29SE-pm08

29SE-pm08
キノホルムはヒト特異的に発現するドパミン硫酸抱合酵素 SULT1A3 により硫酸
抱合される
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◯坂本 茉莉子 1 ,
Laddawan SENGGUNPRAI 1 ,
吉成 浩一 1 ,
山添 康(
東北大院
薬)
【目的】薬害スモンの原因物質とされる chinoform(clioquinol、CQ)は、ヒトや実験
動物において硫酸抱合体へと代謝される。しかし、この反応を触媒するスルホト
ランスフェラーゼ(SULT)分子種については不明である。
SULT は薬物だけでなく、
ステロイドやカテコールアミンなど多くの内因性物質の硫酸抱合を触媒する。し
かし、ヒトと実験動物では発現している分子種の数や種類、および基質特異性が
異なり、その結果、薬物の硫酸抱合に種差が認められている。また CQ の毒性にも
種差が認められる。そこで本研究では、ヒトにおける CQ の体内動態と毒性を解明
する一環として、CQ の硫酸抱合を触媒するヒト SULT 分子種の同定を行った。
【方法】大腸菌で発現、精製した組換えヒト SULT、またはヒト小腸の可溶性画分
および放射標識した 3’-phosphoadenosine-5’-phosphosulfate を用いて、各基質と反応
させた。TLC で分離後、放射活性の強度から代謝生成物量を測定した。
【結果・考察】調べた 6 種のヒト SULT 分子種のうち、CQ 濃度が 10 μM では
SULT1A1、SULT1A3、SULT1B1 および SULT1E1 が、100 μM では SULT1A3 が高
い硫酸抱合活性を示した。CQ の服用量(1 g/日)を考慮すると、ヒトにおいて CQ
の硫酸抱合は主に SULT1A3 によって触媒されると示唆された。SULT1A3 は腸管
で強く発現しており、腸管における dopamine(DA)の硫酸抱合を触媒するとされて
いる。そこでヒト小腸の可溶性画分の CQ と DA に対する硫酸抱合活性を調べたと
ころ、両者に正の相関が認められた。また、CQ は濃度依存的に SULT1A3 による
DA の硫酸抱合を阻害した。以上の結果より、CQ はヒト小腸において、SULT1A3
によって硫酸抱合され、また SULT1A3 による DA の硫酸抱合を阻害する可能性が
示された。