (1)所在地公共職業安定所長は委託募集の届出の受付を行い、届出の受付から2日 以内に、副本1通を保管のうえ、都道府県労働局長への届出にあっては正本1通、 副本1通を、厚生労働大臣への届出にあっては正本1通、副本2通をそれぞれ都 道府県労働局長へ送付する。うち厚生労働大臣への届出にあっては、都道府県労 働局長は副本1通を保管のうえ所在地公共職業安定所長から送付のあった日から 2日以内に、正本1通及び副本1通を厚生労働大臣へ送付する。(則第23条第 2項及び第3項) (2)届出書の送付を受けた都道府県労働局長(厚生労働大臣への届出にあっては厚 生労働大臣)は、届出に係る募集の内容が、生涯活躍のまち形成事業として行わ れる事業の実施に関し必要な労働者の募集を行わせようとしていることを確認し たうえで当該届出を受理し、その副本1通に確認の印を押し、届出の送付を受け てから2日以内に、所在地公共職業安定所長(厚生労働大臣への届出にあっては 都道府県労働局長及び所在地公共職業安定所長)を経由して届出を行った同意事 業協同組合等に交付する。 (3)所在地公共職業安定所長、就業地を管轄する公共職業安定所長(以下「就業地 公共職業安定所長」という。)及びその募集地を管轄する公共職業安定所長(以 下「募集地公共職業安定所長」という。)が異なる場合は、届出を受理した都道 府県労働局長又は厚生労働大臣は、受理した届出書の写しを、就業地公共職業安 定所長及び募集地公共職業安定所長に対して、それらの公共職業安定所を管轄す る都道府県労働局を経由して送付する。 8 労働者募集報告 委託募集に従事する同意事業協同組合等は、毎年度の委託募集の状況をとりまとめ、 労働者募集報告(様式第3号)を作成し、当該年度の翌年度の4月末日まで(当該年 度の終了前に労働者の募集を終了させる場合にあっては、当該終了の日の属する月の 翌月末日まで)に委託募集の届出の受付を行った公共職業安定所長に報告する(則第 24条)。 9 報告の徴収(法第17条の18第5項) 厚生労働大臣は、必要と認めるときは、所轄の都道府県労働局長を通じて、同意事 業協同組合等に対し、相談援助事業の実施状況について、随時報告を求める。 10 公共職業安定所の援助(法第17条の19) (1)公共職業安定所は、委託募集が効果的かつ適切に行われるよう、同意事業協同 組合等及び当該募集を委託する中小事業主に対して、求人条件の決定、募集方法 等について助言、指導を行うなど配意すること。 (2)公共職業安定所は、求職者に対する職業紹介に際して、当該募集に係る求人が 生涯活躍のまち形成事業として行われる事業の実施に関し必要な労働者の募集を 行う中小事業主からの求人である場合には、その旨説明するよう配意すること。 11 その他の留意事項 同意事業協同組合等は、当該届出によっては、職業紹介に及ぶ行為をすることはで きないものである。
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