集積回路工学第1 講義案内 集積回路工学研究室(MeRL) 北川章夫 集積回路工学第1・第2では LSI設計技術を学びます 集積回路工学は、(1) LSI(Large Scale Integration)製造技術と (2) LSI 設計技術の2つの分野で成り立っています。情報システム・生命情報 コースでは、主にLSI設計技術を扱い、そのうち集積回路工学第1では、 ・ レイアウト/トランジスタ~回路特性~システム性能 ・ テクノロジとシステム性能の関係(※) を理解することを目標とします。 LSI製造技術 集積回路工学第1(最小限の基礎知識のみ扱う) LSI設計技術 集積回路工学第1(実践的な設計技術入門) 集積回路工学第2(アルゴリズムに基づく回路設計) ディジタル電子回路(手動設計+半導体メーカで試作) 集積回路設計及び演習(ディジタルシステムの自動設計) (いずれも実践的、具体的な設計技術を学びます) ※ 各種の半導体製造技術をテクノロジ(Technology)と呼びます 2 集積回路に搭載される回路 汎用LSI カスタムLSI マイクロプロセッサ マイクロプロセッサ メモリ メモリ 周辺回路(規格品) DSP ソフトウエア SoC (System on a Chip) マイクロプロセッサ メモリ ソフトウエア 信号処理回路 信号処理回路 DAC DAC ADC DIO OPA 汎用性のある部品 特定応用に必要な部品 DSP: Digital Signal Processor OPA: Operational Amp. DAC: Digital-to-Analog Converter ADC: Analog-to-Digital Converter DIO: Digital Input/Output (制御マイコン、ディジ タルオーディオ、画像 処理プロセッサなど) 1チップの応用システム (携帯電話、DTV、電子 マネーなど) 3 (参考)集積度による古い分類 名称 • • 素子数/チップ 対応するDRAM容量 SSI (small scale IC) 102未満 MSI (medium scale IC) 102~103 LSI (large scale IC) 103~105 1k bit VLSI (very large scale IC) 105~107 256k bit ULSI (ultra large scale IC) 107以上 16M bit DRAMは記憶機能だけを持つ汎用集積回路 上記の定義は、厳密なものではない。103個/チップ程度以上の素 子数のものは、総称してLSIまたはVLSIと呼ばれる 4 電子回路と集積回路の違い 電子回路:設計は簡単だが自由度 や性能(速度・電力効率)が低い。 PCB(Printed Circuit Board) 集積回路:アルゴリズムの自由 度と動作速度が桁違いに高い。 集積回路 5mm 10cm 動作速度:数10MHzまで 配線本数:数100本程度 動作速度:数10GHz以上 配線本数:ほぼ無制限 システムの高性能化や新しい機 能が必要なとき集積回路にする5 洗練された設計手法 発振器とロ ジックで触 覚センサを 作ってみた 体系的 経験と勘 LSI PCB 独自LSI 通信機とラジオ は必要なスキル が全く違う SRAMでディスプレイ を作ってみた LSI設計はPCだけで実施でき、 講義で習った知識が通用する (大学生、主婦でも始められる) 市販部品 市販部品を使いこなすには何10年 もかけて常識を養うことが必要 6 LSI設計技術の主な分野 より複雑なLSIシステムを効率よく構築するために必要な知識 CAD(EDA)技術※ アナログ回路技術 RF(無線通信) 技術 ディジタル回路技 術(主にアルゴリ ズム開発) 組み込みソフト ウエア技術 ※ EDA: Electronic Design Automation, CAD: Computer Aided Design 7 集積回路技術の一般化への流れ 年代 時代の動き 1995年以前 日米の半導体メーカが汎用部品としてLSIを供給 1990年前後、日本の半導体メーカが世界のトップを占有 1996年頃 ファブレス企業の台頭 ファンダリ-サービス(製造サービス)が一般化 VDEC (VLSI Design and Education Center)設立 半導体関連ICT企業や一部の大学でVLSIを設計 2000年頃 日本の半導体メーカが力を失い始める 一般ICT企業や学生がLSI設計することが普及 少量多品種生産、IP(設計データ)の流通が進行 2010年頃 国内半導体産業の再編が進む 低価格の少量生産サービスが可能に LSIの応用範囲が爆発的に拡大 2014年以降 安価なIP(LSIの部品設計データ)の流通が進む 誰でもLSIを作れる時代に入る(設計の原理を学ぶことが重要) 8 LSI設計技術者の時代変化 1971以降 回路の専門家 1900年代 2010年代 半導体メーカで汎用部 システム・アーキテクト 品を設計するエンジニ 半導体メーカでスマー ソリューションデザイ ア トフォンや動画圧縮な ナー どのシステムLSI※を アプリケーションに合 開発するエンジニア わせて必要な機能をL SI化する(外注を含む) 一般の半導体ユーザ 専門性よりもより幅広い視野が要求されている ※ SoC(System on a Chip)と同じ意味で使われる。1チップでシステ ムを構成する大規模LSI。 9 LSI設計技術に必要な知識 概要知識でよいが避けて通れない 学部の間に学んでおくことを推奨 半導体デバイス 論理回路 プロセス技術 コンピュータ・アーキテクチャ 集積回路工学では扱わないが学 んでおくことが必要 アルゴリズム 信号処理 回路設計フロー CADツールの原理・使用法 HDL(ハードウエア記述言語) 身に付けると競争力を持てるため、大学院以上で学ぼう 組み込みソフトウエア (リアルタイムOS,マイコンなど) HDL: Hardware Description Language 高位設計(SystemCなど) アナログ・RF回路 10 集積回路(ロジックの場合)の設計階層 設計段階 設計内容の例 主な記述方法 システムレベル (H/W+S/Wの全体) 動作レベルのアルゴリズム S/W, H/W分割(アーキテクチャ) プロトコル 組込みソフトウエア デバイスドライバ(OS) 高級言語(C/C++など) アセンブリ言語 SystemC, SpecC(H/WとS/Wの両 方の動作を記述) サブシステムレベル (CPU, メモリ, 演算器な ど) 動作レベルのアルゴリズム 論理レベルのアルゴリズム ソフトウエアインターフェース フローチャート、状態遷移図 Register Transfer Level-HDL 論理回路図、トランジスタ回路図 ゲートレベル 論理機能 論理回路図、真理値表、状態遷移 図、構造記述HDL トランジスタレベル 基本論理回路 超高速動作を要する機能 トランジスタ回路図 SPICEネットリスト 物理レベル(レイアウト) セルライブラリ、回路ブロック レイアウト図、GDS-II 黄色部分は、集積回路工学第1の範囲に含まれる階層。 緑色部分は、S/WとH/Wを合わせた階層。白色部分(接続部)は3年生後期以降に学ぶ。 11 LSI設計技術教育の流れ 電子情報工学専攻 大学院 組込みシステム特論 [松田] 4年前期 システム Soc設計基礎論 [深山] ミクストシグナルLSI工学 [北川] 集積回路設計及び演習 [深山] ディジタル・ サブシステム ディジタル・ サブシステム 3年後期 集積回路工学第2[秋田] 集積回路工学第2[松田] 3年前期 ゲート 集積回路工学第1[北川] 集積回路工学第1[松田] ゲート 情報システムコース・ 生命情報コース 電気電子コース アナ/デジ混載 ディジタル電子回路[北川] 情報システムコース・ 生命情報コース・ 電気電子コース 12 LSI関連科目の階層 抽象的 学期 科目 修士1年 組み込みシステム特論 組み込みソフトウエア リアルタイムOS ミクストシグナルLSI工学 CMOSアナログ回路 RF回路 SoC設計基礎論 高位言語設計 動画像処理 4年前期 集積回路設計および演習 HDLによるCPUと周辺回路設計 HDLシミュレーション 3年後期 集積回路工学第2 サブシステム設計(ディジタル/アナログ) ディジタル電子回路 具体的 内容 設計実習 3年前期 集積回路工学第1 論理設計、トランジスタ回路設計 レイアウト設計 2年後期 電子回路第2及び演習 回路シミュレーション 内容は年によって変わることがあります CMOS: Complementary Metal-Oxide-Semiconductor RF: Radio Frequency(無線通信回路) 13 本科目の具体的内容と目標 • 主な内容 – CMOS論理回路のトランジスタ/ゲートレベル設計方法 • 自動設計手法を利用する場合は、トランジスタ回路を扱う必要は ない。しかし、トランジスタ回路を知らないとCADツールの設定や エラー内容は理解出来ない。 – CMOS論理回路の動作速度、消費電力の見積り方法 • 主な目標 – CMOS基本論理ゲート(組み合わせ回路と順序回路)の具体的な構 成法を理解する – 集積回路の設計フローとCADツールの関係について理解する – CMOS基本ゲート回路のチップ上へのレイアウト手順を理解する – CMOS集積回路の性能見積もりができるようになる – 半導体技術ロードマップを理解する 14 教科書・参考書 • 教科書 – 榎本忠儀著「ナノCMOS集積回路」(培風館) ISBN978-4-563-067762 – 講義資料の印刷物は配布しないので、事前にダウンロードしておく か講義中にノートPC等で参照すること – ダウンロードページ • http://jaco.ec.t.kanazawa-u.ac.jp/edu/ → 「集積回路工学第1をク リック」 – ノートPCではメモが取りにくいため、講義資料は予めプリントしてお くか、ペン入力機器を用意しておくことを推奨 • 参考書・参考URI – ICガイドブック-2012年版(よくわかる半導体), 社団法人電子情報技 術産業協会編 • 数年に1度発行される。用語解説や技術動向の解説が優れている • 具体的応用例が多数取り上げられており、殆どの技術がLSI技術の上に成立し ていることが理解できるだろう(産業の米とも呼ばれる) 15 成績評価法・履修条件等 • 成績評価 – 実習レポート+宿題レポート+期末試験(持込可)により評価する – 実習レポート(30%), 宿題(30%), 期末テスト(40%)の配点比率とし、合計 点数が60%以上で合格とする – 無断で実習レポートや宿題を期限に遅れて提出した場合は、0点とする • 部活動、病気など、本人の責任でないことを第3者が証明できる場合は、提出遅れでも 正規の提出として扱う • 遅れても提出はすること。提出しなかった場合は放棄評価とする • レポートの提出先: [email protected] • 原則として、再試験および保留評価は行わない – 長期入院など、特別な事情がある場合は相談してください • 不可抗力により期末試験を受けられなかった人には、追試験を実施 する • その他 – プリントを配布するが、プリントだけでは復習が困難なので、スピードの速い講義 を聴きながらメモを取る訓練をすること – プリントのバグ発見者には、期末テストにバグ発見点をプラス • 変換ミスやタイプミス 5点 (カタカナや句読点表記などの揺らぎは加点しない) • 内容に関するミス 10点 16 質問方法 • なるべく講義時間中に質問してください – 講義後は、時間がないので簡単な質問しか受け付けられません • 込み入った質問についてはオフィースアワーを利用してく ださい – 講義実施日の5時限目に教員室(2B713)で質問を受け付けます。 (但し、出張中、来客中は除く) • SNSでも質問を受け付けます – アドレス: https://www.facebook.com/akio.kitagawa.77 • 質問をしなくて分からないのは自分の責任です 17
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