入所者の生活機能を向上させる ための看護職とリハ職の連携

特 別 企 画
入所者の生活機能を向上させる
ための看護職とリハ職の連携
株式会社アクティブサポート 代表取締役
心身機能訓練・レクリエーション研究所 所長/作業療法士/主任介護支援専門員
藤田健次
肢体不自由児施設・病院・訪問看護ステーションなどで作業療法士業務を経験,介護保険制度
施行後は居宅介護支援事業所の介護支援専門員業務や特別養護老人ホームの機能訓練指導員
業務と施設全体の業務管理を行う。サービス付き高齢者向け住宅の施設長業務を経験後,2014
年4月に株式会社アクティブサポートを起業,介護支援専門員業務以外に特別養護老人ホーム・デイサービスの機能
訓練指導員や障がい者施設等における機能訓練およびレクリエーションの指導にも当たっている。著書『施設機能
訓練指導員の実践的教科書』
『デイサービス機能訓練指導員の実践的教科書』
(いずれも日総研出版)
介護老人保健施設や介護療養型医療施
声かけ方法や注意点などが分からないこ
設(以下,施設)などでは,リハビリテー
とがあるため,実施されないか違った方
ション(以下,リハ)が積極的に行われ
法で行われていることもあります。つま
ますが,生活行為の訓練を日常生活に定
り,入所者の生活機能を向上させるには,
着させるには,日々の入所・入院(以下,
看護職員とリハ職員との密接な連携が重
入所)者自身の努力と看護・介護職員
要となるのです。そこで,生活機能を向
(以下,看護職員)の声かけや支えが必
上させるための看護職員とリハ職員との
要な場合が多く存在します。そのために
連携のポイントを紹介したいと思います。
は,リハ職員が行っている生活に関する
訓練内容と日常生活動作への配慮事項を
タイムリーに伝えなければなりません。
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入所者の生活機能の把握と
評価の共有
また,看護職員から入所者に関する体
看護職員が入所者の生活機能を把握す
調・バイタルサイン・排泄リズム・普段
るには,心身機能・身体構造面では検査
の生活スタイル・行動範囲・日常会話の
や観察で目の見える程度,耳の聞こえる
内容などの情報が提供されると,リハを
程度,大まかな全身筋力などを評価しま
行う際の工夫や配慮につながります。
す。また,関節の動かし方やそれに伴う
しかし現状では,リハにおいて生活上
痛みなども観察することで把握できま
の訓練よりも身体機能の訓練が中心と
す。この点に関しては,リハ職員がより
なっており,生活上の訓練を行っている
専門的に評価し,その情報を看護職員が
場面をほかの看護職員が見ることが少な
活用することが多いでしょう。
く,情報も「○○(行為)ができるよう
日常生活の活動面では,リハ職員が行
になったので,看護職員さんも実施して
1)
や
う機能的自立度評価表(以下,FIM)
ほしい」と依頼が来る程度で,実施上の
Barthel Index(以下,BI)2)などの評価
臨床老年看護 vol.23 no.2
の活用や,施設独自の評価シートを開発
を行いながら起き上がりの行為や入所者
し把握している施設もあります。しか
の意欲に働きかけます。
し,日常生活動作(以下,ADL)のとら
リハ職員は,起き上がりの行為を集中
え 方 に 違 い が あ り,FIMは「 し て い る
的に訓練し,移乗や移動動作へ発展する
ADL」の観点で病棟生活場面でのADLを
ようにアプローチすることが多いでしょ
基本として把握評価しますが,BIは「で
う。看護職員は生活に密着した考え方で
きるADL」の観点で訓練場面においてで
かかわりを行いますが,リハ職員は,そ
きる能力を基本として把握します。どち
の考えが少ないように感じます。この考
らの視点でとらえ,周りのかかわり方を
え方のずれが,入所者の生活機能の維
どのように評価するかによって,生活機
持・向上効果を十分に果たせないことに
能の評価に大きなずれが生じる場合があ
つながっているかもしれません。この点
ります。
においては,リハ職員が生活上の訓練を
さらに,参加に関する評価は両者共に
行う際に「生活上の目的」
(例:窓の外の
深くかかわらず,ソーシャルワーカーなど
景色を楽しむために立ち上がりや移乗訓
が情報を入手し,カンファレンスで報告
練を行う,施設内の談話コーナーで他の
される程度であることが多いと思います。
入所者と会話を楽しむために身なりを整
評価場面において互いの感覚のずれを起
える)を入所者・家族・看護職員などと
こさせないためには,どちらの視点で評価
共に確認し,実施することで,統一した
するかの統一と,周りの看護職員やリハ
生活機能の向上訓練となり得るでしょう。
職員のかかわり方を踏まえた上で「○○
の環境で職員の△△のようなかかわりで
できる」
「○○の環境で自分一人で常にし
生活機能を向上させるための
情報交換
ている」などと評価を共有し,参加レベ
入所者の生活機能が向上するには,看
ルの情報も活用する意識を持つべきです。
護職員とリハ職員との情報交換が重要で
す(表2)
。入所者が生活の場で行って
生活機能を維持・向上させる
ための考え方の共有
いることを共通言語で語り合い,生活に
生活に密着している看護職員は,1日
要があります。FIMなどの評価の共同実
の生活スタイルに沿ってかかわりを行い
施で実現できますが,その日の体調によ
ます(表1)。朝起き上がる際には,あ
る変化や気分による実施頻度の違いな
いさつ,睡眠状況の確認,起き上がりへ
ど,あらゆる側面の情報を交換できれば,
の声かけや介助,カーテンの開閉,空気
互いが同じ入所者像を描けて,統一され
の入れ替えなど生活に密着したかかわり
たかかわりを実現できることになります。
寄り添ったかかわりや訓練を実施する必
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表1 生活スタイルに沿ったかかわり(例)
生活行為
看護職員のかかわり
リハ職員のかかわり
・衣服の選定 ・温度の確認 ・体調の確認
・衣服着脱時姿勢の声かけ・介助
朝の着替え
・衣服着脱動作の確認と声かけ・介助
・寝間着の洗濯の有無確認
・衣服着脱時姿勢の確認・修正・訓練
・衣服着脱動作の確認と訓練
・尿・便のたまり具合の確認
・排泄姿勢の声かけ・介助
・排泄動作の確認と声かけ・介助
・腹痛の有無確認
・排泄後に尿・便の量や色・形状の確認
・排泄姿勢の確認・修正・訓練
・排泄動作の確認と声かけ・訓練
整容
・洗顔状況の確認と声かけ・介助
・歯磨き状況の確認と声かけ・介助
・整髪状況の確認と声かけ・介助
・身なりへの声かけ
・洗顔動作の確認と声かけ・訓練
・歯磨き動作の確認と声かけ・訓練
・整髪動作の確認と声かけ・訓練
移乗
・立ち上がりの声かけ・介助
・下肢の踏ん張り状況確認と声かけ・介助
・持ち手の確認 ・座り心地確認
・いすや机などの状況確認
・立ち上がりの声かけ・訓練
・下肢の踏ん張り動作確認と声かけ・訓練
・持ち手の確認 ・座り心地確認
・いすや机などの状況確認
移動
・歩行・歩行器・車いすなどの状況確認
・目的地・行為の確認
・靴の確認
・移動の声かけ・介助
・歩行・歩行器・車いすなどの状況確認
・目的地・行為の確認
・靴の確認
・移動の声かけ・訓練
トイレ
・排尿・便の確認と声かけ・介助
・気持ち悪さの除去の確認
おむつ交換 ・皮膚状態の観察 ・おむつの付け心地の確認
・汗の状況確認 ・衣服のしわなどの確認
・寝具の状態の確認
食事
・食欲の確認 ・食事姿勢の声かけ・介助
・箸・スプーン動作の声かけ・介助
・食器の持ち方・移動の声かけ・介助
・食べ方(咀嚼,嚥下,スピードなど)の確認
や声かけ・介助
・汁物や水分摂取の確認や声かけ・介助
・食事量・水分量の確認と声かけ
・食器などの配膳状況確認と声かけ
・食事姿勢の確認・修正・訓練
・箸・スプーン動作の声かけ・訓練
・食器の持ち方・移動の声かけ・訓練
・食べ方(咀嚼,嚥下,スピードなど)の
確認や声かけ・訓練
・汁物や水分の摂取状況の確認や声かけ・
訓練
入浴
・浴室内移動の声かけ・介助
・浴室内座位姿勢の声かけ・介助
・浴槽またぎや立ち座りの声かけ・介助
・洗身や洗髪の声かけ・介助
・タオル拭きの声かけ・介助
・衣服着脱の声かけ・介助
・衣服交換や洗濯の声かけ
・浴室内移動の声かけ・訓練
・浴室内座位姿勢の確認・修正・訓練
・浴槽またぎや立ち座りの声かけ・訓練
・洗身や洗髪の声かけ・訓練
・タオル拭きの声かけ・訓練
・衣服着脱の声かけ・訓練
屋外歩行や ・段差や階段昇降の声かけ・介助
・エレベーター操作の声かけ・介助
散歩
入眠
・段差や階段昇降の声かけ・訓練
・エレベーター操作の声かけ・訓練
寝具のかけ具合の確認・介助
・夜間の尿・便意の確認
夜間の排泄 ・夜間の移動確認・介助
・ポータブルトイレの確認・介助
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例えば,今朝の食事時間に外の景色を
歩行で見た景色を夕食時や夜勤の看護職
眺めながら過ごしていた状況を看護職員
員と会話し,次回の歩行ルートを思い描
からリハ職員へ伝え,リハ訓練時に季節
くなどの連係プレーが可能となるでしょ
に関する話題を出しながら歩行訓練を行
う。普段忙しい状況の中でも,共通の話
い,屋外歩行まで持ちかけてみる,屋外
題で盛り上がると,入所者のことを再認
臨床老年看護 vol.23 no.2
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