JAファーマーズマーケット利用者 調査結果の活用について

JAファーマーズマーケット利用者
調査結果の活用について
JC総研 経営相談部
ファーマーズマーケットチーム
主席研究員
あ
だち
ひで
や
安達 秀哉
JAファーマーズマーケット戦略研究会(FM戦略
研)では、利用者のファーマーズマーケット(FM)に
対する評価やお店への要望を調査し、店舗運営に活
かすようにしています。今回で 13 回目になりますが、
全店舗を集計すると、驚くことに、毎年同じような調
査結果になります。
昨年 10 月に実施した 2015 年度のJA FM利用者
調査では、全国 35 店舗、6853 人の利用者の声を集
2.FMに対する評価
めることができました。調査結果の概要と活用方法に
「朝採りの農産物だから新鮮」
「生産者が明示されて
ついて紹介します。
いて安心」という評価が9割以上と断然高く、
「JA
直営だから信頼感がある」
「店全体に活気がある」
「従
1.利用者について
業員の対応がよい」と続きます。
年齢層は、60 代以上が最も多く約6割。次いで 40
次いで評価が高いのが品ぞろえ。
「地場の珍しい商
~ 50 代が約3割を占めます。30 代までの利用者は1
品がある」
「年間通して品ぞろえが豊富」と、店舗で弛
割程度しかいません。
まず努力している成果の表れといえます。
同行者の数を見てみると、自分1人で来たという利
意外なのは、
「スーパーと比べて安い」という項目で、
用者は1割程度で、8割以上の人は誰かと一緒に買い
プラス評価では下から2番目です。約6割の利用者が
物をしている、という結果でした。スーパーやコンビニ
安さに魅力を感じているものの、鮮度・安心感・品ぞ
の利用者は初めから買う物が決まっていて、買いたい
ろえをより重視しているという傾向があります。
たゆ
ものを目指してどんどん店内を移動しますが、FMに来
られる利用者の方は、一緒に来た同行者と、まるで宝
物でも探しているかのように、今日はどんな野菜・果物
が並んでいるかな? どんな献立にしようかしら、と
買い物を楽しんでいる様子が目に浮かんできます。土
日になると、親子連れの比率が高くなりますが、平日
ではご夫婦そろってお買い物という方が半数以上とい
う結果でした。
店までの所要時間は 10 ~ 20 分程度というのが約
半数を占めますが、30 分以上かけて来られる利用者
が3割以上もおり、交通手段は8割が車利用です。
【FM】JAファーマーズマーケット利用者調査結果の活用について
JC総研レポート/2016年 春/VOL.37 59
3.利用者からの要望
は 58%と低めです。
利用者からの要望で多かったものは、
「農産物の残
ここでいう対応というのは、お客さまからの質問・
留農薬の定期検査」と「加工品の細菌の定期検査」
問いに対して、ちゃんと答えられるかどうか、つまり、
が7割を超え、安全・安心を重視しています。また、
「加
お客さまが宝探し(?)をしている最中に、これまで見
工品の特徴の説明」
「農産物の調理・保存方法の説明」
たこともない、新しい品種の野菜が販売台に並んでい
「農産物の特徴の説明」を要望する利用者も多くいるこ
とが分かります。
るのを見て「これ、どうやって食べるの?」という質問
があったときに、従業員が具体的かつ的確に答えられ
るかどうかを意味するのです。
4.調査結果の活用について
今回は、東北から九州まで、地方別にランダムに選
もしその場にその商品を出荷した生産者がいれば、
んだ下記の9店舗のデータを参考にしながら、顧客満
即座に答えてくれるのでしょうが、生産者は常時お店
足度という観点から考察を加えてみましょう。
にいるわけではなく、たまたま追加搬入のときか、特
別なイベントがあるときくらいしかいません。
評価項目のなかに「生産者と話ができて楽しい」と
いう設問がありますが、これを、生産者と接する機会
がある、と読み替えたとして、全店舗の平均(平日)は、
「そう思う」が 38%に対して、関東地方のS店は 52%と
高いですが、東海地方のN店は 29%です。概してそん
なに高いとはいえません。
それでは、商品の特性や食べ方・調理方法を従業員
(食育ソムリエ)が生産者から聞いていれば、代わりに
前述のファーマーズマーケットの評価にあるように、
答えられるのではないでしょうか。あるいは、生産者
FMの最大の魅力は、何といっても「鮮度と安心」で
や従業員が作ったPOPやパンフレットに書いてあれば
すが、その後に「従業員の対応がよい」という評価項
どうでしょうか。
目があります。
前述の「利用者からの要望」の図にあるように、
「農
全店舗の平均(平日)では、
「そう思う」が 74%に対
産物の調理・保存方法の説明」
「農産物の特徴の説明」
して、中国地方のS店は 83%と高く、東海地方のN店
60
JC総研レポート/2016年 春/VOL.37
「加工品の特徴の説明」について、高い要望があるこ
【FM】JAファーマーズマーケット利用者調査結果の活用について
とが分かります。
す。関東地方のS店と四国地方のS店は、どの品目も
そこでFMの発信力向上の観点から、食育ソムリエ
評価が平均以上なのに対して、東海地方のN店はすべ
が期待どおりに機能しているのかどうか、POPの数
ての品目で平均以下の評価になっています。
が十分かどうか? もし、足りないと思ったら、もっと
何でもそろうということも大事なことですが、
スーパー
増やすために、あるいは見やすくするために、POPの
には並んでいない「地場の珍しい商品がある」ことが
研修会を企画してはどうでしょうか。
FMの大きな魅力でもあります。ちなみに、全店舗の
平均(平日)では、
「そう思う」が 70%に対して、九州
地方のU店は 79%と高いのに対して、中国地方のS店
は 59%です。
FMの基本は、もちろん地産地消ですが、どうして
も季節的な制約や栽培技術の限界があります。FM間
提携取引によって、品ぞろえを強化することを目指して
みてはいかがでしょうか。
顧客満足度の2番目のポイントとして、品ぞろえにつ
いて見てみましょう。
全体評価のなかに、
「年間通して品ぞろえが豊富」と
いう評価項目があります。全店舗の平均
(平日)
では、
「そう思う」が 61%に対して、近畿地方のM店は 81%と
高いのに対して、北陸地方のY店は 42%ですが、雪国
では冬に作物を生産することができないので、評価が
下がってしまうのは仕方のないことだと思います。
品ぞろえについては、店舗の規模、売り場面積と品
目構成に
よるとこ
ろが大き
いのです
が、野菜、
果物、米、
花木、加
工品、そ
れぞれの
評価を見
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